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ニューズ&コメンタリー

郵便不正事件から前特捜部長の起訴まで 最高検vs.大阪地検元特捜幹部

 検察の威信を失墜させる事態となった、大阪地検特捜部元主任検事・前田恒彦被告(43)の証拠改ざん事件。それを隠したとして前特捜部長・大坪弘道容疑者(57)と元副部長・佐賀元明容疑者(49)が21日に起訴された。脚光を浴びた郵便不正事件は、捜査の見立て違いから、改ざん、隠蔽の泥沼に落ちていったのか。関係者取材からその内幕を追った。

  ▽この記事は2010年10月22日の朝日新聞朝刊に掲載されたものです。

  ▽一部の敬称・呼称を略しました。

  ▽関連記事: 厚労省虚偽公文書事件に関する一連の記事

 

 ■「兄貴弱り目、弟踏ん張る」

 「兄貴が弱り目の時こそ、弟分が頑張らなくては」

 2009年春、大阪地検特捜部が郵便不正事件の本格捜査に着手してから、大坪は口癖のように言っていた。

 「兄貴」とは、東京地検特捜部のこと。準大手ゼネコン「西松建設」の政治献金にからみ、民主党代表(当時)の小沢一郎氏の秘書を、政治資金規正法違反の疑いで逮捕した。総選挙を前にした時期の着手に、「国策捜査だ」という批判も浴びた。

 一方、「弟分」の大阪地検特捜部は、矢継ぎ早に事件を実らせていた。08年10月に部長に就任した大坪は、部下たちにこう訓示していた。「組織のために尽くせ。特捜部の特権と栄誉を忘れるな」

 初荷と呼ばれる初事件は2008年11月。90年代にヒット曲を連発した音楽プロデューサー小室哲哉氏が借金を重ねた末に5億円を詐取したとされる事件だった。主任の前田は逮捕初日に容疑を認めさせ、大坪の期待に応えた。

 勝負をかけたのが、2009年2月の郵便不正事件だった。広告会社などが障害者団体のための郵便割引制度を悪用して商用ダイレクトメール(DM)を大量発送し、正規料金との差額で億単位の郵送料を免れていた。

 事件の背後で、障害者団体との仲介や発送にからんで政治家の名前も浮上。大坪は郵便法の罰金刑の規定を駆使して切り込もうとした。「こんな『微罪』は特捜部のやる事件じゃない」と一部の幹部から批判もあったが、脱税との抱き合わせで着手にこぎ着けた。批判は消え、「国民の不公平を解消する捜査だ」ともてはやされた。

 しかし、政治家が関与した疑いの捜査は行きづまる。活路を探るなか、「厚生労働省から自称障害者団体に発行された1枚の偽の証明書」に捜査の重点が移った。

 証明書には、担当課長(当時・村木厚子氏)の印が押されていた。捜査当時は現役の局長。大坪は前田を再び主任に起用し、「何としても頑張ってくれ」と激励した。

 昨年5月26日、特捜部は村木氏の部下で元係長の上村(かみ・むら)勉被告らを虚偽有印公文書作成・同行使容疑で逮捕。上村被告は数日後、村木氏から指示があったとする供述調書に署名した。指示があった時期は「04年6月上旬」とされた。

 順調に見えた捜査の中で、前田には気にかかる物証があった。上村被告の自宅から押収した1枚のフロッピーディスク(FD)。保存されていた証明書の更新日時は「04年6月1日未明」で、見立てに合わなかった。

 だが前田は、自称障害者団体から郵便局側に証明書が提出された日付が「04年6月10日」だったことなどから、村木氏の指示は立証できると判断。大坪ら幹部にFDの存在を伏せて、村木氏の逮捕について了承を求めた。

 村木氏は否認したまま、昨年7月4日に起訴された。ある検察幹部は「関係者の調書は完璧。村木氏の有罪は堅い」と自信を見せた。

 昨年7月13日。最高検の調べによると、前田は大阪地検の執務室に私用のパソコンを持ち込み、データを書き換えられるソフトを使って、FD内のデータを「04年6月8日夜」に書き換えていた。

 前田は「落とし穴」に気づいていなかった。昨年6月29日に正確な更新日時をまとめた捜査報告書が作成されており、それが村木氏の裁判で証拠開示され、拘置所で村木氏本人の目にとまった。

 ■「小沢捜査」で応援中、矛盾表面化

 今年1月、東京地検特捜部は再び、小沢氏の土地取引をめぐる疑惑に切り込んでいた。前田は1月20日から応援に呼ばれ、東京・小菅の東京拘置所で連日、小沢氏の元秘書の取り調べをしていた。

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 前田が合間に見た検事控室備え付けのパソコン画

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