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ニューズ&コメンタリー

タックスヘイブン(租税回避地)秘密ファイルの企業情報を一部公開

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 英領バージン諸島やケイマン諸島など租税回避地(タックスヘイブン)にある企業やファンドの秘密ファイルを独自に入手して分析を進めていた非営利の報道機関「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ、米ワシントン)は、ファイルの一部をデータベース化し、15日午前(米国時間14日夜)、インターネット上のICIJのウェブサイトで公開した。ICIJは「脱税や資金洗浄など不正の温床の元となっている秘密のベールを取り払うため」と公益目的での公開だと説明している。

  ▽筆者: 奥山俊宏、多田敏男

  ▽この記事は 2013年6月15日の朝日新聞に掲載された原稿に加筆したものです。


 ICIJによると、データベース化したのは、10万以上の企業、ファンド、信託の情報。これら法人の背後にいる顧客、弁護士、会計士、銀行などのネットワークを把握できる。「ペーパーカンパニー」の真の所有者の把握につなげる狙いだ。

 ICIJは250万に上る電子ファイルを入手し、朝日新聞を含め各国の報道機関とともに分析を進めている。公開するのはそのうちの一部で「基本的な企業情報」に絞る。メールのやりとりや銀行口座情報、旅券や電話の番号などは除く。

 ICIJと提携する朝日新聞の分析では、ファイルには日本関連の少なくとも40以上の法人や、450人以上の中小企業経営者、医師らが含まれており、この一部も公開される見通し。

 タックスヘイブンの法人は、だれによってどこで経営されているのかといった基本的な情報も秘匿されていることが多く、ICIJはデータベース公開について「歴史上初めて秘密のベールをはぎ取るのを助けることになる」「このような大きな規模で明るみに出されたことがかつてなかった世界を開く」としている。読者がデータベースを活用することで、取材・報道の新たな手がかりが得られることも期待している。

 ICIJは、この秘密ファイルに基づき、故マルコス・フィリピン大統領の娘のほか、欧州などの要人らのタックスヘイブンでの取引を4月に報道。大きな反響があった。

 英国・北アイルランドで17、18両日に開かれる主要国首脳会議(G8サミット)では、租税回避対策が主な議題として取り上げられる予定。議長を務めるキャメロン英首相は5月13日、オバマ大統領とともに臨んだ記者会見で、市民に対する企業や政府の説明責任、租税回避対策の必要性を強調し、「会社の実質的な所有者はだれなのか、だれがそこから利益を得ているのか、税金は払われているのか、我々は知る必要がある」と述べた。ICIJは秘密ファイルについて、国税当局への提供は拒否している。しかし、G8サミットなど国際世論の盛り上がりに合わせ、一般への一部公開に踏み切った格好となっている。

 

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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