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ニューズ&コメンタリー

「東電は法的処理が望ましい」「政治のリーダーシップが必要」

東電賠償問題で斉藤惇東証社長が提言

村山 治(むらやま・おさむ)

 東京電力の福島第一原子力発電所放射能漏れ事故の損害賠償を支援する政府の枠組みをめぐり、東京証券取引所グループの斉藤惇社長が「できることなら東電は日本航空(JAL)と同様の法的処理が望ましい」「政治のリーダーシップがあれば可能だ」「その結果、東電が上場廃止になっても受容せざるを得ない」などと語った。政府が東電に融資している金融機関に「債権放棄」を求めたことに斉藤社長が「異義」を唱えた真意を尋ねるインタビューの中での発言。破綻した原発中心の電力ビジネスの在り方についても聞いた。

  ▽聞き手・筆者: 朝日新聞編集委員・村山治

  ▽関連記事:   連載・東証社長の見る「市場の未来」

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 ■「法的根拠なしに経済活動に介入する理不尽」

 ――政府の東電賠償支援スキームをめぐる枝野官房長官の「銀行は債権放棄を」発言に対し斉藤さんが「思っても言わない方がいい。しっかり考えて発言すべきだ」と噛みついた、と先日、一斉に報道されました。


 政府は民間マターに対して一切介入すべきでない、とか、銀行はどんな状況でも債権放棄をしなくていい、などと言ったつもりはないのです。記者会見での断片的な言葉をとらえられて報道された。

 翌日から上海出張で現地で日本の報道を見た。「ありゃりゃ、派手に報道されてるな」と。私の発言の真意は、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が報じた「SAITO SAID ILLOGICAL(論理的におかしいと斉藤は言った)」に尽きる。


 ――枝野発言のどこが非論理的なのですか。


 非常に基本的なことですが、東電は民間会社です。政府は1株も持っていない。あれだけの事故を起こし無限に賠償金を負わされれば、普通の民間会社は、破綻です。しかし、電力事業という特殊性と原子力発電事業は国家政策として遂行してきたがゆえに、例外的に特別法で存続させる、と国として決めた。それは理解できる。私がかつて携わった産業再生機構も、基本的に似たようなスキームでした。

 ところが、政府の今回の説明は、東電には責任がある、だから徹底的に賠償してもらう、その上で、足りなければ国が面倒を見る、という。東電には一生懸命やってもらう。足らない分は税金を使う、と情緒的に言うだけで、原発補償問題などは別にしても私企業としての責任とは何であり、金銭的にはどれくらいかかるか、上限はあるのかないのかなど見通しとなる数字などを明らかにしない。

 それでも、曖昧は曖昧なりに、産業再生機構と同じような構想で、まとまったのか、と思っていたら、突然、東電に金を貸している銀行も、債権放棄は当然だ、そうでないと支援できない、という。

 支援スキームの法案を出す条件として、銀行の債権放棄に言及した。銀行がその気になったら法案を出す、という趣旨と受け止めた。


 ――銀行に債権放棄をさせる状況、ということは、市場の受け止め方としては、東電が債務超過になっていて、東電株が無価値に近いと受け取るでしょう。


 その通り。銀行の貸し金は株主権よりも優先的に保護されていますから、銀行の債権放棄という言葉が不用意に使われると、社債権者や株主は自分たちはどうなるのか動揺してしまいます。政府は、東電を、債務超過にしない前提で支援スキームを作ったのでしょ。矛盾している。

 預金者から預かった大事な金を、それぞれ千億、百億単位で貸している銀行にそれをあきらめろ、と強圧的にいうのなら、相応の検討や公開された意見交換などがあるべきです。日本にはJALのように行き詰った会社を倒産させないで再建させるための会社更生法など多くの法的処理手段が既に用意されていますが、どうも今回はこれらは使わないようですよね。

 この東電のケースでは、どういう法律、根拠にもとづいてそういうことが言えるのか、閣議では論議があったと新聞報道はありましたが、官房長官から国民には明確な説明はなかったように理解しています。

 それで、会見でそういう意見を申し上げた。最後に、「ああいうポストにいる人は、思ったとしても軽々にいうべきでない。もう少し知識人など回りの人とよく検討してから言った方がいい」とも言ったら、そこを強調されて報道された。

 

  ■東電に巨額融資をしてきた銀行にも責任の一端

 ――斉藤発言の後、東電に融資している大手銀行の経営陣からも「債権放棄」に否定的なコメントが出ました。


 銀行は、「斉藤さん、いいことを言ってくれた」と考えたのでしょうか。しかし、僕は、銀行にエールを送ったつもりはない。政府のスポークスマンである枝野さんの発言が、論理が明確でないから素直に言葉にしただけだ。

 東電に融資した銀行にも責任がありますよ。銀行は一部株主であったり債権者なのですから、いわゆるコーポレートガバナンスを働かしておく責任があります。

 1979年に起きた米国のスリーマイル・アイランド原発(TMI)事故、86年のソ連のチェルノブイリ原発事故で、原発は危ないぞ、という認識は政官財界で広く共有された。株主総会で反原発派の人たちがずっと原発の危険を訴えてきた。国会では、野党が地震で原発の冷却機能が止まり、重大事故になる恐れを指摘していた。今回はその指摘通りになった。

 銀行側に、原発に相当のリスクがあるとの認識がなかったとはいえない。それでも、銀行は多数の原発を運転する東電に、巨額のカネを貸してきたことは事実です。

 

  ■日本は独裁国家ではない

 ――斉藤さんは産業再生機構社長として経営破綻した事業会社の整理・再生を手がけた。公的資金を用意したうえで、市場の力を使って問題を解決した。今回の東電の問題も、その時の経験から見ていらっしゃるのでしょう。


 産業再生機構社長の時は、多大なる債権放棄を銀行にお願いした。ただし、それは、すべて産業再生機構法に基づいている。基本的には銀行が案件を持ち込んでくるわけですから、両者で合意の上で処理したということです。結局一時的には、国のカネを使って事業会社の債務を整理することになったわけですが、その場合も、国家権力の一方的行使ではなく、あくまでも再建案に同意してもらうという形でした。

 理論的には、同意がなければ裁判所に判断を仰がなければならないわけです。だから、こういう再建計画なので、おたくも債権を放棄してください、と全部の融資銀行にお願いした。色々困難はありましたが、銀行の了解は頂けました。機構が保証すると融資もしてくれた。結局、国民に負担をかけることなく、所期の目的を達した。

 しかし、今回の東電の支援問題は、あの段階では法的根拠の詳しい説明はありませんでした。原発事故に関する法律(原子力損害賠償法)を使うと言っているのか、普通の事業会社として何か特別のことを考えているのか解りませんでした。官房長官が「賠償は東電にやるだけやらせて、後は国がカネをいれます」と。そんな独裁国家みたいなことを言っていいのか、というのが私の受け止めだった。

 枝野発言は、「国が東電の面倒をみる」と英訳されて世界に打電された。そして、国内でも、それが東電の決算に対し監査法人が「適正意見」を出した根拠になっているかもしれない。私企業である東電を、税金を使って助けるのなら、明文法規があって、国会で承認してからやるべきじゃないのか、と思ったのです。

 枝野さん個人の問題というより、菅内閣の問題ですよ。原発事故への対応はやることなすこと場当たり的。もちろん、初めての大事故ですから、ある程度理解はしますが、それにしてももう少しちゃんとした政府であっほしい、と思います。

 何故阪神大震災時のように法案をどんどん出して処理していかないのでしょうかね。

 

  ■一連の経緯―斉藤発言、枝野反論とその他の動き

 発端は、枝野官房長官が、東電の損害賠償を支援する枠組みが閣議決定された5月13日の会見で、東電への公的資金投入について、東電に融資している金融機関が無傷のままでは「到底、国民の理解を得られない」とし、「金融機関にも当然協力いただけるものと思っている」と自発的な債権放棄を求める発言をしたこと。

 政府の東電支援の枠組みは、東電の存続が前提。賠償負担で東電が債務超過に陥らないよう、新法で設立する「機構」が資本注入。機構には各電力会社が「負担金」を納め、補償費用を業界で相互扶助する役割も持たせるーというものだ。

 金融機関が破綻した際の預金保護や公的資金の投入を担う預金保険機構がモデル。預金保険機構はの金融システム不安の火を消すのに威力を発揮した。

 政府案では、東電は事実上、公的管理下に置かれ、国が機構に出す公的資金などで賠償資金を支払い、電力業界全体で返済する。負担金は電気料金の引き上げで賄う公算が大きい。つまり、国民への負担転嫁だ。

 しかも、この枠組みでは、東電株主や金融機関の貸手責任は問われないことになり、与野党に疑問の声が出た。

 枝野発言には、そういう批判をかわす狙いがあったとみられる。

 東証グループの斉藤社長は17日の定例記者会見で、「世界的にも非常に混乱を生む。思っても言わない方がいい。しっかり考えて発言すべきだ」と枝野氏を批判。債権放棄を促した発言に法的根拠がないと指摘し、「安易に金融機関に債権放棄を求めると、バーゼルIIで自己資本強化を強く求められている銀行は東電に金を貸さなくなる。そのときは国が貸すのか。そういうことが論理立っていない」と語った。斉藤発言は外国メディアも取り上げた。

 これに対し、枝野長官は19日、「公的な目的のために国として一定の支援を行う限り、(東電は)普通の民間企業とは違う」と反論。「国民的な理解が得られなければ、国として東電を支援できない」と強調。金融機関が自発的に支援に踏み切るよう重ねて求めた。

 これに対し、与謝野馨経済財政相は20日の閣議後の記者会見で、「電力事業のような公益事業に必要なお金を貸すことに、金融機関の貸手責任が発生することは、理論上あり得ない。貸手責任が発生するのは相手に返済能力がないと分かっているにもかかわらず、そこに貸し込んだ場合だ」と枝野長官の姿勢を批判。22日は「金融機関の善意や良識に頼って、賠償スキームを作るというのは、甘いのではないか」と批判した。

 米格付け会社は「一部でも債権放棄されれば、東電を最低ランクまで格下げせざるを得ない」とした。これを受けて東京電力に融資している大手銀行は、債権放棄には応じない代わり、東電の要請に応じて、金利を優遇し、融資を継続する方向で検討に入っている。

 

  ■市場管理者としての責任、「実質破綻」の東電を上場維持するジレンマ

 ――東電の勝俣恒久会長は公の場で「東電が今の姿で存続するのは、大変厳しい状況」とか「全額東電が補償するとなったら、まったく足りない」と発言しています。経営トップ自らが「債務超過だ」と言っているようなものです。債務超過の事業会社がのうのうと上場しているのはおかしいのではありませんか。


 東証には、ああいうことになった会社をどう処理するか、はっきりしたルールがある。要は、東電の決算報告につける監査法人のコメント次第なのです。監査法人の意見には、いい順番に「無限定適正」「限定付き適正」「コメントしない(控える)」。最悪は「不適正意見」。

 「不適正意見」の場合は、東証で迅速に審査し、上場にふさわしくないと判断したら、上場廃止にしたり、監理銘柄や注意銘柄であることを周知する。それほどでない「コメントを控える」が出た場合は、東証がその企業のウオッチに入り、場合によっては、市場に「この株を取引するには注意が必要ですよ」とアナウンスもする。

 我々は監査法人の意見が出るのを待っていた。そうしたら、今回の会社法に基づく意見は「無限定適正」だった。賠償額などが明らかにならないなど経理上不透明な点があるが、考慮される範囲では適正―ということ。

 一応、「適正」意見が出ると、東証としては、上場廃止や、特設ポストに移す権限はない。我々からすると、上場維持せざるを得ない。


 ――今回の震災前の段階で東電側の純資産は2兆数千億円とされていた。賠償は数兆円規模になるでしょう。さらに原発の廃炉費用の問題もある。帳尻が合わない。常識的に見ると債務超過でしょう。東証の権限で、正確な資産内容を開示させ、投資家に知らせるべきではありませんか。


 今回は国民感情への配慮や原子力発電を推進してきた国の立場、国家財政の厳しさなど実に多くの要素が包含された対応となっているために、関係者が皆、頭を悩ます結果になっている。

 まず事故直後に政府は「債務超過はない、上場廃止はない」というニュアンスを流していますね。おそらく、国民から「何だ、民間企業の失敗のコストを全部国民に負担させる気か」とは言われたくないという政治的判断があったのでしょう。

 東電にすれば国家政策を受託して原発をやってきて異常に巨大な天災地変に遭遇したのだから1200億円という限度内保障で済ませたい。あとは全部、国に面倒見てもらいたいという気持ちが強かったと思いますよ。

 ですから、ひとつの考え方は、まず、原発関連においては東電は1200億の上限責任で、あとは国の負担だと。ただし、東電は一般民間企業として、多大なる経営やオペレーションの過失責任があった。それゆえ、最終的には、経営改革ができなかった責任も含めすべての責任は東電にあったとして会社更生法を適用する、といった裁断もあったかもしれません。

 しかし、多分、国としては財源が厳しい折、極力、東電を生かしながら、東電および全電力会社に出来る限り負担させる策を進める道を選んだ。そのためにまず、原賠法でいう「異常に巨大な天災地変」ではない、として賠償額に上限を設けないこととし、東電に負担を求めたのだと推察します。

 ところが債務超過ではない、企業は生きているが、資金はない、ということを強調しすぎると、国民から、何故銀行は負担しないのだとせめたてられる。それを恐れて官房長官の「当然銀行も負担するものだと理解する」といった論理性に欠けた情緒的表現が生まれたということでしょう。

 今回の監査法人の無限適正意見書には、その辺の苦労された文言が見えます。「賠償はすることになるが、その詳細は今後にゆだねられている」とか、「現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる」という表現などです。

 平常時において、企業が正しい情報が市場に流れないように意図的にブロックしていると認定できる場合は、我々が介入して情報開示を求めることができる。しかし、政府も株主総会の開催や有価証券報告書の提出期限などに特別の配慮をし、監査法人が現段階で会社法に基づく無限定適正意見を書いている以上、東証だけ突出しては動けない。


 ――それで、市場の規律は保てますか。


 今回は異常事態とはいえ、本当はしんどい。私の立場としては、そういう不透明な企業情報に基づいて株取引が行われるのは好ましいことではないといわざるを得ない。どうしても、博打、投機的になってしまう。外国の大口投資家はそういうことを嫌う。彼らが運用しているのは年金資金など公的性格の強いカネですからね。投資のポートフォリオに、東電株は入れられない。

 事故を起こした東電株が下落するのは仕方がないとして、問題は、震災、原発事故発生後、市場での株の取引量全体が減っていることです。

 枝野長官が「債権放棄」の記者会見をした日、きょうも低調だな、と思っていたら、午後、大量の取引が入り、銀行株が暴落した。原因は枝野発言だった。発言の中身を聞いて、これは日本の金融制度の信頼性という点からまずいぞ、と。外国なら、発言そのものが何らか批判の対象になってもおかしくない、と思った 現実にウォール・ストリート・ジャーナルは社説で厳しい批判をしている。

 政府がそういう姿勢の国の市場で株の取引はできない、と彼らは考える。枝野さんは、そういう投資家の心理を理解していない。

 原発事故をめぐる政府の対応のまずさから、東電株や他の電力株だけでなく日本の株式全体について外国人の投資意欲が落ちている。外国から、こういう国家レベルの危機が起きたときに、処理できない国だと思われている。

 これは、日本の政府の問題ですよ。外国の投資家から見ると、日本の政府の感覚がよくわからない。原発事故のような国家レベルの大事故が起きれば、普通の国は、私企業マターと国のマターをはっきり分けて問題を解決する。国、企業の両方に責任があるなら、双方で負担する。私企業マターとなれば、果断に破綻処理する。米国の象徴的企業だった自動車メーカーのGMだってその方式で処理した。透明性があるから、投資家も安心して投資できる。だから立ち直りも早い。

 

  ■「東電のコーポレートガバナンスに問題」

 ――不透明なのは賠償問題だけではありません。電力産業に巣くう産・官・学の「原子力村」と、それに支えられた原発ビジネスの不健全な実態が今回の福島原発事故で見えてきました。


 原発には、東電を中心とする電力業界・関連産業、経産省や文科省などの官界、政界、学者から経済界、マスコミまで関係者がすべてからんでいます。

 電力産業は、発電・送電・配電を地域ごとに電力会社が1社で独占する地域独占体制で成り立ってきた。90年代に電力市場は一部開放されたが、電力会社の保有する原発が、「安い発電コスト」で原発を持たない新規参入業者を圧倒。事実上の独占体制が続いてきた。

 原発導入は国策だった。そのため、政府は、電力会社が高額の原発設置費用を電力料金に転嫁することを認め、原発導入を推進した。電力会社は繁栄を謳歌し、重電メーカーも、金融機関も、広告会社も潤った。このビジネスモデルを支えてきたのが、原発の「安全神話」だった。関係する人たちは、安全神話にすがりつき、危険を見ないようして、それぞれが恩恵を受けてきた。だから、みんなに責任がある、といってもいい。


 ――誰も責任を取らない「原発運命共同体」ですか。


 東電は、原発中心のビジネスモデルに傾斜し、非原発によるビジネスモデルの模索をしなかった。あの会社は、宣伝にカネ使うのがうまい。

 労働組合も、選挙で原発周辺の自治体の首長や議会に原発賛成派を作るのに協力した。東電の株主総会には、いつも反対派の株主が出席する。その声をどうやって抑えるかが、東電にとってのリスク管理だった。原発反対の声を抑え込む代わりに、徹底的に原発の設置や運転でベスト・エフォートのリスク管理をし、それをきちんと説明すればいいのに、株主総会ではそういう説明はあまりしていない。

 東電は、コーポレートガバナンスの観点からいえば十分であったとは言い難い。


 ――日本は、ヨーロッパに比べて原発以外のエネルギー源の開発が遅れています。


 かつて、同じ原発でも、より安価で、安全な方式を提案した学者がいた。それも、できあがったビジネスモデルを壊す恐れがあるので排除されたという報道がある。

 電機メーカーのシャープは太陽光発電の研究開発で世界に先行していたが、国の援助を受けた後発のドイツに負けた。東京工大の技術でサウジアラビアは太陽光発電プラントを作っている。日本では、このためのわずか数億円の資金が集まらなかったといわれている。

 シャープが負けたのは、首都圏の送電施設を独占している東電が、高額の託送料を課すなどして競争条件を厳しくしたからではないかともいわれている。風力発電も同じ。2010年現在、中国は風力発電が4万2300メガワットなのに対し、日本は2300メガワットといわれているから、彼我の差は約20倍。日本では、電力会社が原発以外の技術を積極的に採り入れようとはしてこなかったのではないでしょうか。

 民主党政権は原発は認めつつも、そういうエネルギー政策の不透明なところ、競争排除による弊害などをえぐる政権だったはず。いまの民主党政権にはその面影もない。


 ――政府には、東電をハードランディングで処理すると、経済全体が壊れるとの恐怖感があるのでは。


 いまのような電力産業の構造と、原発中心のビジネスモデルを今後どうするのが一番いいのか、検討することが必要になるでしょう。

 発電方法は自由化し多様化した方がいい。その方が、経済全体にとってプラスになる。もちろん電気の質の統一化や安定量の確保は担保する必要はある。

 東電は、発電・送電・配電事業を一体として運営しているが、少なくとも、送電施設は切り離すべきです。そのカネを賠償原資に充てればいい。米国でも、送電施設は民間と国の共同出資によるTPPで独占的に保有しています。セキュリティの問題があるためです。そういう組織を日本でも作ればいい。

 送電施設が共通インフラになれば、原発以外の発電方法、例えば、石炭・石油や太陽光から地熱、風力などを採用した発電会社が参入できる。バイオだってある。今度の事故で原発の安全コストは膨大なものになり、それらの発電方法でも、電力会社と競争できるようになるでしょう。外国資本が来てもいい。

 小泉内閣時代、ガス会社を使って電力の自由化をやろうとしたが、結局うまくいかなかった。

 

  ■「東電の処理は金融システム危機と同じ方式で」

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村山 治(むらやま・おさむ)

 徳島県出身。1973年早稲田大学政経学部卒業後、毎日新聞社入社。大阪、東京社会部を経て91年、朝日新聞社入社。金丸脱税事件(93年)、ゼネコン事件(93,94年)、大蔵汚職事件(98年)、日本歯科医師連盟の政治献金事件(2004年)などバブル崩壊以降の政界事件、大型経済事件の報道にかかわった。
 著書に「特捜検察vs.金融権力」(朝日新聞社)、「市場検察」(文藝春秋)、「小沢一郎vs.特捜検察、20年戦争」(朝日新聞出版)、「検察: 破綻した捜査モデル」(新潮新書) 。共著に「ルポ 内部告発」(朝日新書)。

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