メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

西村あさひのリーガル・アウトルック

シンガポールとマレーシアの会社法改正 より投資しやすくするために

山中 政人(やまなか・まさと)

 

シンガポールとマレーシアでの会社法改正
 ―より投資し易く、より安全な国を目指し

 

西村あさひ法律事務所シンガポール事務所
共同代表弁護士 山中 政人

  はじめに

拡大山中 政人(やまなか・まさと)
 西村あさひ法律事務所 シンガポール事務所 共同代表。
 2002年より弁護士業務を開始し、三井安田法律事務所、外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ、三宅坂総合法律事務所を経て、2008年西村あさひ法律事務所に入所。

 2017年に、シンガポールとマレーシアにおいて相次いで会社法が改正されている。英国法系の法制度を有し、かつては一つの国であった二つの国で会社法の改正がこのように続いていることに、両国が互いを意識しつつ、より効率がよく安全な法制度を創出し、取引の安全を図ると共に、外資を含めた様々なビジネスを発展させようとする意図が垣間見られる。本稿では、この二国の本年の会社法の改正について概説する。

  シンガポールにおける会社法改正

 (1) 改正の背景及び施行時期

 シンガポールの会社法(Companies Act (Cap.50))(以下「会社法」という)は、200以上の改正項目を含む大改正が行われ、既に2015年7月1日と2016年1月1日に2段階に分けて施行されている(Companies (Amendment)Act 2014。以下「2014年改正法」という)。その時点でも規制緩和による負担軽減、事業の柔軟性の確保及びコーポレートガバナンスが図られてきたが、その2014年改正法に引き続き、今回の改正が行われている(以下「2017年改正法」という)。かかる改正における主な目的は以下の通りである。

  1.  会社の法令遵守費用及び管理上の負担の軽減。
  2.  会社の所有権及び支配権の透明性を高めること。
  3.  外国企業のシンガポール籍への変更スキーム(inward re-domiciliation regime)を導入し、ビジネスハブとしてのシンガポールの競争力を高めること。
  4.  シンガポールの企業救済及び再編の枠組みに変更を加えることにより、シンガポールを国際負債整理手続のハブとして位置づけること。

 2017年改正法は、その一部が2017年3月31日及び2017年5月23日に既に施行されている。残りについては、2018年初頭までの施行が予定されている。
 なお「LLPsの所有権及び支配権の透明性を高める」という上記1.と同様の趣旨で、有限責任組合法改正法案(the Limited Liability Partnership (Amendment) Bill))も2017年3月10日に改正が承認されている。会社法の改正と合わせて、シンガポールの投資ヴィークルの使いやすく安全な機能を高めている。

 (2) 法令遵守費用及び管理上の負担の軽減

 1) コモン・シール

 2017年3月31日から、シンガポールの会社及びLLPsによるコモン・シールの保持の義務が廃止された。コモン・シールは、日本で言うところの印鑑登録した代表社印に近いもので、赤いシールを書面に貼り、その上から金属で社名を押し付けて文字を浮かび上がらせたものである。コモン・ローの国々では、贈与や第三者による保証など、対価(consideration)が伴わない約束をする際に、様式性の高い証書(deed)を作成しなければ、その約束についての執行力が認められないと考えられている。コモン・シールは、この様式性を担保するためのもので、証書などに貼付されてきた。今回の改正により、証書などに、コモンシールの添付の必要がなくなり、以下を含む、権限を有する会社の代表者による署名のみで足りるようになった。

  1.  会社の取締役及び秘書役(secretary。取締役会議事録、株主総会議事録、Accounting and Corporate Regulatory Authority(ACRA。会社の公開される企業情報及び会計書類などを提出する機関)への提出書類、その他会社法上必要とされる書類の作成等のために設置する機関。外部のセクレタリー・カンパニーに委託することが多い。)
  2.  2名の会社取締役
  3.  1名の取締役及びその署名立会人

 なお、シンガポールの会社及びLLPsは、引き続き任意でコモンシールを保持し、使用することを選択することもできる(例えば、特定の書類の締結にコモン・シールの添付を必要とする海外の法域で海外の顧客と契約を締結する場合に備えるため)。

 2) 定時株主総会及び年次報告書

 シンガポールの会社法にて設立された会社は、原則として毎年1回に定時株主総会を開催することが求められている。今回の会社法改正により、2018年初頭より、シンガポールの会社法にて設立された会社のうち、非公開企業(private companies。定款によって株式の譲渡が制限されており、かつ株主数が50人以下に制限されている会社)については、その財務書類を直近会計年度末日から5ヶ月以内に株主に送付することで、定時株主総会の開催が免除となり、法令遵守のための費用が軽減されることになる。

 また、従前、直前の定時株主総会から15ヶ月以内(設立直後の総会については設立の日から18ヶ月以内)とされていた定時株主総会の開催時期と定時株主総会から60日以内(シンガポール国外に支店登録のある会社)又は30日以内(その他の会社)とされていた年次報告書の提出時期が、

  1.  上場会社であれば、会計年度末日後4ヶ月以内に定時株主総会を開催し、会計年度末日後5ヶ月以内に、年次報告書を提出
  2.  非上場会社であれば、会計年度末日後6ヶ月以内に定時株主総会を開催し、会計年度末日後7ヶ月以内に、年次報告書を提出

というように改正されている。定時株主総会の開催及び年次報告書の提出期限も会計期間末日を基準にしたものに整理され、会社の管理上の負担が軽減されることになる。

 この点、会計年度末を変更することで、定時株主総会の開催や年次報告書の提出の回避を制限するために、

  1.  (i)変更日の設定により、会計期間が18ヶ月以上となる場合、又は(ii)会計年度末日が変更前の会計年度末日の設定又は変更から5年以内に行なわれる場合、ACRAの承認を必要とすること
  2.  ACRAが別途承認する場合を除き、会社の会計年度の期間が、設立年度において18ヶ月を超えないこと
  3.  会社が設立時及び事後の会計年度末日変更時に、会計年度末日をACRAに通知すること

などのセーフ・ハーバーも用意している。

 (3) 会社の所有権及び支配権の透明性の改善

 2017年3月31日より、法人の所有者及び支配者をより明確にし、当該法人が非合法な目的に悪用されるのを防ぐことを目的として、下記の改正が行われている。当該改正は、国際標準への整合により、シンガポールの信頼の置けるクリーンな金融ハブとしての位置づけを維持する取組みに資するものと考えられている。

 1) シンガポール会社及び外国会社のシンガポール支店の実質的所有者の名簿の作成

 シンガポール会社法に基づき設立された会社、及びシンガポール会社法に基づき支店が登録されている外国会社は、その実質的所有者(controller)の情報を取得・維持し、かつ、請求があった場合には、これをシンガポールの官公庁において閲覧に供する義務を有するといった制度が会社法上設けられた。ここで言う実質的所有者とは、かかるシンガポールの会社及び外国会社に対して「実質的な支配(substantial control)」又は「重大な利益(substantial interest)」を有するものとされている。「実質的な支配」とは、取締役会の議決権の過半数を有する取締役の選任若しくは解任をする権利を有する場合、株主総会での総議決権の25%超の議決権を有する場合、又は当該会社に重大な影響又は支配を及ぼすことができる権利がある場合若しくは実際に支配を及ぼしている場合と考えられている。また、「重大な利益」とは、その会社の議決権の25%を超える株式の権利を有するか否かなどが基準となる。もっとも、シンガポール政府が所有する法人やMonetary Authority of Singapore (MAS。シンガポール金融局)に規制される金融機関、更にはシンガポール国外で上場する外国法人については、名簿に記載の必要のある実質的所有者がいないものと解してよいものとされている(ただし、実質的所有者がいない旨、名簿に明らかにする必要がある)。

 2) ノミニー取締役の名簿の作成

 シンガポールの非公開会社は、会社法上別途定められる場合を除き、ノミニー取締役の登録簿を保持することが求められている。ここで言う「ノミニー取締役」とは、他の者の指図、指示若しくは要求に従い行為する慣習のある取締役、又は行為する義務のもとにいる取締役を意味する。当該ノミニー取締役は、ノミニーとなってから30日以内など所定の期間内に、ノミニーとなっていること、及びノミニー取締役に指示等をする者についての所定の情報を会社に対して知らせなければならない。また、会社は、ノミニー取締役の所定の情報を所定の場所にて保持し続けなければならない。かかる情報は公開や公衆閲覧に供することが禁止されているが、ACRA等にて請求された場合には、これを提出しなければならない。

 (4) 外国企業のシンガポール籍への変更スキームの導入

 シンガポール以外の外国の法律で設立された外国籍企業を、シンガポール籍、シンガポール法設立企業として、シンガポールに登録を移転することが認められることとなる企業の国籍の変更スキームが、2017年上半期に導入が予定されている。一定の地域及び世界全域の統括拠点をシンガポールに移しつつも、従前の活動及びブランド力を維持したい外国籍企業に資するスキームとなる。シンガポール籍となった外国籍企業は、シンガポールの会社となり、シンガポール法の適用を受けることとなる。かかるスキームにおいては、新たな法人が設立されものではなく、当該外国籍企業の義務、負債、財産又は権利に影響を及ばすものではない。かかるスキームの適用を受けるには、当該外国籍企業は、組織体制などその法的構造をシンガポール会社法に基づく株式会社に合わせることができることや、本国法がかかる変更を認めるものであることが前提とされる。

 (5) シンガポールの負債整理及び企業救済フレームワークに対する変更

 破綻企業の再生及び再編により多くの機会を提供することで、シンガポールの企業救済及び再編を強化することを目的とする改正が2017年5月23日に行われている。今回の改正は、特に、シンガポールにおけるクロス・ボーダー倒産の処理力を強化すると共に、シンガポールのスキーム・オブ・アレンジメント等の制度強化を図るものである。

 1) スキーム・オブ・アレンジメント

 スキーム・オブ・アレンジメント(以下「SOA」という)は、英国その他のコモンウェルス国において取り入れられている会社法上の制度で、債権者又は株主(又は債権者若しくは株主の特定のクラス)の法定多数の承認を得ることにより、裁判所の承認を条件として、当該会社とすべての対象債権者又は株主との権利義務関係を規律することを可能とするものである(従前の経営者ではない管財人に経営権の移らないいわゆるDIP型の債務整理手続)。シンガポールにおいても債務整理及び企業再編の手続に用いられており、債権者又は株主からなる集会に出席し、議決権を有する者の頭数の過半数、かつその債権額・株式価値の4分の3以上の賛成があり、裁判所の承認も経て、提案されたスキームの条件において権利変更が行われる。今回の改正では、従前制度的に不完全とされていた指摘も踏まえて、米国チャプター11の手続に類似する制度を取り入れている。具体的な改正点は下記のとおりである。

  1.  後述するジュディシャル・マネジメント(judicial management)では、債務会社は、執行手続や会社の清算を申請する債権者に対して、自動的に、モラトリアム命令(一定の期間、債務者に対する差押え、担保の実行等の債権回収手続を停止する命令)が付与されていた。他方、SOAには同様の自動的なモラトリアムはなく、債務会社は、SOAの手続の一環として、別途、モラトリアムを申請しなければならず、また、SOAの手続のもと、モラトリアムが付与されることが保証されるものではなかった。今回の改正により、一定の債権者保護の規定のもと、SOA申請後30日間、自動的に開始されるモラトリアムも導入された。また、モラトリアムの対象が、一定の条件のもと、SOAの対象会社のみならず、その親会社及び子会社にも拡大された。
  2.  SOAの手続中、債務者救済のため、他の既存債権者の債権よりも優先弁済が確保される救済的ファイナンス規定を認める規定が導入された。
  3.  ある種類の債権者による反対がある場合でもスキームの強制的な承認を認めるクラムダウン(cram-down)制度が導入された。
  4.  モラトリアムを求める債務会社の開示義務を拡大し、また、シンガポールの裁判所が債務会社に対して、モラトリアム期間に、その資産の処分、権限の行使、又は株式の移転を制限することができる権限を与え(その会社の通常の業務で行われる場合を除く)、債権者保護も強化した。
  5.  一定の条件のもと、債権者集会を経ずに、スキーム・オブ・アレンジメントを認める制度を導入した。

 2) ジュディシャル・マネジメント

 ジュディシャル・マネジメント(Judicial Management。以下「JM」という)とは、会社に対して更生の機会を与え、利益回復させるための裁判所の監督のもと行われる会社の更生手続である。JMに関する改正により、会社がJMを申立てることができる基準を緩和した。また、SOA同様、シンガポールの裁判所に対して優先債権者の反対がある場合でもJM命令を出すことのできる権限を付与した。更に、SOA同様、JMにおける救済資金調達の調整等もなされている。

 3) クロスボーダー倒産

 クロスボーダー倒産に関する改正として、国をまたいだ企業の倒産手続を容易にするために、国連国際商取引委員会国際倒産モデル法(UNCITRAL Model Law onnCross-Border Insolvency)が会社法の一部として組み込まれた。これにより、外国企業の清算に関する一般的なリング・フェンシング・ルール(シンガポールで登録している外国企業が、シンガポール国外で倒産した場合に、シンガポールにおける債務がすべて弁済された後でなければシンガポールの清算人が海外に送金を行うことを禁止するルール)が、銀行や保険会社等の特定のクラスの金融機関を対象とする場合以外に廃止されている。オーストラリア及び英国等、他の法域における同様の制度に足並みをそろえる改正となっている。

  マレーシアにおける会社法改正

 (1) 改正の背景及び施行時期

 2016年に会社法改正法案が国会で承認され、2017年1月31日にマレーシアの会社法が改正された(The Companies Act 2016。以下「マレーシア改正会社法」という)。会社法改正のためのCorporate Law Reform Committeeが2003年に設置されてから、長い年月を経て行われた大改正であり、今回の改正では①会社設立と意思決定の簡易化、②株式資本管理及び再編の容易化、③コーポレート・ガバナンス及び企業責任の強化及び④債務超過企業を管理するための倒産法の現代化といった点に注力している。

 (2) 会社設立と意思決定の簡易化

 1) 一人株主会社の許容

 改正前の会社法では、会社設立時に、株式会社の株主は最低2名が必要であり、また、常時、最低2名の居住取締役が必要とされていたが、マレーシア改正会社法では、株主、取締役(居住取締役)とも常に1名で足りるものとされている。そのため、シンガポールの会社法では以前から認められていたが、マレーシアでは従前認められていなかった一人株主が取締役を兼務する会社の設立が認められることになった。

 2) 定款保持の自由化

 従前、マレーシアの会社は、基本定款(Memorandum of Association)と付属定款(Articles of Association)という2種類の定款の保持が求められていたが、それがConstitutionという一つの定款に統一され、更には定款を保持しないことを選択することもできるようになった。このConstitutionたる定款を保持しないことを選択した場合には、マレーシア改正会社法の規定の原則に従うこととなる。他方、定款に別途定めることにより会社法の原則に従わないことがマレーシア改正会社法上認められる場合には、かかる例外を定めた定款を有することとなる。また、定款に会社の目的を記載してもマレーシアの会社の行為が制限されるものではなくなり、定款への会社の目的の記載自体が不要となった。シンガポールでも、定款への目的の記載は、2006年会社法改正時に不要とされており、また、2014年改正法により、定款がConstitutionに統一されているが、定款自体を持たなくてもよくなったという点は採用されていない。

 3) 株主総会の運営の効率化

 今回のシンガポール会社法の改正同様、マレーシア進出時で上場前に用いられることが多い非公開会社 (private companies。株式の譲渡に関して定款上制限があり、かつ株主の人数が50名を超えない会社)では、定時株主総会を行うことが義務付けられなくなった。また、取締役の解任など一定の事項を除き、株主全員の同意がなくとも、非公開会社については、株主総会を開催した場合と同様の要件の株主が署名すれば、株主総会での書面決議も行うことができるようになっている。

 (3) 株式資本管理及び再編の容易化

 1) 額面株式及び授権資本制度の廃止

 マレーシアでは、従前、額面株式の定めと授権資本制度があった。そのため、新規に発行する株式は原則定められた額面以上のものでなければならず、また、定款に定められる株式の範囲を超えて取締役が株式を新規発行することができなかった。特に会社の1株あたりの実質的な価値が、額面株式未満になっている場合には、株式による資金調達を困難にしていた。かかる制度は英国法系の会社法にかつて多くみられたものではあるが、シンガポールや香港などは、より柔軟な株式による資金調達等を可能にするため、かかる制度を廃止している。マレーシア改正会社法により、マレーシアでもかかる制度が廃止されることになった。

 2) 裁判所の関与しない減資手続

 従前、マレーシアの会社が減資を行う場合には、株主総会の特別決議と裁判所の承認が必要であった。今回のマレーシア改正会社法により、取締役がソルベンシー・テスト(配当宣言、裁判所の命令のない減資、フィナンシャル・アシスタンス及び優先株式の償還並びに自己株式の買入れなど、会社の資本が外部に流出し得る行為を行う場合には、それにより会社の債権者に悪影響を及ぼさないか、会社の取締役がその行為により会社の支払能力に悪影響が生じないことについて、法定の要件に基づき確認するもの)を満たしている旨、ソルベンシー・ステートメントにて証明すれば、裁判所の承認なくとも、株主総会の承認で減資を行うことが可能となった。なお、当該ソルベンシー・ステートメントが合理的な根拠なく行われたものである場合には、取締役は、刑事罰が課される場合がある。

 3) 財務支援(フィナンシャル・アシスタンス)制限の柔軟化

 マレーシア改正会社法より前は、マレーシアで設立された会社は、当該会社又はその親会社の株式の取得のために、ローンや担保提供などの財務支援をすることが禁止されていた。今回の改正により、その会社の株主の75%以上の承認、取締役会での過半数の賛成、賛成取締役によるソルベンシー・ステートメントの提出、及び、その会社が財務支援をすることに関して、公正な価値を受領することができる等の要件を満たすことで、上記の財務支援をすることができることとなった(いわゆるホワイト・ウォッシュの導入)。

 (4) コーポレート・ガバナンス及び企業責任の強化

 1) 取締役の報酬の承認

 以前は、取締役の報酬の承認について、特に会社法上、規定はなかった。マレーシア改正会社法では、非公開会社以外の会社、上場会社及び上場会社の子会社は、株主総会決議により取締役の報酬を承認するものとした。他方、非公開会社については、取締役会決議で承認できる一方で、総議決権の10%以上を保有する株主の請求により、株主総会で取締役の報酬の承認を求めることもできるようになった。これにより、取締役によるいわゆるお手盛りを可及的に回避することができるようになった。

 2) 取締役の会社法違反に対する罰則の強化

 取締役が会社法に違反した場合の罰則が強化されている。罰金については、最大300万リンギットに上げられ、また、懲役については、最高10年とされている。具体的には、ファイナンシャルアシスタンス違反の罰金が、1000リンギットから300万リンギットに上げられている。

 (5) 会社の新しい救済手続の導入

 今回の会社法改正により、財務上、困難の生じている会社を救済するための新しい二つの制度が導入されている。これにより、企業の債務整理、企業としての継続性の維持及び清算の回避を図り得ることになった。

 1) 企業任意整理手続(Corporate Voluntary Arrangement)

 英国から導入した、新しい企業の任意整理の手続であり、Corporate Voluntary Arrangement (CVA)と言われている。裁判所の関与を最小限に抑え、より迅速かつ低廉な手続を行うことができるようにするものである。対象企業の経営陣は、独立した倒産の専門化により承認を得た債務整理の提案をし、その債権者の債権額の75%相当の債権者の承認により、その提案を受け入れるか否かを決めるものであり、それにより全債権者が拘束されることになる。

 2) ジュディシャル・マネジメント

 上述したシンガポールに存在する制度であり、英国の制度をもとにした司法管理システム、ジュディシャル・マネジメント・システム(Judicial Management System)である。会社の経営は、かかる手続中、独立した倒産の専門家で、裁判所より選任された管財人(judicial manager)に委ねられる。会社は、裁判などの法律上の手続からの保護など、非常に広範な債務猶予を与えられる。これは、会社及び管財人に、時間的な猶予を与え、会社が事業継続できるようにするためのものである。管財人は、債務整理計画を作成し、承認を受けるためにその債権者にこれを提示することとなる。

  おわりに

 上述の

この記事の続きをお読みいただくためには、法と経済のジャーナルのご購読手続きが必要です。

朝日新聞デジタル購読者(フルプラン)の方なら手続き不要

法と経済のジャーナル Asahi Judiciaryは朝日新聞デジタルの一部です。
有料(フルプラン)購読中の方は、ログインするだけでお読みいただけます。

朝日新聞デジタルのお申し込みはこちら

山中 政人(やまなか・まさと)

 西村あさひ法律事務所 シンガポール事務所 共同代表。
 2002年より弁護士業務を開始し、三井安田法律事務所、外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ、三宅坂総合法律事務所を経て、2008年西村あさひ法律事務所に入所。公募、第三者割当、グローバル・オファリングなど、キャピタルマーケット業務を専門的に手がけ、日本の企業のグローバル・オファリング、韓国、台湾、香港、シンガポールでのIPOに関与する。2011年より2012年まで香港のノートン・ローズ法律事務所に出向した後、2012年2月より西村あさひ法律事務所シンガポール・オフィスにて執務開始。M&A、ジェネラル・コーポレート、ファイナンスなど日本企業のアジア展開を幅広くサポート。

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。