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深掘り

東京電力株主総会一問一答詳録

東電、企業年金削減「費用見直しの埒外ではなく検討したい」

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 福島第一原子力発電所の事故が収束することなく続くなか、東京電力の株主総会が6月28日に開かれた。延べ9309人の株主が参加し、6時間9分にわたって続いたその模様の詳細を複数回に分けて報告する。その第2回。東電の山崎雅男副社長は株主の質問に答えて、同社OBに支払っている企業年金の削減について、「費用の見直しの埒外(らちがい)ではなく、検討してまいりたい」と述べた。

拡大東京電力の株主総会=6月28日、東京電力が記者に提供した画像から

 午前11時8分、勝俣会長が「それではご質問どうぞ」と呼びかける。しばし間を置いた後、勝俣会長が「あの真ん中の1のちょっと後ろ側の通路から2番目の方」と指名する。

 最初の株主が質問を始める。

 男性株主:事前質問していたのですが、回答が山のように漏れていますので、追加で聞きます。「異常な災害」の認識を勝手にされていることに非常に驚きました。原賠法(原子力損害の賠償に関する法律の第3条1項ただし書き)の「異常な災害」にあたるかどうか認定するのは勝手に事業者ができることなんですか? そんなこと、できるわけないでしょう。裁判所によって判定を受けるしかないわけですけど、そんなことを勝手に決めて賠償責任が事実上ないかのような言い方をし、だけども、「皆さんに賠償金を払います」と言う。それは「施し」ですか? いったい何を考えているんですか? この会社は。それが一点。

 

 原子力損害賠償法はその3条1項ただし書きで、「損害が異常に巨大な天災地変によって生じたものであるとき」について電力会社の無過失賠償責任を否定している。勝俣会長はこの日、質疑応答に入る前、事前に書面で寄せられていた質問への回答の中で、「今回の事故は史上まれにみる巨大な地震や津波に起因するものであり、『異常に巨大な天災地変』に当たり、当社は免責されるとの解釈も十分可能であると考えている」と述べていた。その答弁にこの株主は異議を唱えている。

 男性株主:そんな「異常災害」ではないということを例示します。あの福島第一原発の地形。崖の高さ30メートル近くあったものをわざわざ掘り下げて10メートルまで切り下げ、さらに専用港をつくるために海底を掘削し、その結果、海側から見ると、あたかもリアス式海岸かU字谷のような地形を作ってしまったんです。そこに押し寄せた津波により、リアス式海岸と同様に、津波の波高が上昇し、浸水高14.5メートルに達した。ですから、人造的につくられた津波被害なんです。それをあなた方は理解していたはずなのに、そういう津波が来ないことにして、それで造成した結果起こった人災です。どこが「異常な災害」ですか? 南相馬もいわきも「異常な災害」だったんですか? 福島第一原発の立地点では普通の高さの津波です。

 さらに質問その2。私は2009年にここで福島第一原発1、2、3号機の廃炉の提案をいたしました。それを皆さんは「廃炉にする必要はない」と否決しました。あのときに議案が通っていれば少なくとも1、2、3号機のメルトダウンは回避できたわけです。その責任をどのようにとるのか、はっきりしてください。

 

拡大2009年6月の東京電力株主総会には福島第一原発1~3号機の廃炉が株主から提案されていた=東京電力の「第85回定時株主総会開催ご通知」から

 2年前、2009年6月25日に同じホテル「ザ・プリンスパークタワー東京」で開かれた東電の株主総会には、283人の株主からの提案として、「福島第一原子力発電所1号機、2号機及び3号機を廃炉とする」という定款一部変更の議案が提出された。これに対して、東電の取締役会は「原子力発電は燃料確保の安定性や地球温暖化対策の面からも優れた電源であること」などを理由としてこの議案に反対し、その結果、議案は否決された。1号機、2号機、3号機の炉心がいずれも溶融してしまうという大事故が起きたのはその否決の結果だった。その責任をこの株主は問うているのだ。

 勝俣会長が口を開く。

 勝俣会長:えー、ただいまの第1問のご質問、「異常な天災地変」は裁判所で決定するもの、それはご指摘の通りでございます。そういった観点で、私も、一括回答で申し上げたつもりでございます。

 

 たしかに、勝俣会長は事前質問への回答の中で、「『異常に巨大な天災地変』に該当するかどうかについて、専門家の間でも意見が分かれていることに加え、当社が免責を主張すれば、多くの被害者の方々と長期にわたる裁判で争うことになります」と述べ

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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