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ニューズ&コメンタリー

内部通報制度「機能不全」東芝、化血研、福山通運……整備義務を法定へ

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 組織の不正に関する現場の声を受け付けて自浄に生かそうとする企業の内部通報制度について「十分に機能していない」と指摘される事例が相次いでいる。内部通報制度はこの15年で急速に普及が進んだが、形骸化している企業も多い。公益通報者保護法を所管する消費者庁は2016年12月9日、「内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」を制定。また、同庁の検討会は、公益通報者保護法を改正して、実効性ある内部通報制度の整備を企業に義務づける法規定を設ける方向で検討すべきだと提言した。

 ■内部通報制度の普及

拡大内部通報窓口を設置したことによる主な効果=2016年度の消費者庁「民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(概要版)から
 内部通報制度は2000年ごろ、大手企業を中心に「ヘルプライン」「ホットライン」などの名称で導入が始まった。日本経団連が2002年に不祥事防止策として会員企業に整備を呼びかけ、公益通報者保護法が2004年に制定されてその動きを後押しした。

拡大内部通報制度の導入状況=2016年度の消費者庁「民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(概要版)から
 2016年度の消費者庁の調査によれば(注1)、回答した3471事業者のうち1607事業者(46%)が内部通報制度を導入していた。特に従業員3千人超の事業者の99%が導入済みだった(注2)。導入済みの事業者の60%(従業員3千人超の事業者では77%)は社内と社外の双方に窓口を持っていた。国の省庁(39機関)と都道府県庁(47機関)でも、そのすべてで内部職員向けの通報窓口を設けており、市区町村(1711機関)については2016年3月末時点で52%が導入していた(注3)

 2015年6月に施行されたコーポレートガバナンス・コードでも、次のように推奨されている(注4)

 上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである。

 米国では、エネルギー会社のエンロン、通信会社のワールドコムで相次いで粉飾決算が発覚したことを受けて、2002年、企業会計改革法(SOX法)を制定・施行。上場企業の監査委員会に内部通報窓口の整備を法律で義務づけている(注5)

 このように内部通報制度は組織の不祥事を早期に発見する重要なツールと位置づけられ、少なくない人員と資金が投入されている。しかし、現実には問題が続出している。

 ■機能しなかった内部通報制度

 内部通報制度が十分に機能していなかった――。そう結論づけざるを得なくなる企業が相次いでいる。住友電設、福山通運、ホウスイ……。子会社で不適切な会計処理があったのに、内部通報がなかったからだ。

 □福山通運

 物流会社の福山通運(広島県福山市)は2016年2月5日、子会社の元役員が取引先に水増し請求をさせて会社のお金を着服していたと発表した(注6)。特別調査委員会を設けて調べたところ、被害は6億円余と判明。「請求書の流れなど違和感を感じている従業員がいたにもかかわらず、これに関する通報がなかった」として、「社内通報制度の活用に対する周知が不十分だった」と分析した(注7)

 □高田工業所

 産業プラント建設会社の高田工業所(福岡県北九州市)は2016年3月、実態のない工事の架空発注や現金のキックバックなどの不正を税務調査で指摘され

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、 『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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