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《判決要旨》小沢議員元秘書有罪「企業との癒着で資金集め」

小沢一郎議員の秘書だった大久保隆規被告、石川知裕衆院議員らに有罪を宣告した9月26日の東京地裁判決の要旨

 東北地方では、公共工事の受注業者を鹿島建設の談合担当者を仕切役とする談合により決めていたが、岩手県や秋田県では、公共工事の談合におけるいわゆる本命業者の選定に関して、小沢事務所の意向が決定的な影響力を持っており、その了解がなければ本命業者になれないという状況であった。そこで、岩手県等の公共工事の受注を希望するゼネコンは、小沢事務所の担当の秘書に対し、談合において本命業者となることの了解を与えてほしい旨の陳情に赴き、当該秘書の了解が得られると、鹿島建設の仕切役にその旨を連絡していた。連絡を受けた仕切役は、当該秘書に確認を取るなどした上で小沢事務所の意向に沿ったゼネコンを本命業者とする談合を取りまとめ、この談合に沿った入札・落札が行われて、本命業者が受注業者として決定されていたのである。そのため、小沢の秘書から発せられる本命業者とすることの了解は、ゼネコン各社にとっては、いわば「天の声」と受けとめられていた。被告人大久保は、それまで天の声の発出役を務めていた前任の秘書に代わって、平成十四、五年ころから、天の声を発出する役割を担うようになった。このような状況下で、西松建設は、公共工事の談合による受注獲得のために本件各寄附を行っているのであるから、同社としては、それが西松建設による政治献金であることを小沢事務所に理解してもらわなければ意味がないといえる。このような趣旨で西松建設が本件各寄附を行っているのに、小沢事務所における政治献金の受入窓口であった被告人大久保が、本件各寄附を実施する主体が西松建設であることを理解していなかったとは、到底考えられないことである。

 (2)新政研及び未来研が西松建設の隠れ蓑であることについての被告人大久保の認識の有無

 以上に加え、[1] 献金総額、受け皿団体及び献金元の特定、献金額の割り振りといった重要な事項について、被告人大久保は、毎年、西松建設本社を訪れ、同社経営企画部長のみと打ち合わせていたのであって、新政研及び未来研の役職員は全く関与しておらず、被告人大久保は、新政研及び未来研の役職員と会ったり連絡を取ったことは一度もなく、接触を図ろうとしたことも一切なかった。[2] 西松建設は、別紙2記載のとおり、平成17年、平成18年と続けて、新政研・未来研名義の献金額を減らし、かつ、平成18年をもって、新政研・未来研名義の献金を終了することで小沢事務所と合意に達したが、その減額・終了の交渉において、前記西松建設経営企画部長は「西松建設の業績悪化」が理由であることを明確に被告人大久保に伝えており、これに対し、被告人大久保も「まあ、お宅が厳しいのはそうでしょう。おたくの業界はどこも厳しいようですからね。」「でも急に言われても困ったな。うちも最近、厳しいんですよ。」などとのやりとりがなされている。このようなやりとりがなされること自体、被告人大久保が、新政研・未来研名義の政治献金が西松建設の意思決定と同社の資金によって行われていることを認識していたことの証左といえる。[3] 小沢の秘書で平成11年から平成13年ころまで小沢事務所の経理事務を担当していた者は、捜査段階において、検察官に対し、新政研と未来研は、西松建設がその名前を表に出すことなく政治献金を行う際の隠れ蓑にすぎないと思っていた旨認めており、被告人大久保も、捜査段階において、検察官に対し、これと同旨の供述をしていたが、いずれも信用できる。

3 陸山会及び第4区総支部の各収支報告書への虚偽記入について

 (1)陸山会の収支報告書について

 被告人大久保は、本件各寄附について、石川及び池田が、当然に収支報告書に新政研及び未来研からの寄附であるとの虚偽の記載をすることを承知の上で、同人らをしてその旨の記載をさせ、提出させていたことが認められる。したがって、陸山会の収支報告書についての虚偽記入につき、被告人大久保の故意は優に認められる。

 (2)第4区総支部の収支報告書について

 第4区総支部の収支報告書は、岩手県奥州市水沢区内にある小沢事務所で作成されていたが、その作成過程は、石川や池田が収支明細書を作成して同事務所に送り、同事務所の職員がこれをそのまま収支報告書に反映させていたものである。したがって、被告人大久保は、本件各寄附が新政研及び未来研からのものであることを内容とする第4区総支部の収支報告書が提出させることになると承知の上で、それに至る各作業をさせ、これを提出させていたことが認められる。したがって、第4区総支部の収支報告書についての虚偽記入につき、被告人大久保の故意は優に認められる。

4 弁護人の主張について

 弁護人は、新政研及び未来研が政治資金規正法上の政治団体であるならば、本件各寄附を取得した新政研及び未来研が、政治団体である陸山会及び第4区総支部に寄附をしても、他人名義の寄附又は企業献金禁止に触れる寄附に当たらないという。そこで、検討すると、確かに新政研及び未来研は、政治資金規正法の規定に従って政治団体としての届出がなされた団体である。しかし、その実体は、すでに認定説示したとおり、西松建設が社名を秘して政治献金をするために設立した同社の隠れ蓑であった。すなわち、本件各寄附は、新政研や未来研という政治団体からの寄附の外形を装ってはいるものの、実際は、西松建設が行ったものであることは、すでに縷々述べたところから明らかである。それなのに、政治団体としての実体のない新政研及び未来研について、政治資金規正法上の届出がなされているとの一事をもって、新政研及び未来研になされた寄附は両団体に帰属し、そこから陸山会や第4区総支部になされた寄附は政治団体から政治団体に対する適法な寄附であるなどと解することは、およそ実体から離れた解釈といえる。このような解釈は、他人名義による寄附や企業献金を禁止した政治資金規正法の趣旨を潜脱するものであって、是認されるものではない。したがって、弁護人の主張は採用できない。

5 西松建設事件についての結論

 以上のとおりであり、西松建設事件についての公訴事実はいずれも認めることができるので、判示第1の1、第1の2(1)、第1の2(2)前段、第1の2(3)前段、第1の2(4)、第2の1、第2の2(1)ないし(4)のとおり認定する。

第2 陸山会事件

1 平成16年分収支報告書における本件4億円の記載の有無

 (1)問題の所在

 平成16年分収支報告書には「借入先・小澤一郎、金額・¥400,000,000、備考・平成16年10月29日」との記載(以下「本件記載」という。)があるが、この記載について、検察官は、陸山会の定期預金を担保に小沢がりそな銀行衆議院支店から4億円を借り入れ、陸山会が同人からその転貸を受けた「転貸金4億円」であって、平成16年10月初めころから同月27日ころまでの間に小沢から陸山会が借りた合計4億円(以下「本件4億円」という。)ではないと主張するのに対し、被告人石川は、小沢から借りた4億円を記載したものであると主張している。

 (2)検討

 「平成16年10月29日」という収支報告書の備考欄の記載は、その体裁からして、陸山会が小沢から4億円(転貸金4億円)を借り入れた日を書いたとみるのが自然かつ合理的である。本件記載が本件4億円を書いたものだとすると、被告人石川は、本件定期預金担保融資における本件定期預金4億円を収支報告書に記載しておきながら、それを担保にする形をとって小沢から転貸を受けた転貸金4億円を記載しなかったということになって不自然である。平成15年分収支報告書の記載の体裁とも合わない。

 それに加えて、被告人石川は、本件4億円を平成16年10月13日から同月28日までの間、前後12回にわたり、5銀行6支店に分散入金した後、りそな銀行衆議院支店陸山会口座に集約して

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