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ニューズ&コメンタリー

原発事故賠償4千億円計上「総額は始めてみないと分からない」

福島第一原発地下遮水壁、決算に費用計上、金額は開示せず

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 福島第一原子力発電所の事故の損害賠償について、東京電力は8月9日、初めて「3977億円」を費用として計上した四半期決算を公表した。ただし、賠償総額が最終的にどのような規模になるかは「始めてみないと分からないのが正直なところ」(西澤俊夫社長)だとしている。福島第一原発の地下水が海に漏れ出るのを防ぐ「地下遮水壁」の海側の建設費用を「災害特別損失」として盛り込んだことも記者の質問に答えて明らかにしたが、その金額の開示は拒否した。翌10日に関東財務局に提出した四半期報告書には今年3月期の有価証券報告書に引き続き「現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる」と記載された。

 

 東電は9日、第1四半期(4~6月)の決算を発表し、その中で、「災害特別損失」として1053億円を追加計上すると同時に、「原子力損害賠償費」を初めて計上し、その金額を「3977億円」とした。

 「災害特別損失」の1053億円のうち、「福島第一原子力発電所1~4号機に関するもの」として計上したのは693億円で、西澤社長によると、それには、

(1)「海側の遮水壁の設置」、

(2)「スラッジ(汚泥)がかなり出ておりますので、それの貯蔵の関連の費用」、

(3)「放射線の管理の強化を継続している、医療体制もそうですが、それにかかる費用」、

(4)「防護服やマスクの購入とかの費用とか」、

(5)「電源の増強工事にかかる費用」

が含まれているという。それぞれの金額については西澤社長は示さなかった。遮水壁については記者から質問も出たが、西澤社長は「その金額については、個別の案件については誠に申し訳ありませんがご容赦願えればと思います」と述べた。

 事故による損害の賠償の費用については、今年3月期決算では計上を見送っており、今回初めて、「3977億円」を計上した。東電によると、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が6月20日に出した「第二次指針追補」や8月5日に出した「中間指針」に基づき見積もったもので、その内訳は、

精神的損害  882億円、

営業損害 1012億円、

就労損害 1413億円、

出荷制限の指示等にかかわる費用 668億円

 

となっているという。  四半期報告書によると、これら計上したのは「中間指針等における具体的算定方法及び客観的な統計データ等に基づき合理的な見積りが可能な額」だけで、「中間指針等の記載内容や現時点で入手可能なデータ等により合理的に見積ることができない風評被害や間接被害及び財物価値の喪失や減少等については計上していない」という。そのため、「今後、更に見積りが大幅に増加する可能性があり、当社グループの財務体質が大幅に悪化し継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在している」という。

拡大決算発表の会見で、質問に答える東京電力の西澤俊夫社長=8月9日午後、東京都千代田区、松本敏之撮影

 西澤社長によると、賠償金の実際の支払いは10月に始めるが、その総額がどうなるかは「始めてみないと分からない」という。

 ――本補償の金額の規模をどのように想定されているのか。債務の認識をいつの時点でどのようにされていこうとされているのか?

 西澤社長: 9月中に申し込みを受け付けて10月中にお支払いを開始したい。中間指針にいろいろうたわれている分野が対象となる。金額については、本当に、お申し込み頂かないとそのぶんは正直言って、実際始めてみないと分からないというところが正直なところ。その中で合理的な見通しができるということで、4千億円弱を「認識」として今回お示ししたという形。それ以外については、進めてみないと分からない。

 今年3月末日時点の純資産1兆2648億円(単体)から、4~6月の3カ月間の純損失5738億円を差し引くと、6910億円のプラスとなっており、債務超過転落は避けられている。これがマイナスになると、それは「債務超過」を意味するが、東電は今後、新しく設けられる「原子力損害賠償支援機構」の「支援」を受け、これを「利益」として計上することでそうした事態を避けるつもりだという。

 東電の経理部長は記者会見で次のように述べた。

 機構(原子力損害賠償支援機構)からの受け入れについては、いわゆる「支援」をいただくということになるわけで、これは私どもが「資金を借り入れた」という位置づけでなく、今年度は「支援を受けた」ということで利益に計上する。後年度に「特別負担金」として払っていくことになりますが、それはその年々の負担費用として計上していくことになる。

 ただし、東京電力株式会社が将来にわたって事業活動を継続するとの「前提」(継続企業の前提)には東電みずから「重要な不

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、 『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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