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ニューズ&コメンタリー

公益通報者保護法の改正の方向性を示す 消費者庁の検討会

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 公益のために組織の不正を内部で通報したり外部に内部告発したりした人を法的に守ろうと10年前に施行された公益通報者保護法について、消費者庁は3月30日、法改正を提言する有識者検討会の第1次報告書を公表した。違反事業者への制裁を制度化して法の実効性を高め、また、保護の対象範囲を広げる方向を打ち出した。今後、刑法や会社法の専門家を入れて、詳細をさらに検討し、来年以降の改正を目指す。これに先立つ3月22日朝、河野太郎・消費者相は閣議後の記者会見で「必要なら法改正をやることも視野に入れて、前向きにきちっと(通報者を)保護する必要がある」と述べ、所管の大臣として改正に従来以上に前向きな姿勢を示した。

拡大消費者庁の検討会の第10回会合=3月22日午前9時59分、東京・霞が関の中央合同庁舎第4号館共用第2特別会議室で
 公益通報者保護法は小泉政権下の2004年に経済界も賛同して制定され(注1)、2006年4月1日に施行された。付則で施行5年での見直しが政府に義務づけられており、所管の消費者庁が2010年から検討を続けてきた。昨年6月、内部告発をした経験のある串岡弘昭さんや現役の調査報道記者、井手裕彦・読売新聞大阪本社編集委員らも委員に入れて「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」を設け、3月22日にかけて計10回の会合を重ねてきた(注2)

 ■内部通報制度の充実を後押し

 報告書はまず「第1.民間事業者の取組の促進」として、組織の不正を見聞きした現場社員の声を社内で吸い上げて企業統治に生かす「内部通報制度」を取り上げて、その現状を分析した上で、その整備と充実に関する規定の新設など「法制度上の手当て」を検討するべきだと結論づけた(注3)

 内部通報制度は、職場の部下から上司へという「通常の報告ルート」とは別に、2001年ごろから「企業倫理ホットライン」「コンプライアンスヘルプライン」などの名称で大企業を中心に導入されるようになった。2004年制定の公益通報者保護法はこうした動きを後押しし、現在は、大企業の大半(注4)、中央省庁や都道府県のすべて(注5)が内部通報制度を導入している。

 しかし、現行の公益通報者保護法には内部通報制度に関する規定がない。また、制度があっても形ばかりとなっていた事例が、オリンパス、東洋ゴム工業、東芝などで相次いで発覚した。

 オリンパスでは、内部通報制度を利用した社員を営業職から外して畑違いの部署に左遷し、最高裁でその非を指摘する判決が2012年に確定した後も、是正しなかった。東洋ゴム社内では、内部通報を生かすどころか、逆に、内部通報によって偽装が公になる「リスク」を想定し、「通報者の想定リストを作成し、『事前説明』を行うこと」を検討した(注6)。東芝の不正会計については、内部告発が

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、 『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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