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深掘り

内部告発 in アメリカ

(5) 「日本も通報者にメリットを」との意見も 内部告発者への報奨金

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

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 内部告発者に報奨金を与える米国の不正請求防止法について、麗沢大学の高巌(たかいわお)教授(企業倫理)は「日本でもそろそろ、アメリカの制度の応用版のようなものを考える必要があるかもしれない」と話す。

 日本でも公金の不正は蔓延(まんえん)している。防衛装備で不正請求が発覚して国庫に返された金額はこの10年余で1千億円を超える。

防衛装備品をめぐる水増し請求の事例拡大
不十分なチェックで汚染米を食卓に流通させた農水省などの例に触れて、高教授は「これらはたまたま明らかになっただけで、氷山の一角」と言う。「『通報者を守ります』だけでは表に出るのは一部。通報する人にメリットを与え、通報を促す制度を議論してもいいのではないか。通報者は自分を犠牲にするわけだから」

 内部告発を迷う人の相談にのった経験のある公益通報支援センターの阪口徳雄(とくお)弁護士は、内部告発者に回収額の1割を報酬に払う法律の制定を提案する。そして、「もしそれが日本の風土に合わないというのなら、『国民代表訴訟』の制度を新設するべきだ」と付け加える。

 地方自治体の損害は住民訴訟で、企業の損害は株主代表訴訟で、住民や株主が賠償を請求できる。ところが、国についてはそうした制度がない。「国の役人が不正をしても、企業が国に損害を与えても、放置されている」と阪口弁護士は現状を嘆く。「国の損害を回収するには、是正の武器を国民一人ひとりに与えるべきだ。『国民代表訴訟』の制度を新設し、同時に、内部告発者に一定の権利を与えれば、税金の無駄遣いはなくなるだろう」

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽この記事は2008年10月4日の朝日新聞朝刊の第3総合面に掲載された原稿に加筆したものです。

  ▽内部告発 in アメリカ(1):  億万長者になった「スパイ」、病院チェーンの不正請求を政府に

  ▽内部告発 in アメリカ(2):  公金1兆3千億円を回収、内部告発者の協力で

  ▽内部告発 in アメリカ(3):  日本企業も被告、内部告発者が原告となり、米司法省も訴訟参加

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部などを経て特別報道部。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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