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深掘り
(2016/09/06)
『企業犯罪とコンプライアンス 判例精選』
2016年5月20日発行
編者:木目田裕、佐伯仁志
発行:(株)有斐閣
定価:2,667円
企業の不祥事が相次いでいる。東芝の不正会計問題や三菱自動車の燃費データ改ざんなど、2015年から立て続けに明らかになっている企業の不祥事は伝統ある大企業であっても違法行為と無縁ではないことを示し、全ての企業にとって企業犯罪の防止とそのためのコンプライアンスの見直しは不可欠なものとなってきている。
しかし、企業のどのような経済活動が法に抵触するのか、会社法や金融・証券、経済・財政法などの典型的なものから情報や環境といった新しい分野まで、押さえるべき範囲は広大であり法の専門家でも判断に迷うケースは多々存在する。そのようなとき判断材料として重要な要素となるのがこれまでにおきた企業犯罪の判例である。
本書は法人処罰の考え方から始まり、昭和最大級の汚職事件といわれたリクルート事件など、実際に裁判で争われた企業犯罪に関する100以上の判例を各分野に精通している弁護士が事実、判旨、ポイントというようにそれぞれ要点を押さえながら解説することで、簡単に裁判の焦点が分かるようになっている。ライブドア事件や村上ファンド事件など有名な事件で概要は知っていても、事件の子細やその裁判の判旨までは把握していないという人も少なくないだろう。
こうした事件の判例を踏まえたうえで企業が犯罪を未然に防ぐには何ができるのか、本書の特徴はコンプライアンスの観点から実務において注意すべき点を明示していることである。近年多発している企業の個人情報流出や製品の安全性などについては消費者の目も厳しくなっており、その後の対応の如何によってはいわゆる「炎上」によって企業のブランド力や信頼の低下、さらには株価の下落を招き、致命的な痛手を負う恐れもある。企業が海外展開をする際にはマネーロンダリングや外国公務員への贈賄などこれまでにないリスクも生じてくる。こうした実務的な対応にも本書は言及しており、現場において大いに活用されるであろう内容も盛り込まれている。
企業のコンプライアンスが厳しく問われる現代、法曹関係者だけでなく企業の法務やコンプライアンス担当の実務家にも必携の一冊である。
(AJ編集部・佐賀旭)
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