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ニューズ&コメンタリー

オリンパス箝口令 オリンパス現役社員ら「事件の話はタブー」

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 損失隠し事件に揺れるオリンパスの現役社員が12月24日、報道各社の取材に応じ、「社内では事件の話はタブーになっていて、批判的なことを言えない雰囲気になっている」と語った。テレビやラジオの番組に登場して「会社の体質が問題」などと発言した別の現役社員は、会社側から「当社を誹謗した」と批判され、「そのような発言は控えるように」と求められている。損失隠し事件を調査した同社の第三者委員会は事件の背景として「風通しが悪く、意見を自由に言えない企業風土」を指摘したが、この指摘の後も箝口令は続いている。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽この記事は2011年12月25日の朝日新聞朝刊に掲載された原稿に加筆したものです。

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拡大オリンパス本社の入る高層ビル「新宿モノリス」=東京都新宿区西新宿2丁目で

 ■もの言えぬ社風、変わらず

 24日に匿名を条件に国内外の報道5社のインタビューを受けたのは、東京・西新宿の本社で勤務する40歳台後半の中間管理職。「早く解決しないと、顧客も社員も信頼も失い、日本経済への不信も呼んでしまう」と危機感をあらわにした。

 次の株主総会で選ばれる新しい経営者について、この社員は「一点の汚れもない人で、かつ、これまでもオリンパスに貢献してきた人がいい」と述べた。社内では、そうした意見を表明する場がなく、事件の話題は避けて「触らぬ神にたたりなし」という雰囲気になっているという。

 オリンパス本社では11月中旬以降、「マスコミの取材は広報・IR室に一元化しておりますので、個人としての対応はされないように」と社員に呼びかけているが、この社員は「SOSを発信しなければいけない」と考えて、あえて記者に会うことにしたという。

 営業の現場で働く30歳台の社員も同じ日、損失隠し事件について「ふつうは話題になると思うのですが、本社の人間と話しても、その話にならない」と記者に語った。「ランチでも喫煙所でもタブー」だという。

 ■「当社を誹謗」と社員を批判

 「近時、テレビ、ラジオ番組等において当社を徒(いたずら)に誹謗する発言をしているようですが、そのような発言は控えるよう……」

 同社社員の浜田正晴さん(51)は20日、そんな文面の書面を受け取った。会社の代理人として7人の弁護士が名を連ね、就業規則を根拠に発言を差し控えるようにと浜田さんに求めている。

 企業倫理に反すると思われる上司の行動を会社のコンプライアンス室に内部通報したのは2007年のこと。直後、畑違いの部署に異動させられた。異動を無効とすることなどを求めて会社を相手に提訴。今年8月末の東京高裁判決では会社の人事権乱用が認められ、全面勝訴した。ウッドフォード元社長の内部告発で不明朗な資金流出の疑惑が10月に発覚して以降は、「勤続25年の現役オリンパス社員」として国内外の報道機関の取材が殺到している。

 物言えぬ社内について、浜田さんはNHKの番組で「逆らうと自分がどうなるか分からないと怖がっている社員がいっぱいいる」と紹介。FM東京の番組では「閉鎖的な社会」と指摘し、自身の境遇について「干されている」と発言した。会社側の申し入れについて、浜田さん側は「裁判の話もしたらいけないのか」と憤る。

 ■「次の人事異動に影響」との情報

 元オリンパス専務の宮田耕治さん(70)は11月12日、インターネット上に「オリンパスの再生に向けて、社員が立ち上がるサイト」を開設してウッドフォード元社長の復帰を訴え、現役社員に賛同を呼びかけ始めた。翌13日には、了承の得られた39人の賛同者の実名と所属部署を公開した。

 14日未明、20歳台のある若手オリンパス社員は、就寝直前の布団の中でスマートフォンの画面上にツイッターを呼び出し、いつものように「オリンパス」の単語で「つぶやき」の数々を検索した。すると、宮田さんのウェブサイトを紹介する書き込みが目に入ってきた。サイトにアクセスすると、そこでは宮田さんが「『座して死を待つ』ではなく、『行動する勇気』を」と呼びかけていて、賛同者の名簿が掲載されていた。若手社員はそれを見て「人数が少ない」と思ったという。

 若手社員によれば、自分もこれに加わろうと考えたが、賛同者として自分の実名が公表されてしまっていいのかどうかについては迷った。「実名を出したらどうなるのだろうか?」。心臓がドキドキして寝付けなかった。浜田さんの事件のことも知っていた。「怖い」と思った。しかし、匿名では効果が上がらないだろうとも考えた。多くの人が実名を出して賛同しているということが外部にアピールされることで初めて効果が出てくる。布団の中で2時間ほど悩んだ末に「本名で記載を希望する」というボタンを押した。自分個人の損得は考えなかった。

 翌15日、高山修一社長は社員へのメッセージの中で、「元役員OBによるネット上の運動が始まっていますが、このような“雑音”に惑わされることのないようにしてください」と宮田さんの行動を切り捨て、「職制を中心に現場で1つにまとまってください」と社員に求めた。

 12月に入ると、「今回の署名に参加した者の氏名はオリンパス人事で掌握されており、次の人事異動ではこのための何らかの影響がくだされる」と上司から言い渡され、「裏切り者」のように扱われた人がいるという情報が宮田さんのもとに寄せられた。宮田さんは「正しいと思ったことを行動に移す、そのことに必要以上の勇気と代償が求められる今の社風は、何とか変えてゆかねばなりません」とコメントした。

 オリンパスの広報・IR室は取材に対し、「人事異動への影響」の言い渡しについて「事実確認ができない」と答え、「裏切り者」扱いについては「そのような現状はないと認識している」と回答した。

 若手社員はいま、同

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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