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アンダーソン・毛利・友常法律事務所 企業法務の窓辺

初のNYラーメンコンテストに参加して思うラーメンと弁護士業

今井 裕貴(いまい・ゆうき)

ラーメンと弁護士業

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所
弁護士 今井 裕貴

 ラーメンブーム・イン・ニューヨーク

拡大今井 裕貴(いまい・ゆうき)
 2004年3月、東京大学法学部卒。2006年3月、東京大学法科大学院修了(法務博士 (専門職))。2008年12月、司法修習(61期)を経て弁護士登録(第二東京弁護士会)。2009年1月、現事務所入所。2011年11月から米ニューヨークのHughes Hubbard & Reed法律事務所で勤務。

 本稿の読者の皆さんは、ニューヨークのマンハッタンで、いわゆる日本のラーメンを提供する店がどの程度の数あるかご存じだろうか。私自身正確な数は把握していないが、一説によれば、その数は現在60軒前後にものぼり、しかもまだまだ増え続けているとのことである。もともと日本食はニューヨークで大変人気があり、多くのスーパーには「SUSHI」コーナーが独立して設けられているほどだが、私が子供の頃、15年程前にニューヨーク近郊に住んでいた当時は、ラーメンはここまで流行っていなかったように思われ、特にこの数年で大きな流行になっているようである。

 つい先日も、ニューヨークの一角で、今年が初というラーメンコンテストが開催された(大会ホームページはhttp://www.nyramen.org/about.html。なお、冒頭の店舗数の情報については、こちらを参照した)。新しいニューヨークのラーメンを創ること、ラーメン文化をさらに広めることを目標に、腕に覚えのあるニューヨークのラーメン屋が集い、大会に来場した一般客の投票により、ニューヨークで一番のラーメンを決めようという試みである。私も客として参加し、トラディショナルな豚骨ラーメンから、ちょっとエキゾチックなタイ風ラーメンまで、舌鼓を打った。やはりニューヨーク初のラーメンコンテストということもあり注目度が高く、会場は大盛況であった(その熱気は、ぜひ上記大会ホームページで閲覧できるフォトアルバムで確認して頂きたい)。

 さて、ここまでお読み頂いた読者は既にご賢察のことと思われるが、私はラーメンが大好きである。私は、昨年の11月より、アメリカを中心に展開する法律事務所のニューヨークオフィスに客員弁護士として赴任しているが、日本にいた当時より、仕事の合間を縫って、ある時は歩いて、時にはタクシーに乗って、ラーメンを食べに行っていた。赴任直前にも、赴任準備で多忙を極める中、東京・浜松町で1か月間に渡り開催されていた大つけ麺博というイベントに、3週連続で駆けつけたものである。

 そこで本稿では、いちラーメン好きの若手弁護士の視点から、ラーメンと弁護士業との関係についてつらつら考えてみたい。

 スタミナ食としてのラーメン

 どのような仕事でも同様かもしれないが、弁護士業においても、特に若手は、知力だけではなく体力が重要である。特に、私が日本で所属している法律事務所では、海外のクライアントや法律事務所と連携して仕事をすることも多く、そのような仕事では、時差の関係で会議が深夜や早朝に行われ、睡眠時間が不規則になってしまう場合がある。また、大型のM&A案件や、海外の競争法絡みの調査案件など、スケジュールがタイトな一方で作業量が膨大な仕事では、案件が佳境に入るとなかなか家に帰ることも出来なくなってしまう事がある。  

 そのように仕事が忙しい場合でも、スタミナ満点の好物を食べれば、意外に乗り切れるものである。私にとって、それがラーメンであり、その意味で、ラーメンは業務遂行に必須な食べ物といっても過言ではない(それにもかかわらず、必要経費で落ちないのが悲しいところである)。なお、余談ではあるが、アメリカ人の同僚に好きなラーメンの話をしたところ、「ラーメンはトンコツが好きさ!日本食はヘルシーでいいよね。」という趣旨の返事があり、所変わればラーメンの位置づけも変わるという事を実感した次第である。

 「地道な仕込み」の重要性

 私は大学在学中、ラーメン好きが高じて、美味しいラーメンの作り方の秘訣を知りたいと思い、大学近くのラーメン屋でアルバイトをしていた。その時の体験から、美味しいラーメンを作れるようになるためのコツは、「地道な仕込み」なのではないかと思っている。

 私が働いていたのは小さなお店だったので、接客や皿洗いからはじまり、慣れてくるとスープ作り、ラーメン作りまで、色々とさせてもらった。その中でも、冷凍した状態で問屋から届けられた牛骨をハンマーで割り砕いて、野菜などと一緒に大なべで煮てスープのダシを作る作業があり、これは手が凍えるし力もいるので、なかなか大変であった。しかし、この地道な仕込みにより、あの美味しいラーメンのスープが作れるのだと思うと、やりがいのある作業でもあった。

 他方、弁護士の仕事は、テレビドラマや映画でみるような法廷での丁丁発止のやり取りや、新聞の一面に出るような大型案件の代理など、一見華々しいものもあるが、そのように派手にみえる場面があっても、その裏では、机の上で、ひたすら契約書などの書類やパソコン、法律や判例などとにらめっこをする、地味で地道な作業がほとんどであるように思う。特に若手弁護士にとっては、そもそも派手な見せ場など無い裏方的な仕事も多い。しかし、ラーメンの仕込みがそうであったように、そういった地道な作業の積み重ねによって良い仕事ができ、クライアントからの信頼を得られるのだと信じ、日々前向きに頑張っている。

 美味しさの奥深さ

 私が思うに、ラーメンの美味しさを決める要素としては、まずは何と言っても、スープと麺が大きい。次に、チャーシューなどの具である。しかし、ラーメンの奥が深いところは、たとえ良い材料を用意したとしても、それだけで直ちに美味しいラーメンができるわけではないところである。すなわち、それぞれの材料の組合せとバランスが非常に大切である。例えば、濃い味噌味のスープには、太目の麺が合う場合が多いように思うし、伝統的な博多豚骨ラーメンには、一般的には細麺がよいとされている。また、スープ一つ取っても、何でダシをとるか(豚骨や牛骨などの動物系か、魚や貝などの魚介系か、昆布やにぼしなどの和風系か、はたまたその組み合わせか)、脂の多いこってりスープにするのかそれともあっさりスープにするのかなど、無限の可能性があるし、麺や具にしても同様である。さらに、スープを煮込む時間、麺をゆでる時間、お客さんに提供するタイミングなども、美味しさを左右する要素となるだろう。また、食欲をそそるような見た目(盛り付け)や香りも大切であるし、やや間接的かもしれないが、店の雰囲気や清潔さなども、美味しさに影響するかもしれない。

 このように複雑な要素が絡み合うラーメンにおいては、「最高のラーメン」という唯一の答えはない。そのため、各ラーメン屋の店主は、「より美味しいラーメン」を作るべく、日々不断の努力をされていることと思われ、頭の下がる思いである。

  

 ひるがえって考えてみるに、弁護士の仕事の良し悪しについても、同様の奥の深さがあるように思われる。

 例えば、M&A取引を行うクライアントのために、M&Aの対象となる会社について調査(デュー・デリジェンス)を行い、レポートを作成するという案件があったとする。

 クライアントの立場に立って考えてみると、まずは成果物であるレポートが法的に正確かつ的確なものであることはもちろん必須であろう。しかし、それだけでは良い仕事とは言えない。当然のことながら、誤字脱字などの形式的な誤りがないことや、書面の読みやすさ、わかりやすさなどの形式面も大切である。また、2週間後に必要なものにつき3週間かかってしまっては意味が無いのであって、きちんと必要な時期までに終える必要がある。そして、そのためには、あらかじめ大まかなスケジュールをたて、クライアントや調査対象となる会社との間で調査日程の調整を行い、チームを組織しなければならない。さらに、一言でレポートを作成するといっても、どのような場面での調査なのか(取引に入る前の予備的な調査なのか・より本格的な調査なのか、クライアントは日本企業なのか・外国企業なのか、調査対象企業は1社なのか・子会社や関連会社など複数に渡るのか、同一企業グループ内のM&Aなのか・対外的なものなのかなど)により、求められる内容や形式、分量などが異なってくるであろう。クライアントが何を求めているのか、常に密なコミュニケーションを取り、ニーズを把握していくことも、良い仕事をするために大事な点である。

 このように、デュー・デリジェンスという例一つをとっても、様々な要素を満たしてはじめて、良い仕事をすることができる。しかし、「最高のラーメン」という唯一の答えが無いように、「最高の仕事」という終着点は存在せず、与えられた時間の中で、より良い仕事ができるよう常に努力していかなければならないと思っている。

 最後に

 私が学生時代に働いていたラーメン屋では、既に定番のメニューがあるにもかかわらず、いつも新しいラーメンを研究し、人気メニューを増やしていた。このような姿勢が、お店の繁盛ぶりにつながり、今では支店も複数出しているようである。

 弁護士業においても、毎年法律は改正され、新しい重要な判例が出されるし、常にどこかで新しい法律問題が生じているため、日々勉強し、また頭を柔軟に保ち、ニーズがあれば果敢に新しい分野に挑戦していくべきだと思われる。

 私も地道な仕込み作業を恐れず、また向上心を忘れずに勉強を続け、新たな分野を開拓する気概を持って、いつかは「あのラーメンが食べたい」、もとい、「あの弁護士に頼みたい」と言って頂けるような弁護士になれるよう、まずは今日もラーメンを食べに行こうと思う。

今井 裕貴(いまい・ゆうき)

 2004年3月、東京大学法学部卒。2006年3月、東京大学法科大学院修了(法務博士 (専門職))。2008年12月、司法修習(61期)を経て弁護士登録(第二東京弁護士会)。2009年1月、現事務所入所。2011年11月から米ニューヨークのHughes Hubbard & Reed法律事務所で勤務。2013年5月、米国University of California, Berkeley (LL.M.)。2013年9月からヤンゴンのKelvin Chia法律事務所に勤務中。
 共著に「ANALYSIS 公開買付け」(商事法務、2009年)、「知財ライセンス契約の法律相談〔改訂版〕」(青林書院、2011年)。共著論文に「2010 Antitrust Year In Review, (Japan chapter)」(ABA International Law Section, International Antitrust Committee, April 2011)、「2011 Antitrust Year In Review, (Japan chapter)」( ABA International Law Section, International Antitrust Committee, May 2012)、「サービス産業にみる日本からアジア諸国への事業展開上の課題6 ミャンマー編  サービス産業への進出はこれから、法規制や運用面での変更に留意」(Global BIZ journal 305号)、「海外からの投資を呼び込めるか!? ミャンマー汚職防止法の概要」(ビジネス法務 2014年3月号)など。

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