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アンダーソン・毛利・友常法律事務所 企業法務の窓辺

企業法務弁護士1年目に考えること 幅広さと奥深さ

柴田 育尚(しばた・やすなお)

企業法務弁護士1年目の奮闘記

アンダーソン・毛利・友常法律事務所
柴田 育尚

 1. はじめに

拡大柴田 育尚(しばた・やすなお)
 2012年3月、慶應義塾大学法学部卒業。2014年3月、慶應義塾大学法科大学院(法務博士(専門職))修了。2015年12月、司法修習(68期)を経て弁護士登録(第一東京弁護士会)、当事務所入所。
 「弁護士」と聞くと、皆さんはなにを想像するだろうか。法廷で朗々と答弁をする様や謝罪会見で記者にコメントをする姿であろうか。私は1年目の弁護士であり、読者の皆様が期待するような華やかな話題を提供するにはいささか若すぎるだろう。そこで、本コラムでは、私自身の経験を踏まえ、私のような1年目の弁護士が普段なにを考え、どのような分野を扱っているのかについてご紹介したい。

 2. 普段なにを考えているのか

 まずは、私たちの置かれている現状について簡単にご説明したい。司法制度改革により、私たち弁護士を取り巻く環境は大きく変化した。2004年に法科大学院の制度が創設され、2006年にはいわゆる新司法試験(現在は単に「司法試験」)が開始された。司法試験の合格者人数は増加し、それにともない弁護士の人数も大幅に増加した。私もこの制度の下、弁護士となった。弁護士の人数が急増すれば、当然、競争が生まれる。特に企業法務の分野では専門化が日に日に進んでおり、企業法務を扱う弁護士としては日々のアップデートが欠かせない状態といえる。1年目の弁護士のなかにも、専門性を高めるために特定の分野の業務を集中して行っている者もいる。

 私は渉外的なコーポレート及びM&Aの分野を中心に活躍する弁護士になりたいと考えているが、現在はこれらに加えてファイナンスや国際仲裁等、多種多様な業務に携わっている。もちろん、自ら望んでそうしている。若いうちは多くの法分野を経験することで、なるべく多くを吸収していきたい。今は、常に広い視野を持ちながら、企業が直面する法律問題を多角的な視点から分析できるようになることがとても重要である、と考えている。このような物の考え方は、私の個人的なバックグラウンドが影響しているのかもしれない。

 私は小学校4年生の冬から中学校2年生の夏までの約3年半の間、アメリカ合衆国に住んでいた。いわゆる帰国子女である。月曜日から金曜日までは現地校へ通い、土曜日には日本語補習校へ通っていた。私が通っていた現地校は、白人系と黒人系のみならず、メキシコ系や中国系の生徒もいた。使用言語はもちろん英語であり、生まれてからずっと日本で育ってきた私には何が何だかわからないことだらけであった。私が身構えていたからであろうが、最初はなかなかクラスメイトと打ち解けられなかった記憶がある。

 もっとも、ひょんなことから友達が増えることが多かった。言葉が通じなくとも、例えばなわとびを上手に飛べるだとか数学の問題を解くのが早いというだけで尊敬され、人気が出たりする。いかにも小学生らしいが、なにがきっかけで友達ができるかは本当にわからないものである。次第に友達も増え、みんなでハロウィンをまわったり家に泊まったりするようになった。現地の学生と同じように学び、遊び、普通の学生生活を送っていた。

 この海外生活のおかげで私は日本語の能力を維持するとともに英語の能力を身につけることができたが、それ以上に、多くを学ぶことができた。国際性という言葉に集約されるのかもしれないが、文化的背景の異なる環境で生活してきた者が持つ独特の協調性というか、新しい物事への好奇心やとりあえずチャレンジしてみるという物の考え方が染み付いたように感じる。日本に帰国してからも当時の友人らとやりとりをすることは多い。日本語補習校に通っていたメンバーとは毎年数回程度集まって話をするが、どことなく帰国子女特有の空気感があるように思える。グローバルな観点から話すことが多いのだろうか。提供される話題の内容や切り口が他の友人らと違うのは、もしかするとそれぞれが培ってきた海外での経験が影響しているのかもしれないと思うことが多々ある。

 専門性を高めるためには特定の分野の仕事を集中的に扱う方が効率的であろう。しかし、何事も経験であるから、少なくとも若いうちは、幅広い分野に接することで自分の視野を広げて多角的な視点を養うことも重要である。専門化が日に日に進む環境のなかで、1年目の企業法務弁護士はこのような葛藤と戦いながら日々の業務をこなしている。

 3. どのような分野を扱っているのか

 現在はコーポレート、ファイナンス、国際仲裁等を含め、多種多様な業務に携わっているが、その一環として、私の趣味の一つである洋服に関連した業務に携わることができた。読者の皆様にもわかりやすくイメージのしやすい法律であると思われるため、本コラムでは、洋服に関する法規制の一つとして家庭用品品質表示法についてご紹介したい。なお、以下はあくまで概要について述べるにとどまるため、具体的な適用関係等については必ず条文をあたっていただきたい。

 家庭用品品質表示法は、「家庭用品の品質に関する表示の適正化を図り、一般消費者の利益を保護すること」を目的としている(第1条)。家庭用品品質表示法は、その目的に記載されているとおり、家庭用品の品質表示について規定している。家庭用品品質表示法における「家庭用品」には、一般消費者が通常生活の用に供する繊維製品、合成樹脂加工品、電気機械器具及び雑貨工業品の一部が含まれる(第2条第1項第1号)。洋服に関連するのは繊維製品と雑貨工業品である。繊維製品としては織物、上衣やズボン等が含まれ、雑貨工業品としてはかばん、靴、革製の手袋や革製の衣料等が含まれる。表示すべき事項及び表示方法はそれぞれの商品ごとに異なっているため、何を記載しどのように表示をするかについては、当該商品ごとにその都度確認を要する。家庭用品品質表示法には罰則として20万円以下の罰金も規定されている(第25条)。

 要するに、家庭用品品質表示法は、洋服に付されている下げ札や縫い付けラベルについて規定した法律である。例えば、「綿 100%」と表示することや、洋服の洗い方を表示することが規定されている。アイロンの掛け方やドライクリーニングの可否などを表す記号もこの表示の一部である。これらの表示は誰もが一度は目にしたことのあるものであろうが、それを根拠付ける法律の存在とその具体的な内容については知っている読者のほうが少なかったのではないかと思う。

 私は学生の頃から洋服が好きであり、時間を見つけてはふらりと洋服を見て回っていた。雑誌やネットでコレクションの写真等を見たり、趣味の範囲内ではあるが世界の服飾史や色彩の勉強をしたりもしていた。美しい洋服は見ているだけで癒される。私は服飾の学校を卒業しているわけではなく、特別な知識があるわけでもないが、美しい洋服は眺めているだけでなんとなくその良さが伝わる気がする。世界服飾史の本を読むと、洋服はその土地や文化に強く影響を受けていることがわかる。洋服は単に美しいだけでなく、その時々の歴史を反映しているものであって、知れば知るほど奥が深いと感じる。

 怒涛の毎日を過ごすなかで自分の趣味にかかわる仕事に携われたのは幸運であったと思う。私が好きでよく着ていた洋服にも法律に基づいた表示があるというのは、考えてみれば当然のことのようであるが、とても新鮮に感じられた。今ではあたり前のように私たちの生活に根付き、誰もが一度は目にしたことのあるような表示にもきちんと法律の根拠があることを知り、法律もまた知れば知るほど奥が深いものであると感じた。

 4. おわりに

 私はまだまだ駆け出しの弁護士であり、毎日が勉強である。少しでも多くの経験を積み、いつか一人前の弁護士になれるよう、明日からもまた努力を重ねていこうと思っている。

柴田 育尚(しばた・やすなお)

 2012年3月、慶應義塾大学法学部卒業。2014年3月、慶應義塾大学法科大学院(法務博士(専門職))修了。2015年12月、司法修習(68期)を経て弁護士登録(第一東京弁護士会)、当事務所入所。

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