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アンダーソン・毛利・友常法律事務所 企業法務の窓辺

アイスホッケーと弁護士業務の共通点

福家 靖成(ふけ・やすなり)

アイスホッケーと弁護士業務の共通点

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所
弁護士 福家 靖成

拡大福家 靖成(ふけ・やすなり)
 1998年3月、東京大学法学部卒業。司法修習(56期)を経て、2003年10月、弁護士登録(第一東京弁護士会)、当事務所入所。2008年5月、米国University of Pennsylvania Law School (LL.M.)。2009年2月、ニューヨーク州弁護士登録。米国ニューヨークのDavis Polk & Wardwell法律事務所勤務を経て2009年9月、当事務所復帰。2012年1月、当事務所パートナー就任。

 アイスホッケー

 本稿の読者の中で、アイスホッケーをやったことのある方は、どれだけいるだろうか。おそらくは、テレビで一度くらいは見たことがあるという程度の方がほとんどで、生で試合を見たことがある方が多少いたとしても、実際にプレーしたことのある方はほとんどいないのではなかろうか。私自身は、大学入学後にアイスホッケーを始め、体育会系アイスホッケー部でその後の4年間を過ごし、司法修習を経て弁護士になってからもしばらくは大学のOBチームでプレーしていた。最後にプレーしてから数年が経ってしまったが、アイスホッケーの試合を観ること自体は今でも好きで、仕事の合間にインターネットでNHL(北米プロアイスホッケーリーグ)のハイライト動画を見ていると、つい時が経つのを忘れてしまうこともある。

 日本ではなかなかマイナースポーツの領域から抜け出せないアイスホッケーであるが、私の所属する法律事務所ではそれ程マイナーな存在ではなく、私を含めて6名の弁護士が同じアイスホッケー部の出身者である。競技人口の少なさの割にこの確率は結構なものであるので、アイスホッケーと(特に企業法務の)弁護士業務との間の相関関係を探ってみたい。

 瞬発力と持久力

 何と言ってもアイスホッケーの1番の特徴は、そのスピードと激しいボディコンタクトにある。NHLという世界最高峰のアイスホッケーのプロリーグでは、全身に防具を付けた100キロ以上の巨漢達が時速50キロ以上ものスピードでスケーティングし、スティックと呼ばれる木製の器具から放たれるパック(ボール代わりの硬質ゴムの塊)は時速160キロ以上にも達する(私が社会人チームでプレーしていた際の速さは、それぞれその半分程度だったのではないかと思うが)。スティックさえ使わなければ、ボディコンタクトはだいたい何でもありで、フェンス際でパックを持っている相手方フォワードを、ディフェンスの選手が身体ごとフェンスに叩き付けるのは、試合中最も盛り上がる瞬間の一つである。このスピードとスリルを一度味わってしまうと、なかなか抜け出すのは難しい。

 そのようなスピードに対応するための瞬発力が要求される一方で、1試合は1ピリオド正味20分を3ピリオド、合計60分で構成されるので、持久力も問われる。このタイムは「正味」すなわち反則等で競技が止まっている時間は含まれないため、実際の試合時間は2時間以上もかかることになる。当然のことながら、それだけの時間トップスピードで動き続けるのは人間の身体の構造からして不可能なので、ゴールキーパー以外のプレーヤーは、1分程度で頻繁に交替する。交替にあたってレフリーにいちいちことわる必要はなく、1つのポジションについて3人程度が次々と交替で出場することが多い。1分間トップスピードで動き、2分間休憩、このサイクルを1試合のうちに数十回繰り返すのである。この運動量は相当なもので、学生の頃には1試合終わると体重が2キロほど落ちていた。

 弁護士は、基本的に自分の頭と身体だけで勝負する職業であるので、もともと体育会系と通じるものがある。中でもこの瞬発力と持久力の双方が問われるという点で、アイスホッケーと企業法務を専門とする弁護士の業務とは共通している。まず、企業法務の最前線においては、刻一刻と変化するビジネスのスピードに合わせて、当日中や数時間のうちの対応が求められることもあり、非常に「瞬発力」が必要とされる。しかしそれは一定の時刻や日にだけ頭をフル回転させれば済むというものではなく、案件の流れ全体を踏まえての戦略や、同時に複数の案件を進めるという要領の良さも求められる。そういう意味で、「持久力」も必要とされるのである。

 チームプレー

 アイスホッケーの次の特徴としては、当り前のことながらチームプレーであるという点が挙げられる。アイスホッケーでは、ゴールキーパー1名の他、左右のウィングおよび中央のセンターと呼ばれる3人のフォワード、さらに左右2人のディフェンスの5名がサイコロの「5」の目のように並ぶのが基本的なポジショニングである。この5名のプレーヤーを1セットとして、1チームは最大で4セット20名のプレーヤーおよび正副2名のゴールキーパーと合わせて22名で構成される。一応のポジションがそれぞれ決まっているものの、ゴールキーパー以外は防具もスティックも特に区別はないし、プレーヤーはスケートリンクの上に一度に1チーム5名しかいないので、ポジションチェンジは頻繁に行われる。各プレーヤーが自分の持ち場において要求される役割を果たしつつ、それらが連携することによってチームは有機的な一体となり、美しい連係プレーが生まれる。

 企業法務の弁護士においても、チームプレーは現代では不可欠の要素である。先にも述べたとおり、迅速な対応が求められている中で、各弁護士の専門化による知識・経験の集積はいまや必然の流れである。しかし、専門化した各弁護士がそれぞれ勝手な動きをしていたのでは、クライアントに良質なサービスを提供することはできない。それぞれの特徴を生かしつつ、それらを一つのチームとして束ね、有機的な一体として機能して初めて、クライアントにご満足いただけるような法的サービスが提供できるものと思う。

p> 国際的な広がり

 先にも述べたとおり、アイスホッケーで最もレベルの高いプロリーグは北米プロアイスホッケーリーグ、通称NHLであり、カナダおよび米国内に点在する30チームによってリーグ戦が行われている。エンタテイメントとしてのアイスホッケーは、間違いなくNHLが世界最高峰であり、試合の前後や合間の大音量でのロックミュージック、チアリーダーやマスコットによる応援、選手同士の乱闘まで、NHLの試合は見事なアメリカン・ショービジネスとなっている。ちなみにNHLでは、よりスピード感を持たせるために、スケートリンクのサイズを国際規格よりも小さくしている。

 それはそれでもちろん面白いのだが、アイスホッケーの広がりは北米だけではない。競技発祥の地カナダで国技になっていることはもちろん、大西洋を越えてロシアやチェコでも国技となっており、それぞれにプロリーグがある。また、世界選手権やオリンピックでは、それらの国の他、スウェーデン、フィンランド、スロバキア、スイス、ドイツ、ベラルーシ等も強豪国であり、国際的な広がりと人気を持っている。1998年の長野オリンピック決勝でチェコがロシアを破って優勝した際には、1968年のプラハの春から30年後の因縁の対決を制した代表チームのお祝いのために、10万人もの国民がプラハ中心部の広場に集まって優勝を祝ったという。

 日本のクラブチームでは、近年、中国、韓国のチームとアジアリーグを結成して、互いに競い合っているのはご存知の方も多いだろう。

 現代の企業法務の弁護士にとって、業務の国際的広がりの重要性は言うに及ばない。近年では、IBA(国際法曹協会)を初めとして数千人の規模の国際大会も頻繁に開かれており、米国、ヨーロッパ各国はもちろん、アジアやアフリカ諸国からも多勢の弁護士が集まる。また、日常の業務においても、伝統的にクライアント等として関わりの強い米国に加え、ヨーロッパやアジア各国との仕事の機会も非常に増えている。

 深夜の活動

 アイスホッケーの練習は、スケートリンクを貸し切って行うため、必然的に一般滑走終了後の夜の時間帯となることが多い。しかも、早い時間帯には中・高校生チームの練習やフィギュアスケートの練習が入っていることも多いので、社会人や大学生の練習時間帯は深夜に及ぶことも珍しくない。学生の時には、最も遅い時間帯で28時30分(午前4時30分)練習開始ということもあった。

 企業法務、とりわけ海外のクライアントの仕事をしていると、時差のために早朝や深夜に電話会議を行う必要がしばしば生じる。Eメールは海外とほぼ毎日交わしているが、例えば米国だと真夜中に来たEメールに対してすぐに返信すると、さらにその返信がすぐに来て・・・という具合に夜中に数往復のEメールが交わされることも珍しくない。年齢を経るに連れて深夜の活動は身体に堪えるようになってきたが、それでも何とか対応できているのは学生時代の鍛錬のおかげ(?)ではないかと思っている。

 最後に

 こうして見てみると、やはりアイスホッケーと企業法務の弁護士業務には少なからず共通点があるようだ。それでは弁護士業務に役立てるために、またインターネットでNHLのハイライト動画でもチェックすることにしよう。

福家 靖成(ふけ・やすなり)

 1998年3月、東京大学法学部卒業。司法修習(56期)を経て、2003年10月、弁護士登録(第一東京弁護士会)、当事務所入所。2008年5月、米国University of Pennsylvania Law School (LL.M.)。2008年9月から2009年8月まで米国ニューヨークのDavis Polk & Wardwell法律事務所勤務。2009年2月、 ニューヨーク州弁護士登録。2009年9月、当事務所復帰。2012年1月、当事務所パートナー就任。2013年4月から成蹊大学経済学部非常勤講師。
 共著書に「アジア・新興国の会社法実務戦略Q&A」(商事法務 2013年)。共著論文に"Recent development of rights issues in Japan" (The Euromoney Equity Capital Markets Handbook 2012)(2011年)など。

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