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アンダーソン・毛利・友常法律事務所 企業法務の窓辺

若く活気にあふれるベトナムに弁護士、単身赴任して

長田 真理子(ながた・まりこ)

ベトナムに単身赴任した経験

アンダーソン・毛利・友常法律事務所
弁護士 長田 真理子

拡大長田 真理子(ながた・まりこ)
 2003年12月、米国ネバダ大学リノ校卒(社会学・心理学)。2002年8月から2003年5月まで西南民族大学(中国・四川省)留学。2008年3月、東京大学法科大学院修了(法務博士 (専門職))。2009年12月、司法修習(62期)を経て弁護士登録(第二東京弁護士会)。2010年1月、当事務所入所。2012年2月から9月までベトナムのVILAF法律事務所勤務。2012年10月、当事務所復帰。
 弁護士になりアンダーソン・毛利・友常法律事務所で働き始めてから早いもので4年半もの月日が流れた。今は当たり前のように毎日依頼者のために法律と向き合っている私であるが、大学時代はアメリカで心理学と社会学とアジア学を専攻し、行動心理学や社会的マイノリティーについての勉強をしたり、中国に留学して中国語や中国の歴史と少数民族について勉強したりと法律とは全く関係のない分野で、興味の赴くままに生活をしていた。そのころは自分が将来弁護士になるなどとは夢にも思っていなかったが、大学を卒業してから縁あって法律事務所で翻訳の仕事をしたことがきっかけでロースクールに進学し弁護士を目指すことになった。人生とは本当に面白いもので、自分が思いもよらないところで新たな道が開けたりする。今振り返ってみると、そういう新たな道へのきっかけが自分のところにやってきたときに、臆することなく飛び込めたことが私の人生をより豊かに、面白いものにしてくれた。そして幸運なことに、どの道に進んでも行く先々で周りの人に恵まれ助けられて今の自分がいるのだと実感する。弁護士になるのであれば、それ以外の勉強や経験は無駄だったのではないか、遠回りをしたのではないかと思われることもあるが、私自身の経験からすれば、どのような経験も全てはつながっており、これまでの経験があったからこそ、弁護士になってからも様々なチャンスに恵まれ、新しいことに挑戦することができているのだと思う。

 少し話がそれたが、それまで法律とは無縁の日々を送っていた私が、法律の勉強を始めてからはロースクールを卒業し、司法試験を受け、司法修習を修了し、法律事務所で働く、という、法律家としてはごく一般的な道を歩んできた。働き始めてから2年ほど経ったころ、これから自分は一体どのような弁護士になるのだろう、などと考えていた矢先に、ベトナムに出向に行かないか、という話が舞い込んできた。これまでにアメリカと中国に住んでいた経験から、アジアの発展に寄与する仕事に携わってみたいという思いがあり、機会があれば是非アジアに行きたいと考えていたため、迷うことなくベトナム行きを選択した。

拡大ホーチミンの日本人の同年代の会(通称:みそ会)
 そのころの私は結婚して1年も経たない時期で、周りからは夫を残して女性が単身で海外に行くことに対して賛否あったが、幸いにも夫の理解もありベトナムへの出向を実現させることができた。ベトナム出向中には数多くの日本人女性に出会ったが、既婚者で夫を日本に残し、単身でベトナムに暮らしている女性に出会うことは結局一度もなかった。家族を日本に残して単身でベトナムに来ている日本人男性が多いことと比較すると、既婚女性が単身で海外赴任をすることはハードルが高いようである。ただ、ベトナムに行って初めてわかったことであるが、ベトナムで働く20代、30代の独身の日本人女性は思いのほか多く、同年代の日本人が集まる会も数多く存在している(私自身も同年代が集まる会を主催し毎回60人もの日本人が集まっていた)。おかげで、私もベトナム滞在中は多くの日本人の方に仲良くしてもらって、食事も遊びも困ることはなく、また彼らから良い刺激をたくさん受けた。最近ではベトナムで出会って結婚する日本人カップルも増えており、ベトナムで結婚式を挙げた友人カップルもいる。

 ベトナムといえば近頃は南シナ海での中国との衝突がニュースになり、中国系企業と間違われて日系企業の工場が襲われたなどの事件もあったが、ベトナム人は総じて親日的で人懐っこい。ベトナムにいると、タクシーに乗ったときでも街角でコーヒーを飲んでいるときでも、私が日本人だと分かると日本が好きだという話をしてくる。今年4月に電通が調査した「日本への好感度ランキング」でも、他国を抑えてベトナムがトップであったのも頷ける(なお、2位はマレーシア、3位はタイといずれも東南アジアの国である)。日本製品への信頼は厚く、車、バイク、電化製品などを筆頭に日本製に根強い人気があり、ベトナムの空港や地下鉄などの公共事業の建設を日系企業が受注すると喜ぶ。文化的な側面からの交流も年々盛んになっており、ベトナムの若者は日本の漫画やファッションやゲームが大好きであるし、昨年は日越国交40周年を記念してサッカーの親善試合などが行われ、今年はなでしこジャパンがベトナムで開催されたアジアカップで優勝した。また、立川志の輔師匠、桂文枝師匠などの落語の公演もベトナムで開催されている(余談であるが、私は最近毎月落語を観に行くのを楽しみにしている)。

 あまり日本では知られていないように思うが、日本はベトナム人の留学先としても人気である。日本へのベトナム人留学生の数は毎年増加しており、現在の職場の近くのコンビニエンスストアでも名前から察するにベトナム人留学生と思われる人が複数名働いている。私は、冬場はおでんをよく買っていたのだが、おでんの具の名称が分からないようで、私がおでんを持っていくと、困った顔で「これは何ですか。」と尋ねてくる。日本語も上手だし、仕事も熱心だが、おでんの具の名称まで覚えるのは難しいのであろう(日本人の私でも見ただけでは何なのか分からない具がある)。また、最近のコンビニエンスストアは公共料金の支払いや宅配便まで取り扱っていて、母語でない日本語を駆使して幅広い業務をこなすのは苦労が多いだろうに、よく頑張っているなとついつい応援したくなる。日本でベトナム料理を提供するレストランも増えており、フォー、ベトナム珈琲、バインミーなどのベトナム料理を知っている人も多いと思う。ベトナムでも日本食はおいしくて健康的であると人気であるが、日本人にとってもベトナム料理は食べやすくおいしいものが多い。ベトナムは日本と同じように南北に国が細長く、北と南では気候や食べ物も異なり、行く先々で色々なベトナム料理を楽しむことができる。

 出向中、私はベトナム最大の商業都市であるホーチミンに滞在し、現地の大手法律事務所で40名ほどのベトナム人と一緒に働かせてもらい、ベトナムに進出する日系企業を法律面からサポートする業務を行っていた。事務所で働く人は皆家族のように仲良しで、奥さんや子供などが事務所を訪れることもしばしばあり、特に小さい子供が来たときには皆が話しかけたり抱っこしたりして大はしゃぎする。ベトナム人の同僚は私に対しても家族のように接してくれ、一緒に食事に行くことは日常茶飯事であったし、休みの日に彼らの家に招待してもらったり、一緒に買い物に行ったりした。ベトナムに滞在してみてというよりは、ベトナムから日本に帰ってきてより実感するのだが、ベトナムは、非常に若くて活気にあふれた国である。平均年齢は27歳であり(日本は45歳)道端でもお店の中でも子供や若者の数が圧倒的に多い。子供に対しては皆がおおらかで優しくて、お店の中で子供が騒いでも嫌な顔をするどころか、知らない人が嬉しそうに子供を抱っこしたりあやしたりする。少子化が叫ばれる日本も、ベトナムに学ぶべきところがあるのではないかと思う。

拡大ベトナムのビーチ
拡大世界遺産の街ホイアン
 最後に、日本ではあまり知られていない穴場スポットをご紹介しようと思う。意外かもしれないが、ベトナムには安くてきれいなビーチリゾートがある。離島ももちろんきれいだが、私のおすすめは南北に長いベトナムのちょうど真ん中あたりにある、ベトナム第三の都市ダナンである。来月より成田からの直行便の運航が開始されるのでこれからもっと日本人に身近になるのではないかと期待する。また、ダナンには多くのリゾートホテルが立ち並び、30分ほど車で行くと世界遺産の街であるホイアンがある。ホイアンは、幻想的なランタンの街で昔の日本を思い起こさせるような不思議な魅力がある。ビーチリゾートやシーフードを楽しみつつ、幻想的な街並みの中でホイアン名物の料理(カオラウ、ホワイトローズ、揚げワンタンなど)に舌鼓を打つのが私の一番のおすすめのベトナム旅行プランである。

 以上、とりとめのない話を思うままに書いてしまったが、「企業法務の窓辺」にもアジアに駐在している弁護士からの寄稿が増えているように、ここ数年でアジアに駐在する弁護士の数は急増し、アジアに新たな拠点を開設する日系法律事務所も増えており(当事務所もシンガポール支店を開設した)、企業のみならず弁護士もアジアに進出する時代が来た。これから自分がどんな道を歩んで行くのか私自身も全くわからないが、また新たな道へのきっかけを見つけたら臆することなく挑戦していき、どういう形であれアジアと日本のために貢献していきたいと思う。

長田 真理子(ながた・まりこ)

 2003年12月、米国ネバダ大学リノ校卒(社会学・心理学)。2002年8月から2003年5月まで西南民族大学(中国・四川省)留学。2008年3月、東京大学法科大学院修了(法務博士 (専門職))。2009年12月、司法修習(62期)を経て弁護士登録(第二東京弁護士会)。2010年1月、当事務所入所。2012年2月から9月までベトナムのVILAF法律事務所勤務。2012年10月、当事務所復帰。
 論文に"Sovereign immunity, international jurisdiction and courts' powers in labour disputes" (International Law Office 2010年4月) (共著)、「ここがポイント ベトナム法実務」(Weekly Vetter 2012年6月13日号から7月11日号連載)、「越の国のこんな法律 ベトナムの法制度がわかる公式文書の区別とは」(Vietnam Sketch 2012年8月)、「Charity Law "Japan Chapter"」(European Lawyer Reference 2012年10月) (共著)、「アジア・新興国の会社法実務戦略Q&A」(商事法務 2013年4月)(共著)、「サービス産業にみる日本からアジア諸国への事業展開上の課題 ベトナム編」(Global Biz Journal 2013年7月)(共著)がある。

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