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深掘り

東京電力株主総会一問一答詳録

脱原発株主提案否決の理由「国民的な議論で決めるべき」と東京都

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 福島第一原子力発電所の事故が収束することなく続くなか、東京電力の株主総会が6月28日に開かれた。延べ9309人の株主が参加し、6時間9分にわたって続いたその模様の詳細を複数回に分けて報告してきた。その最終回。「原子力発電からの撤退」を定款に定めようとする株主提案は大差で否決された。東電の大株主(第5位)である東京都交通局は「原発の是非については、一会社である東京電力株式会社の株主総会ではなく、広く国民的な議論の上、決めるべき」として、株主提案に反対していた。

 

 ■「福島に帰りたい。でも帰れない」

拡大東京電力株主総会に提案された定款変更案

 この日の株主総会で審議される最後の議案、第3号議案は「原子力発電からの撤退」という章を定款に新設するというものだ。402人の株主が提案した。提案者を代表して、脱原発・東電株主運動の浅田正文さんが提案理由を説明する。

 浅田さん:私は、原発大惨事により、福島県から石川県へ避難を余儀なくされました。原発から20キロちょっとのところに住んでおりまして、避難指示を受けたのでございます。第3号議案 定款一部変更の件につき、補足説明致します。株主総会開催通知9ページでございます。皆さま、おつかれかと思いますが、私の心を少し聞いていただきたいと思います。

 6月11日のことです。その日は雨が降っておりました。母親を中心とするグループが福島から我が社(東京電力)へ、「学校グラウンドの汚染された土の処分などを求める申し入れ」にしにまいりました。事前に約束をしておりました。しかし、雨の降りしきる中、玄関はおろか、ひさしのある場所にも入れてもらえませんでした。謝罪どころか被害者である福島県民を門前払いしたのであります。一方、社長さんは避難所で土下座をして「誠意をもって対処したい」旨の発言をされています。社長さんのおっしゃる「誠意」とはどのようなことでしょうか。

 さて、私は17年前に、自給自足を目指し、東京から福島へ移り住みました。その生活が一瞬のうちに奪われました。第二の人生、第二の故郷が奪われてしまいました。ましてや、先祖代々、福島で農業・漁業・酪農で生計を立てていた方々は、何もかもすべてを奪われてしまいました。将来を悲観して自分の命を自ら絶った方もあります。強制移住させられた飯舘村の酪農家と牛との別れのニュースには涙を禁じえません。

 それに対して、わが社(東電)の役員が報酬をもらっていますが、まったく何もなくなった人のために返上して被災地へ回すことは考えないのでしょうか。考えませんか?

 誠意を形に表してほしいのです。例えばです。

 南相馬市の病院では、一人の医師が1日に170人もの患者を診察していました。東電には、わが社には、立派な東電病院が、7階建ての病院が新宿にございます。そこの医師と看護師さんを半数、福島へ応援に出していただけなかったんでしょうか? なぜなんでしょうか?

 また、さらには、風評被害に苦しんでいる福島と近隣の野菜を、社員食堂で 来る日も 来る日も 来る日も、また来る日も、使い続けていただいておりますでしょうか。

 福島の子供たちは、屋外プールの使用を禁じられています。校庭での活動も制限を受けております。野原でも遊べません。育ち盛りなのです。株主の皆さん、役員の皆さん、あなた方のお子さんとかお孫さんがどのようなことになるか、福島の子どもたちと重ね合わせてみてください。

 そしてまた聞いてしまいました。「想定外であった」と。本当にそうなんですか。貞観地震のことを警告されていたのです。経済性のために安全性を犠牲にしたのではないんでしょうか。

 ところで、福島第一原発では1・2・3・4・5号炉のシュラウドのひび割れが相次ぎました。シュラウドは原子炉の要の部分にあります。このほかにもトラブルが多発しています。これは装置、すなわち、ハードのひび割れです。

 わが社のひび割れはハードばかりかソフトとしての組織にも及んでおります。数あるヒューマンエラーの中でも、昨年、第一原発6号炉の定期点検中に、運転中だった5号炉のECCS(非常用炉心冷却装置)制御のケーブルを抜くというとんでもない誤りを犯しました。しかも、2週間もその誤りに気付いておりません。

 わが社(東電)は、ハードもソフトもひび割れしています。原子力発電所を動かす資格はありません。

 ましてや、原発は人の智恵、人知を超えたものです。使用済みの核燃料の無害化の技術を人類は持っていません。作業員の被曝という犠牲にたった電気です。CO2発生を抑制できないし、定常時でも冷却に大量に使う水を温かいまま海へ流しています。

 人智を超えたものはつくってはいけないんです。使ってはいけないんです。孫たちに、子どもたちにこれ以上、ツケを回してはなりません。

 今の気持ちです。

 福島に帰りたいです。でも帰れないんです。少し大袈裟にいえば私たちは流浪の民となりました。やるせない、無念、悔しい、どんなに言葉を並べてもこの気持ちは言い尽くせるものではありません。このような体験は私たちだけで十分です。

 株主の皆さん!! 「さようなら原発」「脱原発」を高らかに議決して下さるようお願い致します。

 放射能から福島の子供を守るグループが祈りを込めてバラを折りました。この祈りのバラを会長さんと社長さんに進呈したいと思います。どうか祈りを共にしてください。

 

 浅田さんが、折バラを勝俣会長らに手渡す。勝俣会長は「ありがとうございます。頂きます」と礼を言う。

 ■「業務執行に関する事項は株主総会ではなく取締役会に委ねる」

 勝俣会長は「はい、それでは」と空気を断ち切り、「右から2番目の方」を指名する。

 男性株主:今回の福島第一原子力発電所の事故に関して、この年度報告書の3ページの下から12行目で、「史上まれに見る巨大な地震や津波の影響により」となっているんですが、そこで、原子力賠償法第3条「異常に巨大な天災地変」と、これとどっちが大きいんですか? この文言があるということは、異常に巨大な天災地変ならば、数兆円かゼロになるか、争わないといけないでしょう。我々はここ(東電)のオーナーですよ。この人たち(東電役員)がはっきり言って無能だったから、なぜ無能かというと、国の責任をひとつも追及しないんですよ。原子力賠償法をやらないんであれば、とっととやめたらいいし。原子力賠償法のことで、どういう社内的手続きをしましたか? 何兆円かゼロか。そのくらいのことをやらないといけないんで。なんで「史上まれにみる」というわけのわからない言葉を使われたんですか?


 勝俣会長:原子力損害の賠償責任につきまして、いわゆる3条1項但し書きの「異常に巨大な天災地変で引き起こされた」ということで私どもが免責されるという解釈も十分に可能であると考えております。原賠法の解説書によりますと、関東大震災の3倍程度というようなお話もございますが、今回の地震のエネルギーというのは関東大震災の44倍でございます。そうした意味合いも含めまして、「異常に巨大な天災地変」にあたるものであろうと考えております。それで、当社が免責されるという解釈も十分に成り立つと考えておりますが、この点につきましては弁護士の先生たちのご意見も伺っております。ただ、免責かどうかの結論が出るのにたいへん時間がかかります。その間、裁判が必要となり、国の支援がなければ、被害者の方々が救済されないばかりか、当社としても、資金不足、収支破綻に陥り、事業が立ちゆかなくなる恐れが多分にあると判断したものでございます。そうしたことから、国と一体となって国の支援を頂きながら補償を実施していくことが被害者の早期救済、ならびに、当社の事業継続のために必要と考え、国に対して原賠法16条に基づく援助をお願いした次第です。

 

 勝俣会長がここで、「ただいまご説明を頂きました株主さま提案の議案につきまして、取締役会といたしましては反対でございます」と述べる。

 取締役会の意見は、株主総会開催の通知に次のように書いてある。

 株式会社の定款は、主として会社の組織、事業目的、株式等の基本的事項を定めるものとされております。一方、会社法では、合理的、機動的な事業運営を確保する観点から、業務執行に関する事項については取締役会の決定に委ねることを基本としています。

 したがいまして、ご提案のような業務執行に関する内容を定款で定めることは適当ではないと考えます。

 

 会社の根本規則あるいは憲法とも言える定款に脱原発を定めるのはそぐわないというのである。福島で事故が起こる前の株主総会では「災害に強く安全・安心な原子力発電所の構築に取り組んでまいる所存であります」などと、脱原発に反対する理由を説明していたが、そういう主張は引っ込め、いわば形式面の理由にとどめたようだ。

 ■株主総会議事録の公開を拒否

 勝俣会長は続けて「それではただいま株主さまご提案の議案について、ご質問をどうぞ」と呼びかける。

 それに応じて男性株主が発言する。その男性株主は、会社側の提案の1号議案、2号議案、脱原発の株主たちの提案した3号議案のいずれにも反対だという。3号議案を提案した浅田さんの話に感動し、3号議案に「本当は賛成したい」が、「残念ながら反対」だという。「まず、そもそも人間の文化・科学の発達の歴史というのは、火を盗んで、すべてのこの宇宙のエネルギーは、太陽の核融合と、地球の熱も核崩

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書に『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)。共著に『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)など。
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