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ニューズ&コメンタリー

《記者会見詳録》九州電力社長「コンプライアンス取り組み不十分だった」

「集団行動で内部通報制度生きず」

 九州電力は7月14日、玄海原発(佐賀県)の運転再開に理解を求めるテレビ番組での、「やらせメール」問題の調査結果を発表した。真部(まなべ)利応(としお)社長は福岡市の本店であった記者会見で「番組の信頼を大きく損ない、深刻に受け止めている。責任は重大だと思っている」と話した。その記者会見での主な一問一答のやりとりを紹介する。

  ▽この記事は2011年7月15日の朝日新聞に掲載された原稿を再構成した上で大幅に加筆したものです。

  ▽編集協力:佐竹祐哉

  ▽関連記事: 東京電力本店からの報告

 

 九電の日名子(ひなご)泰通副社長が14日、経済産業省を訪れて報告書を提出。経産省は過去の同様の事例の追加調査や、外部識者による原因究明などを指示した。

 調査結果によれば、国主催の6月26日の番組に賛成意見を送るよう呼びかけられたのは、社内やグループ会社などの計約2900人に上り、うち141人が実際に送った。6月26日の番組に電子メールやファクスで寄せられた意見は賛成286件、反対163件で、やらせで賛否が逆転したとみられる。

拡大記者会見で謝罪する九州電力の真部利応(まなべとしお)社長=7月14日午後4時32分、福岡市中央区

 報告では、原発部門トップだった前副社長とナンバー2だった前常務執行役員、佐賀支社長が放送前の6月21日に佐賀市内で会談。「運転再開への賛成意見を増やしたい」ということで一致した。3人は22日に、それぞれの部下に対応を命じた。その結果、原発部門や佐賀支社の幹部らを通じて、グループ社員や取引先関係者にやらせの指示が広がっていった。

 佐賀支社では取引先に協力を求める際「太陽光や風力発電などは代替電源となるのは無理で、当面は原発に頼らざるをえない」「安全対策は十分実施され、再開は問題ない」といった「例文」を渡していたことも新たにわかった。

 佐賀支社は、佐賀県が原発の運転再開を議論するため8日に開いた「県民説明会」でも、グループ社員や取引先関係者らに参加を呼びかけた。6日にやらせ問題が発覚して九電は社員に出席しないよう促したが、取引先関係者ら63人が実際に出席。これは当日の参加者全体の2割に当たる。

 過去のほかの住民説明会で九電が社員らを動員していたという指摘について、真部社長は「まったくなかったとは思わない」と述べた。

 調査結果に対し前副社長は7月14日、朝日新聞などの取材に「(やらせの)具体的な指示はしていない」と話した。

 ■組織がらみ、歯切れ悪く

 一連のやらせメール問題で焦点になったのは、九電の上層部がどこまで関与しているかだ。7月14日の記者会見でも質問が集中したが、真部社長は最後まで歯切れが悪かった。

 「中心的に指示したのは3人(前副社長、前常務執行役員、佐賀支社長)」。真部社長は幹部の関与を認める一方、「指示した側と受け取った側には違いがある」とも発言。上層部と、メールを送った課長級社員の認識にズレがあったという見方だ。

拡大

 この日公表された調査報告書には、九電社内の上司から部下へ、さらに子会社、取引先へと組織の指示系統通りに投稿指示が流れた図も添えられている。

 その図を踏まえて「組織的行為ではないのか」と繰り返し問われると、真部社長は答えた。「会社名なり会社の幹部(の名前)なりが使われている。それが複数名だから、組織的でないという否定はできない」

 九電は調査報告書で、「社会の常識や認識に反していた」「マネジメント上の問題があった」などと自ら指摘した。報道陣から「そんな会社が原発を動かしていいのか」との質問が飛び出すと、真部社長は弱々しく言葉をつないだ。「常識が欠けているのは全体なのかどうか。現場の人間は黙々と働いているではないか」

 会見は九電本店の会議室で午後4時半に始まった。約70席用意されたが、報道各社が詰めかけ「立ち見」も10人を超えた。質問が相次ぎ、会見終了は午後7時半。真部社長はこわばった表情のまま、エレベーターに乗り込んだ。

 ■主な社長の発言

 九州電力のホームページ(http://www.kyuden.co.jp/press_h110714-2.html)に掲載された社長記者会見の主な内容は次の通り。

 7月6日の会見で当社の第一報としてご報告しましたが、今回、経済産業省主催の佐賀県民への原子力発電所の緊急安全対策の説明番組(6月26日開催)において、当社が意見投稿を呼びかけた件につきまして、事実関係の調査を開始し、その原因と再発防止策などについて、先ほど、経済産業大臣に提出いたしました。

 事実関係としましては、当説明番組に先立ち、当時の副社長(原子力担当)、原子力発電本部長及び佐賀支店長の三者を中心に、「発電再開に賛成する意見の投稿を増やすことが必要である」との考えのもと、指示を受けた原子力発電本部や佐賀支店の当社社員が、社内および社外の協力会社等に対し、発電再開に賛成の立場からの意見投稿を要請し、141名(社内45名、社外96名)のものが実際に投稿を行ったというものです。

 このことが、玄海原子力発電所の安全対策等について、さまざまな立場から寄せられる県民の皆さまの、率直なご意見やご質問にお答えするという説明番組の趣旨および信頼性を大きく損なうこととなり、電気事業に携わるものとして、今回の事態を極めて深刻に受け止めています。

 玄海町を始め、佐賀県の皆さま、九州、さらには国民の皆さま、主催されました経済産業省に対し、心よりお詫び申し上げます。

 今回のことは、番組への投稿要請という行動が社会の常識や倫理観に反し、かつ、公平・中立であるべき説明番組に重大な影響を与えることの認識が欠落したものであり、当社の経営層を含め、コンプライアンス意識の希薄さが主な要因と考えております。

 今後は、社外の有識者で構成する「アドバイザリー ボード(委員長:社外有識者)を設置し、二度とこのような事態を招かないよう、原因分析を行うとともに再発防止策を着実に実施し、経営層をはじめ、全社員一丸となって、信頼回復に努めてまいります。

 

 記者会見の質疑応答での記者と社長との間の主なやりとりは次の通り。

 ――副社長、原子力発電本部長、佐賀支店長は、周知は指示したが具体的な指示はしていないと。ガバナンス上の問題になっているように思う。組織問題について真部さんはどうお考えか?


 真部社長:あのー。基本的にやっぱり、その、あってはいけないということが起きてしまった。その背景を考えてみる必要はあるのかな、と思いますが、しかし、結果としてみた場合やはり、一言で言うとコンプライアンス意識が欠けていたと。制度的には内部通報制度とか、そういうのがあるわけですから。結局、集団として行動すると、こういう内部通報制度もきかなくなってしまったんじゃないか、そういう気がいたします。


 ――再発防止策に「厳正な処分」とあります。7月6日の会見でも「最終的には私に(責任が)ある」と真部さんおっしゃったわけですが、厳正な処分の内容を教えて下さい。


 真部社長:あのー、処分につきましてはですね、社外の取締役そして監査役も入っております、取締役会におきまして、当時の全役員及び関係者を対象として審議し徹底するという考え方でございます。


 ――進退は? 要するに続投なさるということでよろしいのですか?


 真部社長:最終的には、ただいま申し上げました取締役会で決められるということですが、現段階で私自身、これだけおおがかりな不祥事でありますので、大変大きな責任を感じておりますが、責任の取り方については、まずは今回のような不祥事の再発防止と失われた信頼の回復に、第三者を交えた評価を行った後、全力で取り組んでいきたいと。そして、緊急事態的な状況に今なっておりますので、しかも当面の課題が山積しているという中で、私は全力で対処していくという考え方でございます。


 ――昨日、菅首相が脱原発依存発言を表明しました。辞める方ではありますが、総理大臣の発言なので、日本のエネルギー政策について大きな転換点になると思います。これから九電にはどんな影響があるとお考えでしょうか?


 真部社長:まだ結論が決定したのかどうか、その脱原子力か。今後、そのエネルギー問題を、電力だけのエネルギーというとらえ方ではなくてですね、我が国の全エネルギーをどのようにするのかという視点があって、そして再生可能エネルギーか原子力と、「or」というか、どちらかというのか、再生可能エネルギーも原子力もというふうになるのか。そこをぜひ議論していただきたいと思います。


 ――組織的な関与のところですが、佐賀支店幹部がやらせのいわゆる例文をつくるとかですね、明確に指示していたということで。真部さんとしては組織的に、いわゆるやらせが、「意見を送れ」ということが幹部の関与でもってやられたとお思いか。それとも組織的なものではないとお考えですか。明確に関与の部分をどう判断されているか教えてください。


 真部社長:支店長の一人が文章を作っております。


 ――普通、常識的に考えたら、九電が「こういう答えをしたらどうですか」というやらせの文章を作って、取引先にまいているわけですから、支店長把握のもとで、これは組織的にやっていると僕は思うんです。いわゆるメールの問題についても、前副社長がどういうことになるかっていうのは容易に想像がつくことで指示が出された。これも組織的だと思うのですが、真部さんはどのようにお考えですか?


 真部社長:会社名が使われて、会社の役職者が対応しているということであれば、やはり組織、まあ全組織というふうにはなりませんが、組織の一部が使われているということになりますね。


 ――前副社長の、いわゆる原発部門のトップだった方の関与についてはどのようにお考えですか? 課長の独断だったとお考えですか?


 小野丈夫・社長室長:最初のスタート、これが副社長、本部長、佐賀支店長。共通認識に立ちましたのは、やはり、あのう、発電再開に賛成する意見の投稿を増やすことが必要であるという共通認識からスタートをしているんです。部下の指示については、最終的な賛意の参加者を増やすために、相手先に説明番組の周知をしてくれと。表現としては「周知をしてくれ」という指示でございます。ただ、ベースにあるのはやっぱり賛意者が増えたらいいなという思いが最初の話であったということは事実でございます。


 真部社長:あのー、趣旨としては、いろんな表現がございますが、おそらく副社長の思いが部下に伝わっておったと思うんですね。ただ、趣旨としては伝わっておったと思いますが、どこまで範囲を広げるか、規模を大きくするかということは、指示した側と受け取った側には大きな違いがあったというふうに私は聞いております。


 ――よくわからないんですけれども、真部さんとしては、前副社長、いわゆる原発トップだった人が、このやらせメール問題にいわゆる組織的な関与をしたというふうに認定されますか? それとも課長の独断だったとお考えですか?


 真部社長:中心的に指示したのが、その3人だというふうに思っております。


 ――そういう原発部門のトップで副社長ですから、真部さんのすぐ下の部下だった人が、こういう重大な法令違反を起こして信頼が失われている状況ですね、真部さんとしてはどの時点で進退もう一度判断される? 信頼回復を一定程度やるのは分かりますけど、辞めるおつもりがないのか? そのあたりをどの時点できちっと判断されるんでしょうか?


 真部社長:その前に、今のお話に一点修正を。法令違反ではないんですね。


 ――コンプライアンスの欠如ということですから、広い意味での法令違反ですよね?


 真部社長:それより社会的倫理とかですね、道徳的な常識的な問題です。私はまずですね、私自身の考えは先ほど申し上げたとおり。あとは、取締役会で改めて社外の方の、社外取締役、監査役にご意見があると思いますので。そういうことをお聞きして考えたいと思っています。


 ――社会的には、これだけ副社長、トップが関わるようなコンプライアンスの問題が起きて、社長がどの時点で進退判断されるかも明確にされないということは、なかなか信頼回復難しいと思うのですが、そのあたりはどのようにお考えでしょうか?

 

 真部社長はしばらく考え込ん

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