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ニューズ&コメンタリー

訴訟記録廃棄を当面すべて見合わせ、最高裁が全国の裁判所に指示

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 歴史の史料として価値の高いものも含め著名な民事訴訟の記録の多くが裁判所によって廃棄されていた問題で、最高裁事務総局は11月18日、全国の裁判所に対し、現に保管中の訴訟記録の廃棄を当面見合わせるよう事務連絡の文書で指示した。「重要な民事裁判の事件記録が確実に保存されるようにするため、どのような実効性のある運用例がありうるのか検討することとした」と、その理由を説明している。最高裁事務総局の総務局長は11月15日の衆院法務委員会で「いろいろ反省をし、見直していくべきところがあろうかと思う」「運用上考え直さなければいけない点があり、問題があった」と述べており、これまでの記録保存・廃棄の運用を抜本的に見直すことになりそうだ。

 ■「記録保存の運用例を検討する」

拡大山尾議員がツイッターで公表した最高裁事務総局の事務連絡文書
 文書は「事件記録等の廃棄留保について(事務連絡)」と題され、事務総局の総務局第三課長から各高裁や地・家裁の首席書記官にあてて送られた。山尾志桜里(しおり)衆院議員(立憲民主党)が27日、事務総局から説明を受け、ツイッターで明らかにした

 文書は「近年、公文書を含め史料の歴史的な価値や保存の必要性の認識が社会的に高まっている」と指摘。「史料又は参考資料となるべきもの」を特別に永久保存する制度の運用例などについて最高裁から連絡があるまでの間は、記録の廃棄を原則として留保するよう求めている。最高裁事務総局の広報課によると、保存期間がいつ経過したかを問わず、裁判所に現に保管されている事件記録は、この廃棄留保指示の対象となる。「特別保存の運用例等について連絡する予定」の時期や方法については、「現時点ではお答えできることはない」という。

 指示の趣旨については、27日、広報課は取材に次のように説明した。

 重要な憲法判断が示された事件などの事件記録が全国の裁判所において廃棄されていたことが広く報道され、最高裁においても、一定の事実関係を確認したところでございますので、今後、各庁の実情の把握に努めるとともに、重要な民事裁判の事件記録が確実に保存されるようにするため、どのような実効性のある運用例がありうるのかということを検討することとしたため、いったん事件記録の廃棄を留保することにした


 ■調査報道で問題発覚

 著名な事件の訴訟記録が東京地裁によって廃棄されていた問題は2月5日に朝日新聞の報道で発覚した。これを受けて3月5日、ジャーナリストの江川紹子氏、青山学院大学の塚原英治(えいじ)教授、龍谷大学の福島至(いたる)教授が共同代表を務める司法情報公開に関する研究会が「憲法判断がなされた著名事件の記録があっさり処分されていたことは衝撃」としたうえで、「廃棄を保留した上で、第三者の意見を踏まえて廃棄か特別保存かを判断すべき」と是正を最高裁に請願した。3月8日の衆院法務委員会では井出庸生(ようせい)議員(無所属)が「国民、研究家からしたら歴史的な資料ですので、そういう視点で保存をしていってほしい」と最高裁に求めた。さらに、東京地裁だけでなく、全国の裁判所でも、憲法判例をかたちづくった訴訟記録の9割近くが廃棄されていたことが共同通信の調査で8月4日に明らかになった。

 この報道を受けて、最高裁の事務総局は独自に実情を調査し、9月17日にその結果を取りまとめた。

 それによると、『憲法判例百選第6版Ⅰ・Ⅱ』(有斐閣)に掲載されている事件のうち刑事事件を除く134件について記録の存否を調べたところ、87%にあたる117件の記録が廃棄済みとなっていた。長沼ナイキ訴訟、沖縄代理署名訴訟、寺西判事補分限裁判などの重要事件が多数含まれていた。記録が廃棄された117件の裁判所別の内訳は以下の通りだった。

拡大東京地裁、東京高裁の入る庁舎=東京都千代田区霞が関
 東京地裁

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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