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ニューズ&コメンタリー

検察官役の弁護士「小沢氏起訴は法曹としての良心に恥じない」

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 小沢一郎・衆院議員(68)が1月31日、検察官の職務を行う指定弁護士によって、政治資金規正法違反(政治資金収支報告書虚偽記載、不記載)の罪で東京地裁に起訴された。検察審査会が「起訴すべきである」と議決したのを受けて、東京地裁が大室俊三弁護士ら3人を検察官役に指定し、補充捜査が行われていた。大室弁護士は31日午後の記者会見で、小沢議員の有罪を立証できるかどうかに関連して、「私自身は、小沢氏を起訴することが法曹としての良心に恥じない、というふうに思っている」と述べた。

  ▽筆者:奥山俊宏

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拡大記者会見する大室弁護士(中央)ら=1月31日午後3時51分
 大室弁護士ら3人の記者会見は31日午後、約30分にわたって、東京・霞が関の司法記者クラブで開かれた。

 起訴の感想を尋ねられると、大室弁護士は「ようやくここまで来た」「ほっとしている」と答え、山本健一弁護士は「これから裁判の本番が待っている」として、「さらに気を引き締めて頑張っていかねば」と述べた。

 有罪に持ち込むための捜査ができたかという質問には、大室弁護士は「できたと思う」と答えたが、ほかの2人の弁護士は「私たちの職務というのは、必ずしも、有罪だと確信したから起訴するのではなくて、起訴するのが法令で決まっており、その中で、起訴しない条件はなかった」(村本道夫弁護士)、「有罪を獲得できると思ったから起訴したというよりは、(検察審査会で)起訴が議決されたから起訴した、ということ」(山本弁護士)と述べるにとどめた。

 小沢議員は起訴内容を否認しており、その秘書たちも公判で否認する見通しとなっているが、村本弁護士は「今までの(秘書たちの)供述も支えかもしれないが、それ以外の多くの事実を立証材料として考えている」と説明した。

 記者会見でのやりとりの概略は次の通り。

 ――率直なご感想を。

 大室弁護士: ようやくここまで来たのかなというのが一つと、むしろ、これから始まるんだな、という感想です。途中、なんていいますか、いろんなことがこの間ありましたけど、やっとここまで来たということで、ほっとしている。

拡大記者会見する村本弁護士(左端)ら=1月31日午後3時25分
 村本弁護士: 最初はどういうふうにいろんな作業をしていったらいいのか、よくわかりませんでしたけど、3人で論点を詰めて、一里塚にしか過ぎませんけれども、ここまで来たというのは、ほっとしております。

 山本弁護士: 起訴するというのは、一つの、大きく、かつ、重要なステップだとは思いますけども、これから裁判の本番が待っているわけで、さらにしなければならない作業も待ってますので、これからさらに気を引き締めて、頑張っていかなければならないと思ってます。

 ――東京地検特捜部が不起訴にした事案です。補充捜査をされて、証拠などに目を通したわけですが、有罪に持ち込む自信というか、有罪の部分を埋めることができたのかお聞きしたい。

 大室弁護士: 結論から言えば、私は、できたと思っております。

 村本弁護士: 私たちの職務というのは、必ずしも、有罪だと確信したから起訴するのではなくて、起訴することが法令で決まっておる。その中で、起訴しない条件はなかった、と判断したから起訴したということです。弁護士は弁護士なりに(東京地検特捜部とは)少し違った目から見れたかなという思いはあります。

 山本弁護士: 私も別に有罪を獲得できると思ったから起訴したというよりは、起訴が議決されたから起訴した、ということではありますけども、ただし、検察官の職務を行う弁護士としてこの事件にあたるわけですから、当然、検察審査会の議決に従って有罪判決が得られるよう、できるだけのことをしたいと思っております。

 ――今まで「政治的な影響に配慮しない」とおっしゃっていましたが、きょう起訴するに至った理由を教えてください。

 大室弁護士: ある程度記録に目を通した段階で、いつ頃なら起訴ができるだろうかということから、あとは、きりのいい日ということで今日という判断になった。記録を検討する中で決まってきた日程ということです。

 ――小沢さんからの借入金4億円が起訴事実に入った。起訴状に盛り込むことにしたのは?

 大室弁護士: 私たちは、起訴議決に記載された犯罪事実を起訴するようにというのが職責なので、その中で独自に我々の判断で、これはとうてい起訴できない、法律上できないというのがあれば別だが、そうでなければその通りの事実で起訴して裁判所の判断に委ねるのが職責。被告人からの4億円というのが我々独自に削ってよいものだとは理解できなかったということで、公訴事実に含めた。

 ――4億円は起訴議決を尊重するということだと思いますが、判例の検討などをした?

 大室弁護士: 法的、事実上の検討経緯は話せないが、私どもなりに検討し、私どもだけでそれを外して裁判所の判断を仰がずに終えてしまうのは今の検察審査会の強制起訴の制度の趣旨に反するという理解。

 ――公訴事実の第1は不記載と虚偽記載、第2は虚偽記載ということ?

 大室弁護士: そう。

 ――4億円の借入を10月12日頃と特定していますが、特定したのは?

 大室弁護士: 証拠に基づいてより特定できると思ったので特定した。

 ――小沢さん、秘書3人から聴取できなかったが補充捜査は十分だと?

 大室弁護士: 可能な範囲では(捜査は)尽くしたと思う。もちろん聴取要請をしてそれが実現しなかったという意味では思い通りだったとは言えないが、必要な捜査は十分にできているというふうに思っております。

 村本弁護士: 本件について私はこうふうに指定される前から、どういう事件かとても分かりにくい事件だと思っていた。こういう職責についてから、いったいどういう事件なのか記録や収支報告書を丹念に読み込んで何が行われたかを理解したいと思っていた。そういうなかで、小沢さん、秘書3人から聞けばもう少し論点が絞れると思ったが、残念ながらそれはかないませんでしたけど、補充捜査としては不足のないことができたと思っております。

 ――論点とは具体的にはどのあたり?

 村本弁護士: 基本的には今後は、検察官の役割を、裁判所で法廷で主張し立証するのが私たちの仕事なので、この場で口頭でこうだと言うべきではないと思っている。

 ――大室先生が「いろいろあった」と言いましたが、「いろいろ」というのは、石川さんが録音してたとか、大久保さんの調書の問題とか、そういうのが入りますか?

 大室弁護士: 「いろいろ」の中にはそれは入ります。本件は特異な経過というか、石川さんの問題というよりも、大久保さんの関係だろうと思うんですが、問題になった前田検事が関わった部分があったりするので、それをどういうふうに我々として評価するのかという問題も含めて、いろいろあったと。

 ――それで(起訴の)時期がずれた?

 大室弁護士: 私の中では、それで時期がずれたということはなかったように感じております。

 ――大久保さんの調書の扱いについては方針は?

 大室弁護士: 方針は決まっておりますが、具体的にどういう方針なのかはここでは申し上げかねます。

 ――職責に基づいて起訴しなければならないというご発言があったが、一法曹人として、自分たちで有罪を立証できると考えられて起訴したのか確認したい。

 大室弁護士: まず自分たちが内心どういうふうに思っているのかというのはたぶん語るのは適切ではないと思います。ただ、抽象的な言い方をすれば、私自身は、小沢氏を起訴することが法曹としての良心に恥じない、というふうには思っています。その程度で勘弁してください。

 ――検察官と少し違った目で見られたというのは、どういうふうに違った目で?

 村本弁護士: 差し障るので、公判で明らかにしたいと思います。

拡大記者会見する指定弁護士の3人=1月31日午後3時51分
 ――今回、これまでの強制起訴に比べて時間がかかった理由は?

 大室弁護士: 今までと比較したことがないのだが、このあたりのせいで遅くなったとかいう認識は持っていない。私どもとしては、十分納得いく検討を経て、その検討が終わって速やかに本日に至ったという理解でおりますので、事案の異なる他の事例との比較をされてもちょっとコメントのしようがない。

 ――小沢さんサイドが「聴取受けない」と回答してから2週間弱かかったが。

 大室弁護士: 私どもは、起訴状作成と平行して、起訴後すぐに始まるであろう公判前整理手続きに迅速に対応できるようにということでそちらの準備もしていた。なので、目立った捜査としてはほぼ終わっていたとしても、起訴後の準備のためにある程度の時間を頂いて準備を進めた。

 ――強制起訴の案件では政治家を初めて強制起訴した。相手が政治家だということ難しいことを感じた?

 大室弁護士: 相手が政治家だということで特に特別な思いというのはないだろうと思います。自分の気持ちを振り返って。

 ――政治家だから難しかった?

 大室弁護士: 政治家だから難しいというか、世の関心が強いということで、それに対する対応が難しいという感じはありましたけど、事件の処理自体に特別の感慨はございません。

 村本弁護士: 政治家の事件なんですが、ただ、これは政治資金規正法の事件。規正法固有の事実関係、問題点の洗い出し、秘書と代表者との関係等々について、私たち、ふだんあまり接することのない関係だったので、それをのみ込むまでに多少、距離があったかとは思いますが、事件の特殊性が問題だっただけで、政治家だからどうということはまったく感じたことはありません。

 山本弁護士: 私も、相手が誰であろうとそれによって何か考えるということもありませんので、今回は、被疑者、被告の方が政治家ですが、だからといってそのことを特に意識するということはありませんでした。

 ――虚偽記載の背景事情として、水谷建設の裏金について、立証方針は?

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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