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深掘り

コンプライアンス春秋  日本経営倫理士協会から

CSRレポートづくりの舞台裏、編集スタッフの苦労は

 新年度入りを前に、多くの企業でCSRレポートの編集が大詰めを迎えている。6月の株主総会を前に発行するケースが目立つ。CSR、すなわち、企業の社会的責任への取り組みを報告するだけでなく、最近は、企業の基本方針、事業内容について広く情報発信する役割も担う例が多い。各社の編集スタッフの仕事ぶり、苦労の中身をレポートする。

 

日本経営倫理士協会専務理事
千賀 瑛一

日本経営倫理士協会・千賀瑛一専務理事拡大千賀 瑛一(せんが・えいいち)
日本経営倫理士協会専務理事。東京都出身。1959年神奈川新聞入社。社会部、川崎支局長、論説委員、取締役(総務、労務、広報など担当)。1992年退社。1993年より東海大学(情報と世論、比較メディア論)、神奈川県立看護大学校(医療情報論)で講師。元神奈川労働審議会会長、神奈川労働局公共調達監視委員長、「経営倫理フォーラム」編集長。日本記者クラブ会員。

 ■大和ハウス:人間味あふれる紙面づくりを心掛ける

 大和ハウスのCSRレポートは、CSR推進室主任・内田雄司さんを中心に作られている。

 2000年から「環境報告書」の発行を始め、2005年からは「CSRレポート」となっている。2008年には、週刊東洋経済「サステナビリティ報告書」賞の優良賞を受賞したことがある。

 日本語版は5万部、中国語版は2千部、英語版は1千部を6月初めに発行する。ウェブサイトにも中身を掲載する。7~8人が編集作業に参加しているが、内田さん以外は兼務だ。

 2011年版の冊子は54ページ。フロントの見開きは大型グラビアが3面続き、他社レポートでは見られない開放感の溢れる紙面だ。「○○○○の思い」という小型コラムが10カ所あり、社内各部署の社員の声を紹介している。例えば、「住宅事業推進部の思い」では、住宅事業グループ長・金田健也さんが、住宅メーカーとして、業界をリードする心意気を語っている。また「総合技術研究所の思い」では、フロンティア技術研究室の井上博之さんが、実験中の蓄電池システムの早期実用化への意欲を語っている。また同社のCSR活動で注目されているステークホルダー・ミーティングについても、2ページを割いて丁寧に紹介している。

 ■株主総会での配布を前提に編集作業進める

 内田さんは「2009年以来、CSRレポートを3年間で3冊担当しました。CSRレポートに対する基本的な考えは、企業の方針や具体的活動について情報発信することで、わが社の信頼につなげることです。ウェブサイトでは広範囲の情報を漏れなく掲載する詳細版、冊子では重要度の高いテーマを中心に掘り下げるダイジェスト版となっています。12月から1月にかけて毎号の編集方針を固め、レポート制作会社数社から企画提案してもらい、コンペの結果、制作会社を決めます。取材や撮影にはほとんど立ち会うようにしています。また記事の狙い所などにも注文をつけ、依頼原稿の添削にも気を遣います。5月頃までに完成させるが、これは6月の株主総会での配布を前提にしています。紙面は各ページに社員が必ず登場するようにし、人間くさい紙面づくりを心掛けています。読者はお客様、取引先、従業員、株主・投資家など幅広いステークホルダーが対象です。新冊子ができると早速、社内の広報やCSRセクションの人たちが欲しがります。本人が早く見たいのと、関係者にも早めに見せたいようです。我々編集担当者の喜び、満足感は大きいです。読者アンケートをもとに、毎年編集の工夫をしています。受賞した『サステナビリティ報告書』賞・優良賞では、見開きページでストーリーが完結する『読みやすさ』があるとの評価をいただきました。今後の課題としては、CSRレポートの重要性は高まっているものの、情報発信媒体がさらに進化し、フェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービスなどの併用も、いずれ考えられるでしょう」と話している。

 ■ポーラ・オルビスホールディングス:キャリア8年、20代のポーラレディ支店長ら紹介

 ポーラ・オルビスホールディングスの報告書は、メインタイトルが「CSR REPORT 2011」、サブタイトルが「企業の社会的責任報告書」となっている。2009年に初めてウェブサイト上で発行された(2008年版)。翌年からはウェブサイトと冊子の併用方式になっている。ポーラの事業・会計年度は1~12月、株主総会は3月末に開かれる。同社のCSR REPORTはこの株主総会の前に発行される。2011年版は38ページ、発行部数は1万2000部。冊子版では、冒頭に編集方針が掲げられ、最終ページに編集後記が掲載されている。「ステークホルダーにとっての重要度」また「グループにとっての重要度」という二つの視点がそこでは強調されている。

 ポーラ・オルビスホールディングスでは毎年、「ポーラ・オルビスグループCSR 賞」への応募を社内に呼びかけており、これに合わせてグループ各社のCSR活動の情報を収集している。これらの情報をもとにグループ各社へ取材し、紙面を作っていく。

 できあがった冊子は、訪問販売の拠点にあたる500カ所のPOLA THE BEAUTYなどに配布し、現場での人の交流に役立てている。冊子版では、小型コラム「Voice」欄でいろいろな現場での従業員の声を掲載している。経営幹部養成講座を受講した商品企画部の女性リーダーの感想や、自己体験を踏まえ育児休業をすすめる人事労務チームの男性の声などを紹介。さらにキャリア8年、20代のポーラレディ支店長と、キャリア42年、70代の現役ポーラレディを対比させる形で登場させている。話題になりそうな紙面づくりとなっている。

 ■ユニバーサルデザインを導入、すべての人に読みやすい紙面を・・・

 同レポートの編集は、CSR推進室・川島忠興さんが担当している。「当グループのCSRレポートの主役は女性です。サイエンスに裏付けられた化粧品をアピールしています。紙面ではお客、従業員、株主などのステークホルダーに対して、本業を通じてのグループのCSR活動を伝えたい。また、各ページに人物の写真を多用し親しみやすくしています。毎年、グループCSR 賞の社内応募締め切りを12月に設定、これらの活動の審査の中で情報を吸い上げ、レポートに盛り込んでいます。話題や情報を取るために、ヒアリングをしますが、これがなかなか大変。CSRレポート向けの素材がうまく出てきてくれればいいが、いつもうまくいくわけではない。情報を取捨選択しながらまとめていく。グループ横断的に幅広い情報を盛り込むのが目的。CSR REPORT 2011の特色は、ユニバーサルデザイン・フォントを採用し、レイアウトしていることです。色覚パターン別配色検証を導入。例えば、紙面上の三角錐型の色別グラフなども、一般的にはやや馴染みにくい色合いとなっていますが、ユニバーサルデザインの基準をクリアしています。高齢者や色覚の違いなどさまざまな方々の読みやすさに配慮しました」。

拡大ローソン、大和ハウス工業、ポーラ・オルビスホールディングスの各CSRレポート(左から)

 ■ローソン:小型の要約版、絵本形式で分かりやすく解説

 ローソンでは、「環境保全・社会貢献活動への取り組み報告2011」というタイトルで2010年の活動を紹介している。要約版である冊子には「マチと共に生きる取り組み報告」のサブタイトルをつけられている。2002年1月からウェブサイトでの発行を始め、2010年からは冊子も出している。

 ほとんどの企業のCSRレポート冊子はA4サイズだが、同社の2011年版はその半分のA5判の大きさにした。46ページ構成で、発行部数は2万2500部。2月頃から企画検討を進め、制作会社からの企画提案をコンペで選び、4月から作業に入る。約5カ月かけて完成させる。株主総会は5月だが、毎年9月に発行している。編集は2011年9月に発足した「社会共生ステーション」という部署が担当している。ディレクター以下社員8人で、環境、社会貢献、CSRなどを担当している。2011年版の編集の柱は「地球」「マチ」「ヒト」。同年の報告書は、第15回環境コミュニケーション大賞「環境報告優秀賞」(環境省、地球・人間環境フォーラム共催)を受賞し、2012年2月29日、表彰式があった。多くのCSRレポートでは、企業トップが冊子のフロント部分に登場しているが、ローソンの冊子では新浪剛史社長は、全44ページのうち後ろに近い39~40ページに見開きで登場している。取引先、加盟店オーナーはじめ、各種イベントなどで配布している。

 同ステーションの報告書担当・小川潤子さんは「ウェブサイトでは情報量が膨大なので、思い切って冊子は小型化し、要約版としてA5判サイズにしました。手軽なハンディ型ということで好評です。特色は絵本形式でまとめたことです。読者の身近な存在として親しんでもらうため、わかりやすい文章で解説。イラスト、図表などを多く使っています。各ページに子どもやその家族のキャラクターを登場させ親近感を持たせました。ローソンの『みんなの欲しいモノが、欲しいときに、欲しいところにある』を実現するよう情報発信しています。また当然ながら、東日本大震災でのローソンの活動も紹介しています」と話している。

 

 〈経営倫理士とは〉
 NPO法人日本経営倫理士協会が主催する資格講座(年間コース)を受講し、所定の試験、論文審査、面接の結果、取得できる。企業不祥事から会社を守るスペシャリストを目指し、経営倫理、コンプライアンス、CSRなど理論から実践研究など幅広く、専門的知識を身につける。これまでの15期(15年間)で、450人の経営倫理士が誕生、各企業で活躍している。
 現在、経営倫理士(16期)取得講座の申込みを次の通り受け付けている。
 受講スケジュール:2012年5月15日から12月4日まで14回開講。時間はいずれも午後2時から午後4時40分まで。
 会場:青山ダイヤモンドビル9F(JR渋谷駅から徒歩8分)
 内容:経営倫理、CSR、コンプライアンス等について専門講師から14講座18テーマを学ぶ。
 資格取得:期間中2回の論文提出、全講座修了後の筆記テスト、面接試験を受け合格した受講者に経営倫理士資格を授与。
 受講料:185,000円(全講座1名、視察バス代、資料代含む、消費税別途)
 問い合わせは03-5212-4133へ。E-Mailはinfo@acbee-jp.org

 千賀 瑛一(せんが・えいいち)
 東京都出身。1959年神奈川新聞入社。社会部、川崎支局長、論説委員、取締役(総務、労務、広報など担当)。1992年退社。1993年より東海大学(情報と世論、比較メディア論)、神奈川県立看護大学校(医療情報論)で講師。元神奈川労働審議会会長、神奈川労働局公共調達監視委員長、経営倫理実践研究センター先任研究員、日本経営倫理士協会専務理事。「経営倫理フォーラム」編集長。日本記者クラブ会員。

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