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西村あさひのリーガル・アウトルック

民泊・ホームシェアリングを巡る規制についての考察

藤井 康次郎(ふじい・こうじろう)

 自宅の一部やマンションの空き室を旅行者らに有料で貸す「民泊」をどのように規制するかについての検討が政府の関係機関で始まった。「民泊」には本来旅館業法上の許可が必要なのではないかが問題とされ、騒音やゴミ出しなどで近隣住民とのトラブルの存在も指摘される。そもそもは、ネットを使って個人の資産や時間の需給をマッチングするサービス「シェアリングエコノミー」の一つとしてグローバルに成長してきた「新産業」。藤井康次郎弁護士は、民泊規制の議論を詳細に考察したうえで、慎重に結論を導くことが必要だと指摘する。

 

いわゆる民泊・ホームシェアリングを巡る規制についての考察

西村あさひ法律事務所
弁護士 藤井 康次郎

 1 はじめに

拡大藤井 康次郎(ふじい・こうじろう)
 西村あさひ法律事務所パートナー。弁護士/ニューヨーク州弁護士。
 2004年、東京大学法学部卒。2011年、ニューヨーク大学ロースクール卒業。2011~2012年、クリアリー・ゴットリーブ・スティーン アンド ハミルトン法律事務所(ワシントンD.C.)勤務。2012~2014年、経済産業省 通商機構部国際経済紛争対策室勤務(参事官補佐)。
 専門は競争法、国際通商法、ロビイング、企業危機管理など。
 近時、日本において、いわゆる民泊問題に対して規制をすべきか、いかなる規制を導入すべきかが多方面で議論されている。内閣府の規制改革会議、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室、厚生労働省、国交省などさまざまな公的機関が民泊と規制との関係を検討している。

 いわゆる民泊において典型的に想定されているのは、一般個人が、親族、友人等一定の信頼関係を有する他人に対して、自身の居宅等において利用されていないスペースを、宿泊場所として短期的に有償で提供することである。近時、かかる信頼関係を構築できる範囲が、インターネット上のプラットフォームを介在させることにより飛躍的に拡大し、その結果、いわゆるシェアリングエコノミーのひとつとして、不特定多数の一般個人が、インターネット上のプラットフォームを通じて、自身の居宅等において利用されていないスペースを、不特定多数の個人に対し、信頼関係をベースに有償で提供する行為が、世界的な広がりを見せている。このような行為は、諸外国ではホームシェアリングなどの呼称で呼ばれることが多いが、シェアリングエコノミーの一類型としての本質を言い当てた表現として、民泊よりも適切である面がある。

 ホームシェアリングに対しては、政府における検討の趨勢を見ていると規制の導入ありきという姿勢が目立つようである。しかし、そもそも規制が導入されるべきなのか、導入するとしていかなる規制が望ましいのか、また、仮に宿泊場所の提供者に対して一定の規制が必要だとしても、ホームシェアリングのマッチングを行うプラットフォームにまで規制を及ぼすべきかについては、以下に述べるようにさまざまな法的な検討課題があるように思われる。

 2 シェアリングエコノミーの特質

 ホームシェアリングについては、旅館、ホテル、簡易宿所等の宿泊サービスなどとのイコールフッティングや規制の均衡が問題とされることが多いが、両者はその機能や社会的意義において異なる点があることに留意すべきである。旅館サービスは、公務、事業活動、旅行等のために必要な交通インフラストラクチャの一部としてユニバーサルに、すなわちすべての人々に提供されることが求められ、したがってその安全性、品質等についての信頼性を旅館業法に基づき公的に確保することが政策上求められるものであるが、ホームシェアリングは、インターネットプラットフォームにより形成されるコミュニティ内において、提供者と利用者との信頼関係を基礎に、いわば私的に宿泊場所の提供がなされるものであり、公共インフラ的な側面とは一線を画する面がある。利用者の側に立っても、一般的に、旅館サービスの利用者は、信頼性及び利便性が、公的にかつ事業者の営利的動機に基づいて確保されている宿泊サービスの提供を受けたいと考えるのに対し、ホームシェアリングの利用者は、私的関係に基づいて信頼性を確保し、宿泊場所の提供者の多くが一般的個人であることから生じる不便さを受け入れつつ当該提供者とのコミュニケーションを楽しむことを宿泊のひとつの目的としている。このように、旅館サービスとホームシェアリングとでは、利用者の利用の目的ないし動機が異なるのであり、ホームシェアリングは、本来であれば旅館サービスとは完全に競合するものではなく、むしろ旅館サービスと相互補完がなされ得る別の形態の行為ともいえる。

 また、ホームシェアリングをマッチングするプラットフォームの役割も適切に理解、斟酌されなければならない。すなわち、現代社会においては、インターネットの発達によって、直接の知り合いではない個人間であっても、たとえば一定の価値観等を共有していれば、インターネット上でのやりとりや相互評価システム等によって、パーソナルな信頼関係を醸成することが可能になった。それを利用して生まれたのが一定のプラットフォームを利用して、個人所有のモノ・サービスの交換・共有を可能とするサービスである。このプラットフォームは、利益を追求する個人同士のニーズをつなぐ単なるデータ交換システムではなく、インターネット上でのいわば「顔の見える関係」を前提とした「場(コミュニティ)」を前提とし、その拡大・強化を狙っている。このような「場(コミュニティ)」においては、コミュニティを維持・存続させるために、構成員であるメンバー同士が信頼関係の醸成に努め、創意工夫を行い、逆に当該コミュニティの信頼関係を破壊するような行為を行うメンバーは排除(脱退)することによりコミュニティを維持し、拡大・強化していく。プラットフォームが提供するサービスはかかるプロセスを円滑化し、コミュニティの維持拡大を支援する機能を有する。また、複数のプラットフォームによる切磋琢磨(プラットフォーム間競争)も見られる。かかるシェアリングエコノミーでは、事業者が国家から免許や許可により特権(営業権)を付与され、その代わりに種々の規制を遵守するという構図というよりは、プラットフォーム間競争及びプラットフォームにより形成されるコミュニティ内における私人による自発的な選択と自主的規律による運営、発展がよりなじむ側面がある。

 このように、ホームシェアリングは、単なる「遊休資産の活用」や「既存の宿泊施設の代替手段」といった概念とは区別されるべきであり、このような概念を前提とした従来の法規制の延長、拡張として規制を行うことは、シェアリングエコノミーサービスの本質を理解せずに、過大な負担を課すこととなり、その健全な発展を阻害するおそれがある。規制の必要性やその内容を検討する上では、上記のようなシェアリングエコノミーサービスの特性が立法事実として十分に考慮されなければならないと思われる。また、杓子定規で柔軟性に欠いた規制を導入することで、かえって事業者による創意工夫によるより効率的で課題への対処能力を備えた自主的な規律の発展を妨げないか慎重な検討を要する。

 3 ホームシェアリングにおける宿泊場所提供者への規制

 (1) 憲法との関係

 ホームシェアリングにおいて、宿泊場所を提供する宿泊場所提供者にはいかなる規制が及ぼされるべきか、特に旅館業法による規制下に置くべきではないかが議論されている。もっとも、かかる立論に対しては、従来あまり取り上げられてはいないが、実は、以下のような憲法の観点からの慎重な検討が必要であると思われる。

 ホームシェアリングにおいては、自己の居宅等を宿泊場所として旅行者に提供することによって、旅行者と交流し、コミュニケートすることをひとつの目的として、宿泊場所を提供する者が相当数存在するとされる。特に諸外国においてはこうした提供者が大半を占める模様である。他者と交流し、コミュニケートする自由は、表現の自由(憲法21条1項)又は幸福追求権(憲法13条) と密接な関連を持っている。なお、同様の趣旨から、旅行の自由についても従来から見聞を深める、旅行先で他者と交流する側面があるとして、精神的自由権としての保護が及ぶと考えられている。

 旅館業法は、旅館業の営業について許可制を採用した上で、旅館業を営なもうとする者に対し、許可の取得要件として、構造設備基準(法3条2項、同法施行令1条)、教育施設からの適正配置規制(法3条3項)等を定め、許可取得後には、宿泊拒絶の原則禁止(法5条)、宿泊者名簿の備置義務(法6条)、必要があると認めるときは都道府県職員が営業の施設に立ち入り、検査することができること(法7条1項)等の規制を課している。したがって、ホームシェアリングに旅館業法が適用されると、宿泊場所提供者は大きな制約を課されることになり、行為者の表現の自由(憲法21条1項)又は幸福追求権(憲法13条)が制限されることとなる。また、ホームシェアリングへの規制の介入は、宿泊場所提供者の営業の自由(憲法22条1項)や財産権(憲法29条1項)を制限する側面もある。

 表現の自由を制約する規制の合憲性を判定する基準は、一般に、厳格なものであることが要請されている。また、旅館業法に基づく規制は、利用者等の生命、身体及び財産の保護を目的とするいわゆる消極目的規制にあたるところ。営業の自由に対する消極目的規制については、判例において、規制態様等も踏まえつつ、規制の必要性・合理性及び同じ目的を達成できるより緩やかな手段がないことを審査する厳格な合理性の基準で審査されるべきとされている。

 したがって、旅館業法をホームシェアリングにおける宿泊場所提供行為に適用し、宿泊場所提供行為を規制する上では、規制目的の正当性並びに手段の必要性及び合理性が確保されていることが求められるのである。

 (2) 規制目的についての考察

 規制目的について検討してみると、旅館業法の制定経緯及び立法目的は、公衆衛生の保護や善良な風俗の維持にある。もっとも、公衆衛生については、そもそも、現代の公衆衛生状況は、旅館業法が制定された戦後間もない頃から飛躍的に改善している。

 特に、宿泊場所提供者が自己の居宅等の生活空間を宿泊場所として他者に提供する場合には、自己の生活空間の衛生状態を劣悪な状態のまま放置することは、宿泊場所提供者自身の生命及び身体を危険にさらすことになるため、一般的には考え難い。また、宿泊場所提供者には、自らの生活空間について良好な衛生状態を確保するため、宿泊者がそのような衛生状態を害する者ではないかについて、あらかじめ確認をする大きなインセンティブがはたらくであろう。

 したがって、特に、宿泊場所提供者が自己の生活空間を宿泊場所として提供する行為については、公衆衛生が害される具体的危険は存在しないとの意見も十分に説得力を持つのではなかろうか。善良な風俗が害される具体的危険がないことについても、たとえば自己の生活空間を売春を行う場所に提供することは通常は考え難いため、同様のことがいえる。

 なお、ホームシェアリングにも規制を課すべきとの方向からは、公衆衛生や善良な風俗の観点以外にも、テロ対策や近隣住民とのトラブル防止が挙げられることが多いように思われる。もっとも、こうした観点はそもそも旅館業法の立法目的として想定されておらず、旅館業法の規制をホームシェアリングにも及ぼすべきとの立論を支える論拠になるのか疑問である。

 (3) 規制手段についての考察

 さらに規制手段としても、上記のとおり、規制の必要性及び合理性が確保されていなければならないが、プラットフォームは、通常、透明性のある評価システム(いわゆる「双方向レビュー」)が導入されていることから、公衆衛生、風俗維持等の観点も含め問題のある宿泊場所の提供者や利用者は、かかるシステムによって自然と淘汰されていく。さらに、宿泊場所の提供者と利用者との間にはプラットフォームやそれと関連するソーシャルネットワーキングサービス等を通じた事前のコミュニケーションがあり、公衆衛生、風俗維持の観点から生じる問題の抑止効果が期待されている。これらのことから、宿泊場所の提供者に旅館業法上の規制を及ぼす必要性があるといえるか慎重な検討を要する。

 さらに、宿泊拒絶の原則禁止について特に検討すれば、自己の居宅等の生活空間を提供する者についてまで原則として宿泊拒絶をできなくなるとすると、個人の生活上の利益を過度に侵害するものであり、明らかに不合理である。この不合理性は、旅館業法が想定している適用対象サービスとホームシェアリングが質的に全く異なることを端的に表している。上述のとおり、ホームシェアリングは、あくまでも私的な信頼関係に基づいて、原則として私人の選択に基づき行われるべき行為であり、公的な性格を帯びる旅館業法の適用対象となる旅館サービスとは、性質が大きく異なるのである。

 4 プラットフォームへの規制

 (1) 憲法との関係

 次にプラットフォーム規制について検討してみる。ホームシェアリングにおけるプラットフォーム規制の目的は、サービス提供の実体把握、情報の非対称性の解消等による利用者の生命、身体及び財産の保護(地域社会の安心及び安全の確保を含む。)といったところにある模様である。

 そして、その内容としては、①適切な事業参入規制、②宿泊サービスの提供者及び宿泊者の本人特定事項の確認の義務づけ、③掲載物件の業法適合性の確認義務や業法適合性・サービス水準に関する情報提供義務、④苦情への相談窓口の開設、⑤損害賠償に備える措置、⑥法令違反の認知時の監督官庁への届出、⑦外国事業者については国内事業所の設置義務等が検討されている。

 むろん、プラットフォーム提供事業者についても、営業の自由が憲法上保障される(憲法22条1項)。そして、上記の規制は、利用者の生命、身体及び財産の保護を目的とするいわゆる消極目的規制にあたる。消極目的規制については、判例において、規制態様等も踏まえつつ、規制の必要性・合理性及び同じ目的を達成できるより緩やかな手段がないことを審査する厳格な合理性の基準で審査されるべきとされている 。

 (2) 規制目的についての考察

 まず、国民の生命、身体及び財産の保護という規制の目的自体は、抽象的には正当性が認められる。しかし、社会的に意義ある事業を営む自由を制約する場合には、私人の自己規律と選択とに委ねると利用者等が予想しない生命、身体及び財産上の侵害を受ける事態が発生する抽象的な危険性があるというだけでは足りず、むしろ政府介入によって当該事業の自由かつ自律的な発展が損なわれるため、政府の介入は正当化されないのではないか慎重に検討すべきである。

 たとえば、近隣住民等の迷惑被害やテロ、感染症の発生等が挙げられることがあるが、そうした恐れが生じる抽象的可能性に言及されているのみで、そうした恐れが具体的に生じている事実、プラットフォーム規制がなければテロ、感染症等による生命又は身体の損害が実際に生じることになるという因果関係等の規制目的の正当性を支える立法事実の存在があるのかが問題となる。今後、立法目的の正当性を基礎づける具体的事実を示すことが求められるものと思われる。

 (3) 各種規制についての考察

 ①事業参入規制については、仮に許可制が想定されているのであるとしたら、その導入は慎重に検討される必要がある。すなわち、許可制は営業の自由に対する強力な規制であるところ、許可制を導入する必要性が肯定されるのは、事後規制又は事前規制の中でもより緩やかな規制である届出制によっては立法目的を達成できないと認められる場合に限定される。

 ②宿泊者の本人特定事項の確認義務については、自らが居住する住居の一室を宿泊場所として提供するサービスについては、居住者等の宿泊場所を提供する者が、自己の安全のために利用者の本人特定事項を当然確認するであろうから、プラットフォームにわざわざ規制を課す必要性は低いように思われる。

 また、上述したシェアリングエコノミーの特質から、本人特定事項の確認については、プラットフォームにおいても推奨され、それが実施されるような枠組みが組み込まれることが一般的である。

 さらに、CtoCビジネスでは、利用者を獲得するために必須のシステムとして、利用者間の相互評価システムが一般的に導入されており、このようなシステムによって、生命、身体及び財産に危害を加えるような利用者は排除される仕組みとなっている。

 なお、仮に、宿泊仲介事業を通じて宿泊場所を提供しようとする者に旅館業法の規制が及ぶ場合には、宿泊場所を提供する者に本人特定事項の確認義務が課されることになり、規制の立法目的が達成されるため、プラットフォームに対して二重に本人特定事項の確認義務を課す必要性は認められない。

 加えて、一般的な宿泊施設の紹介を行うインターネットサイトは、パスポートの確認等により、利用者が入力した個人情報の真実性の確認が求められているわけではない。そうであるにもかかわらず、より厳しい規制をホームシェアリングのプラットフォームに課すことについては規制の均衡を失していないか、憲法上の平等原則(憲法14条1項)の観点からも慎重な検討を要する。

 ③宿泊場所提供者の本人特定事項の確認義務・業法適合性の確認義務については、提供者の本人特定事項の確認については、自らの身の安全を確保しようとする宿泊者において、この点を確認する大きなインセンティブがある。

 また、仮に宿泊場所を提供しようとする者に対して旅館業法が適用される場合には、宿泊場所を提供する者の本人特定事項の確認の有無や業法適合性は、旅館業法の許可を行政が与える段階で判断され、また、行政による旅館業法の運用により担保されることになる。したがって、このような場合には重ねて、プラットフォームに対して規制を課す必要性はますます認めにくくなる。

 さらに、他の電子商取引等の類似業種(たとえば、インターネット・オークション事業者、子どもの預かりサービスのマッチングサイト等)に対する規制を見た場合、本人特定事項等の確認について強制力のある法的義務は課せられていない例が多く見受けられる。そうであるにもかかわらず、より厳しい規制をホームシェアリングのプラットフォームに課すことについては規制の均衡を失していないか、憲法上の平等原則(憲法14条1項)の観点からも慎重な検討を要する。

 特に、業法適合性の確認は手続が煩雑かつ実務的に困難であることが予想され、事業者に過大な負担を課して事業の運営を困難とするおそれがある。

 ④苦情の相談窓口の設置義務については、そもそも、プラットフォームは、宿泊サービスの提供者が提供する宿泊サービスに関する情報を掲載し、提供者と宿泊者が個々の取引を行う場の提供をするのみであり、提供者及び宿泊者に対して強制力や実効性のある手段を取ることはできない。そのため、事業者に苦情の相談窓口の設置義務を課したとしても、目的達成に資するところが少ない。

 この点について、他の類似の電子商取引の事業形態と比較しても、プラットフォームの提供者は、このような個々の取引に実質的に関与しない場合は、原則として個々の取引に起因する損害やトラブルについて責任を負わないとされている。

 また、集合住宅の一室が宿泊サービスの提供に供されることから派生する近隣トラブルの回避については、集合住宅の管理組合、賃貸人等の決定に本来的には委ねられるべき事項であり、かつ、そのようにすることが規制の目的を達成するために最も有効であるように思われる。

 ⑤違法事項の監督官庁への届出義務については、類似業種に対しての規制を見た場合、違法事項の届出義務に関する法的義務は必ずしも課されていない。そうであるにもかかわらず、より厳しい規制をホームシェアリングのプラットフォームに課すことについては規制の均衡を失していないか、憲法上の平等原則(憲法14条1項)の観点からも慎重な検討を要する。特に、届出義務を超えて、違法事項の調査確認義務が課されるような場合には、事業者に過大な負担が生じることになり、規制の必要性との均衡を失するのではないかと思われる

 ⑥外国事業者への国内事業所設置義務については、確かに、金融業においては、海外の事業者に対して国内支店や国内事業所の設置を求める例が多いが、この背景には、金融業においては、個々の金融業者の問題が金融システム全体に波及しやすいことがあると考えられる。しかし、ホームシェアリングにおけるプラットフォームは、金融業のような金融システム全体に対して波及する性質があるサービスを取り扱っているわけではない。

 もし、行政に対する情報提供の窓口が必要なのであれば、国内事業所を設置させる必要まではなく、事業者に当該窓口となる者を国内外において選任させ、適宜通知を求めるなど、目的を達成するためのより緩やかで制限的ではない規制手段が存在する。

 仮に、損害賠償義務の履行確保が目的であるとすれば、そもそも上述したとおり、事業者による仲介システムを通じて成立した宿泊サービスの提供者、宿泊者、周辺住民等に損害が生じた場合であっても、事業者に責任が生じるのは限定的な場合に限られる。そうだとすれば、責任追及を容易にするために、海外の事業者に対して、国内事業所の設置を義務づけることは、事業者が負う負担との均衡を失するものと思われる。

 さらに、外国事業者への国内事業所設置義務については日本が負う国際法上の義務との関係でも問題を生じさせ得る。たとえば、TPPについては、現在各国において批准のための国内手続が進んでいるが、TPP締約国は、越境サービスに対して、市場アクセスを付与し(10.5条)、事業所設置を要求しない義務を負っている(10.6条)。TPP締約国は越境サービスについて自由化を留保しない限り上記の義務を負うことになるが(10.7条)、日本の留保のうち、ホームシェアリングのプラットフォームサービスが該当する分野に係る留保は不見当である。もちろん、外国の事業者に対して参入規制及び事業所国内設置義務を課すことは、目的の正当性又は手段としての必要性及び合理性が認められればTPP上も許容され得るが(29.1条3項参照)、先に議論したとおり果たしてかかる正当性や必要性・合理性が認められるかは慎重な検討を要する。

 5 まとめ

 このとおり、ホームシェアリングに対していかなる規制を導入すべきかについては、シェアリングエコノミーの特質をよく踏まえ、果たして規制の必要性を支える立法事実が十分に認められるか、規制手段として合理性が認められるかを慎重に検討していく必要がある。必要性に照らし過大な規制となった場合に

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藤井 康次郎(ふじい・こうじろう)

 西村あさひ法律事務所パートナー。弁護士/ニューヨーク州弁護士。
 2004年、東京大学法学部卒。2011年、ニューヨーク大学ロースクール卒業。2011~2012年、クリアリー・ゴットリーブ・スティーン アンド ハミルトン法律事務所(ワシントンD.C.)勤務。2012~2014年、経済産業省 通商機構部国際経済紛争対策室勤務(参事官補佐)。
 専門は競争法、国際通商法、ロビイング、企業危機管理など。

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