メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ニューズ&コメンタリー

「パナマ文書」調査報道で日本を担当したイタリア人記者が著書出版

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 租税回避地の舞台裏を明るみに出した「パナマ文書」の調査報道で日本の記者と協働したイタリア人ジャーナリストのシッラ・アレッチさん(34)が1月18日、初めての単著を双葉社から出版した。イタリアで生まれ、日本で調査報道と出会って記者となり、今は米国に住む。日本語でまとめられた新著の中では、より良いジャーナリズムのために、国境や組織、文系・理系の別など壁を乗り越えて知恵と経験を持ち寄り、協働することの大切さを説いている。

▽この記事は2016年12月19日の朝日新聞「ひと」欄に掲載された原稿に加筆し、再構成したものです。

▽注:この原稿の筆者・奥山俊宏は「パナマ文書」の取材・報道にアレッチさんととともに参加しています。

▽関連記事: パナマ文書に関連する記事

 

拡大『報じられなかったパナマ文書の内幕』表紙
 『報じられなかったパナマ文書の内幕』というのが新著の日本語タイトルとなっている。しかし、表紙を見ると、『ジャーナリズムの新しいフロンティア 一匹狼の時代からクロスボーダーのコラボレーションに』という英語の副題が添えられている。アレッチさんが本の中で最も言いたいことがそれに集約されている。

 「それぞれのメンバーは経験もバックグラウンドもできることも異なり、共に手を取り合うと見事なバランスが生まれる。いわば美しいオーケストラのように、『パナマ文書』をめぐるコラボレーション・ジャーナリズムは成功を収めたのだ。」(シッラ・アレッチ 『報じられなかったパナマ文書の内幕』 双葉社、2017年、76ページ)

 「これからのジャーナリストには、理系・文系といったカテゴライズもなくなっていく。あらゆるボーダーを乗り越えるハイブリッド(異種同士のかけ合わせ)なジャーナリストでなければ、グローバル化が進む報道の世界で生き残っていけないと思う。」(同192ページ)

 アレッチさん自身、国境を越え、クロスボーダーに生きてきた。

 1982年11月、イタリアのローマで生まれた。教師を務める両親の下で「ドラえもん」など日本の漫画やアニメを見て育ち、その創造性に憧れた。ローマ大学に入ると、東洋学科で日本語を専攻し、大学院に進んだ。勉強すればするほど別世界が広がる。ジグソーパズルのように言語の論理が面白い。言語学の大学教授となるのを志して東京外国語大学に留学する。

 しかし、日本に来て思い知らされたのは、日本に関するイタリア国内の報道のひどさだ。サムライ、芸者……。日本を分かろうとせず、偏見を映しているだけ、に見えた。そんな偏見よりも、自分が毎日見ている今の日本の現実のほうがはるかに面白い。ならば自分が記者になろう、そう決めた。

拡大早稲田大学ジャーナリズム大学院の院生室で懇談するICIJの創設者、チャールズ・ルイスさん(奥右)とアレッチさん(手前左)ら=2009年12月11日夜、東京・西早稲田で
 2009年4月、早稲田大学のジャーナリズム大学院に入学。転機になったのは、その年の12月、来日講演でキャンパスを訪れた米国人との出会い。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の創設者、チャールズ・ルイスさんが同大学院に招かれて来日し、アレッチさんが学内を案内した。「調査報道」という言葉を初めて知った。その縁から翌年秋に3カ月、インターンとしてICIJで働いた。

 書類にあった数字

この記事の続きをお読みいただくためには、法と経済のジャーナルのご購読手続きが必要です。

朝日新聞デジタル購読者(フルプラン)の方なら手続き不要

法と経済のジャーナル Asahi Judiciaryは朝日新聞デジタルの一部です。
有料(フルプラン)購読中の方は、ログインするだけでお読みいただけます。

朝日新聞デジタルのお申し込みはこちら

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
 ご連絡は okuyamatoshihiro@gmail.comに。メールの内容を暗号化する場合はPGPで。パブリックキーのIDは7D2BAD43550EAD96

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。