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福島第一原発事故、東電前会長ら42人不起訴 《処分理由骨子》

東電福島原発事故 不起訴処分の理由の骨子

 当庁(扱い公安部)は、本日、標記事件につき、不起訴処分とした。

* 事実により、告訴及び告発がなされているもの、告発のみがなされているものがあるが、便宜上、いずれも「告発」されたものとして表記。また、告発事実は多岐にわたるが、被告発人の立場、過失の内容等に応じ、以下のように分類した。

 

1 事故前の過失を問うもの

(1)東京電力及び東京電力関係者に対する業務上過失致死傷、業務上過失激発物破裂、人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(公害犯罪処罰法)違反事件

ア 告発事実の概要

 被告発人らは、被告発人東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の関係者であるが、東京電力の業務に関し、福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の運転停止又は設備改善等による安全対策を講じて、大規模地震に起因する巨大津波によって福島第一原発において炉心損傷等の重大事故が発生するのを未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、必要な安全対策を講じないまま漫然と福島第一原発の運転を継続した過失により、東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波により、福島第一原発において炉心損傷等の重大事故を発生させ、水素ガス爆発により一部の原子炉建屋を損壊させ、福島第一原発から大量の放射性物質を排出させて、多数の住民を被ばくさせるとともに、現場作業員らに傷害を負わせ、さらに、周辺病院から避難した入院患者らを死亡させた。

イ 処分結果

(ア) 業務上過失致死傷、業務上過失激発物破裂につき

① 東京電力関係者:不起訴処分(嫌疑不十分)
被告発人勝俣恒久、清水正孝、武藤栄、大出厚、小森明生、武黒一郎、服部拓也、南直哉、荒木浩、榎本聰明

② 東京電力関係者:不起訴処分(嫌疑なし)
被告発人6名

③ 東京電力関係者:不起訴処分(被疑者死亡)
被告発人1名

(イ) 公害犯罪処罰法につき
東京電力及び東京電力関係者:不起訴処分(罪とならず)
ただし、被告発人1名につき、不起訴処分(被疑者死亡)

ウ 処分理由の骨子

(ア) 事故の経過及び原因

 東北地方太平洋沖地震が発生した直後、運転中であった福島第一原発1号機から3号機は緊急停止し、地震により外部電源を喪失したものの、非常用ディーゼル発電機が起動して冷却注水設備が運転を開始した。
 その後、東北地方太平洋沖地震に伴う津波が福島第一原発に到達し、その高さが原子炉建屋、タービン建屋等があるO.P.(小名浜港工事基準面)十10mの敷地(以下「10m盤」という。)を大きく超えるO.P.+約11.5mから約15.5mに及んだ結果、タービン建屋等の開口部等から大量の海水が浸入して非常用ディーゼル発電機、電源盤、蓄電池等(以下「非常用電源設備等」という。)が被水し、機能を喪失したことにより、1号機から3号機では全ての交流電源を、1号機及び2号機では直流電源をも喪失した。
 交流電源や直流電源を喪失したことにより、冷却注水設備が機能を喪失した結果、1号機から3号機は炉心損傷に至り、原子炉内から漏えいした放射性物質が大気中に放出されるとともに、1号機、3号機及び4号機(3号機からの水素ガスの流入によるもの)では、原子炉建屋において水素ガス爆発が発生した。
 今回の事故原因は、東北地方太平洋沖地震に伴う津波が、1Om盤を大きく超えて建屋内に浸入し、非常用電源設備等が被水して機能を喪失した結果、交流電源や直流電源を喪失するなどしたことにある。

(イ) 刑法上の過失における予見可能性の契機となり得る事情

  過失犯が成立するためには、刑法上の過失、すなわち、行為者に当該行為時点において、結果の発生に対する予見可能性・予見義務違反及び結果回避可能性・結果回避義務違反があったことが必要である。
 これらのうち、予見可能性については、漠然とした危惧惑や不安感では足りず、刑法上の責任を負うべき結果の発生に対する具体的な予見可能性が必要であり、判例によれば、予見可能性の有無や程度は、行為当時、行為者と同じ立場に置かれた一般通常人の能力を基準として判断するものと解されている。
 今回の事故では、福島第一原発において、10m盤を大きく超えて建屋内が浸水し、非常用電源設備等が被水して機能を喪失するに至る程度の津波(以下、単に「10m盤を大きく超える津波」という。)が襲来することについての具体的な予見可能性が認められれば、原子炉冷却機能喪失による炉心損傷等に起因する結果の発生に対する具体的な予見可能性があったと認められるものと考えられる。
 予見可能性の契機となり得る事情として、以下のものがあることから、これらの事情を踏まえて検討する。

① 推本の長期評価
 地震調査研究推進本部(以下「推本」という。)は、平成14年7月、「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(以下「長期評価」という。)を公表し、三陸沖から房総沖にかけての海溝寄りのどこでも、明治三陸地震の規模の津波地震(地震動に比べて異常に大きな津波を生じさせる地震)が発生する可能性があるとした(それまで津波地震の発生が確認されていなかった福島県沖海溝沿いを含む。)。

② O.P.十15.7mの試算結果
 東京電力では、推本の長期評価を踏まえ、明治三陸地震の波源モデルを福島県沖海溝沿いに設定するなどして津波水位を試算したところ、平成20年3月、福島第一原発の敷地南側(4号機建屋の南側)において10m盤を上回るO.P.十15.7mとの結果が得られ、同年6月には、この試算結果が東京電力幹部らに報告された。

(ウ) 推本の長期評価が公表された平成14年7月以降の注意義務違反の存否

① 予見可能性及び予見義務違反の存否

ⅰ 今回の地震及び津波と推本の長期評価の関係
 今回の地震のマグニチュードは、9.0であり、その震源域は、三陸沖から茨城県沖までの長さ400km以上、幅約200kmに及ぶ領域であったと推定されており、推本の長期評価が想定した明治三陸地震(マグニチュード8.3)と比較して、地震のエネルギーにおいて約11倍、震源域の大きさも数倍以上であったと考えられる。
 今回の地震及びこれに伴う津

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