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ニューズ&コメンタリー

金庫も指輪も…警戒区域の空き巣被害者「東電は賠償を」

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 住人がいなくなった東京電力福島第一原発の周囲20キロ圏内で、激増する空き巣被害。避難を余儀なくされたうえに、家や店を荒らされた被害者たちは、やりきれない。損害は泥棒が賠償すべきだという東電の姿勢にも、納得できないでいる。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽この記事は2011年10月16日の朝日新聞朝刊に掲載された原稿に加筆したものです。

  ▽関連記事: 警戒区域、空き巣が前年比30倍 東電「賠償の範囲外」

  ▽関連記事: 東京電力本店からの報告

 

 「頻繁に泥棒に入られている」。第一原発に近い富岡町夜の森南でレンタルビデオ店「創夢館」とカラオケ店「時遊館」を経営し、今はいわき市に避難している白土八十和(しらど・やそかず)さん(54)はそう話す。

拡大白土八十和さんが経営するビデオ店内には、中身を抜き取られたDVDケースが散らばっていた=6月20日、福島県富岡町、白土さん提供

 6月20日、一時立ち入りの許可を得て店を訪れた。ビデオ店の表のドアのガラスが割られ、中身を抜き取られたDVDケースが散らばっていた。バールのような工具でたたかれたらしく、傷だらけになった金庫が事務所にあった。その脇に、腹を引き裂かれた猫の死体があった。近くの自宅と実家にも泥棒が入った形跡があった。

 3カ月後の9月12日、警察の実況見分に立ち会うため、再び店に足を運んだ。前回は無事だったビデオ店裏側のサッシ窓が割られ、カラオケ店のレジがなくなっていた。

 「被害届を出した後にも、また荒らされた。汚染された靴で放射能を店の中にばらまかれた。割られたガラスの穴から汚染された外気が入り込んでいる」。白土さんは、残った商品や設備も汚染されたとして、これらを含めると被害額は8千万円余に上ると見積もる。

 しかし、東電に提出する賠償請求書は書式が定められており、そこには盗難被害を書き込む欄はない。

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 楢葉町と大熊町で学習塾を経営していた栃久保寿治(としはる)さん(57)は8月21日、楢葉町山田岡の自宅に2度目の一時帰宅をした。玄関前に、ドアの鍵のシリンダーが落ちていた。「ああ、やられたなぁ」と思った。

 7月4日に一時帰宅したときには被害はなかった。各地から来た警察官が要所で警備していて、そのときは盗難の恐れまでは考えなかった。ところが8月21日、タンスの引き出しはすべて開けられ、貴金属類がなくなっていた。結婚指輪も、ブランドもののライターや花瓶もなかった。

 栃久保さんは今住んでいるいわき市に帰った後、駐在の東電社員に盗難被害を説明し、賠償を求めた。1週間後、「役員に相談した結果」として回答があった。「悩ましい問題ではあるが、東電は賠償しない」という趣旨だった。

 栃久保さんは「原発事故によって住民が自宅を離れているために発生している問題だ。責任は明らかに東電にある」と話す。

拡大福島県いわき市の避難先で楢葉町の自宅の盗難被害について語る栃久保寿治さん

 避難した当初は「3月10日以前に戻れないか」ということばかり考えていた。最近は、むしろ

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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