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ニューズ&コメンタリー

自動車メーカー、欠陥放置4カ月以上が42例 内閣府消費者委の調査で判明

母国語が苦手、担当者の退職で業務停滞

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 自動車メーカーが自社製の車の欠陥を把握してリコール(改善措置)を決めたにもかかわらず以後4カ月以上にわたってリコール実施の事前の届けを国土交通省に出していない事例が昨年度までの2年間に少なくとも42件あったことが内閣府消費者委員会の調べで明らかになった。ある外国製の小型二輪車のケースでは母国メーカーが日本国内の輸入事業者に実施を通知してから届け出までに10か月以上もかかっていた。リコール以外の業務の多忙や担当者の退職でリコール準備が停滞したり、メーカーのある本国から届いた書類に不具合の内容が本国の言語で書かれていて日本側で詳細を把握できなかったりした例もあった。リコールが遅れている間に同様の不具合や事故が新たに発生したケースもあるといい、消費者委員会は近く国土交通相に対し、「リコールの迅速な届け出を促進するために、明確な基準・目標などを示すこと」を求めて建議する。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽本文中のリンクはすべて内閣府消費者委員会のウェブサイトへのものです。


消費者委員会会議全景拡大消費者委員会(奥)を傍聴する人々(手前)=8月27日午後、東京都千代田区永田町で
 8月27日に開かれた消費者委員会で調査結果は報告された。消費者委員会は、同委員会設置法の権限に基づき、5月に国土交通省に資料の提出を求め、中村雅人委員(弁護士)、桜井敬子委員(学習院大学法学部教授)、佐野真理子委員(主婦連合会事務局長)、事務局職員5人が中心になって自動車リコール制度の実態を調査してきた。

 それによると、2008年度、2009年度の2年間に国土交通省に届け出られた国産車のリコール416件のうち、メーカーがリコールを決定した日付が明確に届け出資料に記載されていた136件について、届け出までの期間を調べたところ、2か月以上かかっている事例が少なくとも34件あった。このうち4か月を超えるものが10件。中には8か月を超えるものもあった。34件のうち8件でリコールが決まってから届け出までの間に26件の不具合が新たに発生していた。ある大型特殊自動車については、メーカーがリコール実施を決めてからリコールが届けられるまで7か月余も経過しており、その間に8件の不具合が新たに発生していた。

 同じ2年間に届けられた輸入車のリコール183件のうち、本国のメーカーから日本国内の輸入事業者に改善措置実施の通知があった日付が届け出資料に明示されていた149件について調べたところ、通知からリコール届け出まで4か月以上かかっている事例が少なくとも32件あった。うち3件でその間に新たな不具合の発生が6件あった。

 このようにリコールを決めたのにリコールを届けない理由について、消費者委員会が調べたところ、「本来すみやかにリコールを届け出るはずであったが、担当者の退職や担当部署の移転により、案件の処理が滞ったため」「リコール以外の業務(予算計画立案等)が急務となり、届出準備が停滞したため」「リコールが必要となる不具合の内容が本国から通知されてきたが、当該通知が本国の言語によるものであったことから、詳細を把握できなかったため」などの理由が挙げられているケースがあった。消費者委員会の報告書はこれについて「期間を要したことについて、合理的な理由を欠いている事案もみられた」と指摘している。

消費者委員会会議拡大消費者委員会の委員ら=8月27日午後、東京都千代田区永田町で
 リコールを決めても、それに必要な部品の調達やユーザーの把握など準備に時間がかかり、リコールの届け出もこれにあわせて遅れることがある。消費者委員会の調査報告書はこれに関連して、「ユーザーへの注意喚起のために、運転時の注意事項を付記した上で、早期に届け出を実施している事案がみられた」とダイハツ工業とトヨタ自動車の例を、いわば模範例として紹介。明確に言及しているわけではないが、リコールの準備が整うのを待つことなく、国土交通省への届け出と公表、関係者への注意喚起を先行させるべきと示唆している。

 リコール届け出は道路運送車両法に基づく制度。自動車メーカーは、自社製の車が保安基準に適合しなくなるおそれがある状態にあり、かつ、その原因が設計または製作の過程にあると認める場合には、速やかに必要な改善措置を講ずる義務があり、道路運送車両法で、この改善措置を事前に国土交通省に届け出ることが義務づけられている。つまり、リコールを決めたにもかかわらず、それを届けないということは、その間、保安基準不適合のおそれのある車をそうと知りながら公道に走らせることを放置する、ということを意味する。消費者委員会の報告書はリコール届け出の遅れについて「安全の確保に支障が生じるおそれがある」と指摘している。

 リコール届け出までの期間について、日本では、法律に規定がなく、国土交通省の通達で「すみやかに」となっているに過ぎない。2009年度までの5年間に、リコール届け出が迅速に行われなかった5つの事例について国土交通省の行政指導がなされていたが、そのほかは「適切な対応がなされなくても特段のペナルティもない」という状況だった。

 消費者委員会は国土交通相に渡す予定の建議の書面の中で、次のように指摘している。

 「ユーザーに対する注意喚起情報のすみやかな提供という観点からも、届出までに長期間を要している事案について、リコール届出や立入検査等の機会において、長期化の要因を確認のうえ是正を促す等、より一層注視することが必要である。さらに、リコール届出のタイミングの考え方について、現行の通達よりも一層明確な基準・目標等を示すことの必要性について検討する等、早急な改善が必要である」

 この建議を決めた27日の消費者委員会では一部の委員から「いつまでに届けるべきか、たとえば、5日とか1週間とか10日とか1か月とか、おそらく法改正が必要になるだろうが、具体的に検討すべきことを求めたい」との意見も出た。

 消費者委員会は「消費者庁を含めた関係省庁の消費者行政全般に対して監視機能を有する独立した第三者機関」として昨年9月に発足し、今回、初めて建議を決定した。消費者委員会設置法では、「消費者の利益の擁護に関する基本的な政策に関する重要事項を調査審議し、必要と認められる事項を関係各大臣に建議すること」が消費者委の任務の冒頭に掲げられており、そのために資料提出など必要な協力を関係行政機関に求める権限も規定されている。消費者委員会はこの権限に基づき、今年5月にリコール関連資料の提出を国土交通省に求めていた。

消費者委員会記者会見拡大記者会見する松本委員長(右)と中村委員=8月27日夕、東京都千代田区永田町で
 消費者委員会によると、国土交通省は調査にあまり協力的ではなく、

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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