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深掘り

福島県二本松市から

「ほんとの空」の下で放射能に不安、詩作「2011年フクシマ」

 福島第一原子力発電所から約60キロ離れた福島県二本松市に住む獣医師・荒尾駿介さん(69)から、放射性物質の見えない恐怖に不安を感じざるを得ない日常を描いた詩が寄せられた。高村光太郎の詩集『智恵子抄』の主人公・高村智恵子が生まれ育った地であり、安達太良(あだたら)山の上にある「ほんとの空」を臨むことができる、緑の美しい福島・中通りに荒尾さんの家と畑はある。親類や知人に近況を報告するつもりで荒尾さんは初めての詩作に向かったという。(ここまでの文責はAJ編集部)

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  ▽荒尾さんが2番目に作った詩: 短詩NO2

  ▽荒尾さんの文章: 2011年8月のフクシマ・二本松

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2011年フクシマ

文と写真  あらお しゅんすけ

拡大安達太良山
 1.福島第一原子力発電所事故概要

2011年3月11日のことです

どっしりと動かないものの代名詞のように思っていた大地

それが激しく動いたのです

マグニチュード9.0、震度6強

東日本の太平洋岸500キロメートルにわたる大地震

高さ10メートルを超えるような大津波が襲いました

 

福島第一原子力発電所も激しく揺れ津波に襲われ

トラブル続発、炉心冷却用の電源不通、そしてメルトダウン

吐き出された放射性物質は57万テラベクレル

この原発事故の規模は世界でも最高のレベル7

千年前、貞観の大地震と大津波があったこと

同規模のものは起こらないとあえて無視されていた福島原発

安全神話の末にたどりついた人災でした

 

 2.シーベルトの嵐

それが気づかせてくれました

教えてくれました

平凡な退屈な日常生活こそがどんなに大切で幸せだったのか

飽きるほど退屈するほど見慣れた山河がどんなに愛しいものだったのか

手入れするほどに豊かな実りをもたらしてくれる土がどんなに有難いものだったのか、を。

突然、大地が何度も大きく揺れだして

放射能雲がセシウムを運んできて

シーベルトとかベクレルの言葉の嵐が飛び交った事が

気づかせてくれたのです

教えてくれたのです

 

 3.近未来のために

そうです。これはもう壮大な人体実験なのです

天から突然にセシウムが降ったので

セシウム30万ベクレルの大地の上で

1.05シーベルトの大気を吸って

基準以下だというお墨付きの食べ物を食べて

一見なにげないようなふりをして、生活を続けているのです。

「直ちに健康に影響はありません」とか言われ

「低レベル放射線はむしろ身体に良いのです」とか言われ

「あまり心配しすぎるとかえって身体に悪いですよ」とか言われて

フクシマ200万県民は 

「子供たちだけは守ってやらないと」と胸を痛めながら

黙って耐えているのです

核と共存する近未来の人々のためになるなら、と。

 

 4.ひまわり

ひまわりが咲いています

一面の緑と黄色です

ひまわりは揺れています

ひまわりは元気です

ひまわりは笑っています

けなげにセシウムを吸いながら

フクシマの人たちの期待をうけて

いつもの夏と同じように輝く太陽を浴びながら

ひまわりは咲いています

 

 5.核の平和利用

これほどにフクシマ200万県民をおびやかし

東日本の若いお母さんたちをおびえさせ

海外の観光客を日本列島から遠ざける

安全な、平和利用だという原子力発電所のソウテイガイの事故。

ゲンパツは暴走しました

制御できずに平和を乱しました

何年も何年も健康と生活をおびやかします

誰かが言っています。「ゲンパツはやっぱり核兵器と同じなのだ」

 

 6.2011年3月11日以降

オレはもう開き直って生きている

セシウム1.08マイクロシーベルトの空気を吸って

一日に300ベクレルほどの食べ物を食べて

カラ元気を出して笑っている

放射能におののき震えるオレの心を

もう一人のオレが励まして言う

「チェルノブイリ以来、我々は放射能に曝されてきたけど

 結構みな元気じゃないか」

「その時はそのときだ、ふるさとで生きよう」

 

 7.我々の敵

いつもと変らない智恵子のほんとうの空の下でも

こんなに憂鬱で

こんなにも不安で

健康と命が脅かされていると感じるのは

見えないからです

聴こえないからです

触れられないからです

そして国や専門家がそれぞれ別のことを言うからです。

誰か本当のことを教えてください

われわれの敵、忍び寄る放射能、居座る放射能に

どう立ち向かえば良いかを

 

 8.希望を下さい

人生の多くの春秋を乗り越えてきた女たちは言っています

「なんだかとても空しいわ」

生命を生み育んできた女たちは言っています

「なんだかとても哀しいわ」

そうです、2011年3月11日から

かつてなかった不安の種が蒔かれたのを

赤ちゃんからお年寄りまで一人ひとりの健康と命が脅かされつつあるのを

女たちの本能は鋭く感じ取っているのです

女たちの豊かな胸にぽっかりと開いた穴に一日も早く希望を下さい

 

 9.放射能からの自主避難

あなたも聴きましたか

若いお母さんの声を

おさなごを抱くお母さんの悩みを

若いお母さんたちの悩みを。

「 このままフクシマに住み続けて

この子が将来もし病気になったとき

『お母さん、2011年に何故フクシマから逃げてくれなかったの?!』

と言われたら

私は・・・わたしはどう答えたら良いか・・・・・・ 」

あなたには届いてますか

悩み、追い詰められている

たくさんの沢山のお母さんたちのそういう声が

 

拡大道ばたにて
 10.神 話

ギリシャ神話を知っていますか

日本の神話を信じていましたか

ゲンパツの安全神話は信じていましたか

日本政府の話を信じますか

専門家の話を信じますか

不安の元は“専門家”がそれぞれ違うことを言うことです

フクシマ県民は誰のことを信じたら良いのでしょう

 

 11.望 郷

放射能に追われた強制避難も自主避難も

長くなるとそれはもう

軟禁生活です

島流しなのです

やっぱり生まれ育ったふるさとが一番です

やっぱり親しんだご近所仲間です

やっぱり住み慣れた我が家です

やっぱりそこに返りたいのです

懐かしいふるさとの山河が今日も呼んでいます

 

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