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深掘り

東京電力株主総会一問一答詳録

東電会長「役員報酬の返還はプライベートな事項」回答拒否

事故前の津波対策「堆積物調査など鋭意検討していた」

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 福島第一原子力発電所の事故が収束することなく続くなか、東京電力の株主総会が6月28日に開かれた。延べ9309人の株主が参加し、6時間9分にわたって続いたその模様の詳細を複数回に分けて報告する。その第3回。小森明生常務は株主の質問への答弁の中で、3月11日に事故が発生するより前の津波対策の状況について「(過去の津波による)堆積物の調査に取り組むなど検討を鋭意進めていた」と述べた。藤原万喜夫副社長は東電本店内の役員室でも節電に努めていると答えた。勝俣恒久会長は、これまで受け取ってきた役員報酬の返還について「いわば個人の寄付ということになるわけで、プライベートに関する事項である」として、回答を拒否した。

 株主の質問が続いている。

 5人目の株主は「太陽光発電など自然エネルギーをもっと推進すべき」と述べ、「当社はどのようなお考えで取り組もうとしているのか?」と質問する。清水正孝社長が答える。

 清水社長:太陽光等のいわゆる再生可能エネルギーの拡大ということですが、CO2を排出しない低炭素電源ということで、現在、私ども計画しております3か所のメガソーラーがございます。これはまさに再生可能エネルギーへの社会の関心の高まりを踏まえまして、地元ともよく協議を進めさせていただきながら、鋭意取り組んでいるという状況です。これから再生可能エネルギーが拡大していくということだろうと思いますが、その際にネットワークの安定化対策なども引き続きしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えております。

 

 6人目の株主は「東電の経営は大学教授をやりながらやれるほど暇なのか」と質問する。取締役の候補者に明治大学大学院の青山やすし教授の名前が入っており、それについて尋ねたのだとみられる。清水社長が答える。

 清水社長:社外取締役のお話かと思いますが、いわゆる独立役員、社外役員として、私どもに頂いている取締役会でのこれまでの、ご本人の蓄積・経験を生かしたたいへん貴重な監督、意見をちょうだいしているということで、独立性にはまったく問題がないと、このように考えております。

 

 質問者は社外役員の独立性を問題にしているのではなく、社外役員が東電のために割ける時間的余裕について疑問視している。ところが、清水社長は青山氏の「暇」については答えず、代わりに「独立性にはまったく問題がない」と言っている。ここでも答弁が質問からずれている。

 午前11時44分、7人目の質問者として、勝俣会長は「真ん中の2番目の両手を上げておられる方」を指名する。

 その男性株主はまず、取締役候補者のうち小森常務の適格性を問題にする。小森常務は2008年6月26日から2010年6月24日まで福島第一原発の所長を務めていた。現所長の吉田昌郎・執行役員の前任者である。つまり、今回の事故を防げるのに防がなかった直接の責任者だったといえる。

 男性株主:1号議案の6番の候補者、小森さん、この人は福島第一原子力発電所長をやっていらっしゃったと思うんですが、所長をやってて、津波対策について全く何も考えてらっしゃらなかったんでしょうか、所長のいすにふんぞり返っていただけなんでしょうか?

 

 次に、その男性株主は1株あたりの損失額に触れる。当期、すなわち2011年3月末日までの1年間の損失は1株あたり853円とされている。その結果、資産から負債を差し引いた純資産の額は1株あたり788円。「今年も損失を計上すると、会社は吹っ飛んでしまうんじゃないでしょうか?」と、その株主は尋ねる。そして、最後に、東電自身の節電の状況を皮肉を交えて問いただす。

 男性株主:この会場、冷房を弱めに設定していると思うんですが、東京電力の役員室の冷房はがんがんに冷えているんでしょうか? 役員は電気の無駄遣いをしても問題ないと考えてらっしゃるんでしょうか?

 

 勝俣会長によって、小森常務、清水社長、藤原副社長が答弁者に指名される。

 小森常務:常務の小森でございます。いろいろとご心配等おかけしておりますが、私は前職は福島第一の所長でございました。津波に関しましては先ほど武藤(栄・副社長)が申し上げましたが、土木学会の津波の評価に基づいて実施しているということを知っておりましたし、そのあとのいろいろな知見を踏まえまして地震の堆積物の調査ということを行うということを会社としても取り組んでおりましたし、その際、発電所としても、そういう地権者への協力依頼とかも含めまして、そういう見解を検討していたということは承知しておりまして、津波もしくは自然災害、柏崎の地震も含めまして、検討を鋭意進めていたということでございます。発電所におりましてもそういったことについては注意を払っておりました。以上でございます。


 清水社長:今般の震災の影響によりまして、今後の需要・供給の動向を見極めるのは困難であろうということで、23年度(2011年4月から2012年3月まで)の私どもの業績予想は未定とさせていただいております。一定の見通しがたった段階で、しっかりと検討し、お示し申し上げたいと思っております。


 藤原副社長:東京電力グループ全体といたしまして、25%の節電をしていこうということで、グループを挙げてやっているところでございまして、役員室もその例外ではございません。

 

 8人目の質問者として勝俣会長に指名された男性は、建屋の地下や敷地内の立坑トレンチの中にたまっている放射能汚染水について質問する。

 男性株主:放射能汚染水が大量にあそこ(福島第一原発)にあって、いつなんどき漏れるか分からない。そういう事態になったら非常に恐ろしいといつも感じながら(ニュースを)見ております。ニュースで見ましても、「大丈夫だ」というニュースはございませんで、「あと何センチ」というニュースがある。私が言いたいのは、まず、あれを国を挙げて抑えてもらいたいということなんですね。あれが漏れたら、国土も終わり、太平洋も終わり、恐ろしい事態になりますので、私は国会議員の方101人に、汚染水防止をやってくれと。これは東電1社の問題ではございませんで、これは国家的問題だと思います。あれが漏れたら大変なことになりますよ。あの放射能汚染水が漏れないような対策を国を挙げてやってもらいたいと思います。国もカネを出すべきですね。私も機会があるたびに国会議員にお願いしたいと思いますけど、ここの株主の皆さんも汚染水を止めることを第一にしてそれから弁償問題に入っていってください。


 小森常務:高汚染の水をいかに処理するかということに最大のリスクもございますし、課題もあるというふうに認識しております。まずは、原子炉を冷やすための注水によって水が増えているという状況がございます。汚染水につきましても、各建屋の中に滞留しておりましてそれが増えているというところを、いかに課題を解決するか。まずは汚染水を処理しなければならないということで除染の能力を持った水処理施設を作った、それが一点。それと、汚染水を処理して、その水を原子炉に注水するということで全体の量を減らしていくということが大きな技術的な解決策だと考えております。加えまして万が一の流出を防ぐための、スクリーンだとかそういったところの、流出する可能性があるポイントにつきまして、ピット(作業用の穴)を閉塞するとか、コンクリートで全体のピットを閉塞するとか、建屋内に(汚染水を)とどめるということをしております。また、高汚染水をためることのできるタンクを急ピッチで増設しておりまして、万が一には、そういったところに送れるようにする。処理装置についても、もう一つの装置を鋭意建設しておりまして、8月中には何とか動かすということで、安定した処理を行うということで、そうした総合方策によりまして、原子炉の冷却と処理の能力を高めて安定させていくことに最大の努力を払うつもりでおります。

 

 11時54分、9人目の株主が指名される。

 その男性株主は「私、この株主総会、この二十何年、ずっと出続け、それで原発の危険性をずっと言い続けて、聞いてもらえなかった」と発言を始める。

 男性株主:私は皆さんに申し訳ないと思っています。私どもが言っていたことが現実に起こってしまった、いや、思っている以上のことが起こってしまった。ほんとに申し訳ないと思ってるんです。ところが、ここにいる、いま上に並んでらっしゃる方(東電の役員たち)、この方たちの、先ほどらいずっと発言されていること報告されていることだと、どう考えたってそういう責任を感じていらっしゃらない。責任を取ることができない、そういう人たちが並んでいます。

 それで、きょうの株主総会というのはいつもの総会とまったく違います。何が違うかというと、議案が3つしかない。

 

 この株主総会に会社から提案されている議案は2つ。一つは「取締役17名選任の件」。もう一つは「監査役2名選任の件」。残り一つの議案は402人の株主から提案された「原発からの撤退」だ。

 男性株主:本株主総会は、こういう方たちが本当にそのまま経営を続けていっていいのかどうかを株主の皆さんに問うているわけです。私、40問の事前質問を出しているんですが、肝心なことには何も答えていない。答えてもらってないと私たちの判断材料がないわけですよ。汚染が拡大して飛散しているわけです。これをどうするのか。この方々に任せておいて大丈夫なのか? それを考えてみましょう。事故はなんで起こったのか? 事故原因、何なのか。データ隠し、データ改ざん、事故の過小評価。事故の原因ははっきりしてるんです。この東電的体質、これを直さない限り何回だって事故は起こるんです。責任を取れない、責任を取らないこの人たちに任せておいて事故を抑えられるのか? 抑えられるわけないでしょう。メルトダウンを隠していたこの人たちに任せていて、どうやって事故を止めることができるんですか。できるわけないでしょう。我々は世界に対して責任があるんです。

 それと、この会社はもう破綻しています。これはあなたがた(東電の取締役たち)が認めたことですよ。原賠法の16条に基づいて、国に対して支援要請を東電はしました。5月10日。この内容というのは「当社は資金面で早晩立ちゆかなくなる、だから、国に助けてくれ」と原賠法に基づいて言っているわけです。賠償責任を認めた上で「払いきれないから助けてくれ」と国に言ってるんです。それから5月20日、決算書。継続事業の前提に関する注記。「継続企業としての前提に重要な疑義を生じさせる」と言っています。あなた方は赤面しないでよく公にできるんですか? 損害賠償を計上したら債務超過ですよ。債務超過で破産しちゃうよ、と。これだけのことを世界の東京電力と言われたこの会社を、この人たちが全部、パーにしたんですよ。で、この人たちをもう一回……

 

 ここで、勝俣会長が「恐れ入りますが、もうちょっと短くお願いいたます」と割って入る。

 男性株主:今回起こったことに関する、みなさん一人ひとり、それぞれが、原因は何と考えるのか、責任をどう考えるのか、この事故に対する答えを一人一人、取締役の皆さん、言ってください。お願いします。

 

 会場から拍手が起こる。

 男性株主:もう一つ。4月25日、この人たちは、責任をとって報酬を50%下げると言ったんです。会社をつぶすようなことをやっているにもかかわらず、平然と、報酬を半分にしますと、そういう決定をしましたよね。それについてもどういう形で決定したのか、それも皆さん一人一人に聞きたい。

 

 東電は4月25日、常務以上の役員について「総報酬の50%を減額」と発表した(注1)。これに対して、世間からは「まだカットの仕方が足りないのではないか」(海江田万里・経済産業相(注2))などと批判の声が上がった。代表権を持つ会長、社長、副社長の8人の役員報酬を全額返上する方針を明らかにしたのは、5月10日に賠償支払いへの支援を政府に要請した際のことだった。勝俣会長がまず答える。

 勝俣会長:事故の責任の問題ですが、これについては、私ども、たいへんこれだけの事故を起こし、たいへん影響の大きいことに対して、たいへん申し訳なく思っているところでございます。で、その責任のとり方につきましては、今後、いかに原子力を安定させ、避難されている方々にも、できればお帰りいただくと、これがまず第一の観点でございます。もう一点は、津波によりまして当社の供給力は2100万キロワット減りました。そのためにも安定供給にどうやって努力するか、この2点目。3点目は、財務基盤等々を含めて大変厳しい状況にあるのをいかに立て直して会社を存続させるか、この3点のところが非常に大事であり、これに対しまして、まったく新しい方で、という考え方もありましょうけれど、これまでの経験・知見を生かして、単に、辞めることで責任をとるのでなく、しっかり更生することに責任を取るという方式で今回の役員選任の件をお諮りしているわけでございます。

 それから2点目。賠償責任のところでございますけれども、一刻も早く損害賠償をするといったことで、いま、原賠法のスキームで被害者の救済にもあたり、当社も企業存続するということで16条を選定したということであります。

 3点目の報酬の問題でございますが、これは言ってみれば、責任の問題、それから、今後に続く厳しい状況を踏まえて、2段階で報酬を削減したということでございます。ご理解をいただければ幸いです。

 

 役員報酬の半分削減に世論の反発が強まりつつある中で、遅ればせながら全額削減に踏み切った経緯について、勝俣会長は「2段階で報酬を削減した」と説明する。決算については武井副社長が答える。

 武井副社長:継続企業の前提に関する注記につきまして、ご回答を申し上げたいと存じます。会計監査人からの監査報告書にも同様の注記がございます。これは法務省令、会社計算規則に基づいて、私どもの決算のとりまとめ時点の状況というものに照らしまして記載したものでございます。これは将来に向かっての現状の事業存続の継続性につきまして重要な疑義が発生している場合にそれを認識しているかどうか、また、それを解消する、あるいは、改善するための会社の改善計画があるのかないのか、そこをどういうふうに認識しているか、また、その改善計画は効果を有する可能性があるかどうか、いうようなことを認識しているかどうか、こういういくつか要素がございまして、それに基づいて整理して記載したものがこれでございます。これをとりまとめましたのが、5月20日でした。ご案内の通りそれ以降、原子力損害賠償支援機構法案という具体的な法案が閣議決定を経まして国会に提出されているところでございますので、私どもといたしましては、今後、1日も早いこちらの法律の成立をお願いをいたしまして、この「継続性の疑義」に関する注記をなくすことができればいい、というふうに考えているところでございます。

 

 午前10時に株主総会が始まったときに会場にいた株主は3917人だったが、

10時半に6349人、

11時に 8657人、

11時半に8954人

 

と急増し、正午には9130人に達する。過去の最多の出席者は2010年の3342人で、それをはるかに超える。

 午後零時10分、女性株主が質問者に指名される。2つの質問があるという。

 女性株主:事故直後にデータ隠しがあっためにどんどん汚染が広がっている状況なんですけども、その責任をすごく私は感じています。一番被害を被っているのは福島の県民の方々なんですが、その中でも小さな子どもたちが被害を受けています。事故の直後に政府もそうなんですが東電も「ただちに影響はない」とずっと言い続けてきましたね。私が一番怖いのは、晩発性の障害、影響をすごく危惧しています。データが隠されていたために今は関東一円にホットスポット等に非常に放射性物質が検出されています。私のような年代の人は影響が少ないと思いますが、子どもたちにはこれからも将来にわたって小児がんとか甲状腺がんとかどんどん影響が出てくると思います。それに対してきちんと責任をとっていくのかどうかをまず聞きたいと思います。

 で、あともう一つですが、いま現在もデータが隠されていると思います。一つは汚染水の問題なんですけど、汚染水はもうあふれているんじゃないですか? 一番心配なのは、地下水に染み込み、あるいは、海に汚染水が広がり、もう手の施しようのない状況になり、もうすでに海に流れて、このような状況で、漁業関係者、ならびに、それを食べていかなければならない私たちはもう摂取せざるを得ないような状況になってるんですよね。それに対しまして、晩発性の障害も含め、一生涯、補償してくれると誓ってくれますか?

 

 枝野官房長官や東京電力の記者会見ではたびたび、各地で観測された放射能汚染の数値について「ただちに健康に害を与えるものではありません」などと説明されてきた。これはすなわち、長い目で見たときには、害があるかどうかはよく分からない、ということをも意味する。そうした「晩発性」の健康被害をその女性株主は心配している。これに対して、小森常務はまず「情報隠し」という指摘に

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
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