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アンダーソン・毛利・友常法律事務所 企業法務の窓辺

企業法務弁護士によるプロボノ活動 ~新型コロナ禍の中、思うこと

齋藤 宏一(さいとう・こういち)

企業法務弁護士によるプロボノ活動
 ~新型コロナ禍の中、思うこと~

アンダーソン・毛利・友常法律事務所
齋藤 宏一

拡大齋藤 宏一(さいとう・こういち)
 1999年3月、東京大学法学部卒業。2001年10月、司法修習(54期)を経て弁護士登録(第一東京弁護士会)。2008年6月、米国Harvard Law School (LL.M.)。2008年9月から2009年6月までHarvard Law School客員研究員。2009年5月、ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月、当事務所入所。2013年1月、 当事務所パートナー就任。

 はじめに

 2013年4月にこの「企業法務の窓辺」に「ビジネス弁護士によるプロボノ(社会貢献)活動」と題して、ビジネス法務を担う弁護士によるプロボノ活動について、雑感を述べる機会を頂いた。前回の執筆からはや7年が経ったが、ここ数年でプロボノ活動をめぐる状況がだいぶ変わってきたと思わるため、再度このテーマで書かせていただこうと思う。

 プロボノ活動に対する意識の変化

 ここ数年の変化で最も大きな点は、プロボノ活動に対する意識、特に若手弁護士の意識が変わったという点である。ここ数年で、若手弁護士のプロボノ活動に対する関心や積極性が格段に向上しているように感じている。

 例えば、当事務所では、依頼者から依頼を受けたプロボノ案件について、若手弁護士向けに依頼者や案件の概要を説明しつつ、案件を担当したい弁護士を募集することが頻繁に行われるが、ほとんどの募集において、募集定員を上回る申込みが殺到し、調整を必要としている。先日、新型コロナウイルス感染症関連のプロボノ活動の募集をしたところ、定員2名に対し、8名もの若手弁護士からの申込みがあった程の人気である。

 弁護士を志望する学生の間でも、プロボノ活動に対する関心がより高まっている。新人弁護士の就職活動において、就職活動のエントリーシートの自己PR欄に自身のボランティア経験について触れている学生や、事務所のプロボノ活動の詳細について質問をしてくる学生が増えている。また、就職活動の際に就職先の法律事務所を選択するポイントは何かと尋ねると、数名の学生からプロボノ活動をどれだけやっているかという点を重要なポイントとして考えている旨の回答があった。このことからも、弁護士という職業を選択するうえで、法律を手段として何らかの社会貢献を果たしたいという思いを抱いている学生が増えているように感じる。

 大手事務所での取組みの変化

 次に、ここ数年の間で、大手事務所のプロボノ活動に対する取組みにおいても大きな変化が見られている。弊事務所では、2015年のビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)との経営統合を契機として、プロボノ案件の開拓、所内への参加の呼掛け、プロボノに関する広報活動を担うプロボノ委員会を創設した。弊事務所ではプロボノ委員会が中心となって、これまで30を超える団体・個人に対し法律的な側面から支援をしており、分野としては、難民支援、子どもの福祉、被災者支援、教育、LGBT、人権、障害者支援、動物愛護、環境保護など、極めて多岐にわたる。また、事務所として、弁護士報酬を請求可能な業務だけでなく、プロボノ案件にも同じモチベーションをもって取り組むことを促進するため、プロボノ案件に取り組んだ時間についても、若手弁護士の報酬に反映されるような仕組みを採用した。さらに、所員に対する啓蒙活動として、定期的にプロボノ活動に関する所員向け報告会を開催するなど、事務所全体として、プロボノ活動に取り組む姿勢を打ち出している。

 この点、他の大手事務所においても、プロボノ委員会、あるいはそれと同様の機能を果たす機関を設置する動きや、プロボノ活動に従事した実績が評価査定においてプラスの要素として考慮されるような取組み、プロボノ活動に関するイベント・勉強会の開催など、事務所全体としてプロボノ活動を推進する動きが見られる。

 こうした大手事務所における取組みは、若手弁護士に対し、大きな組織に所属し企業法務中心の業務に携わりながらも、同時に弁護士として社会貢献を果たす途を拓くものとして、積極に評価されるべき取組みと言えよう。

 組織の垣根を越えたつながり

 私がプロボノ活動を積極的に始めたのが今から10年ほど前であるが、2012年に企業法務を本業としながらプロボノ活動も両立させたいという思いを共有する仲間と一緒に「社会課題」を解決することを目的とする緩やかなネットワーク(BLPネットワーク)を立ち上げた。当初は10名にも満たない少数の集まりであったが、8年という年月を経て、メンバー数は約60名に増加した。所属する組織の垣根を越えて案件を共同受任したり、案件を紹介し合ったりして、「社会課題」に日々取り組む人々(団体・個人を問わない。)に対し、法的サポートを提供し、もって「社会課題」を法律家の立場から解決すべく取り組んでいる。

 私は、プロボノ活動とは本来ひとりで実践するものではなく、同じ理念を共有する仲間と共に集団的に行動することによって初めて社会的なインパクトを与えることができるものであると考えているため、このように、所属する組織の垣根を越えて共に行動できる仲間が増えることはとても喜ばしいことだと思う。今後もこうした仲間と共に、「社会課題」を法律家の立場から解決すべく日々取り組んでいきたいと考えている。

 終わりに

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための緊急事態宣言が4月に発令され、外出自粛や休業を余儀なくされる状況が続いた。5月に入り状況が好転して緊急事態宣言自体は解除されたものの、依然として第二、第三の波が来ることが懸念される状況である。外出自粛の間は、「ステイホーム」の呼掛けの下、自宅でテレビを見る機会が多くなったが、昼夜を問わずこの未知のウイルスと病院で闘ってこられた医療従事者の姿を拝見し、只々、敬意と感謝の思いである。この未曽有の状況に対して、私も法律実務家として何かできないかと思いつつも、まだ何もできていない自分自身をもどかしく思っている。「小さいことから、できることを着実に実行する。」という、弁護士1年目に抱いた目標が思い出される今日この頃である。

齋藤 宏一(さいとう・こういち)

 1999年3月、東京大学法学部卒業。2001年10月、司法修習(54期)を経て弁護士登録(第一東京弁護士会)。2008年6月、米国Harvard Law School (LL.M.)。2008年9月から2009年6月までHarvard Law School客員研究員。2009年5月、ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月、当事務所入所。2013年1月、 当事務所パートナー就任。2013年1月から特定非営利活動法人 Teach For Japan監事。2020年「Best Lawyers 2021」を受賞。

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