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ニューズ&コメンタリー

租税回避地の秘密ファイル 2.6TB 流出 露大統領周辺の資金の流れも

 カリブ海の英領バージン諸島などのタックスヘイブン(租税回避地)に設立された21万余の法人に関する電子ファイルを、南ドイツ新聞(独ミュンヘン)と非営利の報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」(米ワシントンDC)が入手した。ICIJがファイルを分析したところ、中には、ウクライナのポロシェンコ大統領やサウジアラビアのサルマン国王、ロシアのプーチン大統領の友人らの関係会社の記録が含まれていた。ICIJはこれらの電子ファイルを「パナマ文書」(The Panama Papers)と名付け、4月3日(日本時間では4日午前3時)、朝日新聞を含む提携報道機関とともに報道を始めた。

▽この記事は2016年4月4日の朝日新聞に掲載された原稿に加筆したものです。

▽関連リンク: 国際調査報道ジャーナリスト連合のウェブサイト

▽関連記事: ルクセンブルク、課税密約文書の大量流出で激震

▽関連記事: タックスヘイブンに根を張る中国 党幹部親族の名も秘密ファイルに

 

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 タックスヘイブンは、法人税や所得税の税率がゼロか極めて低い国や地域。低税率や秘密保持を売りにして、国外資本の会社の設立を促し、資金を呼び込んでいる。脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)の温床になっているとの批判も根強い。近年、多国籍企業や富裕層がタックスヘイブンを使って合法的に租税を回避することで各国財政が悪化しているとして問題化。乱用を防ぐためのルール作りが国際社会で検討されている。

 今回ICIJが入手したのは、タックスヘイブンの会社設立などを手がけるパナマの法律事務所「Mossack Fonseca & Co.」の内部のメールやワード文書、PDFなどの電子ファイル。その数は1150万で、ファイルサイズは2.6テラバイトに上り、これほどの流出は過去に例がない。1977年から2015年にかけて作られたもので、バージン諸島やインド洋のセーシェル、英仏海峡のガーンジーなど以下の通り各地のタックスヘイブンにある会社など法人の株主や役員などの情報が含まれている。

  • カリブ海の英領バージン諸島に約11万4千法人。
  • 中米のパナマに約4万8千法人。
  • 米フロリダ州の南にある島国バハマ(Bahamas)に約1万6千法人。
  • インド洋の島国セーシェルに約1万5千法人。
  • 南太平洋(ニュージーランドの北東2,400キロ)の島国ニウエ(Niue)に約9600法人。
  • 南太平洋(ニウエの北西560キロ)の島国サモア(Samoa)に約5300法人。
  • カリブ海のアンギラ島に約3300法人。

 そのほとんどはこれまで秘匿されていた情報だ。ICIJは、提携先の朝日新聞、共同通信など、76カ国の百以上の報道機関、400人近くのジャーナリストとともに、これらのファイルの分析を進めてきた。

 ICIJのまとめによれば、 10カ国の現旧指導者12人を含む公職者140人の関係会社が見つかった。

拡大ウクライナのポロシェンコ大統領=2015年6月6日、ウクライナ・キエフの大統領府、飯塚晋一撮影
 ファイルの中にあった文書によれば、ウクライナのポロシェンコ大統領は2014年8月にバージン諸島に会社を設立していた。その半年前の同年2月、ウクライナでは、欧州統合を支持し、政権の汚職に反対する市民による大規模デモで親ロシア派の政権が倒れた。親欧州派のポロシェンコ氏は同年5月の選挙で当選し、政権を発足させた。この直後から同国東部で政府軍と親ロシア派武装勢力の紛争が激化し、同年8月には、ロシア軍がウクライナ領内に侵入したとの報道が流れた。そうした混迷が極まる中での会社設立だったが、ポロシェンコ氏の広報担当者は取材に対し、「いかなる政治的、軍事的な出来事とも無関係だ」と説明した。

 アイスランドのグンロイグソン首相は夫婦でバージン諸島の「ウィントリス(Wintris Inc.)」という名前の会社の株主に名を連ねていた。ICIJの調べによれば、ウィントリスはアイスランドの3つの大手銀行の債券を保有していたが、2008年秋の金融危機でそれらの銀行は破綻した。グンロイグソン氏は2009年に国会議員になった後、ウィントリスの持ち分を妻に譲り、その後の2013年5月に首相になった。その後、政府は銀行の債務処理に関わった。グンロイグソン首相は取材に「財産を隠したことはない」と述べた。

 ICIJによれば、アルゼンチンのマクリ大統領はバハマの会社の役員になっていた。同大統領の広報担当官は取材に対し、それは家族のビジネスの一部であって、個人としては権利を持っていない、と説明した。

拡大プーチン大統領=2015年12月17日、モスクワ、駒木明義撮影
 ICIJが注目するのは、ロシアのプーチン大統領の友人でチェロ奏者のセルゲイ・ラルドゥーギン氏。同氏はタックスヘイブンの複数の会社の所有者となっており、これら会社に資金が流れ込んでいた。プーチン大統領の周辺で少なくとも20億ドル(2千億円余)が、タックスヘイブンの会社や銀行を行き来したとICIJは結論づけている。

 クレムリンの広報担当者はICIJの質問に答えず、ICIJの質問の一部を公表。プーチン氏への「攻撃」を準備しているとしてICIJを非難する声明を出した。

 プーチン大統領とその親交者につい

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