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ニューズ&コメンタリー
(2017/01/23)
▽この記事は2016年12月9日の朝日新聞夕刊に掲載された原稿に加筆したものです。
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内部通報制度は2000年ごろ、大手企業を中心に「ヘルプライン」「ホットライン」などの名称で導入が始まった。日本経団連が2002年に不祥事防止策として会員企業に整備を呼びかけ、公益通報者保護法が2004年に制定されてその動きを後押しした。
2016年度の消費者庁の調査によれば(注1)、回答した3471事業者のうち1607事業者(46%)が内部通報制度を導入していた。特に従業員3千人超の事業者の99%が導入済みだった(注2)。導入済みの事業者の60%(従業員3千人超の事業者では77%)は社内と社外の双方に窓口を持っていた。国の省庁(39機関)と都道府県庁(47機関)でも、そのすべてで内部職員向けの通報窓口を設けており、市区町村(1711機関)については2016年3月末時点で52%が導入していた(注3)。
2015年6月に施行されたコーポレートガバナンス・コードでも、次のように推奨されている(注4)。
上場会社は、その従業員等が、不利益を被る危険を懸念することなく、違法または不適切な行為・情報開示に関する情報や真摯な疑念を伝えることができるよう、また、伝えられた情報や疑念が客観的に検証され適切に活用されるよう、内部通報に係る適切な体制整備を行うべきである。取締役会は、こうした体制整備を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべきである。
米国では、エネルギー会社のエンロン、通信会社のワールドコムで相次いで粉飾決算が発覚したことを受けて、2002年、企業会計改革法(SOX法)を制定・施行。上場企業の監査委員会に内部通報窓口の整備を法律で義務づけている(注5)。
このように内部通報制度は組織の不祥事を早期に発見する重要なツールと位置づけられ、少なくない人員と資金が投入されている。しかし、現実には問題が続出している。
内部通報制度が十分に機能していなかった――。そう結論づけざるを得なくなる企業が相次いでいる。住友電設、福山通運、ホウスイ……。子会社で不適切な会計処理があったのに、内部通報がなかったからだ。
□福山通運
物流会社の福山通運(広島県福山市)は2016年2月5日、子会社の元役員が取引先に水増し請求をさせて会社のお金を着服していたと発表した(注6)。特別調査委員会を設けて調べたところ、被害は6億円余と判明。「請求書の流れなど違和感を感じている従業員がいたにもかかわらず、これに関する通報がなかった」として、「社内通報制度の活用に対する周知が不十分だった」と分析した(注7)。
□高田工業所
産業プラント建設会社の高田工業所(福岡県北九州市)は2016年3月、実態のない工事の架空発注や現金のキックバックなどの不正を税務調査で指摘され
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