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ニューズ&コメンタリー

オリンパス臨時株主総会、木本会長を選任、反対33%余 《詳録》

ウッドフォード氏ら取締役選任動議は「否決」

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 1千億円余の粉飾決算で揺れるオリンパスの臨時株主総会が20日、東京都内で開かれ、木本泰行・元三井住友銀行専務、笹宏行・オリンパス執行役員らを取締役に選任する会社の提案を原案通り可決・承認した。木本氏の選任には33.73%の反対があった。不正経理疑惑を社内で追及したところ逆に社長を解任されたマイケル・ウッドフォード氏や、企業倫理違反と思われる上司の行動を内部通報した現役社員・浜田正晴氏を取締役に選任するよう求める動議も出されたが、受け入れられなかった。また、ウッドフォード氏の社長解任に関する同氏の質問に対し、会社側は回答を拒否。ウッドフォード氏は「会社法314条の説明義務に違反しており、株主総会の取り消しを求める法的手続きを真剣に検討する」と表明した。

  ▽筆者:奥山俊宏

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拡大オリンパスの臨時株主総会の会場=同社提供、一部加工
 午前10時、東京都千代田区紀尾井町のホテルニューオータニ「鶴の間」でオリンパスの臨時株主総会は始まる。

 冒頭、高山修一社長が「当社の過去の損失計上の先送り等に係る一連の問題により、株主の皆様には多大なるご心配とご迷惑をお掛けしておりますことを、役員一同、この場でお詫び申し上げたいと存じます」と謝罪する。

 10時の時点での来場者数は825人(うち役員が28人)。過去最多だった昨年6月29日の株主総会の280人(うち役員が38人)を上回る。が、事前に用意された第2会場を使わなければならないほどの人数には達せず、会場には空席も目立つ。

 議長を務める高山社長が原稿を読み上げて、損失隠し発覚以降の経緯と対策を説明する。「コンプライアンス体制の見直し」の中では、「内部通報制度を拡充します。内部通報窓口の社外設置など通報窓口を整備・拡充し、また、不正を知った者の内部通報義務を明確化します」と述べる。

 オリンパスでは、現役社員・浜田正晴氏、元社長マイケル・ウッドフォード氏による内部通報をめぐって、会社側の対応が問題視され、日英で訴訟となっている。同社が設けた第三者委員会の報告書でも「内部通報制度本来の機能(不正に関する社内自浄機能)は著しく損なわれていた」と指摘されている。こうした批判に応えた「制度拡充」だが、「内部通報義務」については、社外への内部告発を萎縮させる一方、会社側の対応によっては、問題意識を持つ社員をあぶり出す効果があり得るため、公益通報者保護法に抵触する恐れが以前から議論されている。

 午前10時47分、株主から事前に書面で寄せられた質問に対する会社側の回答の読み上げが始まる。

 鈴木正孝取締役:複数の株主さまから事前に書面をもって質問をいただいておりますので、そのうち、多くの株主さまがご関心をお持ちであろうと思われる質問事項について、あらかじめ、まとめてご説明を申し上げたいと思います。

 まず一点目ですが、ミスター・マイケル・ウッドフォードの代表取締役社長執行役員ならびにCEO等の解職の経緯について、当社として重大な不正行為、いわゆるGross Misconductを理由とした正当な解職として認識しているのか、そうである場合、重要な不正行為の具体的内容は何か、ということについて各取締役候補者、各監査役候補者から説明をしてほしいというご質問でありますけれども、この点につきましては、まず、各取締役候補者からご回答申し上げるべき事項ではございませんので、私のほうからお答えをさせていただきます。

 ご質問の内容は、会社とミスター・ウッドフォード氏との間の契約上の文言の解釈の問題でございますけれども、これに関連して、当社とウッドフォード氏との間では現在、英国の労働裁判所において不当解雇を理由とする審判手続きが継続中であり、回答の内容は当社の、私どもの主張・方針とも関係するものであり、審判自体に影響を及ぼす可能性がございますので、この場でのご説明は差し控えさせていただきたいというふうに思っております。なお、当社の主張につきましては、審判手続きの中で明らかにしてまいりたいと考えております。

 次に2点目ですが、当社の内部通報制度に不備があるのではないかという趣旨の質問がございます。この点につきましては、第三者委員会の報告書において、これまで社外通報窓口が当社に存在しなかった点、これが適切ではなかったとのご指摘をいただいております。そこで当社としては現在、社外に通報窓口を設置することとして現在、法律事務所にその業務を委託する手続きを進めているところでございます。

 3点目でございますが、ジャイラス社の「のれん代」の扱いについてさらに減額処理をする必要があるのではないかとの、そういったご質問をいただいております。(中略)いま残っております「のれん代」はジャイラス社の企業価値ということになります。同社の企業価値自体は、手数料を除いた買収価格を十分上回っておりますので、現在「のれん代」として計上されたものは正しく会計処理が行われたものと思います。

 4点目でございますが、金融機関出身の取締役候補について、株主よりも債権者の利益優先の経営にならないかというご趣旨の質問でございます。この点につきましては、取締役候補者はこれまでの業績、実績、人格、見識等にかんがみまして、株主をはじめ当社のさまざまなステークホルダーの利益を総合的に考慮して、公平かつ誠実に職務にあたっていただける方々であると考えております。銀行出身者のかたであっても、取締役としての善管注意義務、忠実義務を負っており、特定のステークホルダーの利益を優先するということはできません。また、取締役会は過半数の社外取締役で構成されておりますので、一部の利害関係者の利益のみを重視する経営は困難であると考えております。

 

 午前10時56分、質疑が始まる。高山社長によって質問の数は一人あたり2つに制限される。11時の時点での入場者数は966人。

 午前11時13分に質問を始めた男性株主は「なぜ菊川氏に対する請求がわずか36億円に過ぎないのか」と質問する。損失隠し事件で起訴された菊川剛・元社長を相手取ってオリンパスは損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしている。会社の取締役責任調査委員会の報告書では、菊川元社長の行為によって会社が損害を被ったり会社から流出したりした金額は859億1047万円とされているが、菊川元社長を相手取った訴訟の中では会社はそのうち36億1千万円に請求額を絞り込んでいる。菊川元社長の支払い能力を考慮した絞り込みだとみられるが、その妥当性についてこの株主は問うている。その株主はそれに続いて、「動議として、マイケル・ウッドフォード氏、および、浜田正晴氏を取締役として推薦いたします」と述べる。拍手が起きる。その株主が動議の提案理由を説明する。

 男性株主:理由として、銀行にも(粉飾決算を見逃したことの)一定の責任があるというべきです。銀行のかた(銀行出身の取締役候補者)が適切に追及するとは思えない。一番適任は(粉飾決算を見逃さなかった)マイケル・ウッドフォード氏ではないかと思うわけです。

 彼は内部通報者でもあるわけです。内部通報者がこのようにクビになる、不利益を受けるということになると、内部通報制度をいくら作ってもまったく機能しないわけです。内部通報者が保護されるという前例をつくるべきであります。第2の理由であります。

 浜田正晴氏についても同様ですね。内部通報者として一定の保護をすべきである。また、内部通報をしたということはたいへん正義感が強いかたでありますので、コンプライアンス担当の役員としてたいへん適切だと考えるわけであります。

 以上の理由から浜田正晴氏およびマイケル・ウッドフォード氏を役員として推挙します。動議です。

 

 菊川元社長への請求額については鈴木取締役が、動議については議長の高山社長が答える。

 鈴木取締役:菊川氏に対する損害賠償額が36億円で十分なのかというご質問だと思いますが、私ども、この一連の取締役責任調査委員会の報告を受けまして、それに基づいて損害賠償請求をさせていただいております。請求額の合計は36億円1千万円。ご本人にさらに支払い能力があるということになれば(請求の趣旨を)拡張するということは当然ございますので、粛々対応させていただきたい、と考えております。


 高山社長:動議について、ご説明をさせていただきます。ただいま第6号議案「取締役11名選任の件」につきまして会社提案の候補者に加えて、マイケル・C・ウッドフォード氏、および、当社の浜田氏の2人を候補者として追加すべき、という動議が提出されました。この動議につきましては、株主の皆さまにご審議いただいた上で、後ほど原案と一括して採決させていただきます。

 

 高山社長に指名された株主が次々とマイクを握って質問する。一方で、会場には、大きな声で怒鳴り続ける男性株主がいて、マイクを通さなくても、その声が響きわたっている。

拡大オリンパスの臨時株主総会に臨む、元社長のマイケル・ウッドフォード氏=20日午前、東京都千代田区、遠藤真梨撮影

 午前11時45分、高山社長は「あっ」と驚いたような声を一瞬上げた後、「それでは1番の赤のマイケルさん、どうぞ」と質問者を指名する。「マイケル」は、ウッドフォード元社長のファーストネームだ。

 昨年6月に開かれた前回の株主総会では、マイケル・ウッドフォード氏はオリンパスの社長として壇上にいた。が、今回は1人の株主という立場。ウッドフォード氏が英語で質問を始めると、親友の在日米国人、ミラー和空氏が通訳を務める。ミラー氏はオリンパスの株主でもある。

 ウッドフォード元社長:2つ、高山さんに短い質問があります。

 第一の質問です。鈴木さんは、我々の事前質問に対して、私の契約の文言の解釈が係争中であることを理由に回答を拒否されました。回答することによって株主の共同の利益を著しく害する恐れがあるとのお考えだと思われますが、これは明らかに事実に反し、間違ったものです。

 「回答により株主が得る利益に比べて、回答により会社ひいては株主が被る不利益が著しく大きい」と言える場合以外は、会社はそのような理由で回答を拒否することができないことになっています。これは、オリンパスの顧問弁護士だった宮谷先生などの研究で裏付けられている事実です。

 今回の一連の不祥事により既に何千億円もの損害が株主に生じています。そして、われわれ株主がオリンパスの再生を委ねる最適な役員を選ぶに際し、取締役候補のかた一人ひとりが今回の不祥事をどのように受け止め、理解しているかという情報は極めて重要な情報であることは明らかであり、一つの裁判で会社がどの程度の損害を求められるかなどとは全く比較にならないほど株主にとって利益になる情報であることは明らかです。

 我々の事前質問に対して説明を拒否した場合、取締役は会社法314条の説明義務に違反することになります。高山社長に、真摯に我々の事前質問に回答いただけるようにお願いいたします。もしそれでも回答を拒否される場合には、違法な株主総会の進行となり、この臨時株主総会そのものの取り消し原因になることは明らかです。

 したがって、ぜひとも私たちの質問にお答えください。

 明確な表現でお願いします。

 

 高山社長:はい、ただいま、ウッドフォード……


 ミラー氏:それが一つの質問で……


 高山社長:はい、一つ目、はい、はい……

 

 会場では、別の株主が「長いわな」などと怒鳴っている。それを受けて、高山社長が「そうですね、ちょっと長いので

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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