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ニューズ&コメンタリー

条文詳解:公益通報者保護法改正案を閣議決定、国会提出

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 政府は3月6日朝の定例閣議で、公益通報者保護法の一部を改正する法律案を決定し(注1)、同日、国会に提出した(注2)。「内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等」を従業員301人以上の事業者に義務づけ、これを守らせるために事業者に指導や勧告をする権限を消費者庁に与えるなどの内容(注3)。成立すれば、事業者で内部通報に関わる業務にあたる人は「通報者を特定させる情報」について守秘義務を課せられ、違反者は30万円以下の罰金に処される。同法は、一定の要件を満たす内部告発をした労働者を不利益扱いから保護する民事ルールとして2004年に制定されたが、初めての改正が実現すれば、行政措置や刑事罰が導入され、法律の性格そのものを大きく変えることになる。

拡大公益通報者保護法の一部を改正する法律案の1ページ目
 現行の公益通報者保護法には12の条文がある。章立てはされていない。改正法案が成立して施行されれば、条文は22に増え、5つの章に分けられる。

 第1章 総則(第1条・第2条)
 第2章 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効及び不利益な取扱いの禁止等(第3条―第10条)
 第3章 事業者がとるべき措置等(第11条―第14条)
 第4章 雑則(第15条―第20条)
 第5章 罰則(第21条・第22条)
 附則

 第1章と第2章は現行法をベースに対象をやや拡充する。事業者の体制整備義務を定める第3章、消費者庁の権限を新設する第4章、罰則を置く第5章は、既存の法の改正というよりも、実質的に、新しい法律の制定とも言いうる内容となっている。

 公益通報者保護法は2006年4月に施行されてこの3月末で14年がたとうとしているが、最近も、企業不祥事が後を絶たず、それらの多くで、内部告発によって違法行為が発覚した。「もっと早く公益通報が積極的に処理されていれば、被害の拡大が防止されたのではないか」との指摘があり、政府はこれを受けて、公益通報者保護法の改正に踏み出す。

 ■事業者が課される義務

 法改正で新しく設けられる制度のうち最も大きな影響を企業や社会に及ぼしそうなのが、第3章11条だ。これによって事業者は新たに、内部通報制度を設ける2項義務と、公益通報対応業務従事者を指定する1項義務の2つの義務を課せられる。

 事業者は、公益通報者の保護を図るとともに、内部通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。(11条2項)

 事業者は、内部通報を受け、並びに通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(公益通報対応業務)に従事する者を定めなければならない。(11条1項)

 11条2項により、事業者は内部通報を受け付ける窓口を設定し、調査したり是正したりするための体制を整えなければならなくなる。地方自治体や非営利組織もこの「事業者」に含まれ、同様に義務を負う。ここで義務づけられる「必要な体制」や「必要な措置」は実質的に機能するもので

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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