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深掘り

事故原発に首相、作業員「怒ってるよ、菅直人、何しに?」

福島第一原発の事故現場回想(1)

奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 大手電機設備会社の社員として長年にわたって東京電力の原発で働いてきた彼は、2011年3月11日から15日にかけて事態が悪化しつつある福島第一原発の現場で3回にわたる爆発に遭遇した。1号機の爆発は「パカーン!」という軽い音。3号機の爆発はそれとまったく異なり、「もっと速い、ダンッ!みたい」な音。4号機の爆発は「地下を伝わってくるような感じの、ズンッていう感じ」の音。2012年2月、彼は、福島県いわき市内で、編集者の久田将義氏と朝日新聞記者の奥山俊宏のインタビューを受け、1年弱前の記憶をたどった。記事にしない前提のインタビューだったが、このほど、事故発生10年を前にその前提を解除。氏名や勤務先の会社名を伏せた上でインタビューの内容を公にすることに彼は同意した。福島第一原発で発生した3回の建屋爆発に遭遇した人による、3回の爆発音の質を比較しての、ここまで具体的な体験談は他に見当たらない。現在、久田氏はウェブサイト「TABLO(注1)」の編集長を務め、奥山は朝日新聞の編集委員としてウェブサイト「法と経済のジャーナル Asahi Judiciary(注2)」の編集に携わっており、このインタビューの内容をそれらのメディアで一斉に発信することにした。本稿はその第1回。

 ■14日夜から最悪の15日朝まで

拡大事故発生直後の福島第一原発の1号機(左端)、2号機、3号機、4号機(右端)=2011年3月15日朝、免震重要棟のある高台で東京電力社員が撮影し、翌16日午前に同社が記者団に提供した画像
拡大事故発生5年前の福島第一原発の1号機(左端)、2号機、3号機、4号機(右端)=2006年4月28日、朝日新聞・友清裕昭撮影
 福島第一原発が最悪の事態に至ったのは2011年3月15日朝のことだった。同原発構内にある免震重要棟に彼やその同僚は3月11日から詰めていたが、15日朝、ついにそこを去ることになった。

 そのときの経緯について、彼は2012年2月29日夜、JRいわき駅前の居酒屋で次のように振り返った。インタビューでは、彼が勤務する会社の名前や彼自身の名前を出して会話したが、この原稿では彼の名前を「マサ」とし、会社名を「A社」と仮名にする。

 奥山:15日は何時くらいまでいらしたんですか?

 マサ:逃げた日が15日なんで、15日は朝がたに解放状態です。15日朝に「いったん福島第二のほうにみんな避難してくれ」という話だったんで、おのおの、各会社で。そのときにはうちの人間て3人しか残ってなかったんで、その3人で。
 15日(に福島第一原発にいたの)は朝だけですね。朝、そういうふうに言われてすぐ2Fに行っちゃったので。

 東電関係者の間では、福島第二原発のことを「2F(にえふ)」と呼び、福島第一原発のことを「1F(いちえふ)」と呼ぶ。彼は3月15日朝、福島第一原発(1F)から12キロほど南にある福島第二原発(2F)へと避難した。

 奥山:それは何時くらいか覚えておられますか。

 マサ:朝ですね、ほんとに朝。

 奥山:きっかけみたいなのは何かあったか覚えておられますか。

 マサ:14日の晩の時点でもう「ちょっと今の状況で、やることがない」。とりあえず、14日の晩に第一弾で、「今いる人数は必要ないんで、ちょっと選別して、連絡員とかそういう人は残ってほしいんだけど、全部はもう、いる必要がないんで」ということで、14日の晩にいったん解散してるんですよ。
 で、だけれども、だれもいなくなるわけにはいかないんで、14日の晩から15日の朝まで(A社で)残ったのが3人だけなんです。

 奥山:14日の晩までは何人くらいいらしたんですか。

 マサ:11日から14日の晩までは随時、避難バスみたいなのが出てたんで、体調が悪くなった人間や家庭の事情やいろんな人間で、最初にいた人間からどんどん減っていくんですけど、14日の晩の時点では、どのくらいいたのかな? 8人くらいかなぁ?

 奥山:これはA社(彼が勤めていた設備会社)全体でということなんですか、それともマサさん(インタビューを受けている彼)の班で、ということですか。

 マサ:彼らは別に、一緒には仕事していないんで、ぼくのA社の元請けとして下に使っている会社も含めて確か8人くらい。

 奥山:それが14日の夜の段階で3人まで減った?

 マサ:そうです。14日の夜にほかの人は避難して3人だけが残って。で、15日の朝を迎えたらすぐ、「いま、線量が高い。危ない状況なんでいったん2Fに行ってください」という話で。もうすぐ朝に。8時か8時半くらいかなぁ。

 奥山:そのときは何号機(が原因)ということだったんですか。

 マサ:そのときはたぶん14日の晩に、2号機の爆発? あれはよく分からないですねぇ。みんな4号と言ってるんですけど、そのときの情報は「2号のサプチャンが爆発した」という話で、そのときはぼくらも音だけは聞いてるんですよ。免震棟にいて。ズシーンという音がしたんで、「これは地震じゃないだろう」という感じで。で、そのまま朝を迎えたら、「避難の準備をしてください」。詳細は伝わってないんですけど。

 ここで彼は「14日の晩」と述べているが、正しくは15日午前6時12分のできごとを指しているのだと思われる。その時間に4号機の原子炉建屋が水素爆発を起こしたことが判明するのは後のことで、当時、福島第一原発敷地内の屋外でそれを目撃した人はおらず、東電社内では、4号機ではなく、2号機の原子炉格納容器サプレッションチェンバー(圧力抑制室)で午前6時14分に爆発が起きた、と情報が伝わった。サプレッションチェンバーのことを略して「サプチャン」と呼ぶ。

 奥山:15日朝の音は1回ですか?

 マサ:1回ですね。

 奥山:6時過ぎということになってますよね。

 マサ:そうです。寝てて、朝がた、その音でみんな起きて、それから2時間くらいしてるうちに、「いったん避難しますんで、準備をしてちょっと待ってください」ということで。そうこうしているうちに「随時、各社で、行ける車で、とりあえず2Fまで行ってください」。

 奥山:「だれが残る」という話はそのとき何か聞いてますか。

 マサ:どっちですか。14日の晩ですか?

 奥山:15日。

 マサ:15日はもう、東京電力以外はみんな避難です。東京電力もある程度の人たちはみんな避難です。いわゆるフィフティーと呼ばれている人たちだけ、が残ってる状態。でも、それがだれが残ったとかどういう人たちが残ったとかはぼくらは情報ないんで、分からないんですけど、ある程度、ぼくらの担当しているお客さんなんかも東京電力さんなんかも逃げてますからその時点ではみんな。もうほとんどの人が逃げてますから。

 この15日朝、午前8時35分に東京電力本店で始まった記者会見で、東電は次のとおり発表した。

 本日、午前6時14分頃、福島第一原子力発電所2号機の圧力抑制室付近で異音が発生するとともに、同室内の圧力が低下したことから、同室で何らかの異常が発生した可能性があると判断しました。今後とも、原子炉圧力容器への注水作業を全力で継続してまいりますが、同作業に直接関わりのない協力企業作業員および当社職員を一時的に同発電所の安全な場所などへ移動開始しました(注3)

 この記者会見で、「現場に何人いるんですか?」という質問に対して、原子力設備管理部の黒田光課長(当時)は

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奥山 俊宏(おくやま・としひろ)

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
 ご連絡は okuyama-t@protonmail.com、または、okuyamatoshihiro@gmail.comに。メールの内容を暗号化する場合はPGPで。パブリックキーのIDは7D2BAD43550EAD96

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