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深掘り

証券代行業務の現場から見えたこと

この6月の株主総会の新たな傾向 エンゲージメントが活発化

依馬 直義(えま・なおよし)

機関投資家による議決権行使の状況
 ~2018年6月の株主総会を振り返って~

  

三井住友信託銀行株式会社
証券代行コンサルティング部
審議役 依馬直義
 

 ○はじめに

依馬直義拡大依馬 直義(えま・なおよし)
 三井住友信託銀行株式会社 証券代行コンサルティング部 審議役。
 1991年中央信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社。信用格付機関の出向等を経て、IRコンサルティング業務に携わり、2012年4月にIR・SRチーム長を務め、2017年10月より現職。
 本年6月に「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」(2015年策定)が改訂され、これにあわせて金融庁は「投資家と企業の対話ガイドライン」を策定した。2つに共通する基本的な考え方としては、①経営環境の変化に対応した経営判断の促進、②投資戦略・財務管理の方針の策定、③CEOの選解任プロセスの開示、取締役会の機能発揮のため多様性の確保、④政策保有株式の縮減、⑤アセットオーナーの役割強化であり、上場企業は改訂後のコード内容を踏まえてコーポレート・ガバナンスに関する報告書を、遅くとも本年12月末日までに提出することを求められている。また、経済産業省はコーポレートガバナンス・コードを補完するものとして、2017年3月に「コーポレートガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)、5月に「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報と無形資産投資-」(価値協創ガイダンス)、10月に「伊藤レポート2.0」を相次いで公表しており、これらのツールを活用した企業の情報開示、投資家との対話の促進を後押ししていることから、株主総会前に企業と投資家との間でエンゲージメントが活発化する動きがみられた。
他方、2017年5月に改訂された「日本版スチュワードシップ・コード」(「責任ある機関投資家」の諸原則、2014年制定)の影響を受けて、機関投資家の議決権行使スタンスは厳格化の傾向がみられ、株主総会は単に議案を承認する形式的なものではなく、企業のガバナンス体制、成長戦略、株主還元策等が問われる場に変化してきている。本稿では本年6月の株主総会を包括的に振り返り、機関投資家による議決権行使の状況について解説したい。

 ○日本版スチュワードシップ・コード改訂への対応

 1.議決権行使結果の個別開示

 金融庁によれば、2017年6月総会における議決権行使結果の個別開示は国内大手運用機関を含む70超の機関が実施しており、企業は機関投資家ごとに議案別・候補者別の賛否結果を把握することができるようになった。また、三井住友信託銀行やニッセイアセットマネジメント等は判断理由も公表している。

 2.運用機関のガバナンス・利益相反管理等

 同一の金融グループ内に証券会社(法人取引業務)と投資顧問会社(資産運用業務)の両方を抱える機関、あるいは上場企業向けサービス(融資業務)と株主向けサービス(資産運用業務)の両方を提供する信託銀行が、利益相反がないことを対外的に示すため議決権行使基準の詳細について公表する動きもみられる。たとえば、三井住友信託銀行は「責任ある機関投資家としての議決権行使(国内株式)の考え方」を開示し、各議案に対する具体的な判断基準を明文化している。さらに、信託銀行によるガバナンス体制強化の動きもあり、2016年10月にみずほ信託銀行が運用部門を切り離したうえでみずほ系運用会社3社と統合し、アセットマネジメントOneを設立したほか、2018年4月に三菱UFJ信託銀行が運用部門を本体に残す一方、融資業務を切り離して三菱UFJ銀行に移管した。また、10月には三井住友信託銀行が資産運用機能を分割し、グループ関係会社である三井住友トラスト・アセットマネジメントとの統合を予定している。

 3.アセットオーナーによるスチュワードシップ活動

 世界最大級の運用総資産額を誇る公的年金の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、インベストメントチェーンの川上に位置するアセットオーナー(ユニバーサルオーナー)としての影響力を高めている。具体的には、2015年9月の国連責任投資原則(UN-PRI)への署名、2016年10月のスチュワードシップ推進課の新設、2017年7月の3つのESG(社会・環境・ガバナンス)指数選定と同指数に連動したパッシブ運用開始の公表等、スチュワードシップ活動への取組みを強化している。また、私的年金の企業年金連合会は、2017年10月に三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、りそな銀行、三井住友アセットマネジメントと共に「機関投資家協働対話フォーラム」を設立し、集団的エンゲージメントに着手している。

 4.パッシブ運用におけるエンゲージメント

 アセットオーナーによるスチュワードシップ活動強化の動きを受け、資金の運用委託先であるアセットマネージャーが組織体制の強化を図るために、「スチュワードシップ推進部」や「責任投資調査部」といった部署を設置し、非財務項目であるESG(環境・社会・ガバナンス)をテーマとした企業との対話等を促進する動きも活発化している。さらに、海外機関投資家からも資本効率の改善、独立社外取締役の増員、非財務情報の開示等を求めるエンゲージメントレターを企業の社長あてに発送し対話の機会を探る動きも増えている。

 ○主な機関投資家による議決権行使ガイドラインの変更

 1.海外機関投資家

 米大手議決権行使助言会社のISS(Institutional Shareholder Services)は、社外取締役の人数について2013年に最低1名、2016年に最低2名いない場合、経営トップである取締役(社長と会長)の選任に反対を推奨するポリシーを導入した。その結果、2017年6月末までに84.7%の日本企業(ISS調査対象企業)が社外取締役を複数選任するに至った。2018年ポリシー改定では、「2019年2月から指名委員会等設置会社および監査等委員会設置会社において、取締役の3分の1を社外取締役とすることを求め、株主総会後の取締役会に占める社外取締役の割合が3分の1未満である場合、経営トップである取締役選任議案への反対を推奨する。ただし、社外取締役の独立性は問わない。」とする方針である。また、買収防衛策については、第1段階の形式基準に「総継続期間が3年以内であること」を追加した。長期にわたり継続される買収防衛策は経営陣の自己保身と解釈されかねないため、当然のように更新し続ける企業に対して投資家の懸念を表明することを目的としている。ただし、ISSは2017年総会において買収防衛策に対する賛成推奨の事例は1件もなかったことから、今回の改定による賛否推奨への影響は極めて限定的といえる。

 他方、もう一つの米大手議決権行使助言会社のグラスルイス(Glass Lewis &Co., LLC)は、2017年に「監査役会設置会社において取締役会および監査役会の合計人数のうち、独立社外役員が3分の1以上いなければ、責任追及の意味で経営トップ(会長、いなければ社長)の選任に反対を助言し、さらに候補者の中から基準を満たす人数まで独立性のない候補者に対し反対助言する」としている。2018年には特段変更はないが、2019年からは、「女性役員(取締役または監査役)を最低1名求めることとする。原則、女性役員がゼロの場合、監査役会設置会社または監査等委員会設置会社では会長(会長職がない場合は社長)、指名委員会等設置会社では、指名委員会の委員長の選任に反対助言とする。対象企業は、2019年は時価総額が大きい100社を組入れた株式指数“TOPIX100”とする。」方針である。また、定款変更では、「剰余金の配当等の決定機関について、株主総会による決議を排除するように定める場合は原則として反対助言とする。」とした。さらに、買収防衛策については「取締役会の独立性は過半数」に厳格化した。一方で、役員の兼職社数の基準については、2017年に「①上場会社での業務執行に携わる役職を含む兼任の場合は2社まで、②社外役員(取締役または監査役)のみの兼任の場合は5社まで」に削減されたが、2018年は「上場グループ会社(原則:連結子会社と持分法適用の関連会社等)において、取締役または監査役を兼務している場合、その上場しているグループ会社を個々に数えるのではなく、グループとして1社として数える」に緩和された。

 また、米大手インデックス運用機関のステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)は、“TOPIX500”に組み入れられている日本企業を対象に「女性役員1名(社内外を問わない)の選任を求めるほか、少なくとも社外取締役が3名または3分の1いない場合、経営トップに反対」とする基準に変更している。

 2.国内機関投資家

 三菱UFJ信託銀行は、2018年4月より取締役選任について「親会社等を有する上場会社において、独立性のある社外取締役が取締役総数の3分の1以上選任されていない場合、取締役候補者全員の選任に反対する」としており、従来の「社長の再任」から「取締役候補者全員」に反対の対象を拡大している。なお、親会社等を有しない上場会社においては、従来どおり「社外取締役は複数選任」としているが、反対の対象は取締役候補者全員に変更している。

 三井住友信託銀行は、2018年1月より取締役選任について「ROEが3期連続TOPIX下位25%タイルの場合、3年以上在任の取締役に反対」に変更しており、従来の「かつ配当性向30%未満の基準」を廃止した。また、社外取締役の独立性基準については、「主要取引先」の場合は独立性がないとして反対していたが、「取引先」の記載でも取引規模の数値の開示がない場合は反対に変更したほか、主要な借入先の定義は「借入金額が最も多い金融機関グループの出身者」としていたが、「借入金額が最も多い、または事業報告の主要借入先及び大株主(上位10名)に記載がある金融機関グループの出身者」に変更した。

 第一生命保険は取締役選任について「直近3期連続の営業・経常・最終赤字(連結ベース)」を適用していたが、2018年4月より「直近5期連続ROE2%未満(連結ベース)」を追加し、該当期間中継続して代表取締役として在任する取締役に対し原則反対に変更した。また、この業績基準は役員報酬額の増額、役員賞与の支給議案についても適用される。

 ○2018年6月総会における議決権行使の状況

 1.議決権行使率

 2018年6月に開催された当社証券代行取引企業約850社の議決権行使率(前日集計分)は、全体で58%となった。所有者別にみると、信託銀行(いわゆる国内機関投資家)がほぼ100%、外国人(いわゆる海外機関投資家)が77%、個人が37%となった。

 2.主な議案に対する特徴・傾向

 (1)剰余金処分

 一般的に反対が少ない議案であるものの、国内機関投資家の中には「豊富な株主資本または現金資産を持ちながら株主資本の有効活用が不十分で、配当率が低く、かつ株主還元や資金の使途などの観点で改善策を示していない」と判断する場合には、反対するケースもみられた。また、「企業の資本効率性、財務状況および内部留保を勘案し、配当性向が妥当な水準(一般的には30%以上)を下回っていて、そのことについて合理的な理由がない場合」に反対する事例もあった。他方、海外機関投資家が反対するケースはほとんどなく、ISSは通常の場合、「配当性向が15~100%の範囲内」であれば、原則として賛成を推奨している。

 (2)取締役選任

 ア.社外取締役の選任

 社外取締役の選任については、国内機関投資家の大半やISSは複数選任の基準を設定しているが、東京証券取引所によれば市場第一部1,778社のうち独立社外取締役を2名以上選任した企業の割合は88.0%(2017年7月14日現在)となったため、社外取締役が複数選任されていないことによって反対されるケースは少なくなっている。しかしながら、JPモルガンアセットマネジメントは「平成30年4月以降に開催される株主総会において、社外取締役の比率が総会後の取締役会で三分の一に満たない場合、社長等、代表取締役の選任に原則反対する」としたほか、前述のとおり議決権行使助言会社や海外機関投資家から3分の1以上を求める動きがみられることから、来年に向けて人数を引き上げる機関投資家が増える可能性がある。

 イ. 社外取締役の独立性

 社外取締役の独立性基準としては、(ⅰ)大株主・親会社(発行済株式総数の10%以上あるいは大株主10名等)、(ⅱ)主要な借入先、(ⅲ)主要な取引先、(ⅳ)顧問契約のある弁護士事務所・会計士事務所、(ⅴ)コンサルティング契約のある企業、(ⅵ)株式の持ち合い先、(ⅶ)役員の相互派遣先、(ⅷ)親族等を設定している機関投資家が一般的である。ただし、ISSは監査役会設置会社については社外取締役の独立性を問わない。機関投資家は、社外取締役の独立性の判断にあたって企業に対し情報開示の充実を求めており、たとえば取引関係がある候補者の場合、取引規模の客観的な数値や金額の開示がなければ独立性がないと判断するケースが増えている。なお、客観的な数値の開示が招集通知上に記載がない場合には考慮しないケースもみられることから、開示方法には注意すべきである。

 ウ.業績基準

 国内機関投資家の多くは業績基準を設けており、ROE(株主資本利益率)が一般的には過去3年連続で一度も一定数値(5~8%が目安)を上回らない場合や東証一部上場企業全体の中で下位(3分の1あるいは4分の1など)に該当する場合、在任期間が一定以上の再任取締役候補者に対し反対するケースがみられた。また、ISSは「過去5期平均の自己資本利益率が5%を下回りかつ改善傾向にない場合、経営トップである取締役(社長と会長)に反対する」ことから、ROEが継続的に低迷する企業に対して海外機関投資家からの反対があった。ただし、海外機関投資家の中にはスチュワードシップ責任の高まりを背景にISSの賛否推奨にそのまま準拠せず独自のガイドラインに基づいて判断する傾向がみられる。

 エ.その他基準

 その他基準としては、①社外取締役の出席率(一般的には75%未満)、②合理的理由がない社内取締役の増員、③社外取締役の減員、④適正規模でない取締役会の員数(15名以内が目安)、⑤社外取締役の長期在任(8~10年以上)、⑥社外取締役の兼職社数(5社超)、⑦株価パフォーマンス、⑧不祥事・反社会的行為の発生、⑨政策投資株式の過度な保有等に該当した場合、反対する事例がみられた。

 (3)監査役選任

 監査役選任においては、「社外監査役としての独立性がない」ことを理由に反対するケースが最も多かった。社外取締役の独立性を問わないISSも、社外監査役には独立性を求めていることから、国内外を問わず機関投資家から反対が多くみられた。ISSの独立性基準としては、①大株主や親会社、②メインバンクや主要な借入先、③主幹事証券、④主要な取引先、⑤監査法人、⑥コンサルティング契約や顧問契約などの重要な取引関係のある先、⑦親族等が挙げられるが、「クーリングオフ・ピリオド」(いわゆる退職後の経過期間)を採用していないため、こうした先で過去に勤務経験があれば独立性がないと判断する可能性が高い。一方、グラスルイスはこれを採用しているため退職時期の開示があり一定期間が経過していれば独立性があると判断している。また、ISSは社内監査役に対して反対推奨することはほとんどないが、グラスルイスは取締役会と監査役会の合計人数に占める独立役員の割合や、監査役会全体の構成をみて判断していることから、改選後の監査役会メンバーに独自の独立性基準を満たす社外監査役が過半数いない場合、社内監査役あるいは独立性がない社外監査役候補者に反対を推奨している。

 (4)役員報酬関連

 ア.賞与支給

 日本企業の場合、支給金額が過大と判断して反対する機関投資家はほとんどいないが、業績の低迷、大幅な増額、不祥事の発生等を理由に反対するケースがみられた。なお、国内機関投資家の多くは、経営を監督する立場である社外取締役および社内外の監査役が支給対象者に含まれている場合に反対しており、グラスルイスも同様の基準を持っている。

 イ. 株式報酬

 コーポレートガバナンス・コードによれば、「経営陣の報酬は、従来型の固定報酬から持続的な成長に向けた健全なインセンティブの一つとして機能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべき」とされているため、業績連動型の株式報酬制度を導入する企業が増えている。当社調べでは、2018年1~6月に株式交付信託を含む株式報酬制度の導入を公表した企業は277社となった。一般的には「報酬型ストックオプション」(いわゆる1円オプション)プランの基準を準用するケースがみられるが、チェックポイントとしては、①希薄化率(発行済株式総数の5~10%以下)、②交付対象者(社外役員を含まない)、③交付時期(一定期間以上経過後あるいは退任後)、④交付を可能とする業績条件等が挙げられる。こうした議案に対して機関投資家からの反対はそれほどみられなかったが、希薄化を理由に反対するケースがあった。

 (5)監査等委員会設置会社への移行

 2015年5月の会社法改正により、上場企業は「監査役会設置会社」と「指名委員会等設置会社」以外に、「監査等委員会設置会社」を選択することが可能となった。当社調べでは、2018年6月総会までに監査等委員会設置会社へ移行(定款変更議案)した上場会社は930社(全体の25.2%)となり、1年前に比べ98社増加した。移行する企業は、株主総会において少なくとも5つの議案(①定款一部変更、②監査等委員でない取締役の選任、③監査等委員である取締役の選任、④監査等委員でない取締役の報酬、⑤監査等委員である取締役の報酬)を上程する必要があるが、定款一部変更議案に対しては機関投資家が反対するケースはほとんどみられなかった。ただし、社外取締役に独立性がないと判断される場合には当該候補者、取締役会に独立性のある社外取締役が一定の割合を占めない場合には経営トップに対し反対するケースがみられた。

 (6)買収防衛策

 買収防衛策議案については、3年に1回のペースで更新期限を迎え、更新議案として上程するケースがほとんどである。従来から海外機関投資家は原則反対の立場であるが、大手の国内機関投資家も議決権行使基準を厳格化したことから、賛成比率は低下傾向にある。また、更新を見送る企業も増加した。なお、議決権行使助言会社の買収防衛策議案に対する賛成推奨は、ISSが0件、グラスルイスが1件となった。

 (7)株主提案

 6月総会における株主提案は42社と、前年の40社を上回り過去最高を更新した。機関投資家の多くは基本的に経営陣を支持する傾向にあるが、役員報酬の個別開示、株主還元、自己株式の消却等の合理的な提案内容であれば、賛成する機関投資家もみられる。

 ○おわりに

 1.機関投資家比率の上昇

 日本の株式市場における外国人(海外機関投資家)持株比率は、2018年3月末に30.2%と前年並みの水準を維持し、信託銀行名義の株主(国内機関投資家)は20.4%と15年ぶりに2割を超え、国内外の機関投資家による持株比率は市場全体の5割を占める。信託銀行名義の株主の背後には、日銀のETF投資や公的年金のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用資金が含まれており、株価を下支えする一因となっている。

 2.政策保有株式の縮減と受け皿としての個人株主

 今回改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株式の縮減が盛り込まれており、企業はこれまで以上に持合株式の解消を迫られることになる。一方、2018年3月末の個人株主持株比率は17%と過去最低を更新したものの、個人株主数は史上初めて5,000万人を突破しており、受け皿としての個人株主は改めて注目を集めることになろう。既存株主の高齢化が進む一方で、“NISA”(少額投資非課税制度)や“iDeCo”(個人型の確定拠出年金)といった税制優遇制度の普及によって拡大した現役世代の株主層の新規開拓に取り組む企業も増えている。

 3.企業と投資家との対話

 2つのコードの導入によって、企業と投資家のコーポレート・ガバナンスに関する意識が高まる中、対話のテーマは形式的なものからより実質的なものが求められている。CGSガイドラインや価値協創ガイダンスは、目的を持った対話を実践するためのツールとして策定されたものであり、企業の持続的成長や中長期的な企業価値向上に向けた情報開示の充実や議論の活発化を促すものといえる。

 企業としては、日常的なIR活動の中で業績面に関する財務情報ばかりでなく、ESG(環境・社会・ガバナンス)を含めた非財務情報についても積極的に開示すべきである。実際のところ中長期的な投資スタンスの株主の囲い込みを図る目的で、ESG関連のテーマに特化した海外ロードショウを実施する企業も増えている。また、株主総会前の賛成票獲得に向けた議案説明以外にも、株主総会後の議決権行使賛否結果の個別開示等を踏まえ反対した機関投資家に対するエンゲージメント活動も次期株主総会に向けた重要なアクションといえよう。

 ▽注: 本稿における意見などは、あくまでも個人的な見解であり、筆者の所属する会社および組織を代表するものではありません。

依馬 直義(えま・なおよし)

 三井住友信託銀行株式会社 証券代行コンサルティング部 審議役。
 1991年中央大学法学部卒、中央信託銀行(現・三井住友信託銀行)入社。信用格付機関の出向等を経て、IRコンサルティング業務に携わり、2012年4月にIR・SRチーム長を務め、2017年10月より現職。
 主な論文に「機関投資家による議決権行使の状況」(旬刊商事法務2150号、2017年)、「米国の株主総会のトレンド」(会社法務A2Z、2018年3月号)、「議決権行使結果の個別開示状況」(ビジネス法務、2018年3月号)、「機関投資家による議決権行使基準の改定」(旬刊経理情報、2018年4月20日号)など。

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