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津波で職員死亡、「組織の備え」不備を批判した盛岡地裁判決

津波による職員の死亡について雇用主の新岩手農協の法的責任を否定した2015年2月20日の盛岡地裁判決の全文

 一般的に、使用者は、労働者に対し、労働契約に基づく信義則上の付随義務として、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をすべき義務を負っているというべきであるから(民法1条2項、労働契約法5条)、被告は、被告の指揮命令に従って業務遂行中に地震や津波などの自然災害が発生した場合には、それらの危険から職員の生命、身体などが保護されるように配慮すべき義務を負っていたと解される。
 ところで、株式会社産労総合研究所が平成23年6月に同社の被災県を除く会員企業3000社に対して実施したアンケートの集計結果(甲11)によれば、アンケートに回答した188社のうち、1000人以上の規模の企業である35社において、本件地震以前に防災マニュアル等を策定していた社は91.4%(188社全体では63.3%)、防災教育と防災訓練の実施をマニュアルに盛り込んでいた社は90.6%、非常時における従業員の安否確認体制の確立を盛り込んでいた社は87.5%、従業員の帰宅・避難対策の確立を盛り込んでいた社は53.1%であり、従業員数が1000人以上の企業においては、防災マニュアルを策定することが特別な対応ではなかったことが窺える上、原告○○○○(以下「原告○○」という。)の陳述書(甲13)及び原告○○本人によれば、原告○○が勤務していた鹿島建設株式会社においても、建設現場毎に現場に応じた避難訓練を実施していたことが認められるところ、被告がこれらの他の大規模な企業と異なって、地震や津波等の自然災害が発生した場合を想定した防災・避難基準の策定や避難訓練等を実施できなかった特段の事情があったとは認められない。
 そして、前記1(1)のとおり、三陸沿岸は、過去に大きな犠牲を出した大津波が何回も襲来しているのであり、このような過去の教訓を踏まえて、岩手県は市町村に対して津波避難計画を策定するようにガイドラインを示し、山田町も、広報誌において、町民に対し、大規模な地震が発生した場合を想定した津波避難訓練への参加を呼びかけていたこと、山田支所が海岸から約400メートルしか離れておらず、津波による浸水が予測されている地区に位置していたことからすれば、少なくとも山田支所においては、火災や強盗による被害を想定した緊急時の避難態勢と役割分担を定めるだけではなく、平時においても、地震や津波による被害を想定した防災・避難の基準の策定、これらの基準に従った職員への教育等及び避難訓練の実施をしておく必要があったというべきであり、被告及び山田支所において、そのような基準の策定や避難訓練等を実施できなかった特段の事情があったとも認められないことからすれば、職員の生命、身体などの安全に配慮すべき義務を負っていた被告が、このような対策を何ら実施していなかったことは、不適切・不十分な対応であったことは明らかである。
 しかしながら、前記のとおり、次長は、本件地震後

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