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深掘り

株主の権利弁護団から

会社法改正への意見:社外取締役を過半数に

富田 智和(とみた・ともかず)

会社法改正パブリックコメント 

弁護士 富田 智和

 1 はじめに

拡大富田 智和(とみた・ともかず)
 弁護士、神戸そよかぜ法律事務所所属。
 2000年3月、関西学院大学法学部政治学科卒業、2004年3月、関西学院大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。
 2003年11月、司法試験合格。2005年10月、兵庫県弁護士会に登録。
 現在、株主の権利弁護団に所属し、株主の視点から商事訴訟・株主代表訴訟に多く取り組んでいる。

 法務大臣の諮問機関である法制審議会会社法制部会は、2011年12月7日に「会社法制の見直しに関する中間試案」(以下、「中間試案」といいます。)を取りまとめました(注1)。そして、2011年12月14日から2012年1月31日までの間、この中間試案に対するパブリックコメントを求めました(注2)

 今回の会社法制見直しには、株主の立場から多くの株主代表訴訟・商事訴訟を行っている株主の権利弁護団としても非常に関心が高いところです。そこで、2012年1月31日に「意見書 ~ 会社法制の見直しに関する中間試案に対して~」と題する意見書(以下、「本意見書」といいます。)を法務省宛に送付いたしました。

 2 会社法改正の動向

 皆さんもご承知のとおり、会社法は2005年に成立し、2006年5月から施行されており、本稿作成時点(2012年4月)で施行からすでに6年が経過しようとしています。

 しかし、会社法制定に際しては、企業結合法制に関して引き続き検討を行うことをはじめとして様々な附帯決議がなされたこと(第162国会衆議院法務委員会議事録第18号(注3)、第162国会参議院法務委員会会議議事録第26号(注4))に示されているように、会社法制定によっても解決できなかった問題点が残されることになりました。

 そのため、2010年2月24日に開催された法制審議会第162回会議において、千葉景子法務大臣(当時)から、企業統治の在り方や親子会社に関する規律等を見直す必要があるためその要綱を示されたいとの諮問がなされ(諮問第91号)、これを受けて法制審議会に部会が設置されることになりました。その後、部会内での議論を経て試案が取りまとめられたのです(「会社法制の見直しに関する中間試案の補足説明」(注5))。

 以下、本稿では会社法制の見直しにあたり重要な論点となっている箇所について、本意見書の内容を敷衍して論じるとともに、株主の権利弁護団の考えを述べていくことにいたします。

 3 社外取締役の選任義務付け

 社外取締役については、監査役会設置会社(公開会社であり、かつ大会社であるものに限る。)において、1人以上の社外取締役の選任を義務づけるとするA案、金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において1人以上の社外取締役の選任を義務づけるとするB案、及び現行法の規定を見直さないとするC案の3つの案が中間試案において出されていました。

 社外取締役については、株主の利害関係と一致した方向での経営の監視・監督が期待できるという意味では全ての会社において設置が望ましいことは言うまでもありません。しかし、一方において報酬等選任に要するコストが無視できないことも事実です。そこで、経営者の利害関係と株主の利害関係が乖離しがちな大規模な上場会社に限って社外取締役の選任を義務づけるとするA案が基本的には望ましいと考えております。

 もっとも、昨年に発覚したオリンパス株式会社をめぐる不祥事では、会社の不正を糾そうとした代表取締役が他の取締役会出席取締役の全員一致の決議によって解任されるということがありました(注6)。このことからも明らかなとおり、たとえ社外取締役が一人で株主の利益のために奮闘したとしても、経営者の利益を第一義に考える取締役が多数であった場合には、当該企業のガバナンスは機能不全に陥るということです。従って、社外取締役は「1人以上」では足りず、社外取締役だけでも取締役を選任・解任できるように取締役会の過半数を構成できる人数とすべきです。

 また、社外取締役に期待される監視・監督の実効性という観点からすれば、社外取締役には会社からの独立性が担保されていなければなりません。そのため、その要件については当該企業の親子会社の関係者ではないことのほか、取締役等と一定の親族関係にないことも要件としたA案に加えて、当該企業の重要な取引先の関係者ではないことも要件として加えるべきであると考えました。

 4 多重代表訴訟

 株式会社の親会社の株主が当該株式会社(子会社)の取締役の責任を追及する訴えのことを多重代表訴訟といいます(あるいは、「二段階代表訴訟」と言われることもあります。)。現在の会社法のもとではこの多重代表訴訟を真正面から認める規定はありません(注7)。中間試案では、この多重代表訴訟を導入すべきであるとするA案と多重代表訴訟は導入しないとするB案が出されていました。

 1997年商法改正により、持ち株会社が認められるようになり、株式会社の企業形態が複雑化したことにより企業同士が持株会社を頂点とした多層的な関係を築くようになりました。

 このような企業形態のもと、子会社取締役の行為によって子会社に損害が発生した場合、親子会社の特殊な人的関係等から考えて、親会社が子会社取締役の責任を適切に追及していくことを期待することは困難となります。そのため、多重代表訴訟を認める必要性が指摘されていました。このような必要性から、旧商法下においても、とりわけ100パーセント子会社の場合には多重代表訴訟を認める見解も主張されてきたところです(注8)(注9)。株主の権利弁護団としても、このような必要性から多重代表訴訟を認めるA案に基本的に賛成しています。

 もっとも、A案においては多重代表訴訟が提起できない場合として、「当該訴えに係る請求の原因である事実によって当該親会社に損害が生じていない場合」が挙げられています([1]イ)。しかし、株主代表訴訟に期待されている機能というのは、単に会社の損害を回復するということに尽きるわけではなく、取締役の任務懈怠を抑止するという機能も期待されているといえます。とりわけ、多重代表訴訟を認める必要性が上述したとおり親子会社間の特殊な人的関係により子会社取締役の責任が追及されなくなることを防ぐことにあることからすれば、多重代表訴訟では後者の機能がより期待されているというべきです。その観点からすれば、親会社に損害が生じていなくとも子会社取締役に対する責任追及を認める必要性が高いといえます。また、そもそも子会社に損害が発生したとしても、常に親会社に損害が発生するとはいえないことからA案のような除外事由を設けてしまうと多重代表訴訟の適用範囲を不当に狭めることにもなりかねません。

 また、A案では多重代表訴訟の原告適格を完全親会社の株主に限っています([2])。しかし、友好的関係にある企業グループ外の第三者が子会社の少数株主になった場合などを想定すると、この案では子会社取締役の任務懈怠行為が放置されることにもなりかねません。したがって、原告適格は形式的基準によるべきではなく親子会社が経済的・財産的に一体関係にあるのかという実質的基準によるべきであると考えています。

 5 特別支配株主による株式売渡請求

 中間試案においては、特別支配株主(ある株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を有している者)が対象会社の全ての株主に対してその有する株式の全部を特別支配株主に売り渡すことを請求することを認める制度の導入が検討されています。

 しかし、株主の権利弁護団が吉本興業事件で主張しているとおり(注10)、株式を取得する株主というのは、単に経済的利益のみを追求しているわけではなく、当該企業を愛し、応援するという見地から長期にわたり株式の保有を望む株主が少なくありません。中間試案で検討されている特別支配株主による株式売渡請求は、かかる株主の期待を一方的に剥奪する制度であるといえます。

 また、経済的観点から見ても、かかる制度が認められた場合、特別支配株主が株価下落時を狙って恣意的に株式売渡請求を行った場合、株主としては高い値で購入した株式を、値下がりした途端に強制的に安値で手放すことを余儀なくされるということになります。

 このような理由から、株主の権利弁護団としては特別支配株主による株式売渡請求制度の導入に反対しています。

 6 全部取得条項付種類株式

 中間試案においては、全部取得条項付種類株式について情報開示の充実などを図るとされています。

 この全部取得条項付種類株式は、立法過程においては、会社が債務超過の場合等「正当な理由」のある場合に限って認めるという方向で意見が一致していました。ところが、条文化の過程において「正当な理由」という文言が削除され、結果的に条文上は何らの限定も付されていないことになりました。

 もっとも、条文上「正当な理由」が要求されていないとしても、この全部取得条項付種類株式が無条件に認められるということにはなりません。上述したとおり、全部取得条項付種類株式は、会社の債務超過の場合など正当な理由のある場合に限って取得を認めるというのが立法者の意思であったのです(2004年11月17日に開かれた第31回法制審議会会社法(現代化関係)部会における議論を参照(注11))。

 また、この全部取得条項付種類株式により、株式を奪われてしまう結果をもたらすという点は上述した特別支配株主による株式売渡請求制度と同様です。

 このような理由から、株主の権利弁護団としては全部取得条項付種類株式について、情報開示を充実させることにより株主保護を図ろうとする方向性は評価しつつも、そもそも全部取得条項付種類株式は、会社の債務超過の場合など正当な理由がある場合に限って取得が認められるべきであると考えています。

 7 最後に

 以上、会社法制の見直しにあたり検討すべきいくつかの論点について、本意見書の内容を説明してきました。もっとも、ここでの紹介を省略させていただいた論点も多くあります(監査・監督委員会設置会社制度、株式の併合、組織再編における株式買取請求等)。株主の権利弁護団としては、今後も会社法制の見直しに関心を持って発言を続けていきたいと考えています。

 本意見書の全文をご覧になりたい方は、株主の権利弁護団のホームページにおいて公開していますので是非ご覧下さい(注12)

 (注1

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富田 智和(とみた・ともかず)

 弁護士、神戸そよかぜ法律事務所所属。
 2000年3月関西学院大学法学部政治学科卒業、2004年3月関西学院大学大学院法学研究科博士課程前期修了(法学修士)。
 2003年11月司法試験合格、2005年10月兵庫県弁護士会に登録、2010年4月神戸そよかぜ法律事務所設立。
 現在、株主の権利弁護団に所属し、株主の視点から商事訴訟・株主代表訴訟に多く取り組んでいる。

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