メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 企業法務の窓辺

法分野における国際会議への招待 国際法曹団体AIJA東京大会の経験を踏まえて

廣岡 健司(ひろおか・けんじ)

法分野における国際会議への招待
 国際法曹団体AIJA東京大会の経験を踏まえて

アンダーソン・毛利・友常法律事務所
弁護士 廣岡 健司

 1. 弁護士と国際活動

 日本企業の海外進出が進む中、日本の法律家による海外法務支援の重要性が高まっています。海外法務支援を行うためには、各国の法制度や各地域における交渉の仕方の違いに対する理解、海外法律家との信頼ある人的ネットワーク等も必要になります。個々の案件での経験に加え、そのような理解やネットワークは、長期的な視点で、いわゆる国際法曹団体への参加を通じて培うことも非常に有効であるといえます。国際法曹団体としては、例えば、日本弁護士連合会が国際会議への参加を推奨している以下のような団体があります。

IBA(International Bar Association:国際法曹協会) 約8万人の世界各国の法曹、190以上の法曹団体が加盟しています。ビジネスロー・人権・弁護士会運営など、あらゆる分野を取り扱っています。年次大会は、数千名規模の参加者が集まります。
IPBA(Inter-Pacific Bar Association:環太平洋法曹協会) アジア・太平洋地域の法曹の交流と、企業法務や商事法務に携わる専門知識交換を目的とする法曹団体です。年次大会には、毎年1000名規模の参加があります。
LAWASIA(Law Association for Asia and the Pacific:アジア太平洋法律家協会) アジア太平洋地域における法の支配の確立や、法曹間の連携強化等を目的とする国際法曹団体です。年次大会では、国際人権、家族法、環境問題、企業法務、ADR等多彩なテーマのセッションが開かれます。
ABA(American Bar Association:米国法曹協会) 世界中に会員を持つ全米最大の法曹団体で、約40万人の個人と3500以上の団体を会員とし、継続研修や司法制度改革、弁護士業務規範規則の制定等、幅広い活動を行っています。大会では、公益からビジネスまで多彩なセッションが開催されます。
UIA(Union Internationale des Avocats:国際弁護士連盟) 1927年に設立された法曹国際団体で、120以上の国から2000人以上の個人会員と200を超える弁護士会等の団体が加盟しています。大会では英語だけでなく、フランス語、スペイン語も使用され、UIAが謳う「多言語・多文化」の組織を実感できます。
AIJA(International Association of Young Lawyers:若手法曹国際協会) 45歳以下の法曹等を会員とする世界的な法曹団体で、ヨーロッパ諸国を中心に、世界約100ヶ国から約4000人が参加しています。


 私も日本企業の海外進出や投資等の支援に業務の一環として関与する一方、これらの国際法曹団体へ積極的に参加してきました。中でも、上記のAIJA(International Association of Young Lawyers:若手法曹国際協会)については、2013年から2016年まで、日本代表を務めさせて頂いたほか、同団体がアジア地域で初めて開催した年次大会(2017年AIJA東京大会、期間は2017年8月28日から同年9月1日まで、総合テーマ「人工知能(Artificial Intelligence)が法律業務に及ぼす影響」)において、Organizing Committee(組織委員会)の委員長として、関与させて頂く機会を得ました。そこで、本稿では、国際法曹団体の例として、AIJAについて概要をご紹介させていただくと共に、それらの活動を通じた経験や気づきについて、以下、記載させて頂きたいと思います。

 2. AIJAについて

拡大廣岡 健司(ひろおか・けんじ)
 1997年、東京大学法学部卒業。2000年、弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年、米国南カリフォルニア大学ロースクール卒業(LL.M.)。2005年、ニューヨーク州弁護士登録。2006年、英国ケンブリッジ大学ビジネススクール卒業(M.B.A.)。2008年、ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)に参画。2015年4月、統合により当事務所に参画、パートナー就任。

 AIJAは、全世界における若手法曹同士の尊敬を育み、交流や相互協力を促進するために、1962年にルクセンブルクにおいて創設されました。若手を会員とする世界的な組織としては、唯一の法曹協会になります。創設以来、活動範囲は拡大を続け、現在、東ヨーロッパを含むヨーロッパ全域に加え、北米、中南米、アフリカ、中東、アジアなど世界約100ヶ国から4000名以上の会員及びサポートメンバー、700以上の法律事務所が関与しています。2017年に創立55周年を迎えました。AIJAの特徴としては、次代を担う、キャリアの形成過程にある若手法曹に焦点を当て、正会員の資格として45歳以下という年齢制限を設け、また、プログラムの構成も若手法曹のニーズに合わせて工夫されています。AIJAの運営は、各国法曹の活発な参加により担われており、執行委員会は、選挙により選ばれた48名(任期は3年で毎年16名が選挙により選出)で構成されるなど、国際色のある透明性の高い制度運営がなされています。

 約20の専門委員会には、独禁法、金融法、企業買収、環境法、倒産法、国際訴訟、労働法、不動産法、税法、知的財産法等の各種法分野に特化した委員会に加え、企業内弁護士委員会、人権委員会、一般民事業務の国際的側面に焦点を当てた委員会、さらには、若手法曹が身につけるべき法曹としてのスキル、キャリア形成、リーダーシップをテーマとする委員会もあります。会員はいずれの委員会に参加することもでき、会員には積極的な委員会への参加及び他国の法曹との交流が奨励されています。

 毎年8月に開催される年次大会(4日間程度の日程)の他、世界各地で、毎年20以上の国際会議(通常1日から1日半程度の日程)が開催されています。国際会議では、発表、レポートの提出、プログラムの構成も会員相互の交流を促進するように工夫されています。例えば、会議での発表自体も、一方的な講義形式ではなく、聴衆者側でもチームを組んで回答する場面もあり、発表の過程における共同作業や議論を通じて、様々な国における法制度の違いや他国弁護士とのコミュニケーションの仕方を学ぶことができます。発表の内容は審査委員によりチェックされ、内容的に質の高い発表やレポートに対しては表彰がなされます。また、成果物については書籍として出版されることもあります。

 3.AIJAとの出会い

 私がAIJAへ初めて参加したのは、2011年のアムステルダムでの年次大会ですが、その時のことは強烈な印象と共に覚えています。職場の上司にあたる弁護士が以前に参加していたとのことで、強く参加を勧められたのがきっかけでした。気軽な気持ちで参加しましたが、年次大会には、世界各地から約600名の参加者がいたのに対して、日本からの参加者は殆どいない状況でした。他の参加者からとても歓迎され、日本はすばらしい国で特にその文化等に尊敬や興味をもっていると言われましたが、残念なことに、皆、口をそろえて、日本の弁護士に殆ど知り合いはいないと言うのでした。そこで、日本の法曹の国際化という観点で、日本からの参加者を増やさなければいけないとの思いから、帰国後、弁護士会等に働きかけ、AIJAと日本弁護士連合会との共同での会議を2013年、2015年と東京で開催しました。その間、AIJAの認知度は、日本の法曹の中でも少しずつ高まり、また、AIJA内での日本からの会員に対する信頼も高まり、結果、2017年に東京で年次大会が開催されることになりました。このことは、AIJAにとり、その55年の歴史の中で、アジア地域で初めて年次大会を開催するのは大きな試みであったと思いますし、日本の会員にとっても、500名を超える世界各地からの参加者を迎え入れるということで、大きな挑戦でした。(2017年東京年次大会の招致ビデオ:https://www.youtube.com/watch?v=zOcceEqmuUw

 4. 活動を通じて学んだこと

拡大セッションの様子
 AIJAの活動を通じて、各法分野における先端の知識及びノウハウにアクセスできたほか、いろいろなセッションでスピーカーや司会を務める機会に恵まれました。国際活動においては、場数を踏むことが大事ですが、セッションに向けた準備、質疑応答において色々な国の特徴ある英語で質問を受けたことも非常に良い経験になりました。

 また、活動を通じて、世界各地から参加する法律家と協力し、友情を育むことができました。会議期間中は、夕食の後、決まってダンスの場が設けられました。ダンスは、深夜まで続いたのですが、大部分のメンバーが連日参加し、その気力・体力に圧倒されると共に、その中でのコミュニケーションの重要性も実感しました。

 5. これまでの活動を振り返って

拡大日本の組織委員会メンバーにて。はっぴもTシャツも特注
 東京大会開催にあたっては、多くの方にご支援頂き、その有り難みを実感しました。特に、年次大会では、500名程度の参加者を、グループに分けて自宅に呼ぶHome Hospitalityという企画が伝統的に行われており、それを東京で実施することが大きな挑戦でした。結局、東京大会では、自宅ではなく、自宅以外の食事場所でもいいというルールを設けたのですが、それでも、30を超える法律事務所や弁護士会、企業、有志のグループ等にご協力を頂き、全員を無事、迎え入れることができました。東京大会開催にあたっては、Home Hospitality の受け入れ以外にも、スポンサーとしての寄付もお願いし、多くの団体や法律事務所を訪問させて頂きました。AIJAという当時ほぼ無名の団体であったにもかかわらず、有意義な活動だから協力するよ、と言って、前向きにご協力を下さった訪問先も多く、とても勇気づけられました。

 今回東京での年次大会の開催に至りましたが、今後、日本の法曹全体として、このような活動を継続していくことがとても重要であると思います。日本では、日本弁護士連合会及び単位会による国際会議への若手会員派遣制度(費用一部補助)が実施されていますが、AIJAの場合、若手法曹が参加の対象となりますので、その参加に対する支援の仕組みがないことには、あっという間に、活動の機運が薄れてしまう可能性があります。この点、欧米では、法律事務所毎に、支援の仕組みが確立しており、皆、それらの支援を受けて参加してきています。日本においても、今後、法律事務所等による支援が充実することにより、若手法曹が国際協会の活動に参加でき、他国の法曹との信頼関係を築く機会に広く恵まれるようになればと思います。特に、海外からのAIJAの参加者は、AIJAの年齢制限に達した後も、他の国際法曹団体等で非常に積極的に活動していきますので、それら各国の法曹界をリードしていくメンバーと早い段階で、日本の法曹が交流を深めることは重要であると思います。

拡大組織委員会のメンバーにて
 また、2017年東京年次大会の招致においては、アジアの他の都市との間で招致競争がありました。その他の国では、現地の弁護士会や法曹が積極的に国際会議を誘致しようとしており、そのような取り組みを通じて、国際的な場面での自国のプレゼンスを高めようとしています。日本では、アジアの他の国に比べ、国際活動を行う法律家の層が厚く、その歴史も長いため、現時点において、他国に比べ優位性があると思いますが、積極的な取り組みを継続しないことには、法律分野における国際会議等の場面でのプレゼンスにおいても、負けてしまう可能性があります。その意味で、個々人が個別に取り組むことに加え、日本の法曹全体としても、協力しながら取り組みを一層積極化していく必要があると思います。

 6. 更なる発展に向けて

 これまでの活動により、日本からの会員数も増加し、年次大会の開催等は実現されましたが、他方、AIJAの運営自体は、ヨーロッパ出身の法曹を中心に実質的に行われるという状況は、創設以来、55年間変わっておりません。私は、来年にも年齢制限に達しAIJAを卒業しますが、ぜひアジアの中から、特に日本から、AIJAにおけるPresident(会長)等を輩出し、世界の法曹をリードしていって頂くようになればと思い、そのような志を持った方の活動を支援することも自分に課された役割と思っています。

廣岡 健司(ひろおか・けんじ)

 1997年、東京大学法学部卒業。2000年、弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年、米国南カリフォルニア大学ロースクール卒業(LL.M.)。2005年、ニューヨーク州弁護士登録。2006年、英国ケンブリッジ大学ビジネススクール卒業(M.B.A.)。2008年、ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)に参画。2015年4月、統合により当事務所に参画、パートナー就任。2015年から2017年まで成蹊大学法科大学院非常勤講師(企業法展開特殊講義Ⅰ(コーポレートファイナンスの理論と実務))。著書に「M&A実務の基礎」〔第2版〕(商事法務)がある。

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。