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西村あさひのリーガル・アウトルック

改正会社法5月施行で種類株主に新たなリスク、その対策は?

松尾 拓也(まつお・たくや)

 今年5月に施行予定の改正会社法で、新たなキャッシュ・アウト制度が創設される。これにより、総議決権の90%以上を持つ株主は、株主総会決議を得ることなく、残りの全ての株主から強制的に株式を取得することができるようになるため、企業の完全子会社化の新たな手法として注目されている。しかし、この制度により、種類株主に思わぬリスクが生じることが懸念されている。松尾拓也弁護士が、当該制度の施行に伴う種類株主のリスクとそれを排除するための対応策を考察する。 

新たなキャッシュ・アウト制度の創設
が種類株式の実務に与える影響
~ 種類株主が改正会社法の施行前
に考えておくべきこと ~

西村あさひ法律事務所
弁護士・ニューヨーク州弁護士
松 尾 拓 也

拡大松尾 拓也(まつお・たくや)
 2002年東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。2011年バージニア大学ロースクールLL.M.修了。2012年ニューヨーク州弁護士登録。2011年~2012年ニューヨークのSimpson Thacher & Bartlett 法律事務所を経て、現在、西村あさひ法律事務所パートナー。国内外のM&A案件を含む、企業法務全般を主要な業務分野とする。

 1. 特別支配株主の株式等売渡請求権の創設

 2014年6月20日に成立し、同月27日に公布された「会社法の一部を改正する法律」(以下「本改正」という)により、株式会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主(以下「特別支配株主」という)が、当該株式会社の株主総会決議を要することなく、他の株主全員に対し、その有する株式の全部を売り渡すことを請求することができる権利(以下「株式等売渡請求権」という)が創設されることとなった(本改正後の会社法179条以下)。因みに、本改正の施行日は2015年5月1日となる予定である。
 現行会社法下におけるキャッシュ・アウト(支配株主が、他の少数株主の有する株式の全部を、その少数株主の個別の承諾を得ることなく、金銭を対価として取得すること)の手法としては、全部取得条項付種類株式を用いる手法が圧倒的に主流となっているが、この手法による場合、キャッシュ・アウトには必ず対象会社の株主総会の特別決議を要することとなるため、キャッシュ・アウトを完了するまでに長期間を要し、時間的・手続的コストが大きい(少数株主の立場からすれば長期間不安定な立場に置かれることから、強圧性が高まる)という問題が存在した。この点、本改正により創設される株式等売渡請求権を用いてキャッシュ・アウトを行う場合には、そのような問題は相当程度解消されると考えられる。

 2. 株式等売渡請求権の活用場面とその影響

 ところで、株式等売渡請求権が活用できる場面は、上場会社におけるキャッシュ・アウトの場面に限られておらず、非上場会社におけるキャッシュ・アウトでの活用の可能性も排除されていない。また、当該請求権の対象は、普通株式に限られておらず、その他の種類株式や新株予約権についても全て対象となる。そのため、株式等売渡請求権の活用場面として主に想定されている上場株式についてのキャッシュ・アウトの場面以外においても、当該請求権の創設による影響が及び得ることに十分注意する必要がある。
 本稿では、その一例として、株式等売渡請求権の創設が、事業承継やメザニン・ファイナンス等において用いられることの多い無議決権優先株式に与える影響を検討する。

 3. 株式等売渡請求権の創設と無議決権優先株式

 (1) 種類株主総会の必要性

 特別支配株主が株式等売渡請求権を行使しようとする場合、その旨を対象会社に通知して対象会社の承認を受けなければならない(本改正後の会社法179条の3第1項等。以下、当該承認を「売渡承認」という)。
 対象会社が取締役会設置会社である場合、売渡承認は対象会社の取締役会の決議によることになる(同条3項)が、それによりある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときには、当該種類株主を構成員とする種類株主総会の決議も必要となる(本改正後の会社法322条1項1号の2)。

 (2) 種類株主総会決議の必要性の排除

 しかし、事業承継やメザニン・ファイナンス等において無議決権優先株式が用いられる場合には、当該無議決権優先株式に関し、「当会社が会社法第322条第1項各号に掲げる行為をする場合においては、法令に別段の定めがある場合を除き、種類株主総会決議を要しない」旨の定款規定(以下「種類株主総会排除規定」という)が設けられることが多い。
 同条3項では、たとえ種類株主総会排除規定を設けた場合でも、同条1項「1号」に規定する定款変更(すなわち、①株式の種類の追加、②株式の内容の変更、③発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数についての定款変更。但し、単元株式数についてのものを除く)については、同条1項による種類株主総会決議の必要性は排除できない旨が規定されているが、本改正で新設される売渡承認に係る種類株主総会決議は、同項「1号」ではなく、(本改正により新設される)同項「1号の2」の規定によるものであるため、その必要性は種類株主総会排除規定によって排除できると考えられる。
 なお、本改正の施行前に設けられた種類株主総会排除規定によって、本改正により新たに設けられる322条1項「1号の2」の規定による種類株主総会の必要性が当然に排除されると読めるかについては一応議論があり得るが、一般的な種類株主総会排除規定の文言が322条第1項各号の全部を対象とする文言になっていることや、そもそも会社法の立案担当者が322条1項各号に定める行為のうちの一部についてのみ種類株主総会排除規定を定めることはできないという立場を示していること等からすれば、本改正の施行前に設けられた種類株主総会排除規定によっても、本改正により新たに設けられる同項「1号の2」の規定による種類株主総会の必要性は排除されると解釈される可能性が高いと考えられる(法制審議会会社法制部会第18回会議議事録30頁~31頁参照)。
 従って、現時点で既に発行されている無議決権優先株式に関して種類株主総会排除規定が設けられている場合、(別途、無議決権優先株主に売渡承認に関する実質的な拒否権を付与するような仕組みが、定款や株主間契約等で確保されていない限り、)無議決権優先株主が株式等売渡請求権の行使を阻止することは原則としてできないと考えられる。なお、本改正の内容(特に株式等売渡請求権に関する規定の内容)が世の中に知られるようになった後であればともかく、その前に作成・締結された定款や株主間契約においては、売渡承認に無議決権優先株主の事前の承諾を要求する旨の規定が存在していることは通常考え難いため、そのような事案においては、無議決権優先株主に売渡承認に関する実質的な拒否権を付与するような仕組みが定款や株主間契約等で確保されている可能性は低いものと推測される。

 (3) 当初の想定とは異なる条件によるExitの強制

 そうすると、無議決権優先株式に関して種類株主総会排除規定が設けられている事案の場合、本改正が施行されると、無議決権優先株主は、株式等売渡請求権の行使を受けることで、当該株式を取得した当初の想定とは異なるタイミングや価額でのExitを強制されるおそれが生じることになる。
 無議決権優先株式を取得する者は、その取得前にExitの方法や価額(の算定方法)を検討し、対象会社やその大株主との間で必要な交渉を行った上で、当該株式に適切な取得請求権を付したり、株主間契約においてPut Optionや(相手方の)Call Optionの内容を定めたりすることが多い。そのような経緯を経て合意されたExitの諸条件が既に存在しているにもかかわらず、本改正が施行されると、それとは異なるタイミングや価額でのExitを強制される結果になり得る。例えば、対象会社のIPOのタイミングでExitすることを想定して無議決権優先株式を取得していた場合でも、株式等売渡請求権の行使を受けることにより、IPOよりも相当前のタイミングでExitを強制される可能性があり、また、その際の売買価額は(IPOまで待った場合と比べて)相当低く算定されてしまう可能性もあるだろう。
 なお、無議決権優先株主としては、株式等売渡請求権の行使を受けて売り渡す株式の対価として交付される金額が著しく不当である場合には、特別支配株主に対し、当該行使による株式の取得をやめることを請求することは可能であり(本改正後の会社法179条の7。いわゆる差止請求)、また、当該金額に納得がいかない場合には、公正な売買価額の決定を裁判所に申し立てることも可能である(同法179条の8)。しかし、そういった規定だけでは、無議決権優先株主の当初の想定は必ずしも十分に保護されないおそれがある。これは、Exitのタイミングについてはもちろんのこと、Exitの際の価額についてもいえることである。例えば、公正な売買価額の決定を裁判所に申し立てた場合に、裁判所が、当該株式の客観的な価値の算定結果の他に、(当該無議決権優先株主と他の特定の大株主との間での)株主間契約において合意されている無議決権優先株主のPut Optionや他の大株主のCall Optionの行使時の価額(あるいはその算定方法)を(どの程度)考慮するかは明らかではない。

 4. 他のキャッシュ・アウト手法と無議決権優先株式

 無議決権優先株式に関して種類株主総会排除規定が設けられていることを前提とした場合、株式等売渡請求権以外のキャッシュ・アウト手法によっても、無議決権優先株主が、当初の想定とは異なる条件によりExitを強制される可能性はあるだろうか。

 (1) 全部取得条項付種類株式を用いる手法

 まず、現行法下でのキャッシュ・アウト手法として圧倒的に主流となっている全部取得条項付種類株式を用いる手法に関しては、それによって、無議決権優先株主が当初の想定とは異なる条件によりExitを強制される事態は生じないと考えられる。
 全部取得条項付種類株式を用いる手法によって無議決権優先株式をキャッシュ・アウトするためには、無議決権優先株式に全部取得条項を新たに付す必要があるが、そのためには無議決権優先株主による種類株主総会決議が必要となる(会社法111条2項)ところ、無議決権優先株主は当該種類株主総会でそれを拒否することができるからである。なお、会社法111条2項の文言と会社法322条2項等の文言の対比からすれば、当該種類株主総会決議の必要性は定款規定によっても排除できないと考えられる。

 (2) 組織再編行為を用いる方法

 次に、対象会社が消滅会社となる現金合併や対象会社が完全子会社となる現金株式交換によって、無議決権優先株主が、当初の想定とは異なる条件によりExitを強制される可能性はあるだろうか。
 まず、そういった組織再編行為については、会社法322条1項による種類株主総会決議が原則として必要となると考えられるが、無議決権優先株式に関して種類株主総会排除規定が設けられていることを前提とすれば、当該種類株主総会決議は不要となる。そのため、会社法上は、無議決権優先株主が当該組織再編行為を阻止することは原則としてできないと考えられる。
 しかし、無議決権優先株主と他の大株主との間での株主間契約においては、そういった組織再編行為は無議決権優先株主の事前の承諾がない限り行わない旨が規定されていることが多い。そのような規定を株主間契約に定めている事案(そして、当該契約の違反時のペナルティも適切に規定されている等、当該契約の遵守が期待できる事案)においては、無議決権優先株主が、組織再編行為によって、当初の想定とは異なる条件によりExitを強制される可能性は低い。

 (3) 株式併合を用いる方法

 株式併合を用いたキャッシュ・アウト手法とは、支配株主には株式併合後にも1株以上の株式が残る一方で、その他の株主については株式併合後には端数しか残らないような併合比率を設定し、当該併合によって生ずる端数の合計数(その合計数に1に満たない端数が生じる場合には、それを切り捨てたもの)に相当する数の株式を会社法235条の端数処理規定に従って売却等した上で、それにより得られる代金を端数に応じて各株主に交付するスキームを指す。
 現行会社法下では、株式併合がキャッシュ・アウト手法として用いられることは少ない。これは、株式併合の手続には反対株主による株式買取請求権制度が存在しないなど、少数株主保護の制度が不十分であるため、株式併合を用いたキャッシュ・アウトは法的安定性において、他のキャッシュ・アウト手法に劣ると考えられてきた結果である。しかし、本改正では、株式併合手続においても反対株主による株式買取請求権制度が設けられ(本改正後の会社法182条の4)、また、事前備置・事後備置といった情報開示制度(同182条の2及び6)も設けられる。そのため、本改正の施行後においては、株式併合における少数株主保護制度は他のキャッシュ・アウト手法と比較して遜色ないものとなり、株式併合を用いたキャッシュ・アウトの法的安定性も増すと考えれるため、その利用は増えると予想される。
 従って、本改正の施行後においては、株式併合による無議決権優先株式のキャッシュ・アウトの可能性についても検討しておく必要があるだろう。しかし、結論的には、一般的な無議決権優先株式の事案であれば、株式併合を用いる手法によって、無議決権優先株主が、当初の想定とは異なる条件によりExitを強制されることはないだろう。
 なぜなら、一般的な無議決権優先株式については、無議決権優先株式に係る株式併合を禁止する旨の定款規定が設けられていることが多いからである。これは、優先配当金額は「1株あたり」で規定されるのが通常であるところ、無議決権優先株式について株式併合がなされると、無議決権優先株式の数が減ってしまい、その分、受け取ることができる優先配当金額の総額が減ってしまうためであると考えられる。理由はともあれ、そのような併合禁止規定が定款に入っている限り、対象会社が無議決権優先株式について株式併合を行うことはできないため、株式併合を用いて無議決権優先株式を端数にし、キャッシュ・アウトすることはできない。
 また、仮にそのような定款規定が存在しない場合であっても、無議決権優先株主が1名のみである場合には、株式併合を用いて無議決権優先株式を端数にし、キャッシュ・アウトすることは困難である。なぜなら、株式併合を用いたキャッシュ・アウトにおいては、端数となった部分の合計が1以上とならなければ、会社法235条による端数処理規定による売却処分ができないが、無議決権優先株主が1名である場合には、無議決権優先株式に係る端数の合計が1以上となることはないからである。

 (4) まとめ

 上記(1)から(3)で見たとおり、現状の一般的な無議決権優先株式に関する実務を念頭に置くと、株式等売渡請求権以外のキャッシュ・アウト手法によって、無議決権優先株主が、当初の想定とは異なる条件によりExitを強制される可能性は低いと考えられる。
 逆にいえば、現状の一般的な無議決権優先株式に関する実務を念頭に置くと、無議決権優先株主が当初の想定とは異なる条件によりExitを強制されるリスクは、本改正によって株式等売渡請求権が創設されることによって「新たに」生じるものだと整理できよう。

 5. 無議決権優先株主がとり得る対応策

 (1) 現状を分析する必要性

 無議決権優先株主は、以上のような状況を踏まえ、株式等売渡請求権が創設されることにより新たに生じる上記のようなリスクを予め認識し、そのようなリスクを事前に可及的に排除する措置をとることの要否及び可否を、本改正の施行前に慎重に検討しておくべきである。
 ただ、下記(2)で見るとおり、そのようなリスクを排除するための措置はいずれも、通常、対象会社やその大株主の協力を得なければ実施できない。そして、対象会社やその大株主に協力してもらうことができるか否かは、現状の定款規定や株主間契約、株主構成、役員構成その他の諸状況次第であるため、まずは、そういった現状を分析した上で、個別事案に応じて現実的な対応策を検討する必要があるだろう。

 (2) 考えられる対応策

 現状を分析した結果、対象会社やその大株主に協力してもらうだけの交渉材料があると考えられる場合には、例えば、対象会社やその大株主に対して以下のような対応策に協力することを求めることが考えられる。

 ① 売渡承認を種類株主総会排除規定の対象外とする方法

 まず、当該無議決権優先株式に関し、既に、種類株主総会排除規定が入っているとしても、同項1号の2(売渡承認)については当該種類株主総会排除規定の対象外とするように定款変更することが考えられる。
 しかし、これについては、会社法の立案担当者が、会社法322条1項各号に定める行為のうちの一部についてのみ種類株主総会排除規定を定めることはできないという立場を示しているため、上述のような定款変更の有効性には疑問がある。(他方で、会社法322条1項各号に定める行為全てに関して種類株主総会排除規定を削除するという提案は、本改正による影響を排除するというレベルを超えており、対象会社やその大株主を説得することは通常困難であるように思われる)
 また、たとえそういった定款変更が有効であると認められるとしても、売渡承認が当該種類の株主に「損害を及ぼすおそれがある」場合でなければ、種類株主総会決議は不要であるため、その点でも不十分であると考えられる。

 ② 無議決権優先株式に売渡承認に係る拒否権を付与する方法

 無議決権優先株主がより確実に売渡承認に対して拒否権を持つためには、売渡承認には、取締役会決議に加え、無議決権優先株主による種類株主総会決議を要する旨を定款に追加する方法が考えられる。すなわち、無議決権優先株式自体に、売渡承認に係る拒否権(会社法108条2項8号)を付与する方法である。
 この方法の場合、(上記①の場合とは異なり、)株主総会決議事項及び取締役会決議事項の中から拒否権を付す事項を個別に設定することができることに疑義はないし、拒否権の行使に関し、「損害を及ぼすおそれがある」という要件も適用されない。
 但し、対象会社やその大株主が、無議決権優先株式を(売渡承認に関する)拒否権付株式にするという建て付け自体に、心理的な抵抗感を覚える可能性はあるだろう。

 ③ 特別支配株主に該当することとなる議決権割合を引き上げる方法

 また、本改正後の会社法179条は、特別支配株主に該当することとなる議決権割合を、「総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)」と規定していることから、定款規定により、当該割合を予め引き上げておく方法も考えられる。
 例えば、当該割合を議決権割合100%と定款で定めた上で(もっとも、かかる議決権割合の引き上げに関して解釈上の限界がないかは別途議論があり得る)、無議決権優先株主が普通株式を1株だけ取得しておくこととすれば、無議決権優先株主が当該普通株式に係る議決権を失わない限り、特別支配株主に該当する者が登場することはないため、無議決権優先株式に対して株式等売渡請求権が行使されることもないことになる。
 しかし、この方法の場合、普通株式1株に係る議決権が何らかの方法で失われてしまうと、株式等売渡請求権の行使を防げないことになってしまう。そのため、現状の定款や株主間契約等を確認の上、普通株式1株に係る議決権を失うことになる可能性を排除するために必要な手当てを、別途検討する必要がある。

 ④ 売渡承認をトリガー事由とする普通株式対価の取得請求権を用いる方法

 売渡承認をトリガー事由として普通株式を対価とする取得請求権を、無議決権優先株式に付すことも考えられる。これにより、実際に売渡承認がなされた場合には、当該取得請求権を速やかに行使し、株式等売渡請求権の行使による株式取得の効力発生(本改正後の会社法179条の9)より前に、株式等売渡請求権を行使した株主の議決権割合が90%(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にはその割合)を下回るように設計しておくのである。株式等売渡請求権を行使する株主は、対象会社に対して株式等売渡請求をする旨を通知する時点及び売渡承認を受ける時点に加えて、株式等売渡請求権の行使による株式取得の効力発生時点においても、議決権割合90%(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にはその割合)以上を直接又は間接に保有している必要があると解されるため、これによって、株式等売渡請求権の行使による株式取得の効力発生を阻止できると考えられる。
 但し、この方法の場合、無議決権優先株式(の一部)を不本意なタイミングで普通株式に転換せざるを得なくなるおそれがあるという点が、デメリットとして挙げられる。そのようなデメリットを回避できるような設計も考えられるが、ここでは詳述しない。

 ⑤ 売渡承認を株主間契約の事前承認事項に追加する方法

 また、無議決権優先株主が他の大株主と締結している株主間契約における事前承認事項(無議決権優先株主の事前の承諾を要求する事項)に、売渡承認を追加することも考えられる。
 但し、この方法の場合、当該株主間契約の当事者ではない者が特別支配株主となってしまった場合には、その者による株式等売渡請求権の行使を防げないというデメリットがある。そのため、現状の定款規定や株主間契約の規定によって、当該株主間契約の当事者ではない者が特別支配株主として登場することになる可能性が十分に排除できているか、慎重に検討する必要がある。

 6. 最後に

 以上に述べたとおり、無議決権優先株式を保有し

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松尾 拓也(まつお・たくや)

 2002年東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。2011年バージニア大学ロースクールLL.M.修了。2012年ニューヨーク州弁護士登録。2011年~2012年ニューヨークのSimpson Thacher & Bartlett 法律事務所を経て、現在、西村あさひ法律事務所パートナー。
 国内外のM&A、組織再編、資本・業務提携等の案件のほか、株主総会対応、コーポレート・ガバナンス体制の構築、役職員の報酬体系の構築、危機管理対応などを含む企業法務全般を主要な業務分野とする。また、創業家系の大株主がいる上場会社における経営上の諸問題についても造詣が深く、講演も多数行っている。
  主な著書(いずれも共著)として、「論点体系金融商品取引法1」(第一法規、2014年)、「日本経済復活の処方箋 役員報酬改革論」(商事法務、2013年)、「金商法大系I - 公開買付け(2)」(商事法務、2012年)、「新株予約権ハンドブック」(商事法務、2012年)、「会社法実務解説」(有斐閣、2011年)、「金商法大系1 - 公開買付け(1)」(商事法務、2011年)、「会社法・金商法の実務質疑応答」(商事法務、2010年)、「企業法務判例ケーススタディ300【企業組織編】」(金融財政事情研究会、2008年)がある。その他、コーポレート分野の論稿多数。

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