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ニューズ&コメンタリー

《最高検記者会見一問一答》尖閣沖衝突で起訴猶予

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、東京地検は1月21日、警視庁から書類送致を受けて国家公務員法の守秘義務違反容疑で捜査していた神戸海上保安部の一色正春・元海上保安官(44)=依願退職=を不起訴(起訴猶予)にした、と発表した。那覇地検も21日、この衝突事件で公務執行妨害容疑で逮捕され、のちに処分保留で釈放された中国人の詹其雄船長(41)を不起訴(起訴猶予)にしたと発表した。

 

 東京地検は処分理由を説明する中で、「映像データは厳重に管理すべきだったのに、不十分だった点は否めない」と海保内での映像管理の不備に言及。海保職員は流出した映像を広く閲覧・入手できる状態だったことが判断に影響したことを明らかにした。

 ただし、流出映像そのものについては国家公務員法で漏らしてはならないと定める「職務上知ることのできた秘密」と判断した。「刑事事件の証拠であり、公開すれば、映像の関係者の名誉や人権保護に問題が生じる恐れがあった」と根拠を説明した。

 映像をみつけた経緯が偶発的▽利欲的犯行ではない▽自ら出頭した▽停職1年の懲戒処分を受け依願退職した▽再犯の恐れはない、などの事情を総合的に考えたという。

 調べでは、元保安官は昨年11月4日午後8時半ごろ、神戸市内のインターネットカフェのパソコンから映像を動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿して、不特定多数の人が視聴できる状態にしたとされる。昨年9月7日に中国漁船と海保の巡視船が衝突した際に、巡視船が撮影した映像の一部だった。

 公務執行妨害容疑で逮捕された詹其雄船長については、検察当局は、衝突させる明白な故意までは裏付けられなかった(未必の故意にとどまり、計画性がない)うえ、巡視船の損傷が軽く、乗組員にけががなかったことなどを考慮したという。船長はすでに帰国したことや、事件後は尖閣諸島付近で操業する中国漁船が激減したことも理由に挙げたが、「日中関係を考慮したか」については具体的に答えなかった。

 ■起訴猶予とは

 犯罪の疑いが十分にあり、起訴して裁判で有罪に向けて立証することも可能だが、特別な事情に配慮して検察が起訴しないこと。比較的軽い犯罪で、本人が深く反省していたり、被害者と示談したりした場合に選択する。検察官の裁量で起訴するか起訴猶予にするかを決められる仕組みを「起訴便宜主義」と呼ぶ。同じ不起訴でも、証拠が足りず犯罪の疑いが弱いと判断して起訴を見送る「嫌疑不十分」とは異なる。

 ■未必の故意とは

 「必ず衝突させてやろう」という確定的な故意ではなく、「衝突するなら衝突してもかまわない」という程度の故意。

 ■日弁連会長「ビデオは秘密でない、嫌疑なしにすべきだ」

 東京地検による起訴猶予処分を受けて、日本弁護士連合会の宇都宮健児会長は「元海上保安官の行為は『秘密』を漏らしたものとは評価できず、起訴猶予ではなく『嫌疑なし』として不起訴処分にすべきだった」とする談話を発表した。

 理由として宇都宮会長は、「ビデオ映像は海保内で共有され、与野党の国会議員が見てテレビや新聞で報道された。中国漁船の船長は釈放されて帰国しており、刑事訴追のための証拠として使用される可能性もなくなっていた」と説明。「『秘密』の解釈の拡大化、曖昧化や重罰化に向かうことが強く懸念される」と述べた。

 ■最高検、東京地検、那覇地検が記者会見

 昨年9月、中国人船長が釈放された際、那覇地検の鈴木亨次席検事は「国民への影響と日中関係への考慮」を理由の一つに挙げた。21日の不起訴の会見でもこの点に質問が集中。鈴木次席は「理由は申し上げた通り」「総合的に判断した」と慎重な言い回しに終始した。最高検の田内正宏公安部長も会見で「巡視船の損傷が軽い」などの理由を繰り返し、日中関係の影響を認めなかった。

 元保安官については、流出させた映像が「秘密」だったのかが捜査の焦点となった。東京地検の八木宏幸次席検事は、公判前の証拠の公開を禁じる刑事訴訟法47条を根拠に「秘密と判断した」と説明。一部の国会議員に衝突映像が公開されていたうえ、船長が帰国し、刑事裁判で使われる可能性が低かったのに秘密といえるのかと記者から突っ込まれても、「秘密でなくなるわけではない」と強調した。

 ■最高検の記者会見の詳細

 最高検の記者会見ではまず、田中公安部長が、那覇地検と東京地検の被疑事実の要旨を読み上げた上、それぞれの事件の不起訴処分の理由を概略次のように

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