メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ニューズ&コメンタリー

「パナマ文書」情報源が声明「当局にも協力したいが…まずは内部告発者保護を」

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 各国の指導者とタックスヘイブン(租税回避地)との関わりを暴いた「パナマ文書」を入手した南ドイツ新聞は6日、情報提供者から同紙に寄せられたという声明を公表した。声明は、所得の不平等や法律家の腐敗などの問題に触れた上で、「いくつかの大手報道機関にも情報を提供したが、取材を見送られた」と明かし、「当局に情報を提供したい気持ちがある」として内部告発者の免責などの法制化を求めている。

▽関連記事: パナマ文書に関する記事

▽関連資料: 南ドイツ新聞のウェブサイト

 

「パナマ文書」の情報源の「マニフェスト」に関する記事を掲載した南ドイツ新聞のウェブサイト=5月7日午前零時過ぎ
 情報提供者は、「名無しの権兵衛」を意味する「ジョン・ドウ」を名乗って、1年以上にわたって、南ドイツ新聞のバスティアン・オーバマイヤー記者と連絡を取り合ってきた。国籍や性別、職業、年代などは明かされていない。

 声明は「所得の不平等は私たちの時代の決定的な問題の一つだ」(Income inequality is one of the defining issues of our time.)という一文で始まる。格差が急速に大きくなり、世界のあらゆる人々に影響を与えている実情を指摘し、「なぜなのか、なぜ今なのか、疑問は残ったままだ」(Still, questions remain: why? And why now?)と質問を提起。その上で、「その疑問に対して、パナマ文書は、有無をも言わさない答えを提供してくれる」(The Panama Papers provide a compelling answer to these questions:)と続く。答えは「大規模に広がる腐敗だ」(massive, pervasive corruption.)と、その声明は言う。

ジョン・ドウと名乗る人物と記者とのやりとりを紹介した南ドイツ新聞ウェブサイトの動画の一場面
 それに続いて、声明は、パナマ文書の流出元であるパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」を激しく非難する。その文脈で、暴露の理由を明かしている。「モサック・フォンセカの創設者、従業員、クライアントは彼らの犯罪について説明しなければならない。そう考えたので、私はモサック・フォンセカを暴露することにした」(I decided to expose Mossack Fonseca because I thought its founders, employees and clients should have to answer for their roles in these crimes)

 パナマ文書の報道を契機に租税回避防止の議論が盛り上がっている現状について、その声明の主は前向きにとらえている。声明は次のように指摘している。「新しくグローバルな議論が始まっており、それは元気づけられるものだ。エリートの不正に関する示唆を丁寧に除去した昨年までの上品なレトリックとは違って、今回の議論は直接、何が問題かに焦点をあてている」(In the meantime, a new global debate has started, which is encouraging. Unlike the polite rhetoric of yesteryear that carefully omitted any suggestion of wrongdoing by the elite, this debate focuses directly on what matters.)

 パナマ文書の報道については、背後でアメリカ政府が暗躍しているのではないかとロシアの大統領府が示唆し、CIAの関わりを疑う陰謀論が流布されている。これを意識したのか、声明の主は「いかなる政府機関や情報機関でも直接的にも間接的にも働いたことはない。文書を提供したのは私自身の判断であり、特定の政治目的はない」(For the record, I do not work for any government or intelligence agency, directly or as a contractor, and I never have. My viewpoint is entirely my own, as was my decision to share the documents with Süddeutsche Zeitung and the International Consortium of Investigative Journalists (ICIJ), not for any specific political purpose,)と説明。情報提供の動機について「不正義の大きさを分かってもらえると理解したからに過ぎない」(but simply because I understood enough about their contents to realize the scale of the injustices they described.)としている。

 法執行当局がパナマ文書にアクセスして実際の文書を調べれば、数千件の訴追が可能になると、その声明の主は見積もる。一方で、声明は、ICIJやその提携報道機関が当局からの文書提出の求めを一律に断っていることに賛意を示し、その上で、「私は可能な範囲で法執行当局に協力したい気持ちがある」(I, however, would be willing to cooperate with law enforcement to the extent that I am able.)としている。しかし、「とはいうものの」(That being said,)と次の段落は始まる。

日本人のためにタックスヘイブンに設立された会社の書類もパナマ文書に含まれていた
 米国家安全保障局(NSA)による大規模なインターネット監視に関する秘密文書を英紙の記者らに提供した元NSA契約職員のエドワード・スノーデン氏がオバマ政権の追及を逃れてロシアにとどまらざるを得なくなっている現状や、多国籍企業による税逃れをルクセンブルクの税務当局が秘密裏に手助けしている実情に関する情報を記者に提供したとして起訴されたアントン・デルトゥ氏の裁判に触れ、声明は「欧米で内部告発者と活動家が、明白な不正を明るみに出したところ、その後、生活を破壊されてしまっている事例を相次いで私は目の当たりにしてきた」(I have watched as one after another, whistleblowers and activists in the United States and Europe have had their lives destroyed by the circumstances they find themselves in after shining a light on obvious wrongdoing.)と吐露。「不正を暴露した正当な内部告発者は政府による懲罰から免責されるに値する」(Legitimate whistleblowers who expose unquestionable wrongdoing, whether insiders or outsiders, deserve immunity from government retribution, full stop.)と訴えている。そして、「政府が内部告発者保護を法律にしない限り、当局は単純に、自分たち自身の素材や継続中の世界のメディアの報道に頼らなければならないだろう」(Until governments codify legal protections for whistleblowers into law, enforcement agencies will simply have to depend on their own resources or on-going global media coverage for documents.)と宣言している。

 声明は、報道機関などメディアにも批判的に触れている。「いくつかの大手

この記事の続きをお読みいただくためには、法と経済のジャーナルのご購読手続きが必要です。

朝日新聞デジタル購読者(フルプラン)の方なら手続き不要

法と経済のジャーナル Asahi Judiciaryは朝日新聞デジタルの一部です。
有料(フルプラン)購読中の方は、ログインするだけでお読みいただけます。

朝日新聞デジタルのお申し込みはこちら

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
 ご連絡は okuyamatoshihiro@gmail.comに。メールの内容を暗号化する場合はPGPで。パブリックキーのIDは7D2BAD43550EAD96

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。