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ニューズ&コメンタリー

尖閣ビデオをDVDに入れるも砕いて廃棄、後日、ネットに

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 尖閣諸島沖で日本の巡視船と中国の漁船が衝突した様子を撮影した映像が動画サイト「YouTube」に流出した問題で、神戸海上保安部の海上保安官は当初、この映像を報道機関に公開しようと考え、DVDディスクに入れたものの、直後に、そのDVDを「個人が特定できる状況にあったため」という理由で砕いて廃棄し、手持ちの映像データも消去した。その後、改めて映像データを入手し直し、「YouTube」にアップロードした。この保安官は後に停職1年の懲戒処分を受けて辞職したが、映像データが「秘密」である理由としてその処分説明書に記載されたのは、「刑事訴訟に関する書類として、これを公にしてはならない」ということだけで、外交上の理由などその他の理由は一切挙げられなかった。情報公開法に基づき海上保安庁や第五管区海上保安本部が記者に開示した文書にそうした経緯が書かれていた。

 

 衝突事件は9月7日に発生し、石垣海上保安部は翌8日未明、中国漁船の船長を公務執行妨害容疑で逮捕し、9日午前、那覇地検石垣支部に送検した。

 情報公開法に基づき海上保安庁が開示した「中国漁船衝突事件映像流出事案の事実関係」と題する文書によると、その後、衝突事件の映像は次のような経緯をたどった。

 文書によると、9月17日、捜査の現場で、那覇地検の検事から海保側に対し、「映像鑑定を担当する海上保安大学校教授に早く証拠物を見てもらうように」との指示があった。

 これを受けて、石垣海上保安部を管轄する第十一管区海上保安本部の職員は、アクセス制限のある共有フォルダーを用いて映像を海上保安大学校に送ろうと試みた。しかし、うまくいかなかった。そこで、アクセスの制限があまりないパブリックフォルダーを用いることとし、海上保安大学校のパブリックフォルダーに映像を掲載した。しかし、大学校職員は映像を取り出すことができなかった。5日後の9月22日の昼休み、第十一管区の職員が海上保安大学校のパブリックフォルダーのことを思い出し、フォルダーを開いてみたところ、映像が掲載されたままになっていた。第十一管区の職員は即座にそれを削除した。

 一方、海保の文書や第五管区の文書によると、神戸海上保安部の巡視艇のある乗組員は、幹部職員になるのに合格する必要のある海上保安大学校の特修科試験の過去問題を入手しようと考え、9月19日午前10時半ごろ、巡視艇の操舵室に設置してある行政情報端末機を使って、海上保安大学校のパブリックフォルダーを開いた。そこには尖閣沖衝突事件の映像が掲載されていた。偶然これを見つけたこの乗組員はこの映像を巡視艇の端末に保存し、昼食後、船長ら同僚に声をかけてそれを視聴した。さらに、同日午後、管内の元上司ら6人に電子メールを送り、映像の保存場所を知らせた。

 その後、9月24日、那覇地検は逮捕・勾留中の中国漁船船長を処分保留のまま釈放すると発表。10月に入って、衝突の様子を撮影した映像を公表するかどうかが国政の争点に浮上した。政府は映像を公開しない方針に転じた。

 海保の文書によると、神戸海上保安部の巡視艇で9月19日午後にこの映像を視聴した海上保安官の一人は「映像が公開されない」との報道に疑問を感じ、「報道機関に

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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