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深掘り

株主の権利弁護団から

談合防止のための内部統制システムとは

富田 智和(とみた・ともかず)

談合防止のための内部統制システム

弁護士 富田 智和

拡大富田 智和(とみた・ともかず)
 弁護士、神戸そよかぜ法律事務所所属。
 2000年3月、関西学院大学法学部政治学科卒業、2004年3月、関西学院大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。
 2003年11月、司法試験合格。2005年10月、兵庫県弁護士会に登録。
 現在、株主の権利弁護団に所属し、株主の視点から商事訴訟・株主代表訴訟に多く取り組んでいる。

第1 取締役の内部統制システム構築義務

1 なぜ内部統制システム構築義務が求められるか?

 過去の企業不祥事の事例を見れば、取締役自身が談合等の会社の違法行為に関与しているのは極めて稀なケースです。そのような違法行為は直接的には現場の従業員等が行うものであり、取締役自身は直接には関与していないというケースがほとんどです。そして、規模が一定以上の会社になると、取締役と個々の従業員とのつながりは極めて希薄であり、取締役が個々の従業員の行為を逐一監視することを期待するのは現実的ではありません。

 しかし、そうなると取締役は「そのような違法行為が行われていることは知らなかった。」と述べるだけで会社に対する責任を免れることができることにもなりかねません。それでは、責任を末端の従業員に押しつけることにより、取締役は何ら痛痒を被らないという「トカゲの尻尾切り」になってしまいます。

 そこで、取締役には違法行為を未然に防止する内部統制システム(「リスク管理体制」といわれることもありますが、以後は「内部統制システム」との呼称で統一することとします。)を構築すべき義務があるとされています。

 本稿では、取締役の内部統制システム構築義務について一般論を述べたうえで、談合を防ぐための内部統制システムについて、株主代表訴訟等を通じて得た経験から思うところを述べてみようと思います。

2 判例でも認められている取締役の内部統制システム構築義務

 内部統制システムに言及した裁判例として有名なものとしては、いわゆる大和銀行株主代表訴訟判決(大阪地裁平成12年9月20日判決)があります(注1)。これは、大和銀行ニューヨーク支店の元行員が昭和59年から平成7年までの間に米国財務省証券の無断取引を行って約11億ドルの損害を同行に与えたこと及びそれを米国当局に隠蔽したなどとして米国において同行が刑事訴追を受け、有罪答弁を行った結果罰金3億4,000万ドルを支払ったことについて大和銀行の株主が取締役の内部統制システム構築義務違反等を理由に提起した株主代表訴訟です。この訴訟において、判決は以下のように述べて取締役に内部統制システム構築義務があることを明らかにしました(引用されている条文は当時のものです。)。「健全な会社経営を行うためには、目的とする事業の種類、性質等に応じて生じる各種のリスク、例えば、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、事務リスク、システムリスク等の状況を正確に把握し、適切に制御すること、すなわちリスク管理体制が欠かせず、会社が営む事業の規模、特性等に応じたリスク管理体制(いわゆる内部統制システム)を整備することを要する。そして、重要な業務執行については、取締役会が決定することを要するから(商法260条2項)、会社経営の根幹に係わるリスク管理体制の大綱については、取締役会で決定することを要し、業務執行を担当する代表取締役及び業務担当取締役は、大綱を踏まえ、担当する部門におけるリスク管理体制を具体的に決定するべき職務を負う。この意味において、取締役は、取締役会の構成員として、また、代表取締役又は業務担当取締役として、リスク管理体制を構築するべき義務を負い、さらに、代表取締役及び業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務を履行しているか否かを監視する義務を負うのであり、これもまた、取締役としての善管注意義務及び忠実義務の内容をなすものと言うべきである。」

 このように取締役に内部統制システム構築義務が認められることはその後のダスキン株主代表訴訟判決(大阪地裁平成16年12月22日判決)でも認められております(注2)

 また、判決ではありませんが、いわゆる神戸製鋼利益供与事件株主代表訴訟における訴訟の早期終結に向けての裁判所の所見の中でも取締役の内部統制システム構築義務に言及しており、そのうえで取締役が「社内においてなされた違法行為について、これを知らなかったという弁明をするだけでその責任を免れることができるとするのは相当でないというべきである。」とされています(注3)

 このように、取締役が内部統制システムの構築義務を負うのはもはや確定した判例ということができます。

3 求められる内部統制システムの水準

 具体的に、談合を防ぐためにどの程度の水準の内部統制システムが求められるかについては、上記の裁判例も述べるように会社が営む事業の規模、特性に応じて個別具体的に判断せざるを得ません。

 もっとも、当該会社が過去に談合で摘発されたことがある場合(注4)や当該会社が市場において占めるシェアが大きいリーディングカンパニーである場合などは求められる内部統制システムの水準は自ずから高いものになるといえます。

4 内部統制システムと経営判断原則

 談合防止のための内部統制システム構築義務違反を理由として株主代表訴訟を提起した場合、被告取締役から必ず出される主張として、経営判断原則があります。すなわち、いかなる内部統制システムを構築するかは経営判断であり取締役の広い裁量に委ねられているという主張です。

 確かに、上述した大和銀行株主代表訴訟判決は、「どのような内容のリスク管理体制を整備すべきかは経営判断の問題であり、会社経営の専門家である取締役に、広い裁量が与えられていることに留意しなければならない。」と述べており、内部統制システム構築義務に経営判断原則が適用されることを認めています。

 この経営判断原則というのは、会社経営に冒険は不可避であり、リスクのある行動をとった結果、会社に損害が生じた場合に事後的評価によりその責任を取締役に負わせるのでは会社経営に萎縮効果をもたらしてしまうことから、会社経営に際し取締役の裁量を広く認め、こういった萎縮効果を防ごうという趣旨で学説・判例において認められた理論です(注5)。ところが、内部統制システムの構築にあたっては、特段リスクを伴うものでもないことから、この原則を内部統制システム構築義務に適用してしまって良いかは疑問の余地があります(注6)

 仮に、内部統制システム構築義務に経営判断原則の適用を認めるとしても、それは取締役にフリーハンドを与えることを意味するものではありません。一般に経営判断原則が認められるためには、(1) 経営判断のもとになった事実の認識に不注意な誤りがなかったこと、(2) その事実に基づいてとった行動が通常の企業人として著しく不合理なものではないことが必要とされます(注7)。そのため、実際に構築された内部統制システムが上記二つの要件を充たしたものであるのかについて厳格に考える必要があるといえます。

 例えば、取締役が「談合は、個々の従業員が会社に秘密で行う個人犯罪である。したがって、個々の従業員がきちんとしていれば自社で談合が発生することはあり得ない。」などという事実認識で内部統制システムを構築していたとすれば、それは事実の認識に重大な誤りがあったものと言わざるを得ません。談合の歴史は古く、遡れば江戸時代から我が国に深く根付いている悪習であるといえます(注8)。また、談合組織は会社の担当従業員が着任する遙か以前から形成されており、そこでの談合の手法が歴代の担当従業員に代々受け継がれているというのが通常です(注9)。担当従業員は談合に加わることに後ろめたさを感じながらも、談合に関与するのを自分だけが断るわけにはいかず、渋々ながら談合に関与していくというのが通常です。このような談合の根深さ等を考えれば、談合は個々の従業員の個人犯罪などではなく、個々の従業員の心がけ次第で断ち切れるというものではありません。

 取締役としては、談合が自社でも起こりうるという危機意識に立ち、会社をあげて談合を断ち切るとの強い決意のもとに内部統制システムを構築する必要があるといえます。公正取引委員会が平成20年10月に東証一部上場企業約1,700社に対して実施した独占禁止法遵守のための内部統制システムについてのアンケート結果が平成21年3月に発表されています(以下ではこのアンケートを指して「公取委アンケート」ということにします。)。これによれば自社において独占禁止法違反行為が起こりうるという危機感を持っている企業が72%にのぼっており(注10)、平成18年の調査から比べて20%以上上昇したことは、取締役の危機意識の表れであるといえます。一方、未だ20%以上の企業で「自社では起こりえない。」と考えているのはやや楽観的に過ぎるのではないでしょうか。

第2 具体的な談合防止のための内部統制システム

 それでは、談合防止のために具体的にどのような内部統制システムを構築するべきかについてはおおむね以下のものが考えられます。

1 経営トップによる談合排除に向けた決意表明

 談合は、一時的・表面的には会社に利益をもたらすことになります。すなわち、談合が行われることにより会社は安定して高値で工事を受注することができます。これに対して談合がなかった場合には完全な自由競争となり、安定した受注が確保できないばかりでなく「叩き合い」による安値受注が行われることにもなります。また、談合組織の中から自社だけが脱退した場合には他社から様々な嫌がらせを受けることにもなります。例えば、公共事業に際してJV(共同企業体)を組んでくれなかったり、自社が入る入札においては自社に受注させないために他社が赤字覚悟の低価格で札を入れるということも行われます。そのため、談合担当の従業員としては「会社のため」に談合に関与するということがしばしば行われます。

 しかし、談合が発覚したときのリスク(多額の課徴金、地方自治体から請求される違約金、指名停止に伴う逸失利益、さらには株主代表訴訟の提起による取締役個人に生じる巨額の賠償義務)を考えればそのような従業員の行為が間違っていることは明らかです。

 そこで、経営トップが談合排除に向けた決意表明を従業員に示す必要があるといえます。公取委アンケートでも独占禁止法コンプライアンスの徹底のために最も必要なことは何かという問いに対して「経営トップの意識」と回答した会社が実に50%を超えており、他の項目を圧倒しています(注11)。また、経営トップがコンプライアンス委員会のトップになっているという回答が49.3%と全体の半数近くを占め、常日ごろから経営トップが会議・研修の場でコンプライアンスの重視を呼びかけているという回答も73.5%に及んでいます(注12)。談合排除のためには経営トップの関与が欠かせないことが裏付けられているといえます。

 もっとも、経営トップがコンプライアンスを呼びかけていさえすれば、どのような内容であっても構わないという訳ではありません。コンプライアンスの重要性を抽象的に訴えるのではなく、自社で起きた不祥事等をも引き合いに出しながら、会社として談合と決別した結果、一時的に会社の利益が減少しても不利益な評価を行わないことなど具体的に呼びかける必要があります(注13)

2 具体的で過去の自社の不祥事等にも言及したコンプライアンスマニュアルの配布

 従業員にコンプライアンス意識を植え付けるには、コンプライアンスマニュアルの配布が不可欠であるといえます。公取委アンケートによればコンプライアンスマニュアルを定めているという企業は実に97.6%にのぼっており(注14)、コンプライアンスマニュアルはもはや内部統制システムとして必要条件ということができます。

 問題はそのマニュアルの中身です。一般的な条文の解説等に終始することなく従業員が日々直面する具体的な事例に適したマニュアルが望ましいといえます。また、過去に自社が談合をはじめとする独占禁止法違反行為により摘発されたことがあるのであれば、その事例やそこから得られた教訓についても記載するべきです。自社の“恥部”ともいえる部分を記載するのは気が引けるかもしれませんが、そうすることにより従業員に談合の摘発が決して「対岸の火事」でないことが理解されるといえます。また、実際に談合の摘発や課徴金等の支払による会社の苦難を経験した従業員とその後に入社した従業員とではコンプライアンスに対する温度差があることが予想されますが、自社の事例やそれに伴う会社の苦難等を記載することにより、そういった温度差も解消されることが期待できます。

3 すでに談合に荷担している場合をも想定したコンプライアンス研修の実施

 コンプライアンスマニュアルの配布と同時にコンプライアンス研修も従業員のコンプライアンス意識を養うために重要であるといえます。公取委アンケート(平成20年)によれば全体の76.3%の会社がコンプライアンス研修を実施しており、平成18年の調査に比べて20%程度上昇しています(注15)

 問題は、その研修の内容ですが、具体的な事例に即して行うことや過去の自社の摘発事例を取り扱うべきであることは上述したコンプライアンスマニュアルと同様です。

 また、談合が行われていることを前提にしてそこからいかにして脱退するべきかという視点から研修を行うことも必要といえます。すなわち、談合に関与する担当者というのは、談合が違法であることは百も承知のうえで「会社のために」ということを言い訳にして談合に関与することは上述のとおりです。その従業員にいくら「談合は違法である。」と言ってみたところで十分ではありません。そのため、すでに自社が談合に荷担しているかもしれないという性悪説的な観点から、いかにして談合組織から脱退するかという視点をも採り入れた研修を行うことが重要であるといえます。

4 社内監査の実施

 いくらコンプライアンスの重要性を研修やマニュアルで説いたとしてもそれだけで談合がなくなるというのは極めて性善説に立脚した考え方というべきであり、上述した談合問題の根深さからすれば十分でないといえるでしょう。実際に会社が談合に荷担していないかどうかの監査が不可欠であるといえます。公取委アンケートでは、法令遵守に対する社内監査を行っていると回答した企業が全体の77.9%にのぼっており(注16)、平成18年のアンケート結果と比べて30%以上も上昇しています。

 問題はその内容だといえますが、公取委アンケートによれば社内監査の方法としては「監査対象の担当部門の責任者に対するヒアリング調査」が81.9%で最も多く、次いで「契約に関する書類(契約書、覚書等)の調査」で、67.4%にのぼります。なかには、「担当者が使用する手帳、ノート等の調査」や「担当者が保存するパソコンの保存データの調査」を行っている企業も少数ながら存在します(注17)。このうち、監査対象の担当部門の責任者に対するヒアリング調査だけでとどまっている企業があるとすれば、それは不十分との非難は免れないといえます。すなわち、担当部門の責任者に談合を行っていないかどうかを尋ねたところで、これを否定することは目に見えています。そのため、ヒアリングに伴い、具体的な契約に関する書類の調査を行うことは不可欠であるといえます。とりわけ、談合が行われている場合には積算の根拠が極めて杜撰であることが多いといえることから、積算の有無やその根拠に着目すべきであるといえます。すなわち、談合が行われている場合であって、自社がいわゆる「サクラ企業」(自社が落札するのではなく、他社が落札できるよう協力する企業)の場合には、落札できないことが分かっている以上、手間とお金をかけてまで綿密な積算をすることはなく、「チャンピオン企業」(落札することが決まっている企業)の金額をもとにそれよりも高い金額を記載するだけということが往々にして行われます。そのため、真実積算を行ったかどうかを具体的に書類を見て確認することにより談合の早期発見につながるといえます。

 また、落札率に着目することも談合の発見という見地からは重要であるといえます。すなわち、落札率(落札価格の予定価格に対する割合)が98%や99%という高い値である場合が続いていたときには談合の存在を疑ってみるべきです。日本弁護士連合会が平成13年2月に「入札制度改革に関する提言と入札実態調査報告」と題する報告書を出しましたが、その中で過去の談合事件の刑事事件記録を詳細に検討した結果として、談合すると落札率が98%、99%になり、自由に競争すると落札率は70%程度になる、との指摘があります(注18)。また、平成15年7月に日弁連が出した「入札制度改革に関する調査報告書」では、「落札率は、談合しているかどうかを判断するための主たる基準になる。」としたうえで入札改革に取り組んだ自治体では平均落札率が急落しており、自由競争が行われているとしています(注19)。つまり、特段の理由なく高落札率のまま推移しているという場合には談合を疑ってみるべきであるといえます。

5 同業他社との接触状況の確認

 従業員が業界団体等同業他社と接触する場合には、そこで談合の打ち合わせが行われるというケースが往々にしてあります。また、仮に自社としては談合から抜け出す意思を有していたとしても、同業他社との交流の場において価格調整の話が出て、それに異を唱えることなくその場にとどまり続けたために談合に加わったと認定されるリスクも存在します(注20)。そのため従業員が同業他社と接触する場合にはその旨を事前に上司に届出させる、事後的にどのような話が出たのかについて報告書を提出させるといったことが必要であるといえます。

 公取委アンケートでは、従業員が業界団体の会合に参加する場合に留意事項を定めている企業は28.2%に過ぎませんが(注21)、今後はより多くの企業においてこの点のルール作りを行うことが要請されているといえます。

6 談合行為に参加した場合の懲戒処分規定の作成と再発防止策に向けた体制の構築

 かつて、談合は「会社のために」行うという性質上、談合に関与した従業員に対する処分が極めて軽いものにとどまっているというケースがありました。しかし上述したとおり、談合は発覚することにより会社は多額の課徴金や違約金、指名停止に伴う逸失利益、さらには取締役個人に対する株主代表訴訟の提起のリスク等様々なリスクを伴うものである以上、もはや「会社のため」というのは言い訳にはならないと考えるべきです。そのため、談合に関与した従業員には懲戒解雇等の厳重な処罰を与えるべきであり、処分規定を整えることが重要であるといえます。

 公取委アンケートでは、従業員が独占禁止法違反行為を犯した場合の最も重い罰則については「懲戒解雇」と回答したものが81.2%にのぼっています。また当該従業員の業務に管理責任を有するものに対する懲戒規定についても「定めている」と回答した企業が55.6%と過半数に及んでおり、その処分内容も最も重いもので「懲戒解雇」と回答した企業が61.3%にのぼっています(注22)

 また、会社が実際に談合に荷担していた場合に、上記の懲戒処分規定にもかかわらず実際に下された処分が非常に軽いものであった場合には、従業員に対して与える感銘力は小さいといえます。のみならず、当該談合が会社ぐるみのものであったために軽い処分しかできないと受け止められます。そのため、取締役にはこの懲戒処分規定を有効に機能させる責任があるといえます。これとあわせて何故自社が談合に関与してしまったのかを外部調査委員も交えて会社内で検討できる体制を構築しておくことも再発防止の観点からは有効といえます。

7 実効性ある内部通報制度の確立

 従業員が会社が談合に関与しているのではないかと気付いた場合に通報できるシステムを設けている会社は実に96.3%になります。今日ではほとんどの会社において何らかの内部通報制度は設けられているといえます。

 問題はそのシステムの内容であるといえます。従業員が憂いなく通報できるためには通報は匿名でもできることが望ましいといえます。また、通報先も社内のみならず社外の弁護士事務所等にも設けられていることが望ましいといえます。公取委アンケートにおいて通報先として「弁護士事務所等の外部機関」を挙げている会社が平成18年の調査より15%程度上昇し、51.5%にのぼっている(注23)のは望ましい傾向であるといえます。

 また、このような内部通報制度はその利用が極めて少ないのが現状です。公取委アンケートでも内部通報制度について「利用なし」とする回答が全体の72.7パーセントを占めています(注24)。そのため、会社としては常に利用しやすい内部通報制度の確立に向けて内部通報制度の周知徹底等や制度の改善を図る必要があるといえます。

8 課徴金減免制度の利用についてのシステム構築

 ご承知のとおり、課徴金減免制度が平成18年1月より実施されています。これにより、仮に従前談合に関与していたとしてもこれを申し出ることにより課徴金の全部又は一部を免れることが可能になります。今後は会社が仮に談合に関与していたとしてもいち早く課徴金減免制度を用いるシステム作りが欠かせないといえます。つまり、これを構築することなく漫然と課徴金減免制度の利用を逃した場合には取締役が善管注意義務違反に問われることもあり得ると心がけるべきです(注25)

 そのため、取締役としても公正取引委員会の立入調査前に課徴金減免制度を用い、仮に立入調査後であってもいち早く違反行為を申告することにより課徴金減免制度の利用を可能にするシステム作りが欠かせないといえるでしょう。公取委アンケートでも課徴金減免制度の利用を考えていると回答した会社が平成18年のときよりも20%上昇し、43.2%になっています(注26)

第3 最後に

 以上、談合防止のための内部統制システムについて考えられるものを挙げてみました。紙幅の都合上割愛したシステムもありますので、必ずしも上記のものが談合防止のための内部統制システムの全てというわけではありません。

 談合が「必要悪」といわれる時代は

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富田 智和(とみた・ともかず)

 弁護士、神戸そよかぜ法律事務所所属。
 2000年3月関西学院大学法学部政治学科卒業、2004年3月関西学院大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。
 2003年11月司法試験合格、2005年10月兵庫県弁護士会に登録、2010年4月神戸そよかぜ法律事務所設立。
 現在、株主の権利弁護団に所属し、株主の視点から商事訴訟・株主代表訴訟に多く取り組んでいる。

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