メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ニューズ&コメンタリー

東京五輪招致委コンサルからIOC有力委員息子の側に37万ドル

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 日本オリンピック委員会(JOC)や東京都がオリンピックを東京に招致する目的で組織したNPO法人「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」のためのコンサルタント業務を受託したシンガポールのブラック・タイディングズ社(Black Tidings Co.、BT社)の銀行口座から、2013年9月に国際オリンピック委員会(IOC)総会で東京五輪開催が決まる前後に、開催都市の決定に大きな影響力を持つといわれる有力IOC委員の息子で、国際陸上競技連盟(International Association of Athletics Federations、現・世界陸連)のコンサルタントだったセネガル人のパパマッサタ・ディアク(Papa Massata Diack)氏(55)やその会社の銀行口座に対し、約37万ドル(約3700万円)が送金されていたことが、関係金融機関から米財務省に提出された「疑わしい取引」の報告やフランスの捜査資料で分かった。招致委からBT社への2億円余の支払いは4年前に国会で問題となったが、BT社がそれを何に使ったかが不明となっている。コンサル会社からの送金について、ディアク氏は取材に、五輪とは関係ない、と答えた。

拡大「フィンセン文書」のロゴ=ICIJ / BuzzFeed News
 米ワシントンDCに事務所を置く非営利の報道機関である国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative Journalists、ICIJ)と米ウェブメディアのバズフィードニュースが、パートナー報道機関である日本の朝日新聞、共同通信、仏公共放送のラジオ・フランスなど88か国、108の報道機関、400人超のジャーナリストとともに、米財務省の情報機関である金融犯罪取締ネットワーク局(Financial Crimes Enforcement Network、FinCEN=フィンセン)に金融機関から届けられた「疑わしい取引」の秘密報告(Suspicious Activity Report)を分析する「フィンセン文書」取材・報道プロジェクトの中で、ラジオ・フランスの記者がフランス当局の非開示の捜査資料の内容を把握。その中にBT社の口座の情報が含まれていた。

拡大ブラック・タイディングズ社が事務所として登録していた集合住宅の一室の玄関=シンガポール、都留悦史撮影
 フランスの捜査資料によれば、BT社の口座は、ディアク氏側近のタン・トンハン(Tong Han TAN)氏によってスタンダードチャータード銀行シンガポール支店(Standard Chartered Bank Singapore)に2011年6月に開設されたが、2013年6月まではほとんどお金の動きがなかった。しかし、同銀行から米財務省フィンセンに提出され、仏当局と共有された「疑わしい取引」の報告によれば、2013年9月7日のIOC総会で2020年の東京五輪開催が決まるのに前後して、みずほ銀行にある招致委の口座から7月29日に95万ドル、10月25日に137万5千ドルが振り込まれた。

 フィンセンの報告文書によれば、この2回の振り込みから間もない8月27日と11月6日の2回に分けて、BT社からディアク氏個人のロシアの口座に合計3万5千ドルが送金された。捜査資料によれば、この3万5千ドルを含め、翌2014年1月27日にかけてBT社からこの口座に送金された総額は15万ドルを超えた。また、ディアク氏の関連会社「PMDコンサルティング社(PMD Consulting Sarl)」のセネガルの口座に11月6日から12月18日にかけて4回にわけて21万7千ドルが送金された。

 これら約37万ドルのほかに、捜査資料によれば、仏パリのショッピングセンターに11月8日に8万5千ユーロ(1千万円余)が送金され、ディアク氏が7月に購入した時計などの代金の支払いに充てられた。銀行から米フィンセンへの報告によれば、アラブ首長国連邦のドバイにある自動車ディーラーに10月29日に9万5千ドルが送金され、その送金のための書類の備考欄に「パパ・ディアク」と書かれていた。このほか、セネガルの個人や旅行会社の口座、宝石業者のドバイの口座などにも同年10月、11月に送金があったが、銀行にとってその送金目的は不明だった。ディアク氏の関連会社とみられるセネガルの「スポーティング・エイジ社(Sporting Age Suarl)」にも8月5日に35万ドルが送金されていた。

ブラック・タイディングズ社(BT社)の銀行口座の資金出入りの抜粋
 (米財務省や仏捜査当局の資料にもとづく。単位は米ドル)
送金日BTに送金した者BTへの入金 BTからの出金BTから送金を受けた者
2013年7月29日 東京2020五輪招致委 950,000 BT    
2013年8月5日     BT 100,000 タン・トンハン氏個人名義の中国の口座
2013年8月5日     BT 300,000 中国の会社名義の口座
2013年8月5日     BT 350,000 スポーティング・エイジ社のセネガルの口座
2013年8月27日     BT 15,000 パパマッサタ・ディアク氏名義のロシアの口座
2013年10月25日 東京2020五輪招致委 1,375,000 BT    
2013年10月29日     BT 95,000 自動車ディーラー(アラブ首長国連邦)
2013年10月29日     BT 230,000 セネガルの個人名義口座
2013年11月5日     BT 65,000 旅行会社(セネガル)
2013年11月6日     BT 72,880 宝石業者(アラブ首長国連邦)
2013年11月6日     BT 100,000 PMDコンサルティング社のセネガルの口座
2013年11月6日     BT 50,000 PMDコンサルティング社のセネガルの口座
2013年11月6日     BT 20,000 パパマッサタ・ディアク氏名義のロシアの口座
2013年11月8日     BT 114,522 パリのショッピング店
2013年11月12日     BT 47,000 PMDコンサルティング社のセネガルの口座
2013年12月18日     BT 20,000 PMDコンサルティング社のセネガルの口座
2013年12月18日     BT 40,000 米ニューヨークの口座
2014年1月27日までに     BT 約120,000 パパマッサタ・ディアク氏名義のロシアの口座


 これらBT社の口座のお金の動きとは別に、シティバン

この記事の続きをお読みいただくためには、法と経済のジャーナルのご購読手続きが必要です。

朝日新聞デジタル購読者(フルプラン)の方なら手続き不要

法と経済のジャーナル Asahi Judiciaryは朝日新聞デジタルの一部です。
有料(フルプラン)購読中の方は、ログインするだけでお読みいただけます。

朝日新聞デジタルのお申し込みはこちら

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
 ご連絡は okuyama-t@protonmail.com、または、okuyamatoshihiro@gmail.comに。メールの内容を暗号化する場合はPGPで。パブリックキーのIDは7D2BAD43550EAD96

Facebookでコメントする

ご感想・ご意見などをお待ちしています。