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ニューズ&コメンタリー

オリンパス元専務がウッドフォード元社長復帰を呼びかけ

ホームページを立ち上げ社員署名集め

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 巨額不正経理問題に揺れるオリンパスで、疑惑を内部告発したマイケル・ウッドフォード氏(51)の社長復帰を求めて、元専務の宮田耕治さん(70)が声を上げ、社員の署名集めを始めた。11日、宮田さんが朝日新聞記者の取材に応じ、「世界に認められる体制でオリンパスが再スタートするにはウッドフォード氏が不可欠」と述べた。12日午前、インターネット上に「オリンパスの再生に向けて、社員が立ち上がるサイト」を開設した。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽この記事は2011年11月12日の朝日新聞朝刊に掲載された原稿に加筆したものです。

  ▽関連記事:   オリンパス窮地 買収で巨額支出 深まる謎

  ▽関連資料:   オリンパスの再生に向けて、社員が立ち上がるサイト

 

拡大宮田耕治・元オリンパス専務=11日午後、東京都新宿区で

 宮田さんらは「勇気をもって告発した元社長のウッドフォード氏こそ、信頼回復のリーダーシップをとるに最適な人物」とする呼びかけ文を作り、10日に現役社員への働きかけを始めた。12日、インターネット上に「オリンパスの再生に向けて、社員が立ち上がるサイト」をつくり、「『座して死を待つ』でなく、『行動する勇気』を」と呼びかける手紙を掲載した。ウェブサイトは、「草の根」の意味を込めて、「オリンパス・グラスルーツ」と名付けた。

 宮田さんは1995年から2006年までオリンパスの取締役を務めており、取材の冒頭、「もしその間に不正があって、それを会社として決断していたということになれば、それに関しては私はクリーンではない、責任を果たせなかったということになる」と前置きした。

 そのうえで宮田さんは「客観的に考えて、ウッドフォード氏が引き受けてくれればオリンパス復活のチャンスがあるが、それ以外の人が社長になっても世間は温かく見守ってくれないと思う」と話した。また、現経営陣がウッドフォード氏を解任した理由として挙げた同氏の「独断専行」について、宮田さんは「それはあり得ない」と否定し、「弊社経営陣による事実無根の名誉毀損が行われたことについて彼におわびしたい」とした。

 宮田さんは1965年にオリンパスに入り、長年にわたって内視鏡部門を担当した。父親も専務を務め、親子2代で延べ86年、同社に勤務したことになるという。80年代に、英国の代理店の幹部だったウッドフォード氏と知り合い、以前から「自分がよって立つ座標軸、原理・原則が強靱な人物」と同氏を評価していたという。

 ウッドフォード氏はその経営手腕を買われて今年4月にオリンパス社長に就任したが、今夏以降、1千億円を超える不明朗支出を社内で追及。先月12日夜、菊川剛・前会長らに辞任を迫ったところ、14日の取締役会で社長を解任された。高山社長ら現経営陣は「不正はない」と主張していたが、今月8日、巨額の損失隠しを認め、ウッドフォード氏の追及の正しさが裏付けられた。

 記者の質問に対する宮田さんの主な返答は次の通り。

 ■希望的観測から行動を見送っていた

 ――今回の疑惑について7月発売の月刊誌「FACTA」8月号で報じられたときにどう受け止めましたか?

 FACTA自体は読んでないんですけど、そのFACTAの記事を読んだ友人から、「こんなことが書かれているが、お前、なんか知ってるか?」と尋ねられ、知りました。

 あの当時は、「もしかしたら本当だろうか?」と思いましたけれども、やはり「そんなはずがない」という気持ちが強く、また、「そうであってほしくない」という希望的な思いも強かったです。

拡大宮田耕治・元オリンパス専務

 私は1995年から2006年まで取締役を務めています。もしその間に不正があって、それを会社として決断していたということになれば、それに関しては私はクリーンではない、取締役としての責任を果たせなかった、ということになります。まず、そのことを申し上げておかなければならないと思います。

 FACTAの記事が出たとき、私は、「もしかしたら本当だろうか?」と思いつつも、「そうでなくてほしい」という気持ちから行動を起こすのを見送っていました。ところが、ウッドフォード氏だけはそうではなかった。万が一の可能性を危惧して行動を起こしたのがウッドフォード氏ただ一人だった。それが私は一番恥ずかしいですね。

 ■ウッドフォード氏は日本を愛している

 ――そうこうするうちに10月14日にウッドフォードさんが社長を解任されました。そのときはどう思いましたか?

 10月1日付でウッドフォード氏がCEO(最高経営責任者)になったということがオリンパスのサイト(インターネット上のウェブサイト)に出ました。それがどういうわけだか英語でしか出なかったんですよ。そのグローバルサイトに出されたオリンパスのコメントの中で、菊川会長がウッドフォード氏の業績をほめている。「極めて満足している」と。で、当然、肯定的にそういうこと(CEO昇格)が行われたんだろうと思ったんですよ。解任はそれからたった2週間ですよ。理由としては「日本の文化を理解しなかった」と言われている。私は、これはちょっと理解しがたい。

 私はいろんな外国を知ってますけれど、ウッドフォード氏というのは、ただ日本をべたべたと好きになるだけじゃなくて、日本人の弱さ、日本がこれから直面するだろういろいろな問題点を理解した上で、非常に日本が好きなんですよ。これは間違いなくそうだと思うんですね。だからあの「ウッドフォード氏が日本の文化を理解しなかった」というあの解任の理由が今でも私はまったく信じられない。高山社長もいろいろな点を挙げられてたんですけど、私はもう全くそれは信じられません。ウッドフォード氏に限って、ああいう誹(そし)りを受けるというのはあり得ないことだと思いますね。

 これからお話しするあることをやろうと思いたった大きな理由は、やっぱり彼(ウッドフォード氏)に対する謝罪というか、あの、こう、そういうこと(「日本の文化を日本の経営の中では生かさなければならないということをウッドフォード氏が理解しなかった」という現経営陣の主張)が本当に真実だというふうに人々がもし理解しちゃったらですね、これは、オリンパスが上場廃止になるとか会社が存続できないとかそういうことは全然別に、やはりそれはまずい。そう思ったんです。

 ■よって立つ座標軸が強い人物

 ――ウッドフォードさんと宮田さんは実際に一緒に仕事されたり個人的な関係というのは?

 彼とは非常に長い付き合いで、最初に彼と会ったのはウッドフォード氏がKeyMed(英国におけるオリンパスの代理店)の営業担当のマネージャーだったときだったと思いますね。私がアメリカに駐在してまして、たしかブラジルのリオデジャネイロで世界内視鏡学会というのが開かれて、そこにイギリス代理店からウッドフォード氏がその当時のイギリスの社長と一緒に来てたんですよ。そのときに私はそのイギリス代理店の社長、創業者なんですけど、その彼がそのときに、「私の後を継ぐのはこの男だ」と、そう言って紹介してくれたんですね。そのとき、たしか彼は25歳か26歳だったと思うんですよ。そのときにその代理店のの創業者がなぜ彼(ウッドフォード氏)を後継者に選んだか説明してくれたんです。次のように言っていました。

 「世の中にはたくさんのグッドナンバー2と、それから、ほんのごくわずかのグッドナンバー1がいる。で、グッドナンバー2とグッドナンバー1っていうのはこれは全然違う人間で、グッドナンバー2がグッドナンバー1になるケースはほとんどない。だから私は後継者を選ぶときは、最初からグッドナンバー1を選び、それに教育をするんだ」

 そのときからずっとウッドフォード氏とはいろいろな関係で、付き合ってます。

 ――当時はまだKeyMed社は、オリンパスの英国の代理店ではあっても、オリンパスの子会社ではなかったころですか?

 なかったんです。独立した会社です。

 ――オリンパスの内視鏡を売る営業代理店だった?

 そうですそうです。そういうことですね。

 ――その後、オリンパスの子会社になるわけですよね?

 そうですね。ある時期に思いきって全部買い取って子会社にしたと。そういういきさつです。

 ――ウッドフォードさんとはそれ以来ずっとお付き合いされてて、その人柄とか仕事ぶりをよくご存じということかと思いますが、どんな人ですか?

 特に感じたのは、今回のこともそうなんですけれども、彼の何ていうんですか、自分が立つ座標軸、それの強靭さっていう、自分という人間のそのほんとに「もと」になるもの、それが極めて強いんですよ、強靭なんです。周りの意見がどうのこうのじゃなくて、要するに、自分の持つプリンシプル(原理・原則)、それに対して常に、それに対するスタンスがつくづく強靭なんですね。

 で、それがあるからだと思うんですけど、みんなの意見がどっちかに流れるといったときに、それに対してやっぱり健全な猜疑心を持ってると思うんです。

 ■信じられない自己犠牲で内部告発

 今回のこと(疑惑の追及)をやろうとしたときに、必要な勇気とそれから執念というか、必要とされるそういう素質を考えると、なかなか、ふつうの人には、できることではなかったなというふうに思います。

 それと、解雇された後、彼がやってること(報道機関や捜査当局への内部告発)ですね、あれは、私が見てもちょっと信じられないくらいの自己犠牲です。

 彼にとっては、その場で(疑惑の追及を)終えて、もう、こんなことをやめて、いい生活を送ったほうがいいわけです。そういう選択肢はあったわけですよ。それをやらずに、たくさんの人とインタビューした。

 あれだけのことをやる動機は何か? それは決して金銭的な見返りでもないし、それから、自分の名誉を晴らそうとか、汚名を晴らそうとか、あるいは、だれかに対して「許せない」とか、そういうレベルのことじゃないと思うんですね。そうではなくて、先ほど申し上げた、自分のスタンスが非常に強靭であるということと、それから正義心、それとやっぱり、彼は日本を愛していると思います、そういうことがない限り、あれだけのことはできなかったと思いますね。

 で、それに対して、じゃあ、ウッドフォード氏以外の人はいま何やっているかっていうことなんですけど、結局、一つはショック状態に陥ってしまって、あれよあれよという間に、流されちゃっている。私も含めて。だけど彼があれだけ頑張ってくれてる間に、このまま、もしも何にも起こらなかったら、なんていうんですかね、チャンスもないまま、消えていってしまう。

 いまは、当然起こるべきことが起きてないと、そういう状態かもしれません。いつだれが何をしなきゃいけないかっていうことは、分からないんですけど、少なくとも自分のできることが必ずあるはずと考えました。ウッドフォード氏がここまで頑張ってくれてる間に、どうしてもやらなきゃいけない。そう思います。

 大きくわけて2つ起こらなきゃいけないことがあると思うんです。

 ■ウッドフォード氏の社長復帰なら生き残りにチャンス

 一つは、やはりオリンパス社内から自然に湧きあがってくる「なんとかしなきゃいけない」っていう声。それともう一つは日本の株主の行動。日本の株主が健全な資本主義の下での当たり前の行動をやるべき時期に来ていると思う。後者については、とりあえず今はその具体的な方法が思いつかないんですが、前者については、やってみようと。オリンパスの社内の声を起こす。

 具体的には、「ウッドフォード氏こそ、信頼回復のリーダーシップをとるに最適な人物であると、私たちは考えています」という書面に賛同して署名する人を募ってもらってます。

 その文面のポイントは2つあります。

拡大インタビューに応じる宮田耕治・元オリンパス専務=11日午後、東京都新宿区で

 一つは、ウッドフォード氏に対する今までのオリンパスの行為について詫びたいというのが一つ。

 それからもう一つは、このまま黙って死んでいくのは嫌だ、ということ。ここまで会社が傷つきましたから、これを、実際に世界が認めてくれる体制で再スタートしなきゃいけないんですけれども、客観的に考えて、チャンスがあるのは、ウッドフォード氏が戻ってきて指揮をとり、本来のオリンパスの底力をもう一度復活させるというときだけです。これは、ウッドフォード氏がそれを引き受けてくれれば、私はチャンスはあると思います。それ以外(ウッドフォード氏以外)の人が出ても、社内ではもしかしたらそれで底力が出るかもしれないけれども、世間はその単純にそれでまあ、温かく見守ってくれると、そういうふうにはならないと思うんですよね。

 オリンパスがもし、投資家から見放されず、それから融資先から見放されず、残れるとしたら、それはただ一つ、内視鏡事業が致命的に傷つかないということが条件になると思うんです。たしかに、こうやって世間を欺いた金額は巨大ですから、ちょっと途方に暮れるんですけど、私は、内視鏡事業が持っているキャッシュフローだとか、いろいろなことを考えて、また、それから、今までできなかった思い切った改革も今ならばできますから、ここまで来れば、株主と融資先が見放さなければ、これは可能性は十分あると思います。

 オリンパスのどん底から這い上がる努力を、世の中に認めてもらえる形で、始めるっていうことがない限りは、私は一定の時間内に、お客に見捨てられると思います。世界で70パーセントのシェアを持つというのは立派なことですけれども、それ相応のやはり反発がありまして、それから虎視眈々と狙ってる会社はたくさんあると思うんですね。ですからその許された時間というのはそんなに長くはないと思います。

 ■どん底から這い上がるときこそ

 ――客観的に考えてその「世界が認めてくれる新しい体制で再スタート」というのは、ウッドフォード氏に戻ってもらうということしかないんだろうと思っているわけですか?

 もともとウッドフォード氏はそれを期待されて社長に就任してるわけですよ。こういう不幸なことがあって、途中で頓挫しちゃったわけですけれども、オリンパスが持ってるウッドフォード氏に対する期待っていうのはもともとあるんです。それ(4月のウッドフォード氏の社長就任)に対して日本の株主も世界の株主も非常に好意的に見てくれてたと思うんです。で、ウッドフォード氏が期待されたことっていうのは「オリンパスを真のグローバルカンパニーにする」ということでした。じゃあ、以前は真のグローバルカンパニーじゃなかったのかって言われれば今となってはそうだとしか言いようがないですね。

 で、真のグローバルカンパニーっていうのは、私は、モノづくりが一流で、かつ、経営が一流と、その2つがそろわなきゃだめだと思うんです。で、「モノづくりの一流」っていうのは私は死んでないと思います。ただ、このまま放置すれば、それもダメになってしまう可能性もありますけれども、どん底まで落ちて、そこから跳ね返す力っていうのは、十分期待できると思います。もう一つの「経営が一流」というところがですね、一流のふりをしてた、それが図らずもこうやってここに出てしまった、その出方がまた強烈だった。ですけど、冷静に考えてみれば、半年前にオリンパスの経営陣が決断をして、ウッドフォード氏を社長に就任させたのは、それまでの常識では考えられなかったことですから、僕は、よくやったと思います。彼が復帰してくれればですね、あのときの、非常に前向きなエネルギーっていうのは期待できると思いますね。

 それからもう一つは、ウッドフォード氏が4月

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
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