メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

深掘り

市場の規律を求めて

(1) 多様な担い手を結びつけるのも監視委の役割 市場規律の当事者たち

 ■監視委による監視:事後チェック

佐々木清隆課長拡大佐々木 清隆(ささき・きよたか)
 東京都出身。1983年、東大法学部卒業後、大蔵省(当時)に入省。金融監督庁(現金融庁)検査局、OECD(経済協力開発機構)、IMF(国際通貨基金)など海外勤務を経て、2005年に証券取引等監視委員会事務局特別調査課長。2007年7月より同総務課長。
 証券取引等監視委員会(以下「監視委」と略)は、インサイダー取引、株価操作等の証券不公正取引を調査・検査し、摘発することを使命としている。基本的には、問題の取引や虚偽の開示等が行われた後の事後的な監視を行っており、そのための取引の分析、課徴金調査、開示検査、犯則調査、証券検査の各権限を活用して、機動的、迅速、効果的な対応を強化してきているところである。また、証券市場の動きは非常に速いことから、不公正取引として認定される前の段階ではあるが顕在化しつつあるリスクに対しても、関心をもって見ており、実際に不公正取引として認定されれば迅速に対応できるようなforward looking(先を見た)な対応も強化してきているところである。

 ■市場規律の重要性:問題の未然予防

 しかしながら、このような監視委としての事後的な監視・摘発だけでは、公正な証券市場の構築には十分でないと考えている。まず、問題が起きた後の事後チェックだけでは、当該問題によって引き起こされた投資家等にとっての被害の救済、市場の秩序の回復の上で、多くの時間的・経済的コストを要することになる。また、証券市場の動き及び革新のスピードは極めて速く、絶えず新しい商品、取引、手法等が生み出されており、当局による新たな規制や監視の強化との関係でgapが生まれることが避けられない。このような観点からは、監視委等の当局による事後的な摘発に依存するだけでなく、不公正取引等の未然予防・抑止があわせて機能することが、公正な証券市場の構築の上で不可欠であると考えている。

 さらに証券市場という場では、様々な市場参加者が資金調達・運用する上で、市場のルールに則ってフェアに行動することが期待されることから、市場の問題はまずは市場参加者自身で解決することが重要である。各市場参加者一人ひとりが、ルールを遵守して行動すること(これを「市場規律」を呼ぶことにする)によって、監視委による事後的監視もその実効性を挙げることができるのである。このような市場規律が確立することにより、不公正取引の未然抑止が図られるが、いつの時代、どんな市場にも、市場の規律を破る者は存在する。そのような者に対しては、「市場規律を期待できない悪質な不届き者」として、監視委は厳正に対応することになる。

 加えて、市場規律に基づいて問題を解決することは、いわゆる「お上頼み」ではなく、市場参加者それぞれの当事者意識(ownership)に基づくことから、対応の実効性の上でも効果が期待できる。

 このように市場規律を通じた問題の未然抑止と監視委による事後的な監視・摘発が車の両輪としてバランスよく機能することによって、真に公正な証券市場が構築できると考えている。

 このような発想から、佐渡委員長が監視委員長に就任した直後の2007年9月に公表した監視委としての取り組み方針「公正な市場の確立に向けて」の中の「2.基本的な考え方」においては、「市場規律の強化に向けた働きかけ」を重要な柱として掲げている。各市場参加者による市場規律が強化されるよう、市場参加者との対話、市場への情報発信を強化することが盛り込まれている。

 ■市場規律の強化に向けた取り組み

 上記のとおり、市場規律を強化することが、公正な証券市場の確立の上で不可欠であり、監視委としては、市場規律の当事者、担い手に対する働きかけを強化してきている。証券業協会や証券取引所等の金融商品取引法上の自主規制機関はもちろん、そのほかにも証券市場の公正性に関係ある諸団体、例えば日本公認会計士協会、監査法人、日弁連、法律事務所、不動産鑑定協会等との連携や対話の充実を図ってきている。

 監視委としての、これら市場規律の当事者への働きかけとしては、監視委の活動の中で認識された問題等についての認識の共有、それを踏まえた各当事者による実態把握、ルールの策定、制裁、啓蒙・教育等の幅広い分野に及ぶ。

 さらに、このような多様な市場規律の当事者の間を結びつけるのも監視委の役割として重要であると認識しているところである。金商法上の自主規制機関を別にすると、日弁連、公認会計士協会、不動産鑑定協会その他諸団体の役割は、公正な証券市場の確立に留まらず多様な分野に及んでいるが、監視委としては、公正な証券市場の確立という観点を「扇の要」に、各当事者を結びつけるコーディネーターとしての役割があると考えている。

 このような証券市場の公正性の確保に役割を持つ市場規律の当事者それぞれに働きかけるとともに、各当事者の横の連携、結びつきを強化することで、当局と市場参加者が一体となった、「全体としての市場監視の包囲網」を構築することが重要である。

 次回以降、各市場規律の当事者との関係で、どのような取り組みを行ってきたか、全体としての監視の包囲網の構築に向けた取り組みについて、具体的な事例も交えながら、ご紹介することとしたい。

 ▽文中、意見にわたる部分は筆者の個人的見解である。

 ▽市場の規律を求めて(2)  証券取引所など自主規制機関とともに

 ▽証券取引等監視委員会のホームページ

 佐々木 清隆(ささき・きよたか)
 東京都出身。1983年、東大法学部卒業後、大蔵省(当時)に入省。金融監督庁(現金融庁)検査局、OECD(経済協力開発機構)、IMF(国際通貨基金)など海外勤務を経て、2005年に証券取引等監視委員会事務局特別調査課長。2007年7月より同委員会事務局総務課長。

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。