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アンダーソン・毛利・友常法律事務所 企業法務の窓辺

山を登るのではなく川を歩く週末ハイキングの理由

山内 真之(やまのうち・まさゆき)

「週末はいかがでしたか?」「週末のご予定は?」
パロアルト2年目の生活とハイキング

アンダーソン・毛利・友常法律事務所
山内 真之

拡大山内 真之(やまのうち・まさゆき)
 2002年3月、慶應義塾大学理工学部卒業。2004年3月、慶應義塾大学大学院理工学研究科卒業。2007年3月、東京大学法科大学院 (法務博士 (専門職))修了。2008年12月、司法修習(61期)を経て弁護士登録(第二東京弁護士会)。2009年1月、当事務所入所。2013年6月、米国Stanford Law School(LL.M.)修了。2014年3月、 ニューヨーク州弁護士登録。2014年9月、当事務所復帰。
 私は、2012年7月に渡米し、スタンフォード大学にて1年間留学した後に、同大学近くのパロアルト市に残って現地の法律事務所に1年弱勤務した。勤務先の法律事務所のパロアルトオフィスでは、弁護士が25名ほど常駐し、スタッフも同数程度働いていたと記憶している。総勢で50名程度であるため、ほどなく全員の顔を覚えることができ、給湯室で顔を合わせれば短い会話を交わすこともしばしばであった。

 そのような状況の中で、よくいただいた質問が、標題の2つのフレーズである。一つ目の「週末はいかがでしたか?」は、月曜日の定番質問であり、二つ目の「週末のご予定は?」は金曜日にほぼ間違いなく投げかけられる(又は投げかける)質問である。

 これらの質問は、「ご機嫌いかが?」といった決まり文句と思われるものであり、あまり細かく、自分が週末に行ったこと、あるいは週末のスケジュールを回答することは期待されていないであろう。しかし、「家でずっと休んでいました」「仕事をします」「特に何も」という回答で応じることも、同様に期待されていないと感じた。「家でずっと休んでいました」と回答した場合には、(実際にはそうではない場合でも)病気であったかのように心配されそうであった。「仕事をしていました」という回答も、(実際に仕事をしたとしても)適切ではないと思われているという感触を持った。

 別段、前述の質問に対する正しい回答集が存在しているわけではないだろう。しかし、仕事とは別の活動を行っていることを、短いフレーズで示すことが、多くの場合に適切と受け止められるという印象を私は持った。ここでいう活動とは、例えば、スポーツや地域社会への貢献などである。

 しかし、これは、私にとってはなかなか難しいことであった。留学前は、仕事の疲れを癒す、又は、平日に完了しなかった仕事を片付けることで週末を費やしていたことも、珍しくはなかった。留学一年目は、これまたロースクールの予習や課題の量が多く、(自分自身の怠惰のせいもあるが)学期中はスポーツ等のレクリエーションの機会もあまり持たなかった。

 しかし、「週末はいかがでしたか?」「週末のご予定は?」という質問に対して、期待されていないと感じる回答を繰り返すのは、やはり居心地が悪いものである。そして、折角日本を離れて異なる環境にいるのであるから、この質問をきっかけに、新しいことを始めてみるのもよいか、とも思うようになった。そのような「新しいこと」として私が行ったのが、標題に記載したハイキングである。

 パロアルト周辺のハイキング事情

 パロアルト周辺には多数のハイキングコース(トレイル)が存在している。ここでパロアルトの場所を説明すると、サンフランシスコから南方向、サンノゼ方面に向かって車で40分ほど国道101号線を走ると到着する位置にある。サンフランシスコよりもサンノゼに近く、サンフランシスコ半島の付け根に所在している。

 パロアルトで1年程度生活する人の多くは、車を所有するであろう。私も中古車を入手した。すると、車で1時間も走れば、多くのトレイルにアクセスできる。本屋を訪ねれば、トレイルを紹介する本を容易に入手でき、インターネット上にもおすすめのトレイルを紹介するサイトやブログが数多くある。

拡大ほどよく舗装された道を歩き、小川まで下りていく
 多くのトレイルは、州立公園や郡立公園に存在している。入場や駐車は無料の場合が大半で、有料でも数ドルで足りることがほとんどである。トレイルの距離や高低差は様々であるが、前述の本やサイト等を参照して、自分の好みにあったトレイルを見つけることができた。

 注意した点としては、特に夏は日差しが強いので、日陰が多いトレイルを選び、水を多めに持参して帽子を忘れないようにしたことである。また、自転車コースや乗馬コースを兼ねているトレイルもあるが、のんびりとしたハイキングを楽しみたいときは、そのようなトレイルを避けていた。

 ハイキングを始めてみて

 前述のとおり、私はパルアルト所在の法律事務所に1年弱勤務したが、勤務して1ヶ月ほど経過して以降は、ほぼ毎週末(少なくとも2週間に一回程度のペース)でハイキングをしていた。

 すると、前述の定番質問「週末はいかがでしたか?」「週末のご予定は?」にも気持ちよく(少し自信を持って)答えられるようになった。「前回はこのトレイルに行った。次はあのトレイルに行こうと思っている」といった具合である。すると、職場でもハイキングを趣味にしている、あるいは、定期的に楽しんでいる人が意外にも多いことが分かり、おすすめのトレイルを教えてもらえたりすることもあった。また、喫茶店でコーヒーを飲みつつトレイルのパンフレットを見ていると、隣に座った50歳ほどの女性から、「そのトレイルいいわよね!」と話しかけられたことも良い思い出である。そういった経験から、パロアルト周辺の多くの人にとってハイキングは身近なレクリエーションであると印象付けられた。

 この点、帰国してから感じたことであるが、東京とは少し事情が違うようである。私は、東京では、ハイキングを趣味にしているというよりは、登山を趣味にしているという人が多いような印象を持っている。本で紹介されているコースも、ほとんどが麓から山頂を目指すものであり、高低差の大きいものが多く、推奨されている装備も本格的に思える。他方、パロアルトでは、多くの人々がより気軽に山歩きを楽しんでいるようであった。一つの理由としては、トレイルに車でアクセスしやすく、高低差の大きくないトレイルが多いことがあるのではないだろうか。

 お勧めのトレイル

拡大日陰に護られながら、小川沿いにコケやシダが生えている
 最後に、個人的に気に入っていたトレイルを一つご紹介したい。ヘンリー・コーウェル・レッドウッズ州立公園にあるフォールクリークトレイルである。パロアルト市内から50分ほど車を走らせれば、トレイルのスタート地点に到着する。フォール川に沿って歩くトレイルであるが、川といっても、幅は1~2メートル程度の小川であり、これを時々横切りながら遡っていく。他の多くのトレイル同様、山頂を目指すタイプではないので、のんびりと川に沿って歩き、満足したら来た道を戻ればよい。私は朝食時間込みで往復に4時間ほどかけた。

 小川を沿って行くトレイルの良いところは、日陰が多く、また湿度も比較的高いので過ごしやすい点である。また、このトレイルは、滝などの分かりやすい見所はないが、高低差も少ないので、様々な体力や年齢の方でも楽しめるであろう。

 最後に

 アメリカでの滞在を終えて東京に戻ってからも数回、奥多摩や大月周辺などで登山をした。東京周辺にも良い登山コースはいくつもある。ただ、この原稿を書いていて懐かしく思い出されるのは、車で30分から1時間ほど走ればトレイルに到着でき、即座にハイキングを始められるあの気軽さである。

 同時に、最初少しわずらわしくも感じていた、週末の過ごし方についての質問も、今ではハイキングを楽しむきっかけを与えてくれたものとして、感謝の気持ちとともに思い出されてくる。

山内 真之(やまのうち・まさゆき)

 2002年3月、慶應義塾大学理工学部卒業。2004年3月、慶應義塾大学大学院理工学研究科卒業。2007年3月、東京大学法科大学院 (法務博士 (専門職))修了。2008年12月、司法修習(61期)を経て弁護士登録(第二東京弁護士会)。2009年1月、当事務所入所。2013年6月、米国Stanford Law School(LL.M.)修了。2013年9月から2014年6月まで米国のFinnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner法律事務所(カリフォルニア州 Palo Alto Office)勤務。2014年3月、 ニューヨーク州弁護士登録。2014年9月、当事務所復帰。
 著書・論文に「Recent changes concerning regulatory protections for pharmaceutical companies in Japan」 (The PLC Cross-border Life Sciences Handbook 2010/11) (共著)、「知財ライセンス契約の法律相談〔改訂版〕」(青林書院 2011年)(共著)、「New rules on international jurisdiction - impact on IP disputes」 (International Law Office 2011年6月)、「民事訴訟法の一部改正-知的財産関係訴訟の国際裁判管轄を中心に-」(知財管理Vol.62, No.3 (No.735) 2012年3月号)、「連載/特許法のフロンティア 第4回 延長登録」(ジュリスト No. 1439)(2012年4月号)、「Increased Damages for Patent Infringement in Japan」(Corporate Counsel 2014年2月24日掲載)(共著)、「米国における合理的なロイヤルティ及びF/RANDに関する分析の厳格化並びに日本との比較」(社団法人日本国際知的財産保護協会月報2014年9月号)(共著)がある。

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