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深掘り

内部告発 in アメリカ

(2) 公金1兆3千億円を回収、内部告発者の協力で

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

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 米国には、内部告発者を保護する法律が数多くある。連邦公務員を対象にしたホイッスルブロワー(内部告発者)保護法、上場企業の従業員を対象にした企業改革法が特に有名。ほかに、原子力、環境、交通、労働など分野ごとに保護法規がある。各州にもそれぞれの法がある。

 それら数多くの法律の中でベストなのは不正請求防止法――。ワシントンDCの非営利組織「全国内部告発者センター」で事務局長を務めるスティーブン・コーン弁護士はそう指摘する。

 「不正請求防止法は、世界で唯一、内部告発を割の合うものにしている法律だ。そのほかの告発者保護法制は、告発者のために未払い賃金や損害賠償金を払わせ、復職させるだけ。実際には復職後も『内部告発者』としてマークされ、昇進は望めない。内部告発者のその後のキャリアは悲惨だ。不正請求防止法は、そうした実態をきちんと認識し、それを埋め合わせる唯一の法律だ」

 不正請求防止法には、内部告発のおかげで政府への不正請求の被害を回収できた際に、回収額の15~30%を内部告発者に報奨金として渡すユニークな制度が定められている。内部告発者が政府のために勤務先を裁判所に訴え、告発者側が勝訴すれば、その勤務先は、不正に受け取った金額の3倍を政府に返す義務を負わされる。1億円の不正請求を法廷で立証できれば、3億円が政府に返され、このうち最高9千万円が内部告発者に払われる計算となる。

 統計によれば、昨年9月までの21年の間に、米政府は内部告発者のおかげで126億ドル(1兆3千億円余)を不正請求業者から回収した。同じ21年間に政府が独自に回収した76億ドルをはるかに上回る。内部告発者には20億ドルが支払われた。

 億万長者になる内部告発者が続出している。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽この記事は2008年10月1日の朝日新聞朝刊に掲載されたものです。

  ▽内部告発 in アメリカ(1):  億万長者になった「スパイ」、病院チェーンの不正請求を政府に

  ▽内部告発 in アメリカ(3):  日本企業も被告、内部告発者が原告となり、米司法省も訴訟参加

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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