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ニューズ&コメンタリー

《検事総長一問一答詳録》「私の責任は再生に全力を尽くすこと」辞任を否定

 大阪地検特捜部の元主任検事による証拠改ざん疑惑が朝日新聞の報道で発覚して1カ月。検察トップの大林宏検事総長が記者会見の場に姿を見せ、おわびした。前特捜部長、元副部長が起訴された犯人隠避容疑事件の証拠の中身を、最高検は「容疑者の否認」を理由に明かそうとしなかった。

  ▽この記事は2010年10月22日の朝日新聞朝刊に掲載された原稿に大幅に加筆したものです。

  ▽一部の呼称を略しました。

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 21日午後5時。最高検による記者会見は、検事総長の「おわび」から始まった。集まった記者やカメラマンは約50人。大林総長は硬い表情で会見場へ入り、準備した書面を読み上げた。

記者会見に臨む(左から)大林宏検事総長、伊藤鉄男・次長検事ら最高検幹部=21日午後5時1分、東京・霞が関の最高検、金子淳撮影拡大記者会見に臨む(左から)大林宏検事総長、伊藤鉄男・次長検事ら最高検幹部=21日午後5時1分、東京・霞が関の最高検、金子淳撮影

 このたびは、村木さんの事件を起訴した現職の検事が、公判係属中に、証拠物を改変するという、およそ考えがたい、あるまじき行為に及んだ上、この事件を決裁した検察幹部2人を犯人隠避の事実で逮捕起訴しなければならないという前代未聞の事態に至ったことにつきまして、改めて国民のみなさまに深くお詫び申し上げたいと思います。


 本日、法務大臣から、検察の再生についてご指示を受けました。

 大臣からは、検察をめぐる現在の状況は、検察の歴史上、かつてない危機的な事態であるとの大変厳しいご指摘がありました。

 その上で、大臣からは、私の責任において、このような事態に至った原因等について徹底的に検証し、思い切った改革策を講じるなどして、検察の再生に全力を尽くすようご指示をいただきました。

 検察を代表する者として、大臣のお言葉を重く受け止めております。


 失われた国民のみなさまの検察に対する信頼を、一刻も早く回復することが、私に課せられた責務であると考えています。

 そのために、今回の一連の事態について、検察として徹底した検証を行ってその原因を究明し、検証の結果明らかにされた問題点をふまえて、思い切った改善策を講じ、検察のあるべき姿を取り戻すべく、全国の検察庁職員とともに全力を尽くしてまいりたいと考えています。


 最後に、無罪の判決が確定した村木さんに対してお詫び申し上げたいと思います。

 村木さんには、基本をおろそかにした検察の捜査等のため、長期間にわたり多大なご負担・ご労苦をおかけしてしまい、大変申し訳なく思っており、深くお詫び申し上げます。

 読み上げを終えると、総長は深く一礼した。

 就任時などを除き、検事総長が会見に臨むことは数少ない。過去には、1993年のゼネコン汚職事件で、検事が捜査中に参考人に暴行したとして、特別公務員暴行陵虐致傷容疑で逮捕された事件と、02年に大阪高検公安部長が詐欺などの容疑で逮捕された事件で、謝罪したくらいだ。

記者会見で厳しい表情の大林宏検事総長=21日午後5時2分、東京・霞が関の最高検、上田潤撮影拡大記者会見で厳しい表情の大林宏検事総長=21日午後5時2分、東京・霞が関の最高検、上田潤撮影
 記者会見に総長が出席することは、直前まで伏せられていた。当初、総長は冒頭のみ同席する予定だったが、総長自ら、質問にも答えることを決めたという。

 質疑は1時間に及んだ。

 不祥事を知った時の心境を問われると「信じられないの一言」。元主任検事と前特捜部長らの逮捕を決断した時の気持ちを聞かれ、「最高検の内部で協議しているので、個人的にどうこう、というのはない」としつつも「残念だなという思いがした」と付け加えた。

 最高検は今後、郵便不正事件の捜査や公判の過程をすべて検証し、年内には再発防止策も含めて公表する予定でいる。今回の不祥事の原因や、特捜部のあり方についての質問に、総長は「報道の大部分は見ていて、特捜部のあり方に議論があることは承知している」と前置きした上で、「複合的な要素があったと思うが、それも含めて検証したい」「今、申し上げる段階ではない」と答えた。

 総長の責任論や辞任の意思を何度も確認された際には「検察の改革は相当の決意を持ってやらなければならない」とかわした。

 逮捕時の会見などで説明役を務めてきた最高検ナンバー2の伊藤鉄男次長検事や、池上政幸刑事部長、八木宏幸検事らも出席。総長以外の幹部が答える間、総長は時に腕を組んで質疑応答を見守った。総長が記者から指名されると、手元の資料に目を落とし、言葉を選んで答えた。

 証拠FDの改ざんを検察内部で隠したとされる経緯や証拠の中身に話が及ぶと、最高検側は「(起訴された)2人が否認しているので公判上の問題がある」「彼らの被告人としての権利がある」などとして、ほとんど明らかにしなかった。

 主な質疑の概略は次の通り。

 ――記者会見のことだが、質疑応答で録音撮影を認めないのはなぜか。記者が情報を改ざんしないというほど信頼されているのか。

 次長: 原則として冒頭だけ。編集などで正確に伝わらないことを危惧している。生の声なら普通信頼できるが、カットしてしまえば、本意ではないことがそれだけで出てしまう。できるだけ我々としても多くのことを丁寧に説明したい。だから、この部分はカメラ撮影させてない。

 

 ――前田(元検事)が2人(前特捜部長と元副部長)に改ざんを打ち明けたときの経緯と文言は?

 次長: 証拠関係の中身なので答えられない。前回、前田(元検事)を起訴したときは、認めており、反省していたから、踏み込んで説明した。今回は2人とも事実関係を否定している。今後の公判、彼らの国民としての権利もあるので、前回と比べると少ない情報しか答えられない。

 

 ――総長に聞きたい。今回の事件の根本は? 人事とか特捜検察のありかたについては?

 総長: いろいろなご指摘をされているが、特捜部のあり方もいろいろと議論されているのは承知している。今、検証作業をやっている。事実関係と同時に検証をふまえて、これから検察としてどう改革していくかも検証の大きな役割。特捜のあり方の問題、ほかのことについてもどうしていくか、人事のこともある。いろいろな複合的な要素があったと個人的に思うが、検証のなかで、どう検察を改革していけばいいのか検討していきたい。いずれ、そういうことを発表する機会があると思う。

 

 ――公訴事実の(1)のところで、大坪前部長らが前田元検事にしたという3カ所の「指示」がでてくる。だれがどこで指示をしたのか。

 八木検事: 発表文の限度しか答えられない。指示した場所は、記載している通り、大阪地検。地検の中で、としか言えない。

 

 ――それは地検のどこですか?

 池上刑事部長: いずれ公判前整理手続きで説明する。こういう場所だから、刑事訴訟法の定めに従って公判廷で明らかにする

 

 ――総長は、今回の事件について前代未聞の事態といわれたが、総長の責任についてはどうか。引責も含めて。

 総長: 先ほども申し上げたように、検察にとっては、国民の失われた信頼を取り戻すことが大事。検証の結果として明らかになる様々な問題点を受け止めて、改革策を講じて、検察職員とともに全力で取り組むのが私の果たすべき責任と考えている。

 

 ――中国船衝突で、那覇地検による釈放について、総長は承諾決裁をしたのか。検察庁としては248条(「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」と定めた刑事訴訟法の規定)に基づいて釈放したものなのか。

 総長: 釈放について、私も了承している。裁量として釈放したというのは、最終的処分をしていないので、とりあえず釈放したと。基本的には検察が処分保留で釈放することはある。証拠が足りないときもあるし、被疑者の態度など様子を見ようというときもある。処分保留はまれではない。検察が外交的判断について判断したのではないかという批判があることはわかっているが、検察はいろいろな事情を考えて処分する。外国人の場合、不法滞在なのか日本で長期間働いているのか、外国との関係が問題になることもある。もろもろ考えて那覇地検が考え、我々が承諾した。

 

 ――今後の捜査について、補充捜査も最高検でやるのか、大阪地検なのか。人事異動で大阪に人を移すのか?

 次長: 最高検の捜査のチームでやる。

大林宏検事総長の会見には、多くの記者が詰めかけた=21日午後5時、東京・霞が関の最高検拡大大林宏検事総長の会見には、多くの記者が詰めかけた=21日午後5時、東京・霞が関の最高検

 

 ――村木事件で、関係者が供述調書を「記憶違いだった」と廃棄を求めた。事務官がそれを受理したのに、公判で証拠請求された。これは捜査しないのか?

 次長: 事実関係を聞いていないのでよくわからない。1回つくった調書を捨てるわけにはいかない。訂正を求めるのが普通だと思うのですが、

 

 ――本人は「廃棄してくれ」と言って、「廃棄しました」と受理されたわけです。

 次長: いま初めて聞いたので、具体的に言ってくれれば、検証のなかでやっていく。

 

 ――今回の最高検の捜査では物証が少ない、供述に頼った捜査ではないかという意見が出ているが、どのように受け止めているか?

 

 次長: 証拠の中身は言えない。今回、どんな証拠があるか、物証が少ないというのを誰がいっているのかわからないが、捜査をしている人にすれば、有罪を得るのに十分な証拠があるという判断で起訴した。今は言えないが、手続きに従って全部明らかにする。その後で、証拠が足りないとか物証が少ないとか言ってほしい。

 

 ――逮捕した時の事実に比べると、事実(2)が加わっている。逮捕後の捜査で明らかになったということか?

 次長: 逮捕事実よりも相当ふくらんでいるが、逮捕後の捜査で証拠で裏付けられたものを加えた。

 

 ――十分な証拠があるということだが、2人とも一貫して否認しているが、最高検としてはどうか?

 

 次長: 個人的にはいろんな思いがあるのだろうが、被告人が黙秘するのは権利なので、そういうことはありうるということで進めている。感想はない。

 

 ――総長に聞きたいが、今回特捜部の捜査のあり方についても検証のなかでやっていくということで、複合的なことがあったと思うということだが、現時点ではどうお考えか?

 総長: 私から、どの点ということを強調すると結論に影響してもまずい。マスコミでいろいろと書かれているが、私はそれに目を通しているし、検証のなかで触れてくると予想している。何と何が問題とは今の段階では言えない。検証で整理されて、どういう点で対策を立てるか触れられると思う。質問があったので、特捜のことに触れたが、検証がまとまり、対策を検討した段階で発表できるのかなと思っている。

 

 ――村木さんが無罪になった事件でも最高検が了承して、逮捕した。最高検が 前田(元主任検事)、大坪(前特捜部長)、佐賀(元特捜部副部長)を今回捜査しているのはわかりにくい。全然信用がないと思うが見解を。

 総長: 最高検が了解していたというのは、どの程度なのかというのは検証のなかで明らかにされてくる、どのようなものが上がり、どのような判断がなされたのか。大阪地検特捜部の決裁過程、捜査、公判のなかで出てきたもの、当時の地検幹部が高検幹部にいっているということもある。検察庁でふたをするのではないかと疑いをもたれないようにということで、当時あの事件の周辺にいた人たちは避けよう、個人的なつきあいのある人は避けようとした。最高検は年配の人が多いので、若い人とは縁がない。やむを得ず、最高検が捜査した。公平、厳正な捜査をしたいということ。

 

 ――処分された人以外にも改ざんを聞いていた高検幹部がいたが、地検内部でも複数知っていた人がいるが処分対象にされていない。処分しなかった理由は?総長は抜本的改革をすると言ったが、それは検証の途中でなのか、終わってからなのか。

 池上刑事部長: 懲戒処分は国家公務員法違反にもとづき人事権者である法務大臣が判断すること。検察庁は事実関係の報告はしているが、職責についてどう問われるかは法務大臣の判断。

 

 総長: 検証を終えた後の私の問題についてだが、検証は事実関係の調査ということと、検察で思い切って変えた方がいい問題がある。相当の決意をもってやらないといけない。現場にとっては、一般の検察官はまじめに自分の職責を果たしている。改革をすると、現場で負担が多くなると思う。現場のまじめにやっている人たちにも現状を理解してもらって、変えられるところは変えていきたい。最高検中心に検討し、法務大臣のもとでの第3者を入れた検討会もあるので、検察で容れることができるものは実行していく。可能なものは実現していく。検証作業がいつ終わるかわからないが、そこはご理解もらいたい。

 

 ――話を聞いていると、刑事事件は一段落で次は検証という感じだが、刑事事件はこれで終わりなのか。前田元検事を特別公務員職権乱用罪で問い直すことはないのか。国井検事らは知りながら公判を通じて村木さんを有罪にしようとした。刑事責任は問われないのか?

 次長: これまで改ざんと犯人隠避で捜査をしてきた。それは2人で終わり。そのほかの刑事責任に触れるかどうかは、検証と並行してこれからやっていく。もし、刑事責任を問われることがあればやっていく。しかし、簡単な話ではない。それこそストーリーを描いて、それに合わせて捜査をするわけにもいかない。引き続きやっていく。公正に徹底的にやるというのは最初から言っている。

 

 ――捜査態勢は現状を維持するのか?

 次長: 公判もやらないといけないが、今いる十数名が引き続きやっていく。刑事責任を問える事実があるかないかは証拠の問題。

 

 ――2人(前特捜部長と元副部長)は黙秘と言われたが、調書は取ってないのか。黙秘するなら、公訴事実(2)のかぎ括弧の文言の内容は、報告を受けた方の話なのか?

 八木検事: 黙秘は権利と言ったが、現段階では、事実を認めていない否認というのは言える。黙秘してるかどうかは申し上げられない。かぎ括弧については、文脈上わかりやすくするためにかぎ括弧をつけているので、生の発言ではない。これをどう認定したかは言えない。調書の有無についても申し上げられない。

 

 ――総長にうかがいたい。前田

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