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ニューズ&コメンタリー

東電福島第一原発事故で勝俣元会長ら「起訴相当」検察審査会議決要旨全文

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 福島第一原発の事故で周辺病院の入院患者らを避難の途中に死亡させたなどとして、東京電力の元役員6人が業務上過失致死傷の疑いで刑事告発された事件で、東京第五検察審査会は23日、このうち4人の不起訴を不当とし、さらにこのうち勝俣恒久・元会長ら3人について「起訴相当」とする議決をし、31日、議決の要旨を公表した。福島第一原発1、2、4号機は2011年3月11日に高さ13メートルの津波に襲われて全電源を喪失したが、その3年余り前の2008年2月に、勝俣氏も出席した東電社内の打ち合わせで「14メートル程度の津波が来る可能性があるという人もいる」との発言があったことなどが議決の要旨で明らかにされた。

拡大掲示板に張り出される検察審査会の議決書=31日午前11時30分、東京・霞が関、時津剛撮影
 「不起訴不当」とされたのは勝俣元会長のほか、武藤栄、武黒一郎の両元副社長と小森明生元常務。このうち、勝俣、武藤、武黒の3氏については「起訴相当」とされた。4人については検察が改めて捜査し、勝俣元会長ら3人については再び不起訴になっても、検察審査会の再度の議決で強制起訴される可能性がある。鼓紀男元副社長と榎本聰明元副社長は「不起訴相当」となった。

 東京第五検察審査会が判断の根拠として重視したのは、政府の地震調査研究推進本部(推本)が2002年7月31日に公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」。推本はその中で、マグニチュード8クラスの津波地震が福島県沖を含む日本海溝近辺で今後30年以内に発生する可能性が20%程度あると予測していた。

 東電は当時、土木学会の津波評価部会の「原子力発電所の津波評価技術」に基づく想定で原発の安全対策を決めていたが、推本の「長期評価」はそれを抜本的に覆す内容だった。しかも、2004年5月、土木学会の津波評価部会で研究者らにアンケートしたところ、土木学会の「津波評価技術」よりも、推本の「長期評価」を支持する意見のほうが多かった。検察審査会は、

 推本は、地震予測に関し、日本で権威を有する機関であり、その予測は科学的な根拠に基づくものと考えられ、当然、推本の長期評価は最新の知見として取り込むべきものである。

と断定している。

 議決要旨によると、東電の土木調査グループは、国の新耐震指針(2006年)に照らした耐震バックチェック(安全性再評価)の最終報告の中で推本の「長期評価」をどう取り扱うべきか、2007年11月ころに検討を始めた。2008年2月、東電社内で、勝俣会長(当時)らが出席して「中越沖地震対応打合わせ」が開かれ、参加者から「14メートル程度の津波が来る可能性があるという人もいて、前提条件となる津波をどう考えるか。そこから整理する必要がある」との発言があった。これに対し、原子力・立地本部長だった武黒副社長(当時)は、福島第一原発と同様に太平洋岸にある東北電力の女川原発や日本原子力発電の東海第二原発に触れて、「女川や東海はどうなっている?」と質問した。同年3月に開かれた「中越地震対応打合わせ」では、耐震バックチェックの中で推本の「長期評価」を「考慮する」との方針が了承された。

拡大東京第五検察審査会の議決の要旨が18枚のA4判の紙に記載され、裁判所の掲示板に張り出された=7月31日午後、東京・霞が関で
 同月、東電は、過去に日本海溝近辺で実際に発生した明治三陸沖地震(1896年)が福島県沖で起きたと仮定した場合の福島第一での津波の高さを試算した。それによると、その津波の水位は、福島第一原発の南側(海抜10メートル)で15.7メートルに達すると試算された。原発の敷地の高さ10メートルを上回っており、原子炉建屋が浸水し、全電源が失われることが当然に予想できる結果だった。同年6月、吉田昌郎・原子力設備管理部長の指示で、この試算が、原子力・立地副本部長だった武藤氏に報告された。

 すると、同年7月、武藤氏と吉田氏は

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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